NetScience Interview Mail 2004/03/25 Vol.270 |
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研究:運動の学習と制御の神経機構、脳内の時間順序表現メカニズム
著書:小脳における上肢随意運動の学習機構の解明.
『ブレインサイエンスレビュー2001』(伊藤正男,川合述史編/医学書院、2001:216-243.)
到達運動の制御と学習の神経機構.
『脳の高次機能』(丹治順,吉澤修治編/朝倉書店,2001:106-118.)
研究室ホームページ:http://www.med.juntendo.ac.jp/kenkyu/09index.html(建設予定)
研究内容の参考になるウェブサイト:
▼HFSP NewsLetter No.13 ―多才な運動を実現する脳の機構の解明へ―
http://jhfsp.jsf.or.jp/news/letter/no13/nl-05.html
▼HFSP NewsLetter No.17 ―ノイズが開く運動制御の可能性―
http://jhfsp.jsf.or.jp/news/letter/no17/nl-03.html
▼AIST Research Hot Line 手の交差で時間が逆転 ―脳の中の時間―
http://www.aist.go.jp/aist_j/aistinfo/aist_today/vol01_06/vol01_6_p12.pdf
○腕をコップに向けて伸ばす、このような運動を「到達運動」と言います。このとき、脳のなかでは腕を制御するためにある種の計算が行われていると考えられています。ではそれはどのような規範に基づいているのでしょうか。北澤先生はこのような運動制御における小脳の役割について研究しておられます。
また、北澤先生は実に不思議な現象を発見しました。右左の手をポンポンと叩く。どちらが先に叩かれたのかは、目をつぶっていても分かります。ところが、腕を交叉するとこの時間順序の判定が逆転するというのです。これはいったい何を意味するのでしょうか。
身近な身体に関する研究の話です。不思議なことは私たちのすぐそばにいくらでもあるということを感じて頂ければと思います。(編集部)
…前号から続く (第7回)
■人間の小脳はすごく巨大なんですよ。いまここにあるのはサルの小脳の模型です。ここに小脳の前葉と後葉を分けるラインがありますね。サルだと半分半分くらいですが、人間だと、ほとんど全部後葉なんですね。人間で大きくなった小脳がどこと繋がっているかというと、やはり人間で発達した前頭葉と繋がってるんです。 ○はい。 ■そのような背景で、脳の言語機能に関する研究をしたこともあります。脳の言語機能の男女差についての研究になったんですが。数年前に東倉先生と川人先生が<関西脳プロジェクト>というプロジェクトを立ち上げられて(「ヒトを含む霊長類のコミュニケーションの研究」http://www.chousei-seika.com/2002_s/2002_s_6/2002_s_6_hito/2002_s_6_hito_s.htm)、そこで、「コミュニケーションにおける小脳内部モデル存在に関する生理学的ならびに非侵襲的脳活動計測を用いた研究」という題を頂いたわけです。それはコミュニケーションと小脳の関係を調べてみたら、というサジェスチョンだったわけですね。 ○はい。 ■当時私は電総研(筑波にある通産省の研究所)にいたんですが、そのころ新しいMRIが入ったので、言語課題をやらせたときに、小脳のどこが活動するか調べてみようっということになりました。いろいろ違うことをヤリ散らかしているように見えたと思うんですけども。 ○実際にはどういう結果だったんですか。 ■実際にはですね、小脳がメインのはずだったんですけども、筑波に入った機械が3テスラの機械で、磁場が普通の病院の機械の2倍のタイプなんですね。感度も二倍なんですけど、像のゆがみも二倍なんですね(笑)。 ○え(笑)? ■ゆがみにくい場所なら良いんですけども、小脳っていうのはヘリの場所なんで、ゆがみやすいんですよ。 ○修正できないものなんですか。 ■ちょっとしたゆがみなら、みんな修正してやってるんですけども、なんかもう、見るも無惨な状況でした(笑)。 ○あら〜。そういうものなんですね。 ■一次視覚野などは信号が飛ばずに、いい画が取れるんですね。でも小脳や側頭葉はゆがんだり信号が消えたりするんですよ。下の方は特に。
○そうなんだ。道理で。資料に小脳の話がないと思いました
■ありますよ。活動の差は明確にありますね。朗読を聴くときに、女性は両側の中側頭回がほぼ均等に活動しますが、男性は左の中側頭回が優位に活動します。
■実を言うと、音素処理に関係していると言われている領域は男女ともに左優位な活動を示します。これは、半球間通信にけっこう時間がかかるんで(片道平均20msと推定されている)、最短30ms毎に入力する音素処理に関しては男女とも片方の半球で処理するしかないだろう。 ○はい。 ■一方で、文とか文章は時間がかかってもいいじゃないですか。秒単位の時間をかけても間に合うので、両側の半球を使う時間的な余裕があります。男女差がみつかった中側頭回は、「意味のある話」を聴くとよく活動する場所なので、文や文章の理解に関係していると想像されます。 ○ふむ。 ■で、どうして男は左半球で、女は両側処理なのか。それは、左右の半球をつなぐ脳梁の通信容量が違うせいではないかと。単位皮質体積あたりの脳梁の断面積は女性の方が有意に大きい、と報告されているので、通信容量が大きい女性は両側を、小さい男性は左だけを使っている。推測ではありますが、そういう説明をいちおうしています。それでは、左右両方を使うのと、左だけを使うのが機能的にどういう意味があるか、という疑問がでてきますね? ○ええ。 ■実は実験の後に必ず聞いた話について穴埋めテストを受けてもらっています。そのテストの成績には男女差がありません。とりあえず、僕らが作る程度の穴埋めテストには影響がない。。 ○はい。
■一般論になりますが、左脳は統語的で、右脳は非統語的な言語機能を司る、という説があります。この話だけで一冊本が出ているような話ですが。右脳は連想とか、しゃべる声の抑揚、プロソディの分析に使われているという説ですが。そういう背景で、面白い論文が、2002年に出たドイツの人たちの論文がありましてね。(A.Shirmer, S.A. Kotz and A.D. Friederici. Sex differentiates the role of emotional prosody during word processing. Cogn Brain Res, vol.14 pp.228ミ233, 2002.)
○はい。
■被験者には出てくる音には注意を払うなといってあるんです。視覚刺激だけに注目してボタンを押してくれというわけです。それでどうなるか。 ○ええ。 ■可能性として、一致する場合に速い可能性と、まったくプロソディは無視しちゃってる場合が、考えられますね。男と女で反応時間のパターンがどう違うか調べてみると、男はプロソディに無頓着なんです。ポジティブターゲットのとき、つまり「success」が出たとき速いんです。「failure」が出たとき遅いんですね。 ○ふーん。 ■女性は違うんです。速くなるのは、嬉しい感じの聴覚刺激で「success」という単語が表示される場合と、悲しい感じで「failure」が出てくるときだった。つまり女性はプロソディと意味の一致に敏感であるということです。 ○ふむ。すると、ちょっとだけプロソディを変えてみて、今のは変えてるかどうか、マルかバツか、という課題を与えたら、差が出るんでしょうか? 女性のほうが得意なんでしょうか?
■うーん、男性のほうも、プロソディだけに注目していれば区別できるんだと思うんですね。でも、意味とプロソディをすぐにマッチさせろと言われると、男はできないんだと思うんです。意味を聞いているときは男はプロソディに鈍感になるんだと思います。
○ふーむ。 ■そうそう。実際にそういう感じで取材記事を書かれたことがあるんですよ。読売新聞で(笑)。
○そうなんだ(笑)。みんな考えることは同じか。 ■そうなんです。もともと僕も運動だけに興味があったわけじゃないんで。言語にも興味があったんです。いつかやってみたいなという気持ちはあったので、よいきっかけでした。小脳つながりで研究できて楽しかったですよ。小脳の機能からは離れた話になりましたが。 ○言語と運動の関係は興味ありますね。手足の運動による自己受容感覚とか、手足の動きのバタバタを発声が同期しているんだとかそういう話もありますね。正高信男さんらの研究ですが。 ■ええ。言語は面白いですよね。 ○次号へ続く…。
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