NetScience Interview Mail 2004/07/22 Vol.284 |
NetScience Interview Mail HOMEPAGE http://www.moriyama.com/netscience/ |
NetScience Interview Mail : Free Science Mailzine | |
---|---|
科学者インタビューを無料で配信中。今すぐご登録を! |
【その他提供中の情報】 | 新刊書籍情報 | | イベント情報 | | おすすめURL | etc... |
◆Person of This Week: |
【柏野牧夫(かしの・まきお)@NTTコミュニケーション科学基礎研究所 人間情報研究部 感覚運動研究グループ】
研究:聴覚を中心とした認知神経科学
著書:『コミュニケーションを科学する チューリングテストを超えて』(共著/NTT出版)
「日経サイエンス」連載「錯覚の情報学」(2000年2号〜2001年1号)
月刊「言語」にて「知覚の認知脳科学」連載中
ホームページ:http://www.brl.ntt.co.jp/people/kashino/index_j.html
○光と音、音と音。これら刺激のタイミングはどのように知覚されているのでしょうか。たとえばコップを落としてしまったとき、床で割れる音とその光景はぴったりシンクロしているように感じられます。ですが実際には音のほうが少しだけ感覚器までの到達時間は遅れているはずです。また、その後の脳内の処理はどのようになっているのでしょうか。これらの問題を考えていくと、私たちが知覚している心理的な「時間」は、物理的な時間と同じものではなく、環境での出来事を脳が解釈した結果であるということが明らかになってきます。
聴覚を中心として研究を行っている柏野先生らによれば、同じようなことが空間に対しても言えるといいます。知覚している空間が伸びたり縮んだりするというのです。知覚の認知脳科学の世界を味わって頂ければと思います。(編集部)
○前回から続く…… (第8回)
○先生の記事を読んだときに思ったのが−−聴覚空間が仮に伸び縮みしているとするじゃないですか。空間座標系がどういう形で表現されているか分からないですが、ともかく視覚による視覚空間座標系と聴覚空間座標系とが、あるいは他の感覚器官による空間座標とか、もろもろの座標系が、統合された形で頭のなかにあるわけですよね。その張り付けというか……張り付けされたときはどういう形になっているんですか。
■ええ、しかもその張り付けというのは、例えば上丘といわれる、下丘のすぐ次にあるところで行われている可能性があるんです。というのはさまざまな感覚モダリティに対する空間的な選択性を持っているニューロンというのはそういうところにあるんです。 ○どういうことですか。 ■つまり、ある音があったからといって、空間全部を作り出して、視覚の空間全部と対応させる必要はないわけですよね。目下、問題になっているこの人の声と顔みたいな、そこが合えばいいだけの話であって、この辺の無関係なところは別に関係ない。だってここは音はしていませんから、音のしていないこういうところに至るまでの聴覚空間がバーッとできて、それが張り付けられる必要は全然ないわけですよね。 ○普通の人間の場合は確かにそうですよね。
■そうですね。たとえばカクテルパーティーみたいなところを考えてみても、しょせん関係ない人たちならばどこにいようが関係ないわけですよ。 ○動いている口の部分から音が出てなくても、そこから音が出ているように感じられる効果ですね。
■そのときに、より解像度の高い、信頼性の高いモダリティが勝つという原理がだんだん分かってきています。結局、聴覚としては絶対的な定位をそんなケアはしない、ただここら辺での解像度は上がっているという状況ですね。 ○やっぱりそうなんですか。視覚優位なんだ。
■そうです、強いです。視覚が上位です。
○腹話術効果のお話とかはよく出ますよね、こういう話題では。 ■それは視覚障害ですからね。 ○いや、どうなんですかね。やっぱり絶対にだまされないものなんですかね。 ■視覚障害の程度にもよるでしょうけど、そっちの入力が弱ければそれは当然、引っ張られない。ちょっと脱線しますけど、あの種の統合の話の場合、基本的には視覚優位とか聴覚優位とかいう話じゃなくて、より信頼性のあるタスク、そのタスクに関して信頼性のあるモダリティの方が重きを置かれると。 ○でもそうなってくると、じゃあ、そのモダリティというのは何が選んでいるんですか。 ■だからやっぱり一番いい…… ○その時々のコンテキストに応じて、どの感覚が優先されるかが選ばれるわけですね。 ■そうですね。 ○ひょっとすると触覚の方が上位のときもあるかもしれないし。 ■そうですね。だから、そっちが確かでほかがあいまいであれば、確かなものがたぶん優先されるわけでしょうけど、一般論的には例えば時間情報に関しては、聴覚の方がだいたい優位な場合が多いです。要するに視覚よりも聴覚の方が時間解像度が高いので。 ○時間に関しては? ■時間に関しては。ちょっと新しい連載があってそっちのほうで書いてます。 ○ああ、それは是非読みたいですね。それはどこで連載されたんですか。
○聴覚が視覚に引きずられる例としては、マガーク効果がありますよね。「ば」と言っている音を聞かせて、画では「が」と言っているときのものを見せるというヤツ。あれって、デモのビデオくらいじゃはっきりしないですね。 ■そうですね。何でもつなげればいいというものじゃなくて。というのは、あれはトップデータをデモで出していると思った方がよくて、何でもそうなるわけじゃないです。 ○最初に気が付いた人は偉いなと思って。他の錯覚の実験でも、正直分からないよと思うのってありますよね。 ■マガーク効果は、非常にいい条件でやると、もうそうしか聞こえないぐらい強いですよ。だけどいい条件とは限らないので。
○そんなもんですか。 ■それはいっぱいありますよ。 ○どういうのがあるんですか。 ■ないものを補うのもそうでしょうし、それからあとは腹話術なんかもそうかもしれない。それから1つは時間情報、時間的なタイミングの話なんかがありますよね。 ○タイミング? ■ええ、音のタイミングというのをどうやって符号化しているのかという話があって、あるときには聴覚系というのは非常に正確と。タイミングに関してものすごく正確、ミリセカンドオーダーで正確ですと。ところがあるときには数百ミリオーダーで不正確と。 ○数百ミリ秒もずれるんですか?
■ええ、ずれます。ということもあると。つまりタスクによってはね。 ○ええ。ぜんぜん分からないですね(笑)。 ■でも「こんにちは」の「に」と「ち」が逆転したりすることは絶対にないわけです。
○ふむ……。そうですね。よく考えると全然分かりませんね。いったいどうしてなんですか。 ■それも1つありますし、1つの大きなファクターはグルーピングなんですよね。 ○グルーピング?
■だから「こんにちは」という1つのまとまりになっているのか、まったく独立のイベントとして、まとまりと思えるかということによって、だいぶ時間の符号化の仕方が違ってくるらしいということです。 ○次号へ続く…。
|
科学技術ソフトウェア データベース
|
◆このメールニュースは、 ◆<科学技術ソフトウェアデータベース・ネットサイエンス> ◆[http://www.netscience.ne.jp/] の提供で運営されています。 |
発行人:株式会社サイネックス ネットサイエンス事業部【科学技術ソフトウェアデータベース・ネットサイエンス】 編集人:森山和道【フリーライター】 |
interview@netscience.ne.jp moriyama@moriyama.com |
ホームページ:http://www.moriyama.com/netscience/ *本誌に関するご意見・お問い合わせはmoriyama@moriyama.comまでお寄せ下さい。 *メールマガジンへの広告掲載に関するお問い合わせはinfo@netscience.ne.jpまで御願いします。 |
◆このメールニュースは、 ◆<科学技術ソフトウェアデータベース・ネットサイエンス> ◆[http://www.netscience.ne.jp/] の提供で運営されています。 |