NetScience Interview Mail 2005/01/27 Vol.306 |
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【深井朋樹(ふかい・ともき)@玉川大学 工学部 知能情報システム学科 教授】
著書:『脳を知る・創る・守る 4』(共著、クバプロ)
『ニューラルネットの統計力学とカオス』 ニューラルネットワークシステムとカオス, pp 189-244.(椎野正寿,深井朋樹. 合原 一幸編. 東京電機大学出版会, 1993)
『脳の情報表現』深井朋樹、加藤英之、北野勝則. Computer Today 2002年7月号、pp. 9-15(サイエンス社).
『脳内時計の神経機構』(岡本洋、深井朋樹. 別冊・数理科学2002年10月, pp. 51-59(サイエンス社).
ホームページ:http://brain.inf.eng.tamagawa.ac.jp/indexJ.html
○脳はどのように時間や記憶を情報表現しているのでしょうか。どんなものであるにせよ神経の発火パターンとして表現されているはずです。ではそれはどんなものなのでしょうか。どんな神経回路で実現されているのでしょうか。このような問題を「神経情報表現」と呼びます。この問題に対してモデルの立場から研究を行っている深井先生のお話をお届けします。(編集部)
…前号から続く (第3回)
○ちなみにその、一定のリズムで振動をする細胞は、ワーキング・メモリーの中では、どういう役割を果たしていると想定されているんですか。 ■そこはね。 ○先生のお考えでもいいんですけど。 ■我々がモデル化したニューロンについては、役割はこれなんだという議論はまだないですよね。関与しているかどうかさえ分からない。 ○どうしてですか。
■それは何故かというと、行動中の動物の脳であのようなニューロン活動をとらえるのが難しいということもあるけれど、あのような活動変化が生理学的にはあまりありそうもないような強い刺激に対してしか起こらないという点が大きい。そこでモデルでは、どのようにすれば弱い刺激でも同じようなことができるかという点も示しています。 ○はい。 ■あるいは回路レベルでは次のレベルの情報処理が可能になるかもしれない。例えば、数を使った計算をしたりとか。 ○ええ。
■逆に回路の場合にどんな問題があるかということを言うと、分かりやすいのかもしれない。 ○ふむ。 ■で、特定の発火率の持続発火を維持しようと思えば、そういう状態がアトラクターになるようにシナプスを調節してやればいい。これはそれほど苦労しなくても実現できる。その場合、状態空間の中で、その状態が神経回路ダイナミクスの固定点になっているわけですね。つまりどんな状態から出発しても、その安定状態にたどりつく。 ○ええ。その状態に引き寄せられていくと。
■で、これが例えば20ヘルツの状態であれば、まあ基本的にその回路の中では、20ヘルツの活動が持続的に安定しますよということになるわけですね。まあ、物理学の言葉で考えれば、「井戸型ポテンシャル」みたいなものの底ですね。 ○あーなるほど。「井戸型」みたいなのが通常の固定点アトラクターだとすると、シナプス結合を細かく調節した奴は連続アトラクターになって、谷底みたいな感じになると。で、その谷底方向ならどこでも安定になるわけですね。単なる「井戸」じゃなくて「溝」みたいな。 ■そうそう、こういうポテンシャルが実現するのは、回路の、パラメーターをファイン・チューニングした場合だけで、当然のことながら、それらの値がずれたときには、すぐ機能が失われてしまうでしょう。 ○はい。 ■それがまず大きな問題ですよね。もちろん単体の細胞だって、何らかのパラメーターはある程度調節しなきゃいけないんだけれども、シナプスといってもたくさんのシナプスが個別にあるわけだけど、そういう大量のパラメーターの個別のファイン・チューニングとかいうことは、必要なくなりますよね、少なくとも。単体ニューロンならばね。 ○ええ。
■あともう1つ、そのファイン・チューンした後でもポテンシャルの底に1方向に対してこうフラットな平面ができていると。 ○ふむ。
■まあ、そういった問題なんかもあったりするんですね。ただ、回路でもそういった問題を防ぐ方法とか、いくつか考えられていたりするので、必ずしも単体ニューロンで連続的なアトラクタを実現するよりも回路レベルで実現する方が困難とは言えなくなってきています。 ○ええ。 ■このような理論からのフィードバックが実験に対してね、また非常に刺激になっていく。モデルの予言をじゃあテストしてみようかとか、そういうことで進んでいくと。
■で、ついこの間、ソサエティー・フォー・ニューロサイエンス(SFN)というのがあったんですよね。ご存じかもしれないけれども、まあアメリカの神経科学会ですけれども、イコール世界の神経科学会みたいになっていて。2万5,000〜2万6,000人かな、今年の参加者が。毎年あるんですけれども。 ○はい。
■でね、やっぱりアメリカでは、実験と理論とは、もうタイアップが非常に進んでいましてね。いろんな予測をモデルが出して、それを実験が確認して、またその分からない部分をモデル化して、というサイクルが進んでいるんですよね。今年は特に、非常に強くそんな印象を持ちました。 ○ほう。 ■やっぱりさすがに、日本の実験の人もそういうことに、かなり気が付いてきているという感じなのかなと思っているんですけどね。 ○ええ。やっぱり生理系の先生に話を聞く機会が多いんですけど、僕ら外野から見ていても、そろそろ情報論とか計算論とか、数理的にどうこうといった視点を持った人たちがちゃんと入ってこないと、そろそろ限界かなと。 ■そうでしょうね。うん。実際、例えばサルの実験とかのタスクの組み方自体でも、まあ、いい悪いは別として、かなり理論的な興味というのかな、昔で言えばゲーム理論とか、ああいうふうなものに根差した意思決定の課題とかが出てきていて、新しい知見とかも得られているようです。 ○聞くところによると、北米神経科学会でも、今年はゲーム理論関連のポスターが多かったらしいですね。
■ああ、今年はすごかったですけどね。ニューロン活動が本当にタスクで要求されている行動のコーディングに関係しているのか見ようと思ったら、タスクに確率的な要素などを盛り込んで、ニューロン活動と行動変化の間の相関性を見ない絵尾いけないわけですから、必ずそんな実験が話題になる日は来ると思っていましたけれど、一気に始まったという感じです。
○それで先生方はどういうモデルを立てていらっしゃるんですか。 ■1つはね──ああ、今さっきの単体ニューロンの話の続きですか。 ○次号へ続く…。
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