NetScience Interview Mail 2004/09/02 Vol.290 |
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【柏野牧夫(かしの・まきお)@NTTコミュニケーション科学基礎研究所 人間情報研究部 感覚運動研究グループ】
研究:聴覚を中心とした認知神経科学
著書:『コミュニケーションを科学する チューリングテストを超えて』(共著/NTT出版)
「日経サイエンス」連載「錯覚の情報学」(2000年2号〜2001年1号)
月刊「言語」にて「知覚の認知脳科学」連載中
ホームページ:http://www.brl.ntt.co.jp/people/kashino/index_j.html
○光と音、音と音。これら刺激のタイミングはどのように知覚されているのでしょうか。たとえばコップを落としてしまったとき、床で割れる音とその光景はぴったりシンクロしているように感じられます。ですが実際には音のほうが少しだけ感覚器までの到達時間は遅れているはずです。また、その後の脳内の処理はどのようになっているのでしょうか。これらの問題を考えていくと、私たちが知覚している心理的な「時間」は、物理的な時間と同じものではなく、環境での出来事を脳が解釈した結果であるということが明らかになってきます。
聴覚を中心として研究を行っている柏野先生らによれば、同じようなことが空間に対しても言えるといいます。知覚している空間が伸びたり縮んだりするというのです。知覚の認知脳科学の世界を味わって頂ければと思います。(編集部)
○前回から続く…… (第14回)
■モーター・セオリーの主張はいろいろあって、調音運動を参照しているということのほかに、スピーチ(言語音)というのはノン・スピーチとは全然違うんだという主張が入っているわけです。 ○ふむ。 ■そのすべてが妥当なのかどうなのかはよく分からない。よく分からないけれども、それぞれについて反対論者というのがいて、今日に至るまで議論を戦わせてきて、その中でモーター・セオリーの人というのはずっと面白いとは思われていても、結局、直接的な証拠がないままに来ているわけですよ。だからただの話だねというところで来たけれど、ちょっと最近盛り上がった。ミラー・ニューロンという話があってね。 ○ああ。実験者がたまたまアイスを食うと、ニューロンがバリバリ反応したというヤツですね。相手が運動しているのを見たときにも反応するし、自分が運動するときにも反応するニューロン。
■そうそう、その通り。
○なるほど。
■それで一気にそっちは盛り上がっていて、サルの話だからリバーマンが唱えた話とちょっと違ってくるけれど、言語の進化論というか、何で人間がスピーチを持つに至ったのかみたいな観点からすると、当然、先祖があってもおかしくないわけでね。 ○ええ。
■それから、ATRの川人(光男)さんみたいに、スピーチじゃないですけど、運動学習の話もあり、それからビジョンのモデルとかそういう「順逆モデル」ですね。入ってきた逆問題を解くのに、順方向のモデルを参照しながら解いていくというような話をやっている人もいるし。 ○なるほど。
■と言いながら、その中で起きていることというのはよく分からないわけです、依然として。 ○そうなんですか。
■ただ、結構いろいろな人がそこら辺を探そうと思っているのは間違いなくて、我々のグループにもスピーチ部隊がありますから、その辺はかなり興味を持っているところではあるんですよ。
■実際、スピーチ部隊の連中が1つやっていた仕事というのは−−、これは直接、脳には関係ないんですけど、音響信号が与えられたときに、そこから調音運動を推定するという問題を解くアルゴリズムのモデルを出しているんです。 ○どういうものですか。
■音響信号から調音運動を推定するだけでも、これはもう1対1の問題じゃないので非常に難しい問題で、それをHMMベースのモデルで解こうという話です。 ○なるほど。
■TMS(経頭蓋磁気刺激装置)を買いましたし。例えばスピーチ・パーセプションをかなりやっているときに、ブローカ野にTMSなんてやるとどうなるんですかと。当然、やっている人もいるんですけど、それに類するような問題について、もちろん実験パラダイムには工夫の余地がいっぱいあるんですけど、その辺でスピーチ・パーセプションの話をやろうかなと。 ○要は、戦略としてもいっぱいあるということですか。 ■そうですね。ひとつ我々が強いのは、調音観測をわりとちゃんとやっているということなんですよね、自前でね。それともう1つは工学系のバックグラウンドがあるので、調音運動のモデリングに比較的強い人がいると。それプラス今度は知覚実験と組み合わせてその問題を攻めようかなという。 ○じゃあ、ブローカ野をたたくと文法判断が遅れますよみたいな、ああいうノリにちょっと近いような実験をやるんですか?
■そうですね。ただ、我々の態度として、文法であるとかシンタクティックな部分とかシンボリックな部分に、それほど踏み込まないであろうと思っています。 ○はい。 ■そういう人から見ると別にミラー・ニューロンなんて関係ないじゃんと言う人もいます。たぶん、そんなもので生成文法なんか全然説明できないじゃないかとおっしゃるのは、それはその通りだと思いますね。 ○ええ。
■一方で極めて音響聴覚的なバックグラウンドからやっている人がいるわけですよ。我々はそちらに近いんですけど。 ○ふーん……。
■もう1つ言えば、スピーチというもののどの側面を重んじるかによって、これは人間、たぶん2つに分かれる。 ○なるほど。 ○次号へ続く…。
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