独断と偏見で選ぶ
ベストサイエンスブック'99

結果
'00.01.31日現在
有効投票数:48(合計240点、うち棄権7点)

コメントは、頂いた方の分のみ掲載しています。
各得点はコメントを付けて下さった方の投票分のみではなく、各書籍が獲得している合計点です。ご了承下さい。
なお主催者が書評している本、また投票者がURLを紹介してくれた本に関しては、リンクを張ってみました。


56点 『最新恐竜学』(平山廉著 平凡社新書)
■理由は、僕の書評を見てもらえれば、言いたい事は、分かると思います。(コメント:ゆねらぷとるさん)
■国内で出版されている恐竜本の多くに常に不満がありました。サイエンスに古生物学も入るのだろうかと思いたくなるほど、書いている内容に独自性がない。海外の学者の説の紹介や寄せ集めを読まされるのは、もううんざり。新しい視点を提示できる国内の研究者はいないのだろうかと思ってきました。権威の後ろ盾がないと本にならないとしたら科学本の恥でしょう。多くの子供や、恐竜好きな人が手にするだろう本の図版の質の悪さや表記のまちがいが、訂正されることなく、いつまでも平気で出版され続けることにも失望していました。というわけで、恐竜学もサイエンスだったんだと思わせてくれた平山さんの本に投票します。読みやすい文章と添え物ではない図版。新しい視点。研究者と復元画の描き手との共同作業が「恐竜本」の可能性を拓いたことにも好感が持てます。(コメント:shachiさん)
■面白かった(コメント:匿名さん)
■科学本としてはとても読みやすく、しかも独自の見解に秀いていて人に薦められる本だと思います。(コメント:G.Squidさん)
■復元図が良い。(コメント:EMI/SHIKAMAさん)
■こんにちは。「最新恐竜学」平凡社新書に5点お願いします。(コメント:菊池直樹さん)
■テレビ朝日でも真面目に番組をやってましたね。CGの発達でイメージが簡単に具現されるのはうれしい限りです。どうも古いイメージに縛られた恐竜学がやっと新しい入り口に立った気がするのですが・・。(コメント:由さん)
■科学書というと、どうしても翻訳本の比重が重くなりがちです。出版数もはるかに翻訳本の方がおおい現状の中で、やはり日本人がオリジナリティーを持って書いたこの本は価値ある一冊であると言えます。値段も手頃で良いのですが、次は是非カラーの大型本で、世界に胸をはれる普及書を出してほしいとおもいます。(コメント:匿名さん)
■マイケル・クライトンのジュラッシック・パークも面白かったが、「最新恐竜学」も謎の世界を今に解明してくれるリアルさで面白い。平山氏のスタンスのユニークさを支えているのが小田隆の復元画だろう。コンピュータ・グラフィックが流行るときに繊細なタッチで描かれる恐竜は、中世代を今に彷彿とさせる魅力を持つ。恐竜がガキの世界から大人の世界に甦らせた一冊だと思う。(コメント:廣瀬克寛さん)
■縁もゆかりもないとはいえ、著者が「ひらやま」なら一票を投じざる得ない(^^;(コメント:ひらやま ひろゆきさん)

47点 『脳のなかの幽霊』V・S・ラマチャンドラン サンドラ・ブレイクスリー 著 山下篤子 訳 角川書店(角川21世紀叢書) 2000円)
■内容の斬新さとエピソードの面白さが秀逸でした。(コメント:iwata hitomiさん)
■これからの脳科学が進む方向を知りたかったら、この本を読むしかない。なによりも、「心」についての私たちの常識が揺らぐのが良い。この揺らぎを経過して、はじめて心と脳の関係についての本質的思考が可能になる。本書は、終着点ではなく、出発点である。(コメント:茂木健一郎さん)
■今年のベストブック・・・・やっぱり「脳のなかの幽霊」です。(コメント:羽尻公一郎さん)
■日本人の神経研究者でこのような内容の本を書ける人は現在いないのではないだろうか。故時実利彦氏の岩波新書の名著は、これに匹敵するものと思うが。脳の研究者たちの書いている本は概して面白くない。単なる知識の羅列が客観的に記載されていて、著者の熱意が伝わってこないとか、推論のプロセスが省略されて結論のみが書かれている場合が多い。患者の示す症候(幻肢、半側無視、幻視、カプグラの妄想など)に対して、著者の推論・実験のプロセスが詳細に書かれているような本書は推理小説を読むようであり、謎を一つ一つ解き明かしていくわくわくした気持ちにさせてくれる。(コメント:乱夢さん)
■脳の不可思議さをまざまざと見せつけてくれるエキサイティングな内容でした。(コメント:匿名希望さん)
■脳神経科学はごく少数の症例から(たった1つの症例からでさえ)普遍的真理を導ける可能性があることを教えてくれる本だと思います。(コメント:松澤大輔さん)
■面白さは誰もが認めるところで、'99年度読んだもっとも厚い本(トホホ...)だが、あっという間に読み終わった。Ramachandranの幻肢の話などは論文を読んで知っていたが、恥ずかしながらここにあることの多くを知らなかった。専門家として当然原著で読んであるべきなのに。そこでとりあえず「視覚の謎 症例が明かす<見るしくみ>」本田仁視著も併せて読んで前から知っていた振りをすることにした。余談だが、DNAに魂はあるか(1995 フランシス・クリック著)は題がひどい、訳者(中原英臣)の前書きがひどい、DNAなんかぜんぜん関係無いのに、こうすれば売れると思っている。専門家の目から見て、視覚のことについての重要な問題がよく押さえられたよい本だと思うし、訳も下訳の人がよくがんばったからか、大きな間違いはない。脳と意識の問題の本が多く出ている今こそ批判的に読まれるべきだと思うのだが。「脳のなかの幽霊」はこういう臭い仕掛けを掛けられなくて本当によかったと思う。(コメント:吉田正俊さん)
■文句なしに面白かったです.盲点の実験ができたりして、読者サービスも十分.高いお金を払って新刊を買ったかいがありました.(生協使いましたけど)(コメント:匿名希望さん)
■常識を知らぬ間に科学の目で再検討させてくれる本として,これは外せない。(コメント:中澤港さん)
■脳のなかで構築される世界と認識。その不思議を、読者がその場で試せる実験と、脳に損傷を受けた人々の実例を基に明らかにしてゆく過程に興奮。(コメント:西田仁さん)
■(だいたいみんないろいろコメントしているだろうので私はこれ)学者さんは学問では専門家だろうけど著述では素人だということを忘れがち。この 本のように一般向け出版の際にはサイエンス・ジャ−ナリストと手を組むことをご一 考なさるとよろしいかと。実際ラマチャンドラン氏一人で書いたらここまでのヒット になったかどうか。(コメント:雨崎良未さん)
■臨床心理学の本ではなくロボット工学の本として読むとさらに刺激的。幻肢の症例やその驚嘆すべき治療法は、Virtual Realityの研究者にも大いに参考になるのでは?(コメント:梶田秀司さん)
■もう既に票があつまっているので、今さらなのだけれど、とにかく面白い。人間の心に関する常識が揺らぐし、なにより研究の過程のドキュメントとして読むのも面白い。これを読むと神経科学が無性に研究したくなる。(コメント:榎木英介さん)
■取り上げている症例の奇抜さ,解説の明確さ,読ませる構成,豊富な事例,単なる解説ではなく自己の主張が明確にある点,脳科学に少しでも興味のある人は必読だと思う.縦書き二段, 300ページの本書が2000円で購入できることに幸福を感じずにはいられない. (コメント:西川大亮さん)
■めちゃめちゃおもろかったです.人にすすめまくってしまいました.著者の実験の話がおもしろいのはもちろん,神やクオリアについて考えていくプロセスが印象的.目の前と遠くを同時に見てるなあ,という印象を受けました.一般科学書に対する考えや研究者としての心がまえを述べた「はじめに」だけでも勉強になりました.あと,冗談.全般的にどことなくおもろいんですよね.話に使われたフランシス・クリックはなんて言ってるんだろう? (コメント:上原子 正利さん)
■脳という器官の不思議さにたいへん驚かされました。脳に関してラマチャンドラン博士の唱える説は刺激的で、'99年に読んだ本の中で一番面白かった。(コメント:大田武志さん)

12点 『自己組織化と進化の論理』スチュアート・カウフマン 著 米沢富美子 監訳 日本経済新聞社)
■カウフマンはご承知のとおり複雑系理論生物学者であるが、この本はダーウィン以来の自然淘汰説と突然変異を複雑系の立場から「自己組織化」という概念を導入して、生物の進化が自然淘汰や突然変異だけで起こるのではなく、まず、自己組織化によって生物進化はなされ、最後に自然淘汰で締めくくられるという考えを展開している。自己組織化機構が働くのは「カオスの縁」(秩序とカオスとの境界)の秩序側にシステムがあるときだとカウフマンは考えている。しかし、このことは生態系のみならず、経済システムなどのシステムにも応用可能だとする。 ただ、私見によればカウフマンの「生物は秩序と無秩序の境界に到達するように他者との相互作用の強さを調整しており、こうすることによって、生態系における適応度を最大にしている」という生態系の「見えざる手」を彼自身の「普遍的法則願望」へ帰結させようとしている点は、私の動態システム論(簡単にいえば、法則自体も進化する、常にその座標軸は変動する)と人間の意識の問題端的にいえば「内的時間意識や内的空間意識の問題」に言及していない物足りなさを感じるが、それはそれとして、カウフマンが複雑系的思考を進化論に導入した点は大いに評価できる。(コメント:塚本宰弘さん)
■待ち望んでいた"At Home in the Universe"の邦訳が出てとてもうれしい。モノーの『偶然と必然』やドーキンスの『利己的な遺伝子』と同様に、万人に教養として読まれる価値のある本の一つだと思う。(コメント:彦坂 暁さん)

9点 『知の創造 ネイチャーで見る科学の世界』ネイチャー編集部、徳間書店)
■無駄に豪華な作りでしかも分厚いですね。こういう「最近の話題」の解説モノをハードカバーで出す利点は全く無いと思います。その上一冊でこの値段では下手をすると潜在的な読者を相当数失っている可能性があるのでは?  薄くして一冊当たりの値段を安くして何冊かに分けて出した方が売上が良さそうな気がしますけど…(まあこれは大きなお世話ですね)。記事のクォリティは言うまでも無いので、これが障害になって読まれる機会が少なくなるとすればもったいないです。それでも敢えて今回は企画そのものへの応援の意味で3点入れておきます。(コメント:吉田 慎一郎さん)
■これだけのものをこれだけまとめて読めるなんて、いい本じゃないですか。拾い読みにもいいし、なんかしら興味あるところは見つかるし、ふつうなら見ないような話もなんとなく読んだりするし、読みやすいし、許すって感じ。(コメント:山形浩生さん)
■コメントは森山さん始め他のひとたちとほぼ同様です。つまり,こう言う本を出版する「心意気」は高く評価したいし,内容は(当然のコトながら)かなり刺激的。ですが,装丁・価格設定に難があるでしょう。まぁ,「第一回」と言うことで,出版の経緯とかナンとかをアタマ書きに残しておきたいんじゃないかとか,そんなコトを考えれば,この「第一巻」はコレはコレとして,分冊化を含む(少なくとも一冊分としての)低価格化などをはかりつつ,今後とも是非出版を「続けて欲しい」と言うエールを含めて,本書に投票。(コメント:松山 達さん)

8点 『雑種植物の研究』 メンデル 岩波文庫(1999.1.18刊行)
■基本的に学術論文なのだが、植物学から遺伝学への転換を見せつけてくれる良書の典型だ。あの時代の植物学の世界にいて遺伝学的なアプロ−チが出来たことはメンデルが物理学を大学で学んでいたためだろう。とにかく感心してしまうが、なんとかそれを見習わなければと感慨を新たにした。文系理系を問わずに読むべきであろうか。ニュートンのプリンキピアよりも大学生に読むことを勧める本である。(コメント:高川朋和さん)

5点 『不思議な数eの物語』E.マオール 著 伊里 由美 訳 岩波書店 2800円)
■πの話ならば、よくありますが、たぶんeの一般向け読み物は始めてではないでしょうか?工学のような応用数学では、ついつい、計算技術にはしりがちですが、このように多角的に、eが発明されるまでのさまざまな歴史的事件を追いかけていくと、あらためて、eの面白さに引かれます。個人的には、πよりも、ずっとeのほうが好きなので、待望の本です。高校3年生か大学1年くらいの数学好きの学生向けとして超お勧めです。(コメント:匿名さん)

5点 『ワトスン君、もっと科学に心を開きたまえ―名探偵ホームズの科学事件簿』コリン・ブルース 著 布施由紀子 訳 角川書店 2,000円)
■角川書店にしては珍しく,もともな一冊です。内容は何かすぐに想像できそうな本なのですけど,日本人ももっとこんな本書かないとね,という意味で投票します。(コメント:白石清さん)

5点 『生物と細胞 −細胞説をめぐる科学と認識−』宮地祐司 著 仮説社(自然の科学入門シリーズ))
■著者は、フックが自作の顕微鏡でコルクの細胞を発見してから、なぜ170年もの間、「すべての生物は細胞からできている」という細胞説が提唱されなかったのかという、問題意識を持ちながら、仮説実験授業の「授業書」を開発した。科学的認識の重要性と仮説実験授業の素晴らしさを否応なしに認識させる。(コメント:松村正明さん)

5点 『人、ヒトにであう-全国標本展示ガイドブック』坂井建雄・小林身哉編 風人社 1800円)
■生命科学の進歩に伴い、人体への関心はますます高まってきた。しかし、人体解剖はもとより標本の閲覧も一般には認められていない。自然生命の神秘に触れ、より深い理解を得るには、できれば身体の客観視体験を一度は持ちたい。本書は、現在日本でこの機会を与えてくれる施設や状況を調査した、初の画期的なガイドブックである。全国主要医療関連博物館・資料館マップ付き。(コメント:小林邦彦さん)

5点 『MITSUYA エイズ治療薬を発見した男』 堀田佳男 旬報社)
■エイズ治療薬を世界で最初に開発した日本人科学者 満屋裕明氏の治療薬発見への過程をつづるノンフィクションです。内容は研究自体にスポットを当てているわけではなく、氏の高校時代からアメリカ留学までの経緯や日常生活などの舞台裏からの記録で、物語のようにすぐに入り込める内容展開です。満屋氏がまだ感染経路もわからないエイズウイルス治療薬の開発に取り組んだ「気概」。そして、発見の章も読みごたえがありましたが、一番最初に開発したエイズ延命の治療薬の特許を独占した製薬会社エゴとの戦い、そしてその権利に執着せずあくまでも探求を拠り所とした満屋氏の研究に対する姿勢を皆さんに伝えたいと思いこの本に5点投票します。どうぞ読んで下さい。(コメント:田口暁子さん)

4点 『科学は冒険!』ピエール=ジル・ド・ジェンヌ 著 講談社ブルーバックス
■ド・ジェンヌは「高分子、液晶、超伝導、磁性材料の相転移」に関してノーベル物理学賞を受賞している。この本は、彼がノーベル賞受賞後に高校を巡って行った講演を基に書かれた本である。この本を通してわかるのは、まず、フランスの教育システムは、アメリカやイギリス(アングロサクソン)のシステムとは異なることである。まず、入学試験が重視され、その入学試験は、数学が最重要視されているところである。この、数学帝国主義をド・ジェンヌは批判している。また、アングロサクソンの国と異なり、研究の分野での生存競争は熾烈ではないようである。ド・ジェンヌはアメリカの物理分野の競争は行き過ぎだと述べている。この本では、前半はやわらかい物質に関する研究を簡単に解説している。後半は、科学者のありかた、教育のありかたについて意見を述べている。特に印象を受けた内容は以下のことである。
・ベンジャミン・フランクリンの精神 ベンジャミン・フランクリンは、池に油を注いで、油によって波立たない池の表面を見つけることにより油面を識別し、水の表面に広がった油の面積を測定した。このような、観察力と思いつきが研究には必要である。
・綱渡りの踊り子 研究者は綱渡りの踊り子のようで、応用または基礎に極端に傾くと綱から落ちてしまう。うまくバランスを取らないといけない。
 この本は、研究者のたまごにぜひ読んでもらいたい本である。そして、日本の大学教育を作る人たちにも読んでもらいたい。手本はアングロサクソンだけではないことがわかるであろう。(コメント:橋本公太郎さん)
■前半に述べられる高分子化学における数々の興味深いエピソードと後半の「科学とはどういう仕事か」に関する著者のコメントのバランスがとても良い。「ご冗談でしょうファインマンさん」を彷彿とさせる好著。(コメント:梶田秀司さん)
■この手の「裏話」的なもの(と表現すると違うような)には弱くて(^^;(コメント:ひらやま ひろゆきさん)

4点 『市民科学者として生きる』高木仁三郎 著 岩波新書
■核化学者であり、原子力企業→大学教官の道から一転して反原子力運動家となった高木氏の自伝である。この本は大変読みやすい。そして、重い。特に、科学者、技術者にとっては。私にとって、特に共感できたのは、彼が会社で研究をしていて、会社のシステムに疑問を持ったところである。彼は、日本の会社では「個」が見えないと言っている。このような日本型企業の問題点は、今でも残っている。この本は、大学助教授の地位を捨てるところまでは、しっかりと書かれているが、その後の反原発運動の部分、市民科学者としての活動の部分は意外とあっさりと書かれている。おそらく、この部分は、別の本を読めということであろう。科学者、技術者が読めば、考えされられることが多い本である。一読を勧めるが、この本を読んで、自分の生き方に悩みすぎないようにしてもらいたい。(コメント:橋本公太郎さん)
■エリート科学者として歩んできた著者が、どうして市民の立場に立った科学を立ち上げたのか。私たちは科学をどの方向へ向かわせていこうとしているのか。高木氏の生き様は私たちの喉元に突きつけられたナイフだ。(コメント:榎木英介さん)
■「俺の未来ってどうなるんだろうなあ」とかボーッと考えたりしました.こういう人を見ると「がんばらな」と思います.(コメント:上原子 正利さん)

4点 『宇宙の果てまで』(小平桂一、文藝春秋)
■少なくとも天文業界では今年のベストセラーです(多分)。(コメント:吉田 慎一郎さん)
■著者の名前を見て即購入したのですが、内容も素晴らしかったです.落ち着いた文章から、すばる望遠鏡への想いがヒシヒシと伝わってきました.すばる望遠鏡で撮った写真が、なんだか、とても有り難いものに見えてきます.(コメント:匿名希望さん)

3点 『「買ってはいけない」は買ってはいけない』 夏目書房編集部
■2000年の節目に、我々日本国民の科学レベルが、少なくとも「買ってはいけない」と「買ってはいけないは買ってはいけない」の違いくらいは見抜ける程度に達していたのか、いなかったのか、それを考える資料として。科学を以て蒙をひらくという観点からも実は大きな価値があったのでは。(コメント:Junkyさん)

3点 『異種移植』山内一也 著 河出書房新社 1800円
■異種移植という先端医療の孕む問題点やメリットを端的に分かりやすく開設してある。ドナー不足という現実を抱えるの臓器移植の光明となるか、興味深い。(コメント:匿名希望さん)
■医学部の中にいてもこの本の内容に触れた授業は1つもありませんでした。明快でわかりやすい本だと思います。(コメント:松澤大輔さん)

3点 『THE ART OF NATIONAL GEOGRAPHIC』 NATIONAL GEOGRAPHIC協会
■科学についての記事を多くのせることでも知られている、月刊誌ナショナル・ジオグラフィックが、その100年をこえる歴史の中で掲載してきたイラストレーションの傑作の数々を、編集しまとめた極めて美しいアートブックである。序文をスティーブン・J・グールドが書いており、科学者とアーティストの理想的な関係が、共同作業をとおして実践されていることがうかがえる。(コメント:小田隆さん)

3点 『相対論 対 量子論』(メンデル・サックス 著 原田稔 訳, 講談社ブルーバックス 1268)
■たとえ噛み合わなくても、議論することそれ自体がエキサイティングかつ有意義である――と再認識させてくれた一冊。理論と経験と信念が激突するからこそ、科学はこんなにも面白い。(コメント:K.Ogiharaさん)

3点 『他者の心は存在するか <他者>から<私>への進化論』(金沢創(かなざわ・そう) 著 金子書房 2400円)
■自分の感覚を唯一の立脚点として議論をするというのは哲学的な話としてなら今までにもいろいろとあるだろうが、それをちゃんと認知科学の話を土台にして持っていったところが説得力があってとてもよかった。永井均と認知科学を結ぶというすごいことをした本。'99年度に最も書きこみをいれ、メモを書きなぐった本。(コメント:吉田正俊さん)
実際には感じることの出来ない他者の心がなぜ存在するように思えるのか。子供やサルに対して行われた「世界を認識する能力」の実験を基に、「心を感じる機構」の発生・発達を予測する。このアプローチが刺激的。(コメント:西田仁さん)

3点 『小説と科学』(瀬名秀明 著, 岩波高校生セミナー 8)
■科学の衰退を案ずるなら、まず青少年向けの土台作りを重視すべきだと思う。本シリーズを企画した出版社の見識の高さに好感を覚える。激励の意味も含め、一票を投じたい。(コメント:K.Ogiharaさん)
■ベスト! とか言って挙げる本じゃないけど、でもどっかで一言ふれておきたい本。30半ばで読むと、ウンウンって感じで読むけれど、高校生たちはこれをどこまで納得して読んでるのか、知りたいなぁ。(コメント:山形浩生さん)
■高校生にこういう事をきちんと話してあげられる瀬名さんは偉い。(コメント:彦坂 暁さん)

3点 『構造主義生物学』(柴谷篤弘 著 東京大学出版会)
■最近のものも含めて幅広く豊富な生物学的知見にもとづいて論を展開しており、一部に疑問点はあるものの、全体としてはとても面白く読めた。生物と進化を見る新しい視点を与えてくれる。(コメント:彦坂 暁さん)
■とてもよく分かったし、頭にすっと入ってきた。面白かった。なにより発生学についてかなり言及してある。発生学をやっていた私としては、遺伝子ハンティングをして新しい遺伝子をいくら取ったところで全然発生とは何かという「実態」に迫っていないのではないか、という思いを強くしていたので、「構造」の拘束で発生を捉えるという考えは、非常に共感できるのだ。これをどう研究に生かすかという問題もあるけど。もうちょっと勉強してみたい。(コメント:榎木英介さん)

3点 『科学が正しい理由』ロジャー・G・ニュートン 著 松浦俊輔 訳 青土社
■まだ読み切ってませんが。とにかく、書名がかっこいい。(コメント:ABE Yoshihiroさん)

3点 『ヒトはいかにして人となったか』テレンス・W・ディーコン 新曜社)
■日本ではまったくといっていいほど話題になりませんでしたが、今後の意識や言語に関する議論では無視出来ない本になると思います。(コメント:森下一仁さん)

3点 『不可逆過程の物理-日本統計物理学史から』(一柳正和著、日本評論社)
■病に倒れた著者の遺作となった本。個人的には今年最も感銘を受けた。統計物理学の分野での日本人研究者の頑張りの歴史には深い感動を覚える。(コメント:伊藤 周さん)

3点 『巨人の肩に乗って』(メルヴィン・ブラッグ著、熊谷千寿訳、翔泳社)
■科学に大きな業績を残した人々を、現代の科学者がそれぞれの立場・視点で語る。このスタイルにより、これまでに私が持っていたイメージが壊され、新しく作り上げられるのが楽しかった。特に大きなインパクトを受けたのは「アルキメデスがいなければ科学は生まれなかったのでは?」「フロイトが心理学を科学にした」という意見。(コメント:西田仁さん)

2.5点 『さようならエンジン 燃料電池こんにちは』山本寛 著 東洋経済新報社
■「自動車に対する米国の政策を背景に、燃料電池自動車の開発が急速に進んでいる。燃料電池は高効率で超低公害の特長を有しており、このままでは自動車はエンジンの代わりに燃料電池が搭載されるようになる。」とのことである。米国の政策や、燃料電池の開発状況、エンジンの問題点(環境面、効率面)について詳細に述べてあり、良く書けている本だと思う。9章の「エンジン生き残りに残された手段」に、エンジン技術に化学の活用が必要であるとの主張は、私も同感である。ただ、彼が書く手段については、化学者の目から見たら少し首を傾げる面がある。(コメント:橋本公太郎さん)

2点 『いんざいのネイチャーウォッチング』ケビン・シュート 著 印西市
■写真・イラスト・文書ともにわかりやすく、自然観察の手引き書として良くできている。限られた地域の観察書としてはかなりの出来映えである。(コメント:山崎旬一さん)

2点 『机の上で飼える小さな生き物』木村義志 著 草思社
■実際に生き物を飼ったヒトにしか書けない文書で、わかりやすく観察のポイントをついている。生き物に関心のあるヒトにとって元気の出る本である。疲れず、微笑みながら読める。(コメント:山崎旬一さん)

2点 『イン・サイド・アウト』NATIONAL GEOGRAPHIC協会 ニュートンプレス 2000円
■月刊誌ナショナルジオグラフィックに掲載されているイラストが、どのようなプロセスで作られているかを解説した一冊。ほとんどの記事が1年という長い時間を使って作成され、アートディレクター、リサーチャー、ライター、サイエンティスト、アーティスト達との共同作業が、贅沢とも言える時間のなかで組み立てられて行く。充実した仕事ぶりには、ただ驚愕しうらやましい限りです。(コメント:小田隆さん)

2点 『脳の性差 男と女の心を探る』(新井康允著、共立出版ブレインサイエンスシリーズ16)

2点 『ミトコンドリアの謎』(河野重行著 講談社現代新書)
■ミトコンドリアに関する膨大な研究が手際よくまとめられていて非常に面白く読めました。ATP合成酵素が機械的に回転していることを実証した吉田賢右教授らの成果(http://www.res.titech.ac.jp/sign/bumon/seibutsu/seibutsu.html)に触れられていないのがちょっと残念です。(コメント:梶田秀司さん)

2点 『天才数学者たちが挑んだ最大の難問 フェルマーの最終定理が解けるまで』アミール・D・アクゼル 著 吉永良正 訳 早川書房
■まるで映画のよう。悪役含めて。「グッド・ウィル・ハンティング」の硬派版!(コメント:ABE Yoshihiroさん)

2点 『世界の究極理論は存在するか』(デイヴィッド・ドイッチェ著、林一訳、朝日新聞社)
■非常に広範囲な話題に及んでいて一気に読める。大変面白い。量子力学の多世界解釈の説明には説得力がある。(コメント:伊藤 周さん)

2点 『人類、月に立つ』(アンドリュー・チェイキン、NHK出版)
■TVドラマ、早く地上波でも放映して下さい。(←それは本の選考理由じゃない…)(コメント:吉田 慎一郎さん)

2点 『人間性はどこから来たか−サル学からのアプローチ』 (西田利貞、京都大学学術出版会 2800円)
■ヒト(人間性を持った動物)は決して特別ではなく,進化の流れの中で生まれた存在であり,それらの形質は多かれ少なかれ近接種も有している.そしてその形質がなぜ獲得されたのか,どのようなメカニズムで実現されているか,についての解説は刺激的である.99年に読んだサル関係の本の中ではベスト.タイトル通り「人間性はどこから来たか」と疑問に思ったことのある人にはオススメ. (コメント:西川大亮さん)

1.5点 『心が脳を感じるとき』(茂木健一郎 講談社 1800円)
■「脳とクオリア」に次ぐ茂木理論の第二弾。「脳とクオリア」はクオリア一元論的な話や、ニューロンの選択的反応だけではだめ、というあたりは非常に重要で、私にここ数年にわたる影響を与えたし、これこそが私が今qualia-MLに出入りしている理由。しかし、他の部分については山形浩生氏森山和道氏の批評があたっていると思う。「心が脳を感じるとき」はクオリア一元論を捨てて、クオリアと志向性、という二つを立てるようになった。これによってできる説明は前著よりもずっとbiologicalになったし、本もより読みやすくなった。両眼視野闘争などいろんなものに応用できそうな話であるし、書きこみまくって読んだ。編集方針のせいかもしれないが、「脳とクオリア」で出ていたような物理的モデルの重みが減って、あれは結局なんだったのか、という気がするし、「脳とクオリア」の衝撃からも後退している。しかも今度は物語が、とか言っているところを見ると、著者は話を拡大して行くタイプであって、理論を作り上げてゆくタイプではない、という気がする。それならそれでもよいが、正直がっかり。それでも'99年度に最も多く繰り返し読んだ本。(コメント:吉田正俊さん)

1点 『ハゲ、インポテンス、アルツハイマーの薬』(宮田親平、文藝春秋 660円)
■話題の薬を素早く取り上げ、諸病因、作用機序、開発エピソードなどがコンパクトにまとまっていて、読み応えがある。 (コメント:匿名希望さん)

1点 『脳が心を生みだすとき』(スーザン.グリーンフィールド 草思社 1800円)
■サイエンス・マスターズシリーズの最新。題名とは異なり大脳生理学の話だ。心や意識の話を期待しているとすかされてしまうが、大脳生理学の話としては入門書に最適。特にニューロンの動作説明や成長過程に関する話しは最新のものであり面白い。意識に関して一箇所だけ面白い記述があった。それは意識はいつ生まれるのかだ。昔は出産の時に意識は生まれると考えられていたが、未熟児の出産で体内でも意識は生まれ始めていることが判明したとの記述と、意識は全か無かではなくうっすらと形成され始めるものだとの考え方は真っ当だがおもしろい。ベネットあたりと対談したらどうなるのか期待してしまう。(コメント:高川朋和さん)

1点 『狂気と正気のさじ加減』(シドニー・ウオーカー、共立出版)
■DSM−を見ると様々な精神疾患が挙げられていますが、DSMだけをもとにして患者の表面に現れた精神症状からラベルを貼っていくと、症状の原因となった治せるはずの疾患を洞察しなくなってしまうことを警告してくれています。(コメント:松澤大輔さん)

1点 『大絶滅。』(金子隆一、実業之日本社 1500円)
■金子氏の主張が熱くて好きです。この手の簡単に読める本は有り難いです。(コメント:松澤大輔さん)

1点 『草思』(菅野 徹 著 草思社)
■草思社」の小雑誌であるが価格が安く(100円)菅野氏の自然観察の姿勢と観察内容の豊富さにあきれる思いがする。気楽に読め自然の姿をかいま見れる本として推薦したい。(コメント:山崎旬一さん)

1点 『<意識>とは何だろうか 脳の来歴、知覚の錯誤』(下條信輔(しもじょう・しんすけ)著 講談社(現代新書)、680円)
■森山和道氏の評価は低かったようだが、知覚の錯誤はニューロンレベルでは消える、とか、来歴の概念とか、私にとっては重要なことが詰まっていた。最後の章は要らないし、無意識とは体に表れるものだから意識より研究しやすい、とかはピンとこなかったけど、私が意識の問題に入っていくのにちょうどよいタイミングでこの本に出会ったことが多分この本によい印象を与えているのだろうが、この本でしか読めないようなことが確かにある。(コメント:吉田正俊さん)

1点 『原子力の社会史』 (吉岡斉 著, 朝日選書 624)
■結果的に再読三読することとなったし、無視する訳にもいくまい。決して愉快な本ではないが……。(コメント:K.Ogiharaさん)

1点 『皮膚の医学 肌荒れからアトピー性皮膚炎まで』 (田上八朗 著, 中公新書)
■皮膚に関しては俗説が流布している一方で,正確な知見を丁寧に解説したものがこれまでなかったので,この本は今日的にきわめて重要。(コメント:中澤港さん)

1点 『超常現象の心理学 人はなぜオカルトにひかれるのか』 (菊池聡 著, 平凡社新書)
■現代人の情報リテラシーとして必須。(コメント:中澤港さん)

1点 『地球人口100億の世紀 人類はなぜ増え続けるのか』 (大塚柳太郎・鬼頭宏 著, ウェッジ選書)
■これも,現代人の情報リテラシーとしてお薦め。(コメント:中澤港さん)

1点 『コロンブスが持ち帰った病気 海を越えるウイルス,細菌,寄生虫』 (ロバート・S・デソウィッツ 著, 古草秀子 訳,藤田紘一郎 監修 翔泳社)
■梅毒や黄熱の話が面白いので。熱帯医学研究はもっと進展すべきと思うので,敢えて推薦。(コメント:中澤港さん)

1点 『社会生物学』 (E・O・ウィルソン 著, 伊藤嘉明 監修 坂上昭一ほか訳 新思索社)
■いやぁ、ぶあつい分厚い。まだ通読できてません。でも、候補作にまるで挙がらないのはあんまりだと思うし、最後の人間の将来を考えるあたりは、すごく迫力あって好き。(コメント:山形浩生さん)

1点 『アメリカからさぐるバイオ研究の動向と研究者』 (白楽ロックビル著 羊土社)
感想文に書いたとおり、読み出したら止まらない。バイオ研究の裏側に見えてくる生々しい現実を軽快なタッチで描写しており、これを読んでバイオ研究を面白いと思えなかったらモグリだ。(コメント:榎木英介さん)

1点 『科学者の熱い心 その知られざる素顔』 (ルイス・ウォルパート、アリスン・リチャーズ著 青木薫、近藤修訳:講談社BLUE BACKS)
■科学者の生の声の面白さを堪能。こんなに科学って面白かったんだ、科学者という職業も悪くないなと再確認させてくれた。(コメント:榎木英介さん)

1点 『科学101の未解決問題 まだ誰も答えを知らない』(ジェームス・トレフィル 美宅成樹 訳、ブルーバックスB-1239)
■「ここまではわかってる」という本は数あれど、「ここから先はわからん」という本は比較的珍しいと思うので。(コメント:ひらやま ひろゆきさん)

1点 『スペース・ガイド1999』((財)日本宇宙少年団 編/的川泰宣・毛利衛 監修、丸善)
■これが一般売りされるようになるとはいい世の中になったものです。(コメント:ひらやま ひろゆきさん)

1点 『ペンローズのねじれた四次元 時空を作るツイスターの不思議』 (竹内薫、講談社ブルーバックスB-1260)
■竹内薫氏の語り口を見直しました。(コメント:ひらやま ひろゆきさん)

1点 『心や意識は脳のどこにあるのか』 (ニコラス・ウェイド編、翔泳社 2300円)
■脳科学にこれまで全く興味のなかった人が,取っ掛かりに読むのに適していると思う.New York Timesに連載されたコラムをまとめた本だそうですが,目一杯彼我の差を感じてしまった.だから日本では新聞を読む人間が減るんだ...(コメント:西川大亮さん)

1点 『もうひとつの手話』 (斉藤道雄 晶文社)

1点 『シャーマンの弟子になった民族植物学者の話 上・下』 (マーク・プロトキン 築地書館)
■文化の失われていく様子がちょっとせつないですけど,最後に少しだけ希望が見えて,安心.(コメント:上原子 正利さん)


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