NetScience Interview Mail 2004/06/17 Vol.279 |
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【柏野牧夫(かしの・まきお)@NTTコミュニケーション科学基礎研究所 人間情報研究部 感覚運動研究グループ】
研究:聴覚を中心とした認知神経科学
著書:『コミュニケーションを科学する チューリングテストを超えて』(共著/NTT出版)
「日経サイエンス」連載「錯覚の情報学」(2000年2号〜2001年1号)
月刊「言語」にて「知覚の認知脳科学」連載中
ホームページ:http://www.brl.ntt.co.jp/people/kashino/index_j.html
○光と音、音と音。これら刺激のタイミングはどのように知覚されているのでしょうか。たとえばコップを落としてしまったとき、床で割れる音とその光景はぴったりシンクロしているように感じられます。ですが実際には音のほうが少しだけ感覚器までの到達時間は遅れているはずです。また、その後の脳内の処理はどのようになっているのでしょうか。これらの問題を考えていくと、私たちが知覚している心理的な「時間」は、物理的な時間と同じものではなく、環境での出来事を脳が解釈した結果であるということが明らかになってきます。
聴覚を中心として研究を行っている柏野先生らによれば、同じようなことが空間に対しても言えるといいます。知覚している空間が伸びたり縮んだりするというのです。知覚の認知脳科学の世界を味わって頂ければと思います。(編集部)
○前回から続く…… (第3回)
■ちょっと脱線しますけど、そもそも何でそんなことをやろうと思ったかみたいな話も関係あると思うんですけどね。 ○いつごろですか。
■それはやっぱりもう20歳ごろぐらいでしょうかね。 ○ああ、なんとなく分かります(笑)。 ■その中で一番思ったのは、何で人間というのは「こういうふうに世の中がある」と思っているんだろうと。 ○どういうことですか。 ■見えている、聞こえているというか、我々が認識している世界というのを普通は盲目的に信じて暮らしているわけじゃないですか。どうしてそうなるんだろうと、極めて哲学的、認識論的な問題なんですが、何でそういうことをクローズアップしたかというと、やっぱりそれを疑うからなんです。 ○疑う?
■時はまだバブルの前、カルト騒動なんかの前だし、最近のようなテロとか戦争とかの前なわけなんですけど、まあ、戦争は昔からありましたし、宗教問題もいっぱいあったかもしれないけど、当時の雰囲気というのはある種、例えば土地を持っている人というのは、非常に価値が高いわけですね。お金がもうかるわけですね。だからブランドというのも非常に皆さん、高い金を出して買うと。それから、受験なんかでも非常にブランド信仰みたいなものが強かったし。 ○ええ。 ■そのころある大人の人に、それはかなりお金持ちの人だと思うんですけど、土地なんて今こうやってありがたがられているけど、そんなものは単に情報の問題であって、土地というものに値打ちがあるわけじゃないんだから怪しいですよみたいな話をしたことがあって、でもそのときは一笑に付されたんです(笑)。自分は戦争なんかも体験しているけど、土地ほど大事なものはないんだと、結局それが勝つんだと。 ○なるほど。
■でも、それは、例えばここに何かを建てるスペースがありますよという土地自体がアフォードするものに価値があるんじゃなくて、結局、あのバブルのときというのはそれにいくら払いますかという交換価値ですよね。だから極めて相対的なものであり、その土地自体の持っている純粋な、砂の重さでもないし面積でもない、そういうものが流通していたわけで。 ○ははあ。
■あの頃ですから、ご多分にもれず構造主義とか、あのあたりの話とかをやっぱり一通り洗礼は受けるわけで、ただそれでいいとも思っていない。つまり全部を相対化してしまえばそれで済むとも思っていない。つまりそれでは進むべき道がないわけですから。 ○根源。
■「何故に我々は見たり聞いたりあるいは感じたりするのを信じるに至るようになるのか」。 ○ふむ。
■それで、知覚を研究しましょうということになっていったわけですが、でもやればやるほどだんだん、知覚を研究する方法論についても、もちろんいろいろ揺れがあるわけです。 ○(笑)。
■自分自身の中でいちゃもんをすごくつけられるタイプなので、結局、もう右にも左にも動けないという状況ですよね(笑)。 ○ええ。 ■そんなような中で、あるときやっぱりそうは言うものの、とにかくそれは動かなきゃしょうがないだろうと。神の視点から見ればそれは非常に不完全なものでしかないけど、不完全なものであるということを認識した上で、そっちに進むしかないというような感じになってきて、やっと少し動けるようになったという。だからそういう意味でもモラトリアムがすごく長いと思うんですよ。いまだにモラトリアムと言われればそうかもしれない。やっと最近になって少し動きだそうかなという、遅ればせながら。 ○動きだそうと。 ■少しもうちょっと研究とか、本気でできるのかなと思い始めていますね、逆に。 ○何か方向が見えてきたということですか。
■そうですね。というか、割り切りがついたというか。人生、もう長くないかもしれないです(笑)。
○僕も分からなくもありません。というか、僕も結構、「君は本当は何に興味があるの?」と、よく人から言われているので(笑)。 ■そうですね。だから興味はいろいろあるんですね。結局、今みたいな世界的な状況とかを見るにつけても、それはやっぱり自分のやっていることとは無関係ではないという思いは確かにあるわけです。だからといって直接ブッシュさんに何か言うとか、そういうことではないんですけど。 ○ええ、仰る意味は分かります。
■要するにメタファーとしてといいますか、人々のやっていることの構造を浮かび上がらせることみたいなことができればいいなと思っているんですけどね。 ○じゃあ、大学の卒論とかももういきなり錯覚とかだったんですか。 ■そうですね、大学は勝手に聴覚をやったんですよ。 ○もう最初から聴覚を? ■というのはやっぱり音とか好きだったし、視覚はいっぱい人がいるので、まあ、そっちをやってもしょうがないだろうというのもあったし、もう1つは先生がいないというのもあったし。聴覚の方がいない。 ○先生がいないから、そこをやろうということですか。 ■とやかく言われるのは嫌じゃないですか(笑)。
○ああ、そういうことですか(笑)。 ■もうほとんど忘れましたけど、それは音色の話だったかな。 ○音色? ■音色というのは絶対じゃない、みたいな話ですね。
■つまり音色というのは、それまでの研究、つまり音響工学的な話だとスペクトルの形だとか時間的な変化のパターンとか、そういうものによって規定されると。それはそうです。ピアノの音はピアノの音の格好をしているからピアノなのであって、だけど、それはそういう絶対的なものではなくて、極めてコンテキストによって左右されますよと。システマティックに左右されるありさまをやったということですね。 ○次号へ続く…。
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発行人:株式会社サイネックス ネットサイエンス事業部【科学技術ソフトウェアデータベース・ネットサイエンス】 編集人:森山和道【フリーライター】 |
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