NetScience Interview Mail 2004/06/10 Vol.278 |
NetScience Interview Mail HOMEPAGE http://www.moriyama.com/netscience/ |
NetScience Interview Mail : Free Science Mailzine | |
---|---|
科学者インタビューを無料で配信中。今すぐご登録を! |
【その他提供中の情報】 | 新刊書籍情報 | | イベント情報 | | おすすめURL | etc... |
◆Person of This Week: |
【柏野牧夫(かしの・まきお)@NTTコミュニケーション科学基礎研究所 人間情報研究部 感覚運動研究グループ】
研究:聴覚を中心とした認知神経科学
著書:『コミュニケーションを科学する チューリングテストを超えて』(共著/NTT出版)
「日経サイエンス」連載「錯覚の情報学」(2000年2号〜2001年1号)
月刊「言語」にて「知覚の認知脳科学」連載中
ホームページ:http://www.brl.ntt.co.jp/people/kashino/index_j.html
○光と音、音と音。これら刺激のタイミングはどのように知覚されているのでしょうか。たとえばコップを落としてしまったとき、床で割れる音とその光景はぴったりシンクロしているように感じられます。ですが実際には音のほうが少しだけ感覚器までの到達時間は遅れているはずです。また、その後の脳内の処理はどのようになっているのでしょうか。これらの問題を考えていくと、私たちが知覚している心理的な「時間」は、物理的な時間と同じものではなく、環境での出来事を脳が解釈した結果であるということが明らかになってきます。
聴覚を中心として研究を行っている柏野先生らによれば、同じようなことが空間に対しても言えるといいます。知覚している空間が伸びたり縮んだりするというのです。知覚の認知脳科学の世界を味わって頂ければと思います。(編集部)
○前回から続く…… (第2回)
■あとは研究ですか、今やっている── <錯覚の情報学>はだいたいご覧になっているんですよね。 ○はい。 ■特にどの辺がというのはあります? だいたいそれの発展形はいろいろあるんですけど。 ○でも、<錯覚の情報学>で扱ってる内容もけっこう幅広いじゃないですか。 ■そうですね。 ○やっぱり僕が個人的に興味があったのは、この「音源の位置で伸び縮みする聴覚の空間」という話です。連続した複数音源の位置の知覚を調べると、先行音に対して後続する音の知覚位置がずれる、という話。「聴覚定位残効」という奴。それをさらに詳しく調べると……という話です。あれが一番興味あります。先行する刺激によって後続する刺激の知覚が影響されるというところが、やっぱり面白いと思いました。 ■ああ、そうですか。 ○最近なんですけど、ボディーイメージがありますよね。ボディーイメージとか身体座標とか座標系の話と知覚の話と、それを時間の話とくっつけたこととかに僕はすごく興味があるんだということが分かったんですよ。そういった話を、いろいろな先生に断片的にですが、話を聞いているうちにだんだん、ああ、そうか、僕の興味はこういうふうにつながっているんだということが分かってきたんですけど。
■ああ、なるほどなるほど。分かりますよ。たぶん興味は非常に近いんじゃないかと思うんです。 ○可塑性?
■例えば環境、物理的な世界と知覚者の側、生物の側とがいろいろ相互作用をする中で、それに適応してどんどんどんどん変わっていくということです。 ○ええ。
■結構、そのずれはね、日経サイエンスの連載の中でもいろいろと書きましたけれども、場合によっては時間的な逆転もあり、それから空間的な伸び縮みもある。 ○なるほど。 ■このようなところを研究所でやっているというのも、例えば「通信」なんて、言ってみれば時間と空間を克服する技術なわけです。例えばそこでいろいろな情報提示技術ができましたといっても、それは物理的にある時間関係なり、ある空間関係を忠実に再現しましょうということで、今までのところは基本的にやって来ているわけですよね。 ○ええ。 ■だから、情報圧縮、つまりデータ量を減らさなければいけませんというときも、技術や理論の都合で行うわけです。けれど、ところが我々が体験する時間なり空間なりというのはそういうものじゃないわけです。だから、下手なことをやったら全然だめになるかもしれない。 ○あるいはうまくやれば、人間にはほとんど影響のないところでデータを端折れるかもしれない。
■そうです。もっと言えば、情報提示技術によって情報が提示されること自体によって脳の側が変わってしまうかもしれないし、仮に提示された情報が非常に不自然なものであっても、脳の方が逆に適応して物事がうまくいくようになってくるかもしれないし。 ○なるほどね。
■同時に、純粋にサイエンティックな興味としても、やっぱりそういうふうな脳の仕組みというのが分からないと、要するに我々が世界をどうやって知覚しているかということが分かったことになりませんから、だからそこら辺がもともと問題と言えば問題なわけです。 ○はい。 ■疑われてきているというのは、世間で錯覚と言えば、例えば矢羽根があってこうやって外向きと内向きだと同じ長さでも違って見えますよみたいな話ですよね。 ○そうかもしれません。
■それはあくまでもその中身というかオブジェクトがこういうふうにいろいろ見え方によって変わりますよという話であって、その意味で物理的なものと人間の知覚というのはずれているということは、もう何百年も前から分かっていたと思うんですよ。 ○ああ、なるほど。
■「空間」という物理的な枠組みがあって、その中で我々は暮らしていると。時間というのも1方向に流れていて、その中で暮らしていると。 ○そこら辺をどういう切り口で先生方がやっているのかというのを、具体的に教えてもらえますか。 ■そうですね。
■ちょっと脱線しますけど、そもそも何でそんなことをやろうと思ったかみたいな話も関係あると思うんですけどね。 ○次号へ続く…。
|
科学技術ソフトウェア データベース
|
◆このメールニュースは、 ◆<科学技術ソフトウェアデータベース・ネットサイエンス> ◆[http://www.netscience.ne.jp/] の提供で運営されています。 |
発行人:株式会社サイネックス ネットサイエンス事業部【科学技術ソフトウェアデータベース・ネットサイエンス】 編集人:森山和道【フリーライター】 |
interview@netscience.ne.jp moriyama@moriyama.com |
ホームページ:http://www.moriyama.com/netscience/ *本誌に関するご意見・お問い合わせはmoriyama@moriyama.comまでお寄せ下さい。 *メールマガジンへの広告掲載に関するお問い合わせはinfo@netscience.ne.jpまで御願いします。 |
◆このメールニュースは、 ◆<科学技術ソフトウェアデータベース・ネットサイエンス> ◆[http://www.netscience.ne.jp/] の提供で運営されています。 |