NetScience Interview Mail 2005/03/03 Vol.311 |
NetScience Interview Mail HOMEPAGE http://www.moriyama.com/netscience/ |
NetScience Interview Mail : Free Science Mailzine | |
---|---|
科学者インタビューを無料で配信中。今すぐご登録を! |
【その他提供中の情報】 | 新刊書籍情報 | | イベント情報 | | おすすめURL | etc... |
◆Person of This Week: |
【深井朋樹(ふかい・ともき)@玉川大学 工学部 知能情報システム学科 教授】
著書:『脳を知る・創る・守る 4』(共著、クバプロ)
『ニューラルネットの統計力学とカオス』 ニューラルネットワークシステムとカオス, pp 189-244.(椎野正寿,深井朋樹. 合原 一幸編. 東京電機大学出版会, 1993)
『脳の情報表現』深井朋樹、加藤英之、北野勝則. Computer Today 2002年7月号、pp. 9-15(サイエンス社).
『脳内時計の神経機構』(岡本洋、深井朋樹. 別冊・数理科学2002年10月, pp. 51-59(サイエンス社).
ホームページ:http://brain.inf.eng.tamagawa.ac.jp/indexJ.html
○脳はどのように時間や記憶を情報表現しているのでしょうか。どんなものであるにせよ神経の発火パターンとして表現されているはずです。ではそれはどんなものなのでしょうか。どんな神経回路で実現されているのでしょうか。このような問題を「神経情報表現」と呼びます。この問題に対してモデルの立場から研究を行っている深井先生のお話をお届けします。(編集部)
…前号から続く (第8回)
■うん。ただ、僕に限らずね、やっぱりだんだん、そういういろいろなレベルの知見を統合して機能を探っていくような方向にいくんじゃないかな。 ○?
■今まで実験の人というのはやっぱりね、単体のニューロンの実験をやっている人は、それはそれ自体がものすごい大変な実験だから、そこへ集中して、まあ、いろんな成果を出すわけですね。もちろん、自分の調べているニューロンが回路の中でどう機能しているのかということに興味はあるけど、有効な手段もなかなかないので踏み込めずにいる。 ○はい。
■で、もちろん分からない部分は仮説を置かざるを得ないけれども、その仮説がテスタブルだと実験の人が思ってくれれば、あるいは実験やテストに値すると考えてくれれば、検証してもらうこともだんだん可能になってきていると思うし。 ○CA3のモデルは先生はお作りにならないんですか。CA3が何をしているかというのは。 ■リカレント・ネットワークのダイナミクスについては、別にCA3の回路を意識しているわけじゃないけど、今までにもいろいろやっています。もちろん海馬のモデルを考えるときには、もっと勉強してかからないといけないでしょうね。 ○ふむ。 ■リカレント・ネットワークであることを考慮すると、CA3回路の重要な機能として、連想記憶に見られたようなね、一般に「パターン・コンプリーション」と呼ばれているものがある。何か記憶されている情報に近い入力が入ってきたときに、それを正確な記憶パターンに直して、アウトプットするという機能です、そういうことは確かにあり得そうです。 ○ええ。
■だけどね、それだけじゃたぶんないと思うんですね。うん。 ○たとえば……? ■同じ行動を取っていても、取り巻く状況、つまり環境に違いがあるでしょう。たとえばこの部屋でやったのか、あの部屋でやったのかとか、あるいは、丸い部屋だったのか四角い部屋だったのかかね。それらは場所のコンテキストだけれども、あるいは、時間的なものもありますよね。いつやったのかという、それは月曜日だったのか、火曜日だったのかとか繰り返し行われるような行動ならば、一回目だったのか2回目なのかとか。そういったものは全てコンテクストを異にする。あるいは記憶に付随した感情的な側面なんかもコンテクストと言っていいかもしれない。 ○なるほど。
■そういうふうな文脈情報をCA3が運んでくるというふうに言われている。
○先ほど先生は、時間というのは、認知の根幹なんじゃないかというお話をされましたけど、それと、この海馬の話との間がよく分からないんですが、どういうふうにガチンとくっつくんですか。そこがよく分からないんですが。
■うーん、そうですね、どう説明したらいいかな。僕にも良く分からないから説明しようがないかもね。 ○はい。
■まず、Aが起こり、次にBが起こった、そしてCが起こったというような。それで、ある記憶は失われたり、例えばBの経験は記憶に残らないかもしれないし、にも関わらずAの後にCが起こったということは、覚えていたりするかもしれない。 ○どういう意味ですか。 ■例えばAとCの間が実際には一時間あったとしても、そういう情報は想起の最中には言語的情報として存在するだけで、物理的な時間の流れとして再体験されるわけではない。時間順序で整理されたそのエピソードみたいなのが、まあ、我々の記憶ですよね、言ってみれば。 ○はい。 ■そのときに、それが何でそういう形で、うまく整理できるかということは、脳が一般に時間というものをどう扱っているのかということと、やっぱり関係するだろうと思って。 ○ええ、ええ。 ■はっきりこうだから関係しますとは僕にも言えないけれども、やっぱり関係しているはずだと思うんですよ。 ○そこに僕は興味があるんですけど。例えば、今、目の前でしているような、こういう録音を聞くとして。誰でも時間のプラスの方向には、話を普通に再生できますよね。でも逆方向に再生しろといわれたら、簡単にはできないじゃないですか、普通は。 ■ああ。 ○でも機械にとっては簡単ですよね。それはたぶん、人間の記憶のメカニズムは物事が生起した時間の方向というものに基本的によっていて、覚えるという行為には、時間の流れに縛られた、何かこう、「決まり事」みたいなのが、あるからだと思うんですけれども。 ■まあ時系列ですよね、それがね。時系列の記憶として覚えちゃう。 ○ええ。
■ただし、経験したものを長さなんかも保ちながら、全くそのままの形で覚えるわけじゃない。そのエッセンス、出てきた順番とかコンテクストだけを覚えているとか、そういうメカニズムが働いているわけです。 ○ええ。 ■その覚えられている情報というのはね、必ずしもニューロンや回路が活動しているタイムスケールで意味的にまとまったものとして経験するわけじゃない。Aさんに会ってからBさんに会うまでは1時間違っていて、だけど次にCさんに会ったのは5分後だったかもしれない。で、さらにDさんに会ったのは、1日後だったかもしれないとか、そういうふうに、いろいろなタイムスケールで起きるでしょう。そういったものごとを、何ていうんだろうな、結び付けるものが必要になるわけですね。
■あ、そうか、これを言ったら一番分かりやすいかな。 ○次号へ続く…。
|
科学技術ソフトウェア データベース
|
◆このメールニュースは、 ◆<科学技術ソフトウェアデータベース・ネットサイエンス> ◆[http://www.netscience.ne.jp/] の提供で運営されています。 |
発行人:株式会社サイネックス ネットサイエンス事業部【科学技術ソフトウェアデータベース・ネットサイエンス】 編集人:森山和道【フリーライター】 |
interview@netscience.ne.jp moriyama@moriyama.com |
ホームページ:http://www.moriyama.com/netscience/ *本誌に関するご意見・お問い合わせはmoriyama@moriyama.comまでお寄せ下さい。 *メールマガジンへの広告掲載に関するお問い合わせはinfo@netscience.ne.jpまで御願いします。 |
◆このメールニュースは、 ◆<科学技術ソフトウェアデータベース・ネットサイエンス> ◆[http://www.netscience.ne.jp/] の提供で運営されています。 |