NetScience Interview Mail 2001/12/13 Vol.169 |
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【牧野淳一郎(まきの・じゅんいちろう)@東京大学大学院 理学系研究科 天文学専攻 助教授】
研究:理論天文学、恒星系力学、重力多体シミュレーション
著書:杉本大一郎編「専用計算機によるシミュレーション」 1994, (朝倉書店、東京)(分担)
Junichiro Makino and Makoto Taiji, Scientific Simulations with Special-Purpose Computers --- The GRAPE Systems 1998, (John Wiley and Sons, Chichester).
牧野淳一郎「パソコン物理実地指導」, 1999, (共立出版、東京)
そのほか
ホームページ:http://grape.astron.s.u-tokyo.ac.jp/~makino/
○理論天文学の研究者で、ずば抜けた性能を持つ重力多体シミュレーションのための専用計算機GRAPE6の製作者・牧野淳一郎氏のお話をお届けします。(編集部)
…前号から続く (第9回)
[20: 最近の科学技術政策は大プロジェクト偏重?] |
データベース |
○大プロジェクト偏重になっているということですか。
■そうです。割合大きなプロジェクトばかりになっていて、それより小さいところには全然お金がないという状態です。二極分化ですね。
○金持ち研究室、貧乏研究室みたいな感じですね。
■うん。そうするとやっぱり研究の種類が減っちゃうわけですよ。
○なるほどねー……。
■つまり、目的がはっきりしたものなら種類が減って集中したほうがいいということになるんでしょうけども、やっぱり、天文とか物理とか、割合みんなが勝手なことをやっていて、その中から何か役に立つことがたまたま出てくるかもしれないといった分野の場合はね、あまりよくないかもしれない。
金額はともかくですね、数が減っちゃうというのは大変な感じがします。
○ふむ。
■うちでもどのくらいの研究費が欲しいかというのがあって、いまは毎年年間一億くらい、割と大きいのが来ちゃってるんです。そこまで欲しいかというとね(笑)。ほんとはもうちょっと少なくてもいいんじゃないかと思うんですけども、少ない枠っていうのがないんですよ。そういう話になっちゃうんで。
○なるほどね。件数が多いほうがいいと。
■そうですね。科研費だといま、基礎のAとかいうのが5000万くらいかな。これが普通には一番大きい枠で、科研費の場合は、そんなに大きいのは滅多に当たらないんですね。
ところがいま我々のとこに来ている、文科省から来てる未来開拓とかCRESTとかNEDOとかだと、年間一億とか2億とかのがゴロゴロあるわけですよ。それが年間何十件も出る。それを全部合わせると科研費の総額とあんまり変わらないくらいの金額になるんです。それが非常に大きいところだけで動いていると。さらに、原研とかそういったところにけた外れのお金が毎年バサバサ流れている。
そこまで大きいお金を限られたプロジェクトに入れるのが本当にいいのかなっていうのは、割合思いますね。
もちろん、プロジェクトのなかでは割と広くばらまいちゃったりしますから、実態はそんなに変わってないんですけどね。でも……。
そのへんが良いか悪いかは難しいですけどね。
○CRESTとかの人たちには、マスコミ取材にはできるだけ協力しろというお達しが回っているようです。そのおかげで僕らもその辺は取材しやすいですね。
[21:うまくいかない研究開発は、最初からうまくいかない] |
○いつも定番の質問として伺っているんですが、研究者になる手前の、大学院生、大学生の方々に、何か「研究者心得」みたいなものがあれば、お伺いしたいんですけど。
■うーん……。
どうなんでしょうね。分野によると思うんですけども。天文や物理となると「なぜ研究をするのか」というところがね。
○ん?
■天文の研究が、直接に人類の幸福に結びついたりするわけじゃないですからね。ま、ある意味では結びつくんですけどもね、やっぱり「自分が面白い」ということがあって、それをやってて何か面白いことが分かって、そして自分が面白いことは他の人も面白いというような、貢献するとすれば所詮そういったものですからね。だから、やって面白いことをするわけで、特に理論の研究っていうのは割合そういう性格が強い。
それは−−だから何が面白いかは人によって違うし、指導教官がこういうのが面白いよっていうことも、自分にとって面白いとは限らないわけですよね。そういうところで、やっぱり「自分はこれが面白い」というのが少なくともある程度は、自分で分からないとつまらないし、つまらないことをやってもしょうがない。
ただしやっぱり、実際に研究者としてやっていくことを考えると、純粋に自分は面白いっていうのから、それが、何かしら他の人にも面白いというところに繋がってなきゃいけないところがあって。それは……。
でもね、それがどう繋がるかは私にもよく分からないんですよ(笑)。
○なんだそりゃ(笑)。まー分からなくもないです。
牧野さんご自身は、最初から天文をやろうと考えていらしたんですか。
■いや、全然そうじゃなかったんです。実は、学部のときの卒業研究は、気候変動をシミュレーションで計算するというのをやってまして(笑)。
○なんだ、そうだったんですか。
■そうなんです、実は(笑)。
それで、シミュレーションで気候をやるのはちょっと大変なんで、もうちょっとできることしたいなと思ってですね、天文に鞍替えしたと。それは修士に上がるときに指導教官を変えて違うことをやることにしたんです。
○でも、天文のシミュレーションでも、どこをやるかという話がありますよね。たとえば恒星がどうやってできるかをやるところもあるし、銀河がどうこうといった部分もあると思うんですけども、先生はどうして現在のようなテーマとアプローチに?
■これは非常に簡単な話で、修士に入るときに−−僕は基礎科学科第二っていう駒場にある学科を出てそのまま大学院に行ったんですが、理論とシミュレーションを使ってやるようなことということで、エンジニアリングのほうも含めて、いろいろ考えて、で、面白そうだと思ったのが天文だったという感じです。ちょうど指導教官もN体シミュレーションをやりはじめたところでしたから。
なんていうのかな、まあ、割合、簡単なテーマのように見えたんです、当時は。法則が完全に分かっていて、計算機のなかで割合きっちりしたモデルが作れる。それでちょっと面白いかなと。そのくらいの理由でした。
○それで、結局面白かったですか。
■そうですね、十何年もたって、まだやってますから(笑)。面白いですね。
○しかし、なんでこういう専用機を作るのが先生たちくらいなんでしょう。
牧野先生はどうしてこういうのを作ってるんですか(笑)?
■うーん、やっぱりもともといろいろいじったりするのが好きだからでしょうかね。
それが理由かもしれませんね。
○なるほど。
■で、まあ、その、専用機を作ろうというのが僕らくらいかっていうと、これは実はそうでもなくて、その、MD のところでもちょっといいましたけれど、計算科学のいろんな分野を見渡すと、国内でも 5 や 10 くらいはすぐにあげられます。さらにデータ処理みたいなところまで広げれば、電波天文学みたいに非常に成功している、というか、それなしでは分野がなりたたないようなものもある。
○やってる人はやってるわけですね。
■ただ、データ処理のほうはちょっとおいておいてシミュレーションとか理論計算のほうに話を限ると、まあ、そのなかで割合成功している、つまり、専用計算機なのでその目的を達成できないとしょうがないわけで、動いたっていうだけででなくてちゃんと研究に使えるところまで持ってきている例は割合少ないのは確かだと思います。
○なぜですか?
■で、それはなぜか?というのは、少なくとも後知恵で見ればなぜあまりうまくいかないかというのはそれぞれのグループについて大体わかる。
というか、いくつかのものについてはやる前からわかってたんではないかという気もしなくはないんですが、うーん、そのへんは、その、我々はたまたまかなんか知らないですが、割合最初がうまくいって、そのあとそれを継承というか発展させてきてて、まあ、最初はともかくその後はうまくいって当然みたいな、そういうとこがあります。
で、うーん、うまくいかないのはやはりその最初がうまくいかない。
○どうしてですか?
■まあ、それは、その、研究とか開発というのは大抵失敗するものなわけで、だからまあしょうがないのかもしれないんですが、もうちょっとそのなんとかならなかったのかなという気がすることもあります。
○うーん……。やっぱりそういうところですか。最初が肝心と。
本日はどうも、ありがとうございました。
【2001/08/07 東京大学理学部にて】
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*次号からは動物行動学の研究者、篠原正典氏のインタビューをお送りします。
[◆Information Board:イベント、URL、etc.] |
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◇NASDA 北太平洋から北大西洋への「大気の架け橋」を発見
〜アリューシャン・アイスランド低気圧間のシーソー現象の解明〜
http://yyy.tksc.nasda.go.jp/Home/Press/j/200112/taiki_011204_j.html
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◇日本マクドナルド ここは未来のマクドナルド! 荏田西店(神奈川県横浜市)
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◇HotWired ナノテク:高まる期待、しかし本格的な商品化はまだ先
http://www.hotwired.co.jp/news/news/20011204303.html
◇HotWired 遺伝子組み換え昆虫で世界初のフィールド実験
http://www.hotwired.co.jp/news/news/20011210301.html
◇HotWired ハンズフリーの新しい車内通信キット、期待ほど便利ではない?
http://www.hotwired.co.jp/news/news/20011210302.html
◇ASCII24 日本のインターネットの現在が分かる“Internet Week 2001”が開幕
http://ascii24.com/news/i/topi/article/2001/12/03/631759-000.html
◇ASCII24 NTTコムウェア、VoIP技術を利用した施設“次世代ネットワークラボ”を開設
http://ascii24.com/news/i/topi/article/2001/12/03/631739-000.html
◇ASCII24 フランステレコム日本研究所、“augmentative nature”を開催
――インターネットで香りを送る研究などをデモ
http://ascii24.com/news/i/tech/article/2001/12/06/631856-000.html
◇「NASDA NEWS」No.241 2001年12月号
http://yyy.tksc.nasda.go.jp/Home/News/News-j/241index.htm
◇NASDA先端ミッション研究センター 我が国の宇宙開発における次期フラッグショップミッションの提言 〜日本独自の有人宇宙船構想〜
http://giken.tksc.nasda.go.jp/Group/sentan/mission/index.html
◇東京新聞 脳の「柔剛」切り替え、解明 作業に応じ筋肉の硬さ調節 科学技術振興事業団・プロジェクト
http://www.tokyo-np.co.jp/00/sci/20011204/ftu_____sci_____005.shtml
◇朝日新聞【技あり】 昆虫がつくる素材に注目 インセクト・テクノロジー
http://www.asahi.com/science/waza/011203.html
◇日経 過去最大の素数発見・13万人参加し検算
http://www.nikkei.co.jp/news/shakai/20011208CCCI015808.html
http://www.mersenne.org/13466917.htm
◇ブロードバンド・ウォッチ コンピュータウイルスの歴史。それは1972年から始まった
http://www.watch.impress.co.jp/broadband/news/2001/12/07/virus.htm
◇Nature BioNews 進化 :私たちの祖先に思春期はなかった?
http://www.appliedbiosystems.co.jp/website/SilverStream/Pages/pg33A1.html?NTNEWSCONTENTSCD=38137
◇Nature BioNews 医学 :ビタミン強化小麦粉は安全か?
http://www.natureasia.com/japan/sciencenews/bionews/index.html
◇Nature BioNews 医学 :クローン人間は画期的な治療法なんかじゃない
http://www.appliedbiosystems.co.jp/website/SilverStream/Pages/pg33A1.html?NTNEWSCONTENTSCD=38130
◇京セラ 京セラが世界で初めて開発「クリエイテッド・ファイヤーオパール」誕生
クレサンベール・ジュエリーとして11月23日より発売
http://www.kyocera.co.jp/news/2001/0111/1105-j.asp
◇「10+1」 スーパーカミオカンデ2 新良太
http://tenplusone.inax.co.jp/underground/photo/atarashi10.html
◇総務省統計局統計センター 平成13年科学技術研究調査結果
http://www.stat.go.jp/data/kagaku/index.htm
平成12年度の科学技術研究費は16兆2893億円。平成13年4月1日現在の研究関係従事者数は102万4800人
◇科学技術者のための総合リソースガイド・NetScience
http://www.netscience.ne.jp/
*ここは、科学に関連するイベントの一行告知、URL紹介など、
皆様からお寄せいただいた情報を掲示する欄です。情報をお待ちしております。
基本的には一行告知ですが、情報が少ないときにはこういう形で掲示していきます。
なおこの欄は無料です。
発行人:株式会社サイネックス ネットサイエンス事業部【科学技術ソフトウェアデータベース・ネットサイエンス】 編集人:森山和道【フリーライター】 |
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