NetScience Interview Mail 2005/02/24 Vol.310 |
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【深井朋樹(ふかい・ともき)@玉川大学 工学部 知能情報システム学科 教授】
著書:『脳を知る・創る・守る 4』(共著、クバプロ)
『ニューラルネットの統計力学とカオス』 ニューラルネットワークシステムとカオス, pp 189-244.(椎野正寿,深井朋樹. 合原 一幸編. 東京電機大学出版会, 1993)
『脳の情報表現』深井朋樹、加藤英之、北野勝則. Computer Today 2002年7月号、pp. 9-15(サイエンス社).
『脳内時計の神経機構』(岡本洋、深井朋樹. 別冊・数理科学2002年10月, pp. 51-59(サイエンス社).
ホームページ:http://brain.inf.eng.tamagawa.ac.jp/indexJ.html
○脳はどのように時間や記憶を情報表現しているのでしょうか。どんなものであるにせよ神経の発火パターンとして表現されているはずです。ではそれはどんなものなのでしょうか。どんな神経回路で実現されているのでしょうか。このような問題を「神経情報表現」と呼びます。この問題に対してモデルの立場から研究を行っている深井先生のお話をお届けします。(編集部)
…前号から続く (第7回)
○どんなものですか。 ■例えば、もしそうだとすると、海馬の中で連想記憶的に見えるようなところを探してくると、CA3という場所になるんですよね。CA3という場所は、いわゆる「リカレント・コネクション」というのがあって。分かります? ○要するにお互い同士が結合して再帰的(リカレント)になっていると。
■そうそう。で、CA3が連想記憶として働いているとすれば、CA3にはいろいろな記憶の情報が重ね焼きされて残っていて、その情報が想起において本質的であるようなモデルになる。 ○ふーん。 ■それこそ利根川先生のところにいた中沢(一俊)さんという人なんかが、CA3のノックアウト・マウスというのを作って、それを使った行動電気生理実験とかをやっていま言ったようなことを示している。
○ああ、『私の脳科学講義』(利根川進/岩波新書)にも書かれていましたっけ。CA3領域だけでNMDAレセプターをノックアウトするっていう奴。CA1領域でNMDAレセプターをノックアウトすると空間記憶ができなくなるんだけど、CA3領域でノックアウトしても空間記憶には異常ない、という奴ですね。ところが想起はできなくなる、という話でしたっけ。あるヒントで記憶を思い出す「パターンコンプリーション」に異常が起きるんだと利根川先生は書いてましたね。
■そうするとね、海馬を連想記憶システムだと見なすモデルって、やっぱり実験と矛盾する部分があると思う。CA3が連想記憶みたいに、不完全な記憶かつどうパターンを補完するようなことをしている可能性はあるかもしれないけれど、それは全体のほんの一部の機能でしかない。 ○ん?
■例えば最近いろいろ話題にのぼることが多い、もう1つの海馬の実験なんかだと、ネズミが、実験の最中、起きて行動して学習している時間と、おねんねしている時間の神経活動を両方記録して比べたりしてるんです。 ○ふーん。
■どうも睡眠と記憶の固定化とは、かなり密接に結び付いているということは長く言われてきたけれど、そこではそういった時間の圧縮の問題なんかも、出てくることを臭わせている。 ○ふむ。 ■で、そうなると、まあ、例えばそういったところのモデルなんかも作らなきゃいけないと思って、最近ちょっと考え始めたんですけどね。 ○なるほど。
■まあ、説明したいことは、海馬のCA3というか、海馬自体が連想記憶モデルじゃないんだとしたら、じゃあ何なのかと。
○今、話せる範囲で、じゃあ。 ■うん、あの、話せる範囲といってもあんまり無責任というか、モデルができてから話すんだったら、まだかまわないかもしれないけど、まだ全然煮詰まってないからね……。 ○じゃあ逆に何か、モデルができていない段階で話せるところでいいですけど、何かモデルの細かい話は、まあ……
■うん、細かい話はね。 ○整然と? ■例えば、CA3からの入力はわりと細胞体に近いところにある。それに対して、皮質からの入力は遠くの方にあるとか。 ○樹状突起上の、細胞体から遠い部分と近い部分それぞれに入力があると、という話ですね。
■そう。あるニューロンの発火はそれに結合しているニューロンに2〜3ミリ秒で伝達されると考えられているんだけど、細胞内でも発火は樹状突起を先端部へ逆向きに伝搬して、シナプスの学習なんかに重要な役割を果たしていることが分かっている。この逆伝搬の過程にも数ミリ秒くらいかかるから、神経ネットワークは細胞内の信号伝搬も考えに入れて、はじめて閉じたものになる。 ○なるほど、そうやって連合が生まれるんだとか、そういうことですね。
■そうそう、そういった細胞内部での計算の理論と、回路での計算理論をマージして、海馬なり何なりの昨日の説明ができないかと。 ○なるほど。
■そういったことをね、取り入れて海馬や脳の回路モデルを作っていきたいと思うんです。
○そうすると、機能も逆算して出てくるのではないかというのがイメージですか。 ■そうですね。うん、イメージ的にはね。まあ相当、幸運も必要かもしれないですが。 ○でも機能のほうも、結構イメージされているものが何かあるんじゃないかなという感じも受けましたけど。
■うん、イメージしている部分もないわけじゃないんだけど。 ○ええ。
■じゃあCA3の入力は何をやっているかというわけだけど、文脈依存の情報を選んでくるといるといろいろ議論があるようだけど、少なくともCA3からの入力がなくなっちゃうとね、新規にも記憶を覚えなきゃいけないときに、うまくそれができなくなるんですよね。 ○はい。
■ところが皮質からの入力とCA3からの入力は、CA1の細胞の樹状突起で出会っているから、何かそこで、細胞内のメカニズムを通して2つの入力の間に、記憶の固定化にとって本質的に重要な相互作用が起きている気がしてならない。 ○ふーん。 ■ただ、これは本当に最近になってちょこっと考えていることだから、全くのナンセンスってことも十分ある(笑)。まあずっと前々から気にはなっていたんだけど、考え始めたのはここ1ヶ月ぐらいなので、ほとんど思いつきの域を出ていない(笑)。 ○配信はまだまだ、1カ月後か2カ月後先ですから。 ■ああ、そうですか。 ○ええ。その間にだから発展させて頂ければ(笑)。 ■あんまりいいかげんなことを言うと、何をお前はいいかげんなことを言っているとか言われちゃうといけないので(笑)。 ○次号へ続く…。
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発行人:株式会社サイネックス ネットサイエンス事業部【科学技術ソフトウェアデータベース・ネットサイエンス】 編集人:森山和道【フリーライター】 |
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