最初依頼されたとき、何を書こうか迷った。僕が書かせてもらったコーナーは、基本的に構成作家や漫画家さん、監督など、実際のアニメ作りに携わっている人たちが書くところで、業界人じゃないのは僕だけだった。で、僕自身は最近のアニメは(深夜にオンエアされる一部を除いて)ほとんど見てないわけで、アニメの話は書けない。そして、編集部も僕にそういうのを求めて依頼してきたわけではない。以前にも科学ネタのコラム連載はあったんだそうな。だから気にせず科学ネタを書いて欲しいと。それは分かっているのだが、かといってアニメ雑誌でアニメに関係ない話をしていいのか、とかなんとか、僕なりに色々と悩んだのだ。
だが結局、開き直ることにした。どうしてかというと、自分自身が子供の頃読んで記憶に残った記事は、往々にして、その雑誌が主に扱っていたテーマとは全く違う話だったりしていたことを思い出したからだ。そこで自分なりに、「なんだか良く分からないけど、妙に心に引っかかる記事」みたいなものを目指したつもり。どこかに引っかかってくれることを期待して。少なくとも僕は、そういう記事に大なり小なり影響を受けて今日に至っている。昔読んだ、ちょっとした記事が妙に心に残る、そんな経験は誰しもあるのではなかろうか。心に引っかかるかどうかは、読み手の状況次第だ。ともかく、時に文章は、書き手の意図を超えて読み手に影響を与えることがある。それを期待することにした。
難しめの言葉も敢えて使った。僕はそうやって知らない言葉に出会い、その言葉の意味を覚えていったから。
そうは言ってもアニメ雑誌なので、最初は「下ネタ+ダジャレ系」のタイトルと内容でいこうと思っていた。でも途中からあっさりその方向はなくなってしまい、最後のほうの話はちょっと難しく書きすぎたと少し反省している(なにせ周りの人たちは普通の日記みたいなことを書いてるのだ。彼らは有名人なので、それでも十分にコンテンツになるのである)。
途中、編集部から聞かされた評判は悪くなかったようだが、それははじめのころに原稿に対するもの。後半はどうだったのだろう。実際の読者−−中学生たちらしい−−が、どんな印象を受けていたのか、よく分からないのが残念だ。ま、数万人の読者のうち、数人が引っかかってくれればそれで十分だと私は思っている。