NetScience Interview Mail 2005/04/28 Vol.319 |
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【深井朋樹(ふかい・ともき)@玉川大学 工学部 知能情報システム学科 教授】
著書:『脳を知る・創る・守る 4』(共著、クバプロ)
『ニューラルネットの統計力学とカオス』 ニューラルネットワークシステムとカオス, pp 189-244.(椎野正寿,深井朋樹. 合原 一幸編. 東京電機大学出版会, 1993)
『脳の情報表現』深井朋樹、加藤英之、北野勝則. Computer Today 2002年7月号、pp. 9-15(サイエンス社).
『脳内時計の神経機構』(岡本洋、深井朋樹. 別冊・数理科学2002年10月, pp. 51-59(サイエンス社).
ホームページ:http://brain.inf.eng.tamagawa.ac.jp/indexJ.html
○脳はどのように時間や記憶を情報表現しているのでしょうか。どんなものであるにせよ神経の発火パターンとして表現されているはずです。ではそれはどんなものなのでしょうか。どんな神経回路で実現されているのでしょうか。このような問題を「神経情報表現」と呼びます。この問題に対してモデルの立場から研究を行っている深井先生のお話をお届けします。(編集部)
…前号から続く (第16回)
■大脳皮質局所回路の話をあまりしなかったな(笑)。 ○ん? ■僕がこれまで力を入れてきたことでね。大脳皮質のニューロンはいろいろなタイプがあるんだけど、それをある程度モデル化してまして。大脳皮質は6層構造になっているんだけど、あれがどういうふうな機能を担っているのかをなんとか知りたいと思っていたんです。 ○ええ。 ■その方向の仕事はいろいろ形を変えながらも、ずーっと続けてる。遅々として進まない面もあるんだけど。細胞のモデル化までは何とかなるんだけど、回路構造といったとたんにね。それらしく組んでも全然何も考え方ような結果が出てこないとか色々あって(笑)。 ○脳の皮質って、素人が見ても綺麗に層構造になってますよね。 ■うん。 ○たぶん、層になっていることに何らかの機能があるんだと思いますが、僕が不思議だと思ったのは、その一方で、層構造が壊れる遺伝子異常があるじゃないですか。あのネズミとか見ていると、研究者の人は層構造が壊れてちゃんと歩けないとか言うんですけど、でも、顕微鏡を覗くと確かに層構造はむちゃくちゃになってるんだけど、それなりにはちゃんと生きて動いてるじゃないですか。むしろそっちが気になってしまって。じゃあ「なんで層構造があるんだろう」と思っちゃったんです。
■うん。そうだね。まさにそこが知りたいんだけどね。 ○結果的にあれは層構造になっているわけですよね。
■そう、結果的になっている。それぞれ、入力と出力の受け持ちが違うでしょう。ドーパミンであるとか、アセチルコリンであるとか、そういった神経修飾物質の当社の仕方も違うだろうし、近傍のニューロン群との連絡も違う。そこが大切なんじゃないかなという気がしてるんだけどね。 ○それは神経繊維の連絡がどうなってるかによるのでは? 何個ステップがあるかとか。
■ああ、そうじゃなくて直接繋がっているものについての話。どちらもダイレクトに繋がっていたら、そりゃ遠いほうがだいぶ時間がかかるだろうと思っちゃうんだけど、実際にはそうじゃないらしいんだよね。 ○ふむ。
■そうなると層ごとに住み分けている理由は、入力が特定のところにターゲットされるとか、あるいは一つの細胞でも、樹状突起のどの位置に入力させるか、そういうことをコントロールするために作られていると考えてるわけ。 ○ふむ。『脳を知る・創る・守る 4』に収録されている講演のなかで、樹状突起っていうのはローパスフィルターになっているんだという話がありましたね。そういうこととも関係するんでしょうか。どこで情報が入ってくるかによって周波数が……
■それも一つです。信号が樹状突起の先端部に入力されて、細胞体に伝わって出力が出るまでの順方向の情報処理についての議論でしたが。でも、学習とも深い関係ある話がもう一つあって、以前話したspike timing depended plasticityね。細胞が発火したという情報は樹状突起を通じてシナプス入力を受けている先端部に運ばれるわけですよ。発火出力の情報とシナプスにおける入力の情報とに相関があるとシナプスが強められたり、逆に相関がなかったら弱められる。 ○ふーん……。
■最近、海馬に興味を持っているのも実はね、本当に個人的な思いこみだけど、海馬の回路を発展させたものが大脳皮質の回路になっているのかな、という気がしていて。 ○どういう情報処理なんでしょう。
■そこらへんをね、海馬をもとに見ていきたいと思ってるんだよね。海馬は限られた局面においてはだんだん、やってることが分かってきたから。こういうことのこういう面には、たとえばCA1が必要だとか。内側嗅野からCA1の直接投射路は長期記憶の固定化に必要だとかね。 ○ふんふん、なるほど。だいぶ分かりました。
■海馬は本当に競争者多くて、いままで避けていたんだけど、やっぱりやらなくちゃいけないかなと(笑)。大脳皮質がわかりたければ。 ○全部どこかで統合して頂けるとありがたいですね。
■うん、ホント、できるといいですね。大脳基底核が一番の難物かもしれないけれど。
○大脳基底核の話について教えて下さい。 ■大脳基底核は運動生成とか学習、あるいは行動の計画なんかに関与していて、特に運動の認知的な側面にとって重要だと考えられている。病態ではパーキンソン病が非常に有名でしょ。パーキンソン病のときに、ある神経核の間に、非常に強い同期が見られる。それは視床下核とか、淡蒼球の外側部と呼んでいる部分なんだけどね。その二つの核の間には双方向のやりとりがあって、振動的活動が見られるという話がある。 ○健常な人はそういう振動は見られないんですか。
■振動っていうか、持続した発火は見られるんだけど、同期してない。コヒーレントじゃないんですよ。ところが、パーキンソン病だとコヒーレントになっちゃう。 ○はい。 ■そのへんを、やりたいなあと真剣に思ってるんですけどね。 ○そうですね。病気の問題は深刻ですし。 ■当事者にとってはすごく切実な問題だと思いますね。モデルがどのくらいコントリビュートできるか分かりませんが。 ○次号へ続く…。
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