NetScience Interview Mail 2004/09/09 Vol.291 |
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【柏野牧夫(かしの・まきお)@NTTコミュニケーション科学基礎研究所 人間情報研究部 感覚運動研究グループ】
研究:聴覚を中心とした認知神経科学
著書:『コミュニケーションを科学する チューリングテストを超えて』(共著/NTT出版)
「日経サイエンス」連載「錯覚の情報学」(2000年2号〜2001年1号)
月刊「言語」にて「知覚の認知脳科学」連載中
ホームページ:http://www.brl.ntt.co.jp/people/kashino/index_j.html
○光と音、音と音。これら刺激のタイミングはどのように知覚されているのでしょうか。たとえばコップを落としてしまったとき、床で割れる音とその光景はぴったりシンクロしているように感じられます。ですが実際には音のほうが少しだけ感覚器までの到達時間は遅れているはずです。また、その後の脳内の処理はどのようになっているのでしょうか。これらの問題を考えていくと、私たちが知覚している心理的な「時間」は、物理的な時間と同じものではなく、環境での出来事を脳が解釈した結果であるということが明らかになってきます。
聴覚を中心として研究を行っている柏野先生らによれば、同じようなことが空間に対しても言えるといいます。知覚している空間が伸びたり縮んだりするというのです。知覚の認知脳科学の世界を味わって頂ければと思います。(編集部)
○前回から続く…… (第15回)
■もう1つ言えば、音響信号からフォネティック・シンボルまでに興味があるのと並んで、いわゆる超分節的な特徴にも興味があるんです。 ○そうでしょうね。 ■例えば歌とか俳優の発声とかいうのは、やっぱり素人とは全然違ってその辺のコントロールはむちゃくちゃできているから、同じ「ありがとう」でも、心底ありがたいんだなというのを出せたり、これはもうおざなりの、むしろ言いたいことは逆だよというような表現ができたりするわけじゃないですか。その部分をどうやって処理するか。それは極めて音響的、聴覚的な問題、それと情動系ですよね。 ○うん、それに、たぶん文法は関係ないんですよね、あれって。 ■そう、関係ない。だから我々の興味・関心はむしろ文法的ではない側面なんですよ。それはおそらく動物同士だって、悲しそうな声だったり、怒っている声があるわけですよね。 ○人間でもお互いにまったく言葉は分からなくても何となく何が言いたいのか分かるときが……。
■そう、分かるときがありますよね。特に英語圏以外の国に旅するときは、もうそれだけでコミュニケーションをしているところもあるぐらいのものですよね。 ○マザリーズとか何とかですか。「あー」とか「うー」とか。
■そうそう。動物や乳幼児というのを考えてみると、結局、分節的なものというのは後から来るわけで、それは生得論者が、それはもともとあって日の目を見ていないんだとか言うけど−−、まあ、それはそうかもしれないんですけど、そこではなくて、やっぱり歌につながるような部分、声の持っている非言語的側面というのに−−、まあ、「言語」というのをどこまで広く取るかですけど。 ○そうですね。UG(普遍文法)はあってもいいとは思うけど、一方で、でもそれ以前−−と言っていいかどうかは分かりませんが、そんな問題がありますよね。 ■そうそう、そうなんです。だから我々も決してああいうものを否定するとか何とかということは全然意図しなくて、それはもう結構なことでいいんですけど、ただそれ以外の部分、つまり「言葉」といわれているようなものとか「音声(スピーチ)」といわれるものにはそれ以外の部分というのがあるんじゃないか。
○そうですねえ。 ■うん、そうだと思いますよ。 ○ロボットも音声に関しては中途半端に喋るよりも、赤ん坊のように、あはあは言っているほうがいいんじゃないかと思ったんですけどね。 ■コミュニケーションにおける、ある種の本質があるんでしょうね。やっぱりシンボルに毒されないで考えるならば、つまり何でeメールがけんかになりやすいとか、そういうこととも関係してくるかもしれないんですけどね。 ○そうですよね。だって携帯とかの顔文字でコミュニケーションが取れちゃうわけですからね。
■そうそう。だから大きく分ければ聴覚の可塑性絡みのプロジェクトとそういうスピーチ絡みのプロジェクトと自分自身がかかわっているのはありますね。
■あと、やろうとしているのが、アテンションといわれることの神経的な、極めて即物的な正体をとらえようということ。それも今、やっていますので。 ○それはどうやって? ■ちょっとこれはあまり言えないな。つまり神経生理の実験をやるんですよ。それと心理物理を組み合わせるんですけど、その神経生理の実験というのが世間ではまったくやってないようなテクニックを使うもので、まだあまりおおっぴらにはしたくない。 ○ほうほう。
■ただ、言えることは、アテンションというものは非常に広い概念だけど、中でも我々が扱おうと思っているアテンションというのは、ある対象に対して選択性が上がるということなんですね。 ○ゲインコントロールがパターンの選択性を上げる?
■そう。そのゲインコントロールのオリジンがどこから来るか。例えば入力信号によって駆動されるのがそういうさっきの空間が伸び縮みするみたいなコンテキスト依存性だし、トップダウン、例えばそれが運動系であっても、情動系をでもいいですし、いま腹減ったなと思ったらそういうところでもいい、何でもいいんですけど、そういうトップダウンの入力であるにせよ、ボトムアップのものにせよ、ゲインコントロールをすればあるものに対する選択性が上がるということは、たぶん理論的には可能だろうと思っているんです。 ○なるほどね。アテンションですか。
■そのときに、じゃあ、どうやって検証するかということなんですけど、感覚器からのボトムアップ情報というものとトップダウンの情報というのを個別に操作したいんですよ。 ○動物は、サルじゃないんですか。 ■動物はネズミなんですよ。 ○ネズミでやっているということですか。 ■ええ。錯覚はもちろん人間ですけど。 ○それは、じゃあ、発表を楽しみに……。 ■水面上に出てきたのはさっきのタイミングの話だけですかね。というのは、冒頭に申しました通り、私、研究現場に戻ってきたばかりということもあって、今、だいだいそういうのを一通り仕込みつつあるというところですね。 ○次号へ続く…。
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