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2001/08/09 Vol.154
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【中鉢淳(なかばち・あつし)@理化学研究所 微生物学研究室 基礎科学特別研究員】

 研究:アブラムシの菌細胞内共生系
 推薦図書:『昆虫を操るバクテリア』平凡社
       『アブラムシの生物学』東京大学出版会
    そのほか

○アブラムシの菌細胞内の共生系について研究しておられる、中鉢さんにお話を伺います。
 アブラムシ(アリマキ)は身近な虫ですが、その体内には驚嘆すべき世界が広がっています。(編集部)



…前号から続く (第6回)

[10: 害虫としてのアブラムシとブフネラの関係]

○普通の人にとってアブラムシっていうと、やっぱり、害虫っていうイメージが強いと思うんです。

■でしょうね。

○アブラムシが害虫なのは、汁をいっぱい吸うからだと思ってましたが、そうではないんですね。

■そうですね。もちろん汁を吸うのも問題なんですが、アブラムシが汁を吸うときにうつす植物ウイルスのほうが問題なんです。

○そのウイルスの増殖にも、ブフネラが関わっているかもしれない?

■ええ。
 なぜアブラムシが害虫かというと、とにかく爆発的に数を増やすということがまず一つありますよね。爆発的に数を増やしながら植物ウイルスを媒介する。なんで爆発的に数を増やせるかというと、ブフネラとの共生系を持っているからだし、ウイルスを媒介するのにブフネラが作っているタンパクが効果的に働いているらしい。だからアブラムシを農業害虫たらしめているのはこの共生系であると言えるかもしれません(笑)。

○なんでアブラムシに、そんなにいろいろなものが住んでいるんですか。それとも、普通の生き物でも大体こんなに住んでるものなんですか。ウイルスだとか共生バクテリアだとか、ちっぽけな虫なのに…。

■うん、でも昆虫の場合には、一割程度は細胞内共生系を持っていますからね。

○ああ、ゴキブリとかにもいるんでしたっけ。

■そうですね。

○それはなぜなんですか。一割程度というのは、昆虫に特異的なんですか。

■うーん、そうですねえ……。
 たとえば海産無脊椎動物なんかだと藻類と共生してるのはごく一般的なんですが、陸上にいるものでバクテリアであるとか他の真核性の単細胞生物とこれだけの緊密な関係を持っているのは昆虫だけですね。

○ふーん。不思議ですねえ……。

■ゴキブリが出たついでに、こんな話もあります。
 ゴキブリと近縁な昆虫であるシロアリの場合はですね、オーストラリアにいる一種類だけが細胞内共生バクテリアを持っていて、それに関してはゴキブリの共生バクテリアと同一起源であると言われています。ゴキブリとシロアリの共通祖先に細胞内共生系が存在したのに、他のシロアリは、細胞内共生バクテリアを失ってしまったらしい。この例のように二次的に共生系を失うこともありうるんです。

○ふむふむ。

[11: オルガネラと共生バクテリアの境界は曖昧]

○しかし、ブフネラの場合2億年も前から共生してるんですよね? それでも、アブラムシの組織のなかに取り込まれるものではないんですね。ブフネラはブフネラなわけでしょ。ブフネラは細胞内小器官に移行する中間段階みたいなものだという話がありましたけど、それだったらいっそのこと、さっさと細胞内小器官に移行したほうが、と思っちゃったんですが。二億年かかっても、そういうふうにはならないもんなんですか。

■えーっと、それはどういう意味ですか。

○両者の関係は非常に密接になってますよね。アブラムシにとってもブフネラにとっても、切っても切れない関係にあるわけですよね。それだったら、独立した生き物であり続けるよりも細胞内小器官になっちゃったほうが、それはそれで納得いくような気がしたんですけど。逆に余計なエネルギーもいらないような気がするし、いらないものは削れていくんだというのがDNAの本質的な部分の一つだとすると、そんなに、独立してこれだけが頑張っている必要はないような気もしたんですけど。

■うーん、ただブフネラっていうのは、もう菌細胞の中でしか生きられないんですよ。

○はい。

■だから菌細胞の中では既にオルガネラ(細胞内小器官)になっているという言い方もできるわけです。

○じゃあ、オルガネラではなくてバクテリアだということになっている理由は?

■そこは、言葉の使い方の問題だと思いますよ、僕は。

○そこまでオルガネラとバクテリアの関係っていうのは曖昧なものなんですか。

■そうですね、不連続なものではないと。

○ふーん。

■ブフネラは、いちおう、外に出しても生きてることは生きてますけど、ラジオアイソトープでラベルしたアミノ酸の取り込みを短時間見ることはできる、といったレベルです。じゃあ分裂するかというと、それは一切ありませんし。

○なるほど。じゃあ取りあえず生きているだけなんですね。

■ええ。しかもごく短時間。

[12: 共生への歩み]

○最初はこいつも、病原菌とかそれらと同じ様な侵入者だったわけですよね。
 共生が始まるときっていうのは、どういう感じなんでしょう。ブフネラ−アブラムシの系を例に、そういうことを考えていくことはできないんでしょうか。

次号へ続く…。

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