NetScience Interview Mail 2004/08/19 Vol.288 |
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【柏野牧夫(かしの・まきお)@NTTコミュニケーション科学基礎研究所 人間情報研究部 感覚運動研究グループ】
研究:聴覚を中心とした認知神経科学
著書:『コミュニケーションを科学する チューリングテストを超えて』(共著/NTT出版)
「日経サイエンス」連載「錯覚の情報学」(2000年2号〜2001年1号)
月刊「言語」にて「知覚の認知脳科学」連載中
ホームページ:http://www.brl.ntt.co.jp/people/kashino/index_j.html
○光と音、音と音。これら刺激のタイミングはどのように知覚されているのでしょうか。たとえばコップを落としてしまったとき、床で割れる音とその光景はぴったりシンクロしているように感じられます。ですが実際には音のほうが少しだけ感覚器までの到達時間は遅れているはずです。また、その後の脳内の処理はどのようになっているのでしょうか。これらの問題を考えていくと、私たちが知覚している心理的な「時間」は、物理的な時間と同じものではなく、環境での出来事を脳が解釈した結果であるということが明らかになってきます。
聴覚を中心として研究を行っている柏野先生らによれば、同じようなことが空間に対しても言えるといいます。知覚している空間が伸びたり縮んだりするというのです。知覚の認知脳科学の世界を味わって頂ければと思います。(編集部)
○前回から続く…… (第12回)
■ここがものすごく大事です。つまりこの相関というのはそこにピークがあるわけです。 ○ん? ■例えば、先ほどの順応に使ったズレの値というのは例えば300ミリ秒くらいですよね。順応の結果、主観的な同時点が動くのはその十分の一程度の量なんですよ。300ミリ秒全部が補償されるわけじゃないんですよ。 ○なぜですか。 ■これはなぜかというと、いろいろな可能性は考えられるんですけど、1つの解釈は過去を引きずっているから、過去の履歴を。 ○履歴。
■つまり、脳というのはその都度クリアされるわけじゃなくて、莫大な過去の蓄積を引きずりつつ、今、ものすごく偏った現象に出くわしているわけですよね。そこの重みは当然、新しいから重いんだけど、とはいえ過去のすべてを一気に忘れるわけにいかないと。 ○どうしてなんでしょうか。
■それは何でかというと、やっぱり過去を引きずっているからじゃないかというのが1つ。 ○これは何回くらいトライをやるとこうなるんですか。 ■これは2〜3分もやれば十分効果は出ます。
■そこでさらなる問題は、じゃあ、これで3週間暮らしたらどうなるんだと。 ○ええ。 ■ということは逆にこの現象でも同じようなことは起きるんだろうかと。仮にある人が、視覚がずっと遅れて見える眼鏡を付けてしばらく暮らしましたと。そうしたらもう、そこがぴったり同時に見えるようになるか。 ○面白いですね。何か異様に音速、じゃなくて光速の遅い世界に住んでいるような感じですよね。 ■そうそう。それでやってみればいいんですけど、ちょっとまだ、それをやろうかなという話もあるんですがなかなか踏み切れないでいるという。人ひとり、「犠牲」と言うと大げさですけど(笑)。 ○逆さ眼鏡実験というのは、あれも変だなと思うのは、一度なれちゃうと、外してしばらく普通に生活した後も、逆さ眼鏡を掛けたらまたフッと、すぐに適応できるようになるらしいですね。 ■そうそう、そうですね。だいたい長期的な感覚運動系の順応ってそうですね。左右ハンドルなんかもそうです。何回かやっているうちに、アメリカに行ったら別に普通に左ハンドルにパッとその瞬間に切り替わるとか。 ○何かモデルが獲得されるんですかね。しかも一度獲得されると…… ■そうでしょうね。そういうのに対応する神経科学的な話もよそのラボでは出ていますけどね、フクロウの音源定位なんかで。 ○フクロウ? ■フクロウの音源定位でプリズム眼鏡を付けるんですよ。それで世の中が全部、ある一定方向にずれて見える。 ○フクロウに付けるんですか? プリズムメガネを?
■フクロウに付けるんです。 ○あー、なるほど。 ■そこからその前の段階、つまり聴覚の空間マップを最終的に作ってその上丘に投射する、一歩手前の段階ですね、その下丘の外側核というところに、新たな視覚空間に対応する別回路が形成されて、今の視覚情報と対応しない方の回路は、選択的に抑制されているというような話が最近わかってまして、それはアメリカのラボですけど。そういう可塑性の背後にある神経メカニズムというのもいろいろ解明されつつあるんです。
■タイミングの話はこういうのですけど、ほかにも空間のものも考えられるし、ちょっとまだ言えない部分もいっぱいありますが、このノリでいろいろな実験をやろうとしてます。
○ふーん。 ■例えばどういう考えに対してということですか。いろいろなことは考えられるけど。
○たとえば北澤先生の時間順序逆転とボディイメージとの関係とか。要するにあれは体性感覚で時間順序が判定されていないということですよね。逆に時間順序がどこかで判定されて、それが体性感覚野の情報を使いつつ、頭頂葉の方に、なんかよく分からないけど身体を表現している部分があって、それが表現している空間座標みたいなものに時間順序や感覚が張り付けられているということですよね、後から。
■それは非常に面白い問題ですよね。いや、そうなんですよ。近い遠いというのもあるし、それから自分中心の座標なのか否かとか、いろいろな問題がもちろんあるし、その間での、つまり個々のモダリティの間でのつじつまの合わせ方というんですかね。その辺は非常に興味深い部分です。 ○ふーむ。ロボティクスの人たちならまた別の観点があったりするのかなあ。 ■そうかもしれませんね。 ○次号へ続く…。
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