NetScience Interview Mail 2004/02/26 Vol.266 |
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研究:運動の学習と制御の神経機構、脳内の時間順序表現メカニズム
著書:小脳における上肢随意運動の学習機構の解明.
『ブレインサイエンスレビュー2001』(伊藤正男,川合述史編/医学書院、2001:216-243.)
到達運動の制御と学習の神経機構.
『脳の高次機能』(丹治順,吉澤修治編/朝倉書店,2001:106-118.)
研究室ホームページ:http://www.med.juntendo.ac.jp/kenkyu/09index.html(建設予定)
研究内容の参考になるウェブサイト:
▼HFSP NewsLetter No.13 ―多才な運動を実現する脳の機構の解明へ―
http://jhfsp.jsf.or.jp/news/letter/no13/nl-05.html
▼HFSP NewsLetter No.17 ―ノイズが開く運動制御の可能性―
http://jhfsp.jsf.or.jp/news/letter/no17/nl-03.html
▼AIST Research Hot Line 手の交差で時間が逆転 ―脳の中の時間―
http://www.aist.go.jp/aist_j/aistinfo/aist_today/vol01_06/vol01_6_p12.pdf
○腕をコップに向けて伸ばす、このような運動を「到達運動」と言います。このとき、脳のなかでは腕を制御するためにある種の計算が行われていると考えられています。ではそれはどのような規範に基づいているのでしょうか。北澤先生はこのような運動制御における小脳の役割について研究しておられます。
また、北澤先生は実に不思議な現象を発見しました。右左の手をポンポンと叩く。どちらが先に叩かれたのかは、目をつぶっていても分かります。ところが、腕を交叉するとこの時間順序の判定が逆転するというのです。これはいったい何を意味するのでしょうか。
身近な身体に関する研究の話です。不思議なことは私たちのすぐそばにいくらでもあるということを感じて頂ければと思います。(編集部)
…前号から続く (第3回)
■この行く先情報も、ある意味で、誤差のシグナルだと解釈することもできます。というのは、サルは、ある範囲のなかで刺激が出てくるんだと知ってますよね。そうすると、期待としては、中央くらいに期待を抱いているわけですよね。 ○はい。 ■ということは、右下に出るということは、期待よりも右下に出たということになりますよね。そうなると期待していたところよりも、右下に、腕をずらさなければならないんだということになりますよね。 ○修正するシグナルですか?
■そうですね。 ○なるほど。 ■たとえば、野球のバッターが、ヤマを張って待ってるとしますよね。ヤマを外されたと。左寄りを予測していたのに右寄りに来たと。そういうときにこの複雑スパイクが出るんだと考えることもできます。 ○ふむ。 ■そういう意味でいうと、なんていうんですかね、この行く先の情報に何か機能的な意味があるとすれば、「予測の改善」です。ヤマ張りの改善です。それには効く可能性がありますね。 ○うーむ。ヤマ張りの改善っていうことでいうと、たとえばモグラ叩きの例えでいえば、ヤマ張りっていうのはいわば、特定範囲内全てにモグラが全部出た状態を予測しているんじゃないでしょうか? つまり全部ポジティブな状態で、逆にネガティブなところをバーッと下げていって、最後までポジティブな場所に手を伸ばしていってるような感じがするんですけども……。 ■なるほど、あまねくヤマをはると。
○はい、それで最終的なターゲットに落ちているような、そんな感じがあるんですが、そう考えて、逆に予測値を潰すシグナルとして働いているとは考えられないんですか。 ■うーん……、そうですね。たとえば、モグラ叩きの穴全部に目配りができたとするじゃないですか。でもその場合の重心は真ん中ですよね。ですから、全体にヤマを張っているつもりでも、全体に均等に注意を払っているというのは、真ん中に注意を払っているのとあんまり変わらない可能性もありますよね。 ○なるほど。そうかもしれないですね。バッティングとかだと確かにそんな感じはしますね。期待値が予測範囲の真ん中で最大で、それに応じて軌道修正とかしているような感じはしますね。 ■なるほど、いまのモグラ叩きの例でいうと、全体にヤマを張っているとしますね。それで腕を取りあえず近づけていくとすると、まずどこに近づけていきますか。 ○あー、どこへ近づけていくか。やっぱり真ん中に重きを置くのかなあ。真ん中か手元でしょうか。リーチ範囲でしょうか。先生方の研究でもありましたが、ボディイメージにも関わってくると思うんですが。
■ええ。やっぱり、ハンマーの先に(注意が)飛んでるんだと思いますけどね。 ○ええ。 ■ただ、私が記録した小脳のこの場所が、予測に関係あるかどうかというと心もとない。この領域はどっちかというと運動制御の場所で、「ターゲットの出現場所の予測がはずれた」というシグナルが来たとしてもあまり意味ないかもしれないですけどね。登上線維は前後方向に広く投射しています。だからここのエリアでは意味なくても、たとえばもう少し後ろのほうのエリアでは意味があるということがあるかもしれない。 ○後ろのほう? ■このデータは、前のほう、前葉で取りました。運動制御に関係するような場所で。後ろのほう、後葉には前頭葉の運動前野などと繋がりの深い部分がありますので。そういう部分で予測システムをトレーニングするのに役に立っているかもしれない。
■運動開始時の行く先の情報の話が長くなりました。 ○ええ。 ■ここで方向選択性について考えて見ましょう。この細胞の場合、行く先については右下、誤差については左上で発火の確率が上昇しています。見かけ上、だいたい180度違います。 ○ええ。 ■しかし、本質的には同じ、と見ることもできるのです。終点の誤差については、左上にずれたということは、本当は右下にずらすべきだったということになります。 ○まあそうですね。 ■これは、ターゲットが真ん中に出ると期待していて、右下に出た場合、つまり「あ、右下に変えなくちゃいけない」、というのと、同じと言えば同じですね。 ○ええ。ということは……。 ■細胞によって好きな方向はみんな違うんですけども、行く先と誤差の情報を両方持っている場合は、好きな方向が180度逆を向いています。ということは、修正すべき方向、に直して考えると、本質的に両者の方向は一致する、と考えることも可能です。どちらの信号も、出所は同じなのかもしれません。本当は。 ○なるほど。
■情報量を定量化してグラフにすると、運動の開始時には行く先の情報が、運動の終わりから直後からは、このように二つ、誤差の情報が出てきます。運動の開始時には、運動の行く先に応じて発火確率が変わって、運動の終了時には誤差によって発火確率が変わるということを反映しています。 ○はい。
■いずれにせよ、とにかく、誤差の情報が出ているんだと。これが知りたかった、というか確かめたかったんです、僕は。いちおう確かめることができた。これに3年くらい時間がかかったんですけどね(笑)。
■ようやく、最適化の話に戻ってきました。 ○ふむ。
■この平行線維からのインプットが、エラーとは独立に、入ってくるとします。目標軌道が入るかどうか分からないですけども、とにかく、やりたい運動に関する信号がエラーとは独立に入力するとします。 ○はい。
■ところがですよ、終点での平均誤差がゼロであるような運動は無数にあります。僕が知りたいのは、そのなかでもスムースな最適化された運動がどうやって選ばれるかという問題です。
○「終点誤差分散最小仮説」? なんですかそれ。 ○次号へ続く…。
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