独断と偏見で選ぶ
ベストサイエンスブック'98

結果
'99.1.31日現在
有効投票数:28
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1位:『生命と地球の歴史』

著者:丸山茂徳氏にお言葉を頂戴しました!

拙著(丸山・磯崎)が98年度のベストサイエンスブックに選ばれたとの報告、大変光栄に存じます。感想ですが、短い時間をやりくりして集中的に書いたので、分かりにくい点が多々あるにも関わらず、数多くの読者に読まれたのは、本の内容に興味をもつ人がかなりおられることを示していると思われます。文明国の中では、残念ながら世界最低レベルのサイエンス理解度を示すといわれる情けない日本の現状に危惧を抱いている人間の一人として、少し安心しました。時間がとれれば、もっと分かりやすく書いたもう一つの啓蒙書を書きたいと思っています。

13点 『生命と地球の歴史』,丸山茂徳・磯崎行雄著,岩波新書
地球科学な人には必読の書だと思います.密度が濃いので一読しただけでは意味が取りきれなかった.(コメント:武井伸光
進化に興味がある人は必読。(コメント:森山和道 →森山の書評へ
わたしたちの文明は、自然の破壊、化学汚染などを進めていますが、その一方で、こういう知のフロントも拡大しつつあるのだ、ということで。(コメント:岩田豊人)
あんまり票を入れたくない気もする。僕は昔から何度か聞いていたことで読んでも感動できなかった。しかし、著者と同じ大学にいた人間がそういうのもひどい話なので1点入れておく。(コメント:田口善弘

9点 『解明される意識』 ダニエル・C・デネット著、山口泰司訳、青土社
心身問題についてとてもよく整理されていると思います。(コメント:井上清秀
科学書的なデネットの珍しい本ですが、最後の意識に関する結論はうすうす思っても口に出来ないことだったのに。(コメント:高川朋和

7点 『コンピュータ画家アーロンの誕生 芸術創造のプログラミング』 パメラ・マコーダック著、下野隆生訳 紀伊国屋書店
自律的に絵を描くコンピュータ「アーロン」と、それを開発した画家を追うドキュメント。 人の脳が「絵画」という形式でとりとめのない世界を抽象化する、その機能の不思議を鮮やかに見せてくれる。同時に、機械の弟子に技を伝えようとする、一人の芸術家の物語としても面白い。コンピュータの進歩よりも、何かを造り出さずにはいられない人間の「業」の強さを改めて感じた。元気の出る一冊。(コメント:稲田晶子)

7点 『いのちの遺伝子〜北海道大学遺伝子治療2000日〜』 中部 博 著、集英社
ふだん、あまり科学関連の本は読まないが、ヒューマン・ドキュメントとして科学を語ってある本書は、素人にも読みやすく、判りやすくてよかったと思う。遺伝子治療については、今後もっと社会からの認識も高まるだろうし、この本で取り上げられていたADA欠損症以外の目的でも行われるようになっていくだろう。そのような時流のなかで「遺伝子治療」を理解する第一歩として、相応しい本であると思う。(コメント:久保加緒里)
「科学書」の範疇には入らないかもしれませんが、良い本です。(コメント:森山和道 →森山の書評へ
「たぶん、タチバナタカシなどの、ジャーナリストはこんな本を作ることができないんだろうなー」と思って、一票。生物学と医学の本質的な違いをこの本から感じ取りました。(コメント:中村雅浩)

6点 『クローン羊ドリー』ジーナ・コラータ著、中俣真知子訳 アスキー出版社 1800円
現代の先端生命科学研究が避けて通れない研究倫理問題をジャーナリスト(?)的にわかりやすく(しかも冷静に)書いていて良かった(コメント:白楽ロックビル)
科学ドキュメントとしても読み応えあり。数多いクローン本と一味違う。(コメント:榎木英介
やはりこの本に尽きるのではないでしょうか。(コメント:高川朋和
時宜を得た出版でありながら、単なる便乗本ではないところを評価して。(コメント:森山和道 →森山の書評へ
ドリー誕生へと至ったクローニング研究の歴史を描き、生物学史の本として非常に 面白い。(コメント:彦坂 暁

6点 『無限論の教室』,野矢茂樹著,講談社現代新書1420
数学だヤだぁ,と拒否反応が出なかった本.(コメント:武井伸光
飛躍を感じさせずにいつの間にか集合論の本質に迫っていく異色の書。見かけは至って軟弱――しかしテンションの高い一冊だと思う。(コメント:K.Ogihara )
いわゆる直観主義の考え方が、小説風にとても解りやすく紹介されていて、無限の奥深さの本質を垣間見たかのような気になりました。この本自体は科学書といえるかどうか定かではありませんが、『皇帝の新しい心』の中の直観主義についての記述の理解に大変役立つ、ということで。(コメント:松元健二

5点 『DNAからみた生物の爆発的進化』 宮田隆 著、岩波書店
生物の進化の歴史には何度か、我々の予測を遙かに越えた進化が存在する。それを著者は<爆発的進化>と呼び、そのときDNAに何が起こったのかを検証している。分子系統学の最新の成果を基に、形の形成と遺伝子の進化の興味深い関係が描かれているのが選考理由です。(コメント:塚本宰弘)

 
5点 『数の悪魔』 エンツェンスベルガー 著、丘沢静也訳、晶文社
推薦の理由としては、小学生高学年から読めるようになっており、読みやすくそして、中身は結構奥深い点です。(コメント:橋本公太郎

4点 『グリンネルの研究成功マニュアル』フレデリック・グリンネル著 白楽ロックビル訳 共立出版 2900円
自分で翻訳した本を挙げるのは、フェアーじゃない気もするけど、正直いい本だと思います。バイオ研究が中心ですが、そこでの研究対象のとらえ方や研究を進める上でのポイントを科学哲学的に書いています。出版後も何度か読んでいますが、読み返すたびに本当にいい本だとしみじみ思います。原題は「科学の態度」とでも訳すべきもので、内容は本来硬い本です。訳で柔らかくしました。(コメント:白楽ロックビル)
今年は研究マニュアルものが多く出た年でしたが、群を抜いて面白かったし、役に立ちましたよ→ロックビル先生(コメント:榎木 英介)。

4点 『哺乳類の生物学1〜5(1分類,2形態,3生理,4社会,5生態)』 高槻成紀・粕谷俊雄 編,東京大学出版会
啓蒙書と呼ぶにはレベルが高いですが,いままで哺乳類の基礎を学べる書籍がなかったので,5冊あわせ技で投票します.(コメント:國分利幸)。
形態について幅広くわかりやすく記されている。もう少しボリュームが有ってもよかった。(コメント:匿名、『2 形態』に対するご投票でしたが、森山の独断でまとめました)

4点 『死の病原体プリオン』リチャード・ローズ著、桃井健司・網屋慎哉訳、草思社
個人的には一番面白かった。ただプリオン説よりはたんぱく質説が有力なんですよね。(コメント:高川朋和

4点 『絶対音感』最相葉月著、小学館
研究者以外の人が書いたサイエンスブックとして(もちろん着眼点とか立論のしかたとか綿密な取材に基づいたしっかりした記載とか面白いことは言うに及ばず)(コメント:中澤 港
絶対音感がいかなるものなのか、丁寧なインタビューを重ねていて好感が持てた。この本が絶対音感を無用なものと書いているかのような書評が目立つのが残念。(コメント:松澤大輔)

3点 『ファースト・コンタクト 地球外知性体と出会う日』 金子隆一 著 文春新書
SFファンにとって既に基礎文献の一つに数えてよいのではないか?(コメント:K.Ogihara )

3点 『スタートレック生物学序説』 スーザン&ロバート・ジェンキンス共著 平野裕二 訳 同文書院
スタートレック本であるが、生物学からのアプローチがしっかりなされていて、生物学を基礎から学ぶのにも十分使える。書店の科学の専門コーナーにあっても全く不思議でない内容。(コメント:匿名 )

2点 『写真で見る火山の自然史』,町田洋・白尾元理著,東京大学出版会
とにかくカラー写真がきれい! これにつきます.(コメント:武井伸光

2点 『20章でさぐる睡眠の不思議』,ペレツ・ラヴィー著、大平祐司訳,朝日新聞社

2点 『磯焼けを海中林へ』,谷口和也 著,裳華房(ポピュラー・サイエンス)

2点 『唯脳論』 養老孟司著 ちくま学芸文庫
89年青土社より刊行されたものが文庫化されて手に入れやすくなりました。 名著だと思います。(コメント:清水 学 )

2点 『構造主義科学論の冒険』 池田清彦著 講談社学術文庫
90年毎日新聞社より刊行されたものが文庫化されて手に入れやすくなりました。 著者のスタンスがクリアで好きです。(コメント:清水 学 )

2点 『クルーグマン教授の経済入門』,ポール・クルーグマン著,山形浩生訳,メディアワークス
経済ってなんだ? に答えてくれた本.経済学は経済を説明するものでしかない,という観点で書かれてます.(コメント:武井伸光

2点 『無脊椎動物の進化』 パット・ウィルマー著 佐藤矩行、藤原滋樹、西川輝昭訳,蒼樹書房
無脊椎動物に関する莫大なデータを整理し、様々な系統仮説を批判的に検討しなが ら、独自の多系統的系統論を主張している。その主張に賛成できるかどうかは別と しても、次々に提示されるデータと学説を読み進んでいくこと自体が、えも言われ ぬ楽しみを与えてくれる。日本語で読める動物系統学の良い教科書がない中で、こ の本が出版された意味は大きいと思う。(コメント:彦坂 暁

2点 『生命の宝庫・熱帯雨林』井上民二 NHK出版
亡くなった井上先生の生き方みたいなものが伝わってきます。研究者が、何を求めているのか、小さな観察の積み重ねから何を探していくのかが、伝わってくるのです。やたら、「保全」とか「多様性」という言葉だけが先行して、研究自体が内容を失っている昨今ですからね。(コメント:中村雅浩)
この人を僕が主催した研究会に招いたのだが、向こうが多忙で来てくれなかった。まあ、そのうちに、と思っているうちに亡くなられてしまった。せめて、この研究は完成してから亡くなられて欲しかった。不謹慎な言い方ですが。(コメント:田口善弘

2点 『カブトガニからのメッセージ 』惣路紀通著、文研出版
小学4年生以上を対象とした科学読み物。カブトガニの進化史、体構造、雌雄の違いなどが丁寧に説明されていて、良い啓蒙書とはこういうものだと思いました。(コメント:大田武志)

2点 『哺乳類型爬虫類』 金子隆一 著,朝日新聞社(朝日選書609)
マニア受けのつくり(書き方)なので入門書としてはやや不適ですが,文献リストも充実していて,個人的には非常に面白かったので.(コメント:國分利幸)。

2点 『巨大ロボットの誕生』 鹿野 司、秀和システム
なぜかこの人はメジャーにならない。大変優れているのと思うのだが。地味過ぎるのだろうか。こういう人がメジャーにならないようじゃあ、日本の科学啓蒙にも未来無いな。気づくと、プロの研究者じゃない人の本はこれしか選んでいない。頑張れ、サイエンスライター!(コメント:田口善弘

1点 『肥満遺伝子』蒲原聖可著、講談社ブルーバックス
自分と同じ年の研究者が新しいテーマを書ききっているから(コメント:中澤 港

1点 『新「人口論」生態学的アプローチ』ジョエル・E・コーエン著、重定南奈子,瀬野裕美,高須夫悟訳、農文協
自分が書きたいような内容の面白い本だし,こんなに長い本を迅速に訳出した奈良女の数理生物の方々に敬意を表して(コメント:中澤 港

1点 『味と香りの話』栗原堅三著、岩波新書
新しい文献まであたってあるし,広範で深い記載に感心したので(コメント:中澤 港

1点 『よくわかる環境ホルモン学』シーア・コルボーン,養老孟司,高杉暹,田辺信介,井口泰泉,堀口敏宏,森千里,香山不二雄,椎葉茂樹,戸高恵美子(注:高は正しくは旧字)著、環境新聞社
環境ホルモンがらみで何冊出たか数えるのも馬鹿らしくなるほどだけれど,その中ではこれがナンバーワンと思うので(コメント:中澤 港

1点 『The Biotech Century』 Jeremy Rifkin著 Tarcher/Putnam社 24.95ドル
現代の先端生命科学研究の動きが社会にどう影響してくるのかを社会の側から見ていて、こういう書き手が(そして読み手も)日本にもっとたくさんいたらいいのに、と思いました(コメント:白楽ロックビル)。

1点 『クジラ・イルカ大百科』 水口博也 著,TBSブリタニカ
とくにイラストが労作.(コメント:國分利幸)。

1点 『科学は常識破りが面白い』 村上和雄 著,光文社
今年は研究者の伝記ものが多く出た年だと思いますが、その中から一冊選ぶとするとこれ。自慢話かかっていますが、研究の楽しさが分かる本(コメント:榎木英介)。

1点 『生きて死ぬ私』 茂木健一郎 著,徳間書店
クオリアの茂木先生の本。なんだかほっとするような読後感がありました。(コメント:榎木 英介

1点 『立花隆 100億年の旅』 立花隆 著,朝日新聞社
科学インタビューものもいくつか出ましたが、やはり現場に出向いて取材している立花氏の本がもっとも迫力がありました。(コメント:榎木英介

1点 『サラブレッドはゴール板を知っているか』 楠瀬良 著,平凡社
本書に見る理論と経験と信念の激突はレース以上にスリリングだ。一般科学啓蒙書と呼べるかどうか微妙ではあるが、敢えて票を投じたい。(コメント:K.Ogihara )

1点 『科学哲学者柏木達彦の秋物語』 冨田恭彦著 ナカニシヤ出版
今年私は一般科学書の面白いものを見つけることが、あまりできませんでした。 科学哲学系で分かりやすく面白いものを一冊投票します。(コメント:清水 学 )

1点 『失われた化石記録 光合成の謎を解く』 J・ウイリアム・ショップ 著 阿部勝巳 訳 松井孝典 監修 講談社現代新書

1点 『せぼねの不思議』下出真法著、講談社

1点 『哺乳動物進化論』 今泉吉典著、Newton Press
クラインと進化論についての本、豊富なカラー図版をつかっていて面白い。(コメント:匿名)

1点 『古生物の科学1 古生物の総説・分類 』 速水格,森啓 編 朝倉書店
古生物学の歴史から各分類群の概説まで充実している一冊。教科書ですが、古生物学の最新の総合シリーズで続刊が待ちどおしい(コメント:匿名)

1点 『心と脳の科学』 苧阪直行 著 岩波ジュニア新書、700円
良書です。(コメント:森山和道 →森山の書評へ

1点 『20章でさぐる睡眠の不思議』 ペレツ・ラヴィー 著 大平裕司訳 朝日新聞社、1600円
良書です。(コメント:森山和道 →森山の書評へ

1点 『ことばの進化論』 D・ビッカートン 著 筧壽雄監訳 勁草書房

1点 『男の凶暴性はどこからきたか』 リチャード・ランカム&ディル・ピーターソン 著 三田出版会

1点 『自己と感情:文化心理学による問いかけ』 北山忍 著 共立出版株式会社(認知科学モノグラフ9)

1点 『ことばの起源 猿の毛づくろい、人のゴシップ』 ロビン・ダンバー 著 松浦俊輔+服部清美訳 青土社

1点 『無脊椎動物の驚異』リチャード・コニフ著 長野敬、赤松眞紀訳 青土社
気軽に楽しく読める本。(コメント:彦坂 暁

1点 『DNAだけで生命は解けない 〜「場」の生命論〜』ブライアン・グッドウイン著 中村運訳 シュプリンガー・フェアラーク東京
生命科学、特に生物の「形態」の問題について、分子還元論ではないもう一つのア プローチを示している。訳文が読みづらいのと日本語タイトルのセンスが悪いのが 難点だが、読む価値あり(原著タイトルは"HOW THE LEOPARD CHANGED ITS SPOTS") 。(コメント:彦坂 暁

1点 『サルかヒトかと問われても』西江雅之 読売新聞社
これは、西江さんの自伝です。文化人類学だから、科学書じゃないかー。でも、昨今の「電波少年」で、海外に行っているお笑いの人達の話より面白かったなー。なんだか、今の若い研究者に感じられない気迫を感じました。(コメント:中村雅浩)

1点 『20世紀は人間を幸福にしたか』柳田邦男 講談社
これも、科学書とは言い難いのですが、科学技術の時代を振り返る上で、「幸福」という言葉は、大切な判断基準になるんじゃないかなー。日本という国の科学技術の行く末について考えさせられた一冊でした。(コメント:中村雅浩)

1点 『遺伝子発見伝』R.J.デュボス 小学館
「エイブリー」という人は、生物学の歴史の中で面白い位置を占めていると思います。遺伝子イコールDNAという常識が、つい最近まで、非常識だったこともよくわかるのでは。(コメント:中村雅浩)

1点 『ソロモンの指輪』 コンラート・ローレンツ、早川文庫
文庫に降りたからと言って投票するのはルール違反だとは思う。しかし、これがベストに入ってしまう状況が昨今の科学書出版のレベルにはある気がする。御勘弁を。(コメント:田口善弘

1点 『惑星へ』 カール・セーガン、朝日文庫
文庫に降りたからと言って投票するのはルール違反だとは思う。しかし、これがベストに入ってしまう状況が昨今の科学書出版のレベルにはある気がする。御勘弁を。(コメント:田口善弘


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