NetScience Interview Mail 2004/09/16 Vol.292 |
NetScience Interview Mail HOMEPAGE http://www.moriyama.com/netscience/ |
NetScience Interview Mail : Free Science Mailzine | |
---|---|
科学者インタビューを無料で配信中。今すぐご登録を! |
【その他提供中の情報】 | 新刊書籍情報 | | イベント情報 | | おすすめURL | etc... |
◆Person of This Week: |
【柏野牧夫(かしの・まきお)@NTTコミュニケーション科学基礎研究所 人間情報研究部 感覚運動研究グループ】
研究:聴覚を中心とした認知神経科学
著書:『コミュニケーションを科学する チューリングテストを超えて』(共著/NTT出版)
「日経サイエンス」連載「錯覚の情報学」(2000年2号〜2001年1号)
月刊「言語」にて「知覚の認知脳科学」連載中
ホームページ:http://www.brl.ntt.co.jp/people/kashino/index_j.html
○光と音、音と音。これら刺激のタイミングはどのように知覚されているのでしょうか。たとえばコップを落としてしまったとき、床で割れる音とその光景はぴったりシンクロしているように感じられます。ですが実際には音のほうが少しだけ感覚器までの到達時間は遅れているはずです。また、その後の脳内の処理はどのようになっているのでしょうか。これらの問題を考えていくと、私たちが知覚している心理的な「時間」は、物理的な時間と同じものではなく、環境での出来事を脳が解釈した結果であるということが明らかになってきます。
聴覚を中心として研究を行っている柏野先生らによれば、同じようなことが空間に対しても言えるといいます。知覚している空間が伸びたり縮んだりするというのです。知覚の認知脳科学の世界を味わって頂ければと思います。(編集部)
○前回から続く…… (第16回)
○ここの研究所には学生さんもいらっしゃるんでしょうか。ポスドクの方が多いんですか。基本的にどういう方を採られているんですか。
■NTTのポスドク一般にという話じゃなくて、うちの研究所はある種、特殊で。非常に基礎の部分をやっている物性研とうちのCS研、このふたつはポスドクなんかはわりと積極的に採っています。 ○下條先生はこちらにも籍があるんですか。 ■あるんです。だから彼の発表は全部、うちの所属が付いていますね。それから、さっきの視聴覚タイミングの順応の話も下條さんと共同研究です。
○ちなみに、さっきおっしゃっていたロボットの人とか、あるいはインターフェイスの人というのはどんなことをやっているんですか。 ■1つは、インターフェイスの人は、パラサイト・ヒューマンの前田太郎ですね。 ○ああ、はいはい、東大にいらっしゃった……。 ■そうそう。彼を2002年に中途採用しているんです。パラサイト・ヒューマンはご存じですか。 ○はい、知っています。 http://www.brl.ntt.co.jp/people/parasite/index-j.html ■それの発展ですね。 ○ロボティクスの人というのは? ■ロボティクスはテレヘッドというのがあって。テレヘッドというのは、要するに本人とそっくりのダミーヘッドを遠隔に置いて、ネットワーク経由で使おうというものです。顔までそっくりでしかも動きも本人に追随すると。 ○そっくりというのはどういうふうにそっくりなんですか。 ■肩から上の形状がまったく同じという。それは将来的にはたぶん同じじゃまずいんですよ、使うということを考えれば。だけど音源定位というのは耳とか頭とかの形に由来する情報というのが非常に重要だから。 ○ダミーヘッドの進化版ですか。
■そうですね。普通のダミーヘッドというのは一般化された人間の頭部なので、それで録音したのをそのまま聞くと、その通りには聞こえないんですね。 ○そうなんですか。いなくなっちゃったんですか。 ■ただ、このシステムは、それこそ可塑性の研究に使えると。例えば自分が頭を90度動かしたのに、こいつは45度しか動かさないとか、自分とはこの辺の特性が違う頭でしばらくやったらどうなるとか、そういうふうな研究には使えるかなと。 ○だって材質まで同じというわけにはいかなかくないですか。 ■材質まで同じじゃないんですけど、極めて特性が似ていると。 ○音響特性的にも同じような材質を使うか? ■そうですね。 ○骨とか肉とか?
■いや、この骨とか肉とか同じにはいかなくても、音響的な特性さえだいたい同じであればいいので。
○そうそう、この機会に是非伺いたいんですが、聴覚の学習ということだと、個人的にちょっと不思議だなと思っていることがあるんです。 ■まさにそういうことに対する答えを、与えかねないような話を今はやっています。それは自分の声を聞くという状況ではないんですけど。 ○ほう。どんな仕事ですか? ■元来、関係がないものの間の関係性をどうやって獲得するかというような問題について、まだ水面下ですけど。基本的にはやはりいっしょに起きるというのがキーで、つまりそういうシチュエーションというか、共起関係をずっと学習することに尽きると言ってしまえば尽きるんですけどね。 ○ふーむ。
■本当はやっぱり−−、バインディング・プロブレムというのは、非常に奥深い問題ですよね。元来、脳内では本当にばらばらと、時間までばらばらになるんですから、それをどうやって最終的に1つの世界にまとめ上げるかという問題なんですよね。
■この問題は身体性とかにも関係がありますよね。バーチャルな関係とかあるいは変なインターフェイスとか。ダミーヘッドの話ですが、じゃあ、1,000キロ先に自分の頭があるときには、そういうものでしばらく学習するとして、それで身体性はどうなるのか、世界はどう認識できるのかという問題がある。 ○例えば1,000キロ離れたところに特異な頭があるときのボディイメージは、どう変わるのかな。 ■そうそう。そういう問題です。
○ボディイメージと言えば必ず引き合いに出される、入来先生の熊手の実験も面白いですけど、ボールを壁に投げると、ボディイメージが壁に投射されちゃうとか何とかという実験がありましたよね。ああいうのとか聞いていると、じゃあ、どこまで延びるんだろうと思いますね。ラマチャンドランの『脳のなかの幽霊』でも幻肢が伸びる、という話が出てきましたが。 ■そうですよね。一体になった感じがですか。 ○楽器を手足のよう操るという言い方があるじゃないですか。車ぐらいだったらまだ直感的に分かりやすいじゃないですか。車幅感覚とか、それはたぶんボディーイメージがとかいうのも何か分かるんですけど。じゃあ、パイプオルガンを演奏している人はどうなっているんだとか。ほとんどそこら辺になるとよた話なんですけど、でも、今だったら、じゃあ、本当に測れるんじゃないかなとか。 ■測れますよね。 ○そういうのは先生はどうですか。
■いや、すごく興味がありますよ。もう思考実験の世界ですよ。極端なところ、どこまで行けるのかと。要するに身体というのはたまたま与えられているわけですよね、このサイズでもって。だけれども、それが意外とそんなに確固たるものじゃないかもしれない。たまたま一番順応したものであるというだけの位置付けかもしれないと。だって上下逆さでいいというぐらいのものなんだから。 ○ええ。10センチとかの単位で制御して、止まれるらしいですね。
■そうですね。それはものすごい巨大な、人間が普通には経験し得ないような遅い応答をもつシステムを扱えるようになっているんですよね、体のように。だからそういうのでどこまで行けるのかというのは単純に興味深いですね。 ○一番最初にウェブを触ったときに、1994年か1995年かぐらいだったと思うんですけど、一番最初の本当の一瞬だけだったですけど、なんかニューッと延びているような感じがしましたけどね(笑)。見るサイトがNASAしかなかったころとか。すぐ慣れちゃって、今はもうまったくなくなりましたけど。 ■すぐ慣れた、そうなんですよ。だから意外とかなり極端なところまで行けてしまうのかもしれないですね。 ○次号へ続く…。
|
科学技術ソフトウェア データベース
|
◆このメールニュースは、 ◆<科学技術ソフトウェアデータベース・ネットサイエンス> ◆[http://www.netscience.ne.jp/] の提供で運営されています。 |
発行人:株式会社サイネックス ネットサイエンス事業部【科学技術ソフトウェアデータベース・ネットサイエンス】 編集人:森山和道【フリーライター】 |
interview@netscience.ne.jp moriyama@moriyama.com |
ホームページ:http://www.moriyama.com/netscience/ *本誌に関するご意見・お問い合わせはmoriyama@moriyama.comまでお寄せ下さい。 *メールマガジンへの広告掲載に関するお問い合わせはinfo@netscience.ne.jpまで御願いします。 |
◆このメールニュースは、 ◆<科学技術ソフトウェアデータベース・ネットサイエンス> ◆[http://www.netscience.ne.jp/] の提供で運営されています。 |