実は、ちょっと悪口を書こうかと思っていた。表紙にどでかく「立花隆」の文字。なんとなく、嫌にならない?
でも、読むとやっぱり無茶苦茶面白い。連載中にも読んでたけど、それでもまた面白かった。やっぱり、あるテーマの連載を、こうして一冊にまとめる、というのは大切なんだな。今更だが、この人が研究者からも信頼されている理由も良く分かる。とにかく面白い。
日本の研究者は、自分の研究を自分で本に著したりしてくれないので、どこで誰が何を研究しているのかもよく分からない。そういう面を補ってくれる面でもこういう本の存在は有り難い。
そういうわけで、脳の研究に興味のある人はとにかく買い。
さて。ちょっと苦言を。立花氏は「本は目次や索引をちゃんとつけるべきだ」と言ってたような気がしたが、この本には索引はまったくなく、目次も全くのおざなり。これは困る。もっとしっかりした目次を付けて欲しい。
また、脳に興味がある人はこの本を必読、と書いたが、この本を読むにはある程度の知識が必要である。入門者向きではない。通俗的な科学書の中では難しい部類に入るだろう。この本は、そういう意味では不親切な本である。自ずから読者を制限している。そういう<ねらい>で書かれているのなら仕方ないのだが、もし「これで誰にでも脳研究は面白いと思ってもらえるだろう」と考えているのなら、それは間違いだと思う。
本書の内容には直接関係ないが、ちょっと思う所があったので続ける。
科学離れにも関わりのあることである。
研究者は「自分の研究は面白い」と考えている。そして何となく、「自分の研究は他人も面白がってくれるだろう」と考えている。それは勘違いである。「ほとんどの人は自分の研究など一顧だにしない」と考えた方が妥当だろう。
脳の研究も例外ではない。例えば、「養老孟司って誰か知ってる?」と高校生をランダムに抽出して聞いてみると良い。ほとんどの高校生は知らないだろう。本欄を読んでくれている人たちはそんなことはないだろうが。
しかし、これが現実、そして科学の(将来を担う人たちの)現状なのだ。
科学が、研究が面白いのなら、それのどこがどう面白いのか、きちんと「分かりやすく」説明し、演出しなければならない。それをせず、一部の「研究者」あるいは「科学好き」だけの為の本を出し続けていたら、逆に科学離れは進んでしまうだろう。
まあ、本によって役割が違うのは当然なのだが…。
こう書いた後だとオマケみたいだけど、本書は値段なりの価値は十分ある。
動物の植物との違いは「動く」という事だが、植物もまた「動く」。植物の運動は、特殊な植物だけのものではなく、多くの植物に共通するものである。そして植物の運動は化学的信号系など様々な説明が出されているものの、多くは例えば応答・運動のスピードなどの説明が困難で、まだまだ謎が多い。だからこそ面白いわけだ。
本書は、つまるところ「植物とは何か」と問いかけ、我々の持つ常識的な植物の姿を覆す。本書読了後、あなたの植物観は変わるだろう。
植物に神経はないが、電気インパルスが存在する。つまり電気信号が植物の中を駆けめぐって、刺激を伝達し、作動体を動かしているのだ。植物ホルモンだけが情報を伝達しているわけではない。では、植物はどのようにして活動電位を引き起こしているのか?
例えばハエジゴクの場合、感覚毛の根本にはセンサー細胞がある。その中の小胞体が渦巻き状をしており、細胞への圧力に敏感に反応する。それによって細胞膜上のイオンポンプが開閉する(重力に応答して根の先端を「曲げる」為にオーキシンを放出させる仕組みと同じ)。本書によると、重要なのはカリウムとカルシウムである。
詳細は本書を参照して頂くとして、面白いのは、動物でも同じようなシステムを採用している、という事である。植物の興奮性は動物の神経と多くの共通点を持っているという。
単細胞生物クラミドモナスには眼点があり、光に反応する。クラミドモナスは光驚動性と光走性を持つ。そして、クラミドモナスの光受容体はロドプシンなのだ。動物の視覚でロドプシンが重要な役割を果たしていることは言うまでもない。クラミドモナスの場合、ロドプシンが光を受けると活動電位が発生し、鞭毛の連打の形式を変え、運動方向を変える。これは1000分の1秒で誘発される反応である。「一つのセンサーが光の変化を拾い上げ、電気信号を起こし、動きの方向を変える」わけで、これは「動物の神経-筋肉系と」似ている。
面白いのが、細胞内のオルガネラの運動。葉緑体は、光が弱い時には細胞内で光を受けやすいように「横に」広がる。好条件の時は球状になる。光が強すぎる時にはあまり受けないように「縦に」なる(それによって植物の葉は日陰ではより深い緑色に、日光の元ではより明るい緑色になる)。これらは、光受容体の信号によって「光を見て」、オルガネラの位置が制御されている事を示す。
ではオルガネラはどのようにして支持されるのか。また細胞中の原形質流動の仕組みは?これにはアクチン-ミオシン系を植物も使っている。動物と似ている。植物の「筋肉」と動物の筋肉は、起源を一にするのだろう。実際、全ての植物は機能的に筋肉と神経に相当するものを持っていて、それらは動物のものと起源は同一であるらしい。
今日の研究の示唆する所に寄れば、アクチン-ミオシン、イオンによる電気信号、ロドプシンなどの刺激受容体は、全ての動物・植物、そして細菌などに見られる。これらはおそらく、それぞれ独立して獲得されたものではなく、植物と動物の共通の祖先からもたらされたものであるに違いない。
というか、それらはそれだけうまく働いたので、原初の祖先からそのまま保持されてきたのだろう。「うまくいったものはそのまま使う」、進化の法則が思っていた以上に強固なものである事に驚く。
そういう目で見れば、植物/動物は驚くほど近い。原初の痕跡を両者とも引きずっている。動物細胞に影響を及ぼす化学物質──麻酔剤、興奮剤、鎮痛剤、各種ホルモンなど──が植物細胞にも同じように働く(もちろんその逆も言える。だから、植物から抽出された薬物が効く)ことも印象深い。植物も動物も元をただせば単細胞である。かねてから言われているように、植物と動物、あるいは細菌、菌類などと分類するのは得策ではないのだろう。
このように、本書では一貫して植物と動物の「差異よりも類似点」に着眼して論が展開する。植物は、考えようによってはある種の「動物」なのだ。他にも教科書にはあまり出ていない植物の話が満載されており大変面白い。植物でも動物でもなく、「生物」に興味がある人全てにお勧め。
実験方法、植物の育て方、用語集、学会と種商の連絡先、動く植物の種々の数値表、分類、膨大な量の参考文献リスト、日本語・欧文双方の索引付き。
なお、本書の中には多くの日本人研究者の成果が引用されている。著者はBBCのプロデューサーで、植物学、農学、化学を大学で修めた、とある。啓蒙と研究双方のプロというわけだ。
本書は、ブナ林全体の姿(分布、樹種、構造)、ブナの見つけ方から始まり、ブナの一生、昆虫(ガ他)とブナ、そして広い意味での森全体の話、という構成になっている。親しみやすい文体、丁寧な解説で読みやすい。
カラー口絵4ページ付き。図表多数。
この本、マルチメディアにして欲しい。まずそう思った。本書は非常に丁寧だが、文章で色々言われてもやっぱり「分からない」。ここで動画が欲しい、音声が欲しい、カラー写真にズームだ、と随所で思わされた。
やはり森は色と音と触覚(湿気というか、風というか…)の世界だ、と逆に実感。実地体験の素晴らしさよ。
虫兎鼠などに攻撃されつつも育っていくブナ。ブナが強酸性や強塩基性の土壌では育てない、という話は地質に興味のある私には大変面白かった。蛇紋岩や石灰岩、溶岩台地などではブナは生えないのである。
平地林である、ヨーロッパのブナ林との比較も面白い。ブナの葉の虫こぶの検索表は眺めるだけでも結構楽しい。
こういったトピックスを追いつつ読了。
著者が願望として出している、山林管理を応用したゴルフ場運営(貴重な野草や昆虫の「聖域」とする)は正直、理想論であって現実的ではないと思うが、もし実現できればな、と思わずにはいられなかった。
「無関係だと思っていたものが、実は同じものとわかること」、これが物理の面白さである。
一見複雑に見えるこの世界を動かしているルールが、実は極めて単純なものであること、それが理解できた時の面白さ。「隠れた実在があらわになることで、それまでばらばらだったアイディアが結びつき、多くのアイディアから少数のアイディアが生まれる」こともある。
あまりの明解さに「あっ……」と思わず驚き、言葉を失う瞬間。
この辺が物理の面白さだと思うのだが、どうだろう。
著者は、様々な最前線の物理学がどのような方法で考え出されていったのか、物理学の方法──「使える法則にはとことんこだわる事の有効性」を使って、古典物理から丹念に積み上げていくことで説く。
ニュートンの法則から導き出されるダークマターの必要性。また、既存の理論をとことん重視して相対性理論を誕生させたアインシュタイン。そして「私の方程式は私より賢かった」と語ったディラック。視覚的に、本当に明解に物理を解いたファインマン。ガリレオ、マックスウェル、ボーア、パウリ…。
「使える法則はとことん使う」ことの他にもう一つ、著者が説く物理の道具は、モデルという考え方。
「残念なことにわれわれは物事を厳密に理解しようとするあまり、つい枝葉末節にこだわってしまう」。そこで「本筋に関係のないことは全部切り捨てる」。これがモデルである。モデルを作って世界を簡単にとらえるのだ。
こちらも、著者はある例を出す。
「まず、牛を球と仮定します…」。
こんな教え方をしてくれたら、物理嫌いも少しは減るかな。
本書は、ピルトダウン人が如何にして発見され、発表され、審議され、復元され、そしてどのようにして正体が白日の下に晒されたかのドキュメントである。さらに、この人類学史上最大の詐欺を創り出したのは誰で、どんな動機が犯人にはあったのか推理する。
ピルトダウン人の真犯人は全くの薮の中で、コナン・ドイルを真犯人とする説があるくらいだが、訳者解説によるとほぼこれで決定らしい。少なくとも、本書の論を完全にひっくり返す事はできそうもないという。
本書は全8章からなり、私の見た所、4部構成となっている
(訳者は3部と言い、著者は2部構成と言っているが)。
最も面白いのは第3部である。他の人類化石との不整合性、どうしても解けない矛盾、不合理、徐々にわき上がってくる不信感。そして詳細な再検討の結果、続々と露になる偽化石。これも偽物、あれも偽物…。
そして遂に、全てがまやかしであったことが明らかになる…。
第2部のドキュメントも非常に良く書けており、まるで再現ドラマのようだが、なんといってもこの面白さには勝てない。
なお、本書のもう一つの中核、真犯人だが、今までの説とは全く違う人物だという。著者らは一つ一つ可能性を消して行く事で、同僚達を長きに渡って騙し続けられる技量を持った人類学者であると同時に、地質学者でもあり、解剖学者でもあり、歯科学者でもあり、化学者でもあったと思われる人物に迫る。
大部の本だが、非常に読みやすい文章。また、科学的な記載を淡々と続けることでサスペンスフルな緊迫感を作り出すことに成功している。ピルトダウン事件に興味がある人は買い。
文章は古いが、のると意外と読みやすい。DNAの2重螺旋がまだ仮説だったころから、分子生物学が発展していく様。昔の日本の生物学の状況が書かれていて、そういう面では興味深い。生物物理学会などが成立するまでには、かなりの苦労があったんだろう。
記載学の範囲に留まっていた生物学。それが、仕組みや機能がどんどん分かってきた50年。それらの過程を追いつつ、そんな事を考えながら読了。
面白かったトピックスをいくつか挙げる。
野生イネは熱帯アメリカ(アマゾン)にも分布している。水深が10m以上も増減するアマゾン河で野生イネはどのような生き方をしているか。
もっとも減水して河岸の地表面が現れたころ発芽し、増水に応じて成長するが、途中で茎が折れる。そして浮き草として成長するのだという。やがて寄り集まってマット状になり、浮島になるそうだ。
一方、浮き草となる種とは縁が遠い4倍体の野生イネも生息していて、そちらの方は丈夫な茎を持って根を川底にしっかりと張り、10m以上にもなるという。
どちらも、アマゾン河に適応した野生イネの姿である。
ホテイアオイは富栄養化した環境(家庭排水などで汚れた池など)では旺盛な繁殖力を持ち、異常繁茂して水質悪化した池を覆い尽くすことで有名だ。駆除に金がかかるので「100万$の雑草」と言われているらしい。ホテイアオイの増殖の理由は汚水の増加にあるのだが。
さて、このホテイアオイ、旺盛な繁殖の過程で、水中の窒素やリンなどの栄養塩を吸収、固定する。その時、水中のカドミウムや亜鉛などの金属も吸着する。そのため、水質悪化した池に増殖したホテイアオイを回収すれば、水質浄化できるのである。この性質を積極的に利用するならば、ホテイアオイを栽培している池に生活排水などを導けばホテイアオイの増殖と共に水は浄化されることになる。
読んでいると「風の谷のナウシカ」の<腐海>を思い出してしまった。
著者は「自分は自分の生き方をしているに過ぎないのに人間の身勝手で悪魔にされたり救世主にされたり、さぞ迷惑なことであろう」と記している。
同感。
他にも地下茎で繋がっているイタドリのパッチ、ハチと共生関係にあるイチジク、トウヒレンなど高山植物達、エイリアンと間違われた粘菌、1個体で100トン、15ヘクタールもの面積で菌糸を広げるナラタケなどなどの話が掲載されている。
生命の不思議に対する、科学エッセイ集である。各エッセイは数ページからなる短いもので、さらさらと読める。各エッセイ末には参考文献も挙げられている。手軽な文庫本だし、買って損はないだろう。
ここでは、各エッセイのいくつかに対して思ったことを書くに留める。エッセイに対するエッセイである。
「光をつかまえる」
光の元で40億年暮らしてきた生物が造り上げた、光に応答するしくみ。クロロフィル、ロドプシン、フィトクロム。誰か「光と生物」と題する統一的な内容の本を書いてくれないものか。
「コロの死」
細胞の死、器官の死、個体の死。死とはなんだろうか。著者も分からぬ、という。コロとは著者の猫の名前だが、私が昔飼っていた犬も、コロといった。私が小学校1年の時から9年間、生まれたばかりの子犬の時から飼っていたが、中3の時、病死した。
「爪はなぜあるか」
「──の為に」特定の環境が存在するわけではない。ある環境が存在したからこそ「──」が現れたのだが、我々はその事を忘れがちだ。
「抄読会」
論文は自分自身で読め、と主張されている。本も同じ。書評を読んで読んだ気になってはいけない。本当に面白い情報を逃すことになる。
「生命の時間と空間」
生命の時間的、空間的枠組みを頭に入れられるような教育が必要だと語る。その通りだが、実際にはなかなか難しいらしい。生物をやっている人は地学を知らず、地学をやっている人は生物を知らない。分子をやっている人は生物個体・生態を知らない。逆もしかり。今の教育を根本的に変えないと、この現状は変わりそうにない。
この書評ページなどが、少しでも何かに役立てれば幸い。
余談:
科学エッセイと言えば、寺田寅彦「柿の種」が岩波から最近出た。未読の方にはお薦めしておく。感動をごく短い文章に凝縮する技能は余人に真似できないものだ。
この本は、実際にマリファナを医療目的に使用している人々の証言を多数収録している。証言者の中には古生物学者のスティーブン・J・グールド(「パンダの親指」「ワンダフル・ライフ」他の著者)も含まれる。彼らは皆、マリファナを使用することで苦痛から、あるいは失明から、激烈な皮膚炎から、癲癇から、逃れることができたという。
そして口を揃えて、マリファナだけが唯一の薬であるのに「医薬品として」正当にマリファナを手に入れられないのはおかしい、と主張する。証言者のほとんどは非合法にしかマリファナを入手できず(ごく一部の人には新薬実験として処方されている)、暗黒街・司法双方への危険に身をさらし、大金をつぎ込んでマリファナを摂取し続けている。
マリファナが、タバコやアルコールよりも害が少ない、というのは昔から多くの人が語っている。おそらくそれは本当なのだろう。そしてどうやら無害な鎮痛薬として作用するのも本当らしい(例えそうでなくても、いくらかの人たちには間違いなく効いている)。ある種の病には、現時点で唯一の薬であることも。そして、その事を政府が知っていることも。
本書の内容で「ちょっと待った」と言いたくなったのは一カ所だけである。それはマリファナをアルコールやニコチンのように解禁しろ、という点だ。
この主張は納得できない。私には、その下にある主張、「タバコやアルコールは人々の生活を向上する」という考えは、大変一面的なものに思える。
マリファナは、モルヒネのように管理された医薬品に指定すべきだというのなら分かる。アルコールこそ一種の麻薬なんだから(実際、嗜好品でも興奮剤でもない)、これ以上麻薬(向精神薬)を「嗜好品」として提供することもないと思う。医薬品ならば医薬品で良いだろう。
なお、訳者あとがきを先に読まないように。本書の内容を誤解することになる。帯の文句は内容に合ってるのにね。訳者あとがきには、できれば本書の米国での反響とか、そういったものを掲載して欲しかった。
しかし、ウェブは凄いね。今回、改めてそう思った。
大絶滅──生物はなぜ絶滅するのか?しかも一斉に?それは一体どうしてなのか?何がその種を死に至らしめる理由であったのか、あるいはなぜ生き残ったのか?その差は偶然なのか、それとも必然なのか?
この問いは生物、あるいは進化を考える上で本質的な問いであるだけに、多くの人の興味関心を引いてきたが、逆に単なる興味本位に留まっている問いでもある。
でも、科学者(特に古生物学や進化学)って、本当はこういう事がやりたくて科学しはじめた人が多いんだよね。そろそろ初心に返って、こういう問いを本気で考え始めても良いのでは?
さて、大絶滅はなぜ起こるのか?結論から言えば、まだ明確な理由は分かっていない。もちろん、様々なパターンは存在する──例えば、海水準の低下など──が、どのファクターがどのファクターに因果関係を持っているかが明確ではなく、共通のパターンを見いだす事は今なんんで、断定は到底できない。
ラウプは、大絶滅の理由として、結局「いん石衝突」を推す。現在、この説は旗色が悪くなりつつあるが。
私自身は、元々が地学系であるためか、地球内部の原因による説、大陸移動の速度変化などに伴う、海水準変動と気候変動に原因を求める方がやはり整合的だと思う。無論、いん石がぶつかったりした事もあるだろうが、ラウプ自身も語るように、それだけではないだろう。
そして、大量絶滅といっても、絶滅しない奴もいる。似たような種で、似たような環境に生息していたのに、どうしてあいつだけ絶滅して、こっちは絶滅しないのか?という問いとなると、まさに「運が悪かった」としか言い様のないものもある。
そして、絶滅によって空いたニッチを、他の種が乗り出して適応放散する。「絶滅が進化を促している」とも言えるかもしれない。
生物進化の不思議さ。その「進化の過程」では実際には何が起こっているのだろうか。
現在、「全地球史解読」というプロジェクトが進行中だ。プルームテクトニクスを軸として、地球全体(地球外、地球表面の無機的、有機的環境から、地球内部まで全て含めて)の進化を考え直そうというプロジェクトだ。最近は生物畑の研究者も流入し、ますます活発な議論が行われつつあると聞く。そういった計画の中から、新しい見方が発見されると面白いと思う。
大昔の妖術師の時代から、シュメール、バビロニア、古代インド、ギリシャ、ローマなどを経て、暗黒の中世、近代、現代に至る。古今東西の面白いエピソードがふんだんに盛り込まれているので、飽きることはない。
古代の人々の知恵に驚き、近代の医術発達の物語に興奮し、現代の脳、精神薬理などの考えに触れ、考え込む。精神と肉体、全人的な考え方の現代医学。
科学とはまた別だが、科学と深く関わりながら前進する医学の行く末、科学と医学の関わりを考える為の資料を、楽しく読みたい方にお薦め。
もちろん一般でいう科学啓蒙書でもなんでもないのだが、ボクはこういう本は好きなんで紹介。 唐沢なをき氏が唐沢俊一氏と共著でGainerに連載していた「男のカラダ相談室」からのものだそうな。全部で36篇収録されている。ほとんどカラーで、暇つぶし・気分転換・雑学仕入れにはぴったり。
毛とか、いびきとか、ほくろとか、虫歯とか、DHAとか、健康食とか、凍死とか、双子とか、性器だとか、(そしてもちろん)セックスだとか、失恋したらヤキイモを食えだとかについてのマンガエッセイ。
人間の体って怪しくって楽しいね、っていう話。半分くらい科学入ってるので、ここで紹介しても別におかしくはないのだ。楽しめる。
私は、書店で立ち読みしていて思わず「くっくっく」とやってしまったので、「これはまずい」と思い購入した次第(あれほど、はたから見ていて気味の悪いものはないからね)。
外科手術についての項なんか、つい最近本を読んだばかりのせいか、マンガというメディアの強さのせいか、結構面白い。やっぱ絵は強いね。
世の中にはこういう本を馬鹿にする人がいますが、こういう本の方が一般への影響力はあるのだよ。
で、なぜこの酒の科学なんて本を読んだかというと、やはり微生物の活動の結果がダイレクトに分かるものだから。その勉強のため。古今東西の酒全般、ビール・日本酒・焼酎・ワイン・ウィスキー・中国の酒について触れられている。
あんまり、読んでも面白くない。やっぱり工場見学の方がいいや。
ウイスキーの熟成した酒の中の水は、H2Oという単純な形ではなく、(H2O)nといった形、つまり水分子がいくつも繋がった形をしているという。これが酒の熟成に深く関わっているらしい。ふーむ。水ってやっぱ変わってるな〜。
また「醸す(かもす)」という言葉は「噛む(かむ)」あるいは「黴す(かびす)」から来ているらしい。本当の語源はどちらかな?
ところで。
飲んでからんで来るのもやめて欲しいが、からんだ後に「酒の席だから」とヌカすのもやめて欲しい。蹴るぞ。実際、蹴ってるけど。
いくつか、トピックスを拾う。
着地接地時の速度は260〜300km/h。そのスピードで接地するとき、もっとも負荷が罹る部分の一つがタイヤである。一本に30t以上の衝撃が加わる時もあるという。しかも、それは0からいきなりかかるのである。その時の摩擦熱は400度近くに達するそうだ。
大型ジェット機の中に張り巡らされた電線は総延長210kmにもなり、これは東京-静岡間の距離に相当する。
大型ジェット機の場合、機体の塗料の重さも馬鹿にならない。150kgほどになる。この増加で、年間でドラム缶200本分の燃料を消費する。
あのクジラやミッキーは、意外と重たいわけだ。
「恐竜学最前線」や「科学朝日」にて著者らが書いていた記事を、改めて書き直して集めたもの、という印象。彼らの書いていた記事を追いかけていた人には、それほど目新しい内容はないだろう。それ以外の人たちには、恐竜関係の情報がコンパクトにまとまった、便利な一冊だと思う。
NHK「生命」への批判なども掲載されている。著者らは、日本の恐竜ファンはメディアに踊るデタラメ情報に寛容すぎる、と語る。私もそう思わなくもない。
この件については、1恐竜ファンとしては色々と思うこともあるのだが。。。。
本書は、恐竜絶滅後、新生代の哺乳類の進化発展についての記述が主。特に後半の内容はクジラの進化などが語られるのだが、全体的にやや羅列的で、ちょっと分かりにくい。構成にひと工夫欲しかった。図版も少ない。特に復元図が不足していると思う。化石の写真もない。もう少し初心者に配慮が欲しかった、というのが正直な所。
一番興味深かったのは「あとがき」だったりする。
この本は、その大会中に催された「ミニ講演会」の内容をまとめたもの。一つ一つは2、3ページ程度からなるごく短いものだが、面白い。
一口に解剖学と言っても色々な内容を含む。本書も、いわゆる解剖の話から、生理、発生、脳や神経、歯、免疫、細胞などなど多岐に渡る。それぞれの内容は一般向けの講演だから(中には到底そうは思えないものもあるが)、概ね分かりやすい。
解剖学の本を読んでいると、解剖学者の方々の博識にいつも驚かされる。それだけ、解剖学という学問は奥が深い、という事でもあろうし、広い知識が必要とされるのだろう。
同時に、これまたいつも感じる事なのだが「構造が分かれば機能が分かる」というか、思わず「へえ〜!」と思わされてしまう。体って、実にうまくできているし、その中には進化の歴史が刻みこまれているんだよね。
いくつかトピックスを抜き出そうと思ったのだが、いっぱいあるので止めた。
こういう本は、どこの大学の先生が何を研究しているかも分かるので、その方面の知識が必要な人にも役立つだろう。
でも実は、放送時間が私にとっては中途半端で、あの番組あんまり見てなかったりする。
かえってフジテレビ系で日曜朝5時だか6時だかからやってる(東海テレビ制作だったっけ?)、「テレビ博物館」の方なら(寝る前に)見られるんだけど。
本書は「宇宙を手に取る」ことを目標とした、とっつきやすい宇宙の本。まず無限小、無限大のさまざまなスケールを大きくざくっと理解させるためにまるまる2章分を使っている。その後、古代からの宇宙観の変遷、望遠鏡をはじめとした様々な観測手段の発展を経て、星々までの距離の測り方、宇宙年齢の話などを経て、ビッグバン、さらには銀河団の大規模構造やインフレーションまでをざくっと解説する。「図説」とあるように、図や写真も大量に入っている。かなりゆっくりと現代の宇宙論の世界へ入っていくので、入門用としてはかなりよくできた本だと言える。この本なら中学生でも読めるだろう。
著者は韓国宇宙環境科学研究所所長だそうである。天文関連の研究者には一風変わったクセのある人が多いような気がするのだが、この著者もまたその一人と見た。誉め言葉ですよ、念のため。