NetScience Interview Mail 2005/04/21 Vol.318 |
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【深井朋樹(ふかい・ともき)@玉川大学 工学部 知能情報システム学科 教授】
著書:『脳を知る・創る・守る 4』(共著、クバプロ)
『ニューラルネットの統計力学とカオス』 ニューラルネットワークシステムとカオス, pp 189-244.(椎野正寿,深井朋樹. 合原 一幸編. 東京電機大学出版会, 1993)
『脳の情報表現』深井朋樹、加藤英之、北野勝則. Computer Today 2002年7月号、pp. 9-15(サイエンス社).
『脳内時計の神経機構』(岡本洋、深井朋樹. 別冊・数理科学2002年10月, pp. 51-59(サイエンス社).
ホームページ:http://brain.inf.eng.tamagawa.ac.jp/indexJ.html
○脳はどのように時間や記憶を情報表現しているのでしょうか。どんなものであるにせよ神経の発火パターンとして表現されているはずです。ではそれはどんなものなのでしょうか。どんな神経回路で実現されているのでしょうか。このような問題を「神経情報表現」と呼びます。この問題に対してモデルの立場から研究を行っている深井先生のお話をお届けします。(編集部)
…前号から続く (第15回)
○こちらって工学部ですよね。 ■そうですね。
○ここに入ってくる方というのは、どういう方ですか。 ■あの、去年からね、知能情報システム学科というのができたんですよね。その中の一部に人間情報科学コースというのがあって、実は、ほら、文部科学省でやっているCOEというのがあるでしょう。あれに一応はなっているんです、選ばれていまして。たぶん一番小さな私立じゃないかと思うんだけど。でね、それでまあ、そういうコースも作ったんだけど、やっぱり脳というのに興味を持って入ってきてくれる学生というのが、増えているという話は1年生を担当している先生方から聞きましたね。 ○なるほど。
■脳って学際的なものだから、ちゃんと理解するためには数理的なこともやれた方がいいし、生物実験なんかももちろん必要だと。心理実験なんかもあるしね。 ○いろんな視野を持った人ですか。 ■今時、どこの世界でも1人の人間が全部をやるという必要は全然ないわけでね。ただ、やっぱり、いろんなアプローチの仕方があるんだということは、認識しておかなきゃいけないですね。少なくともこれから研究者や技術者になろうという人は、そのぐらいの意識は持っていて欲しい。 ○なるほど。情報論的な考え方ができる人が脳の研究にもっともっと入ってくると、もっともっと面白いだろうなと思うんですけどね。 ■そうですね。なんといっても脳は情報処理をしているんだから。 ○でないと、何かもう、「開けてびっくり玉手箱」じゃないですけど、「これを調べるとこれが分かりました。ああ、面白いですね」とかいうような話は、正直言って僕らみたいな素人でももう聞き飽きたので。 ■ああ、なるほどね。 ○何かね、「確かにその話それ自体は面白いんだけど、だから何なんですか」という感じがしちゃうんですよ。もうちょっと、理解に繋がるような話を聞きたい。
■あの、何かが発見されたとかそういうのばかりじゃなくてですか。うん、確かにそうだろう。賛成。 ○そうなんですか。
■うん。やはり脳を何とか真似てすごい情報処理マシンを作りたいという思いが強かったんじゃないかな。でも工学の場合は、やっぱり工学独自の目的があるから、必ずしも脳を見ていかなくてもいい部分もあるわけですよね。計算論として成り立っていれば。 ○要するに生の生物としての? ■そう。生物の脳をね、ただし情報論的なセンスを捨てずに見ていける人。 ○これってニューロンで本当に実現できるのとかいうようなことですよね。 ■まあまあそういうことですね。というのは、工学的な発送に立ったモデルも頭打ちになってきていると思うんですよ。できることやできる状況が限定されて過ぎていて、鉄腕アトムにまだ到達、全然できていない(笑)。いわゆる二足歩行を問題にしてるんじゃないですよ。 ○ああ、はい。そこら辺は、僕はたぶん、さっき言っていた時間の問題であるとか、それこそ、海馬がやっている「何らかの情報圧縮」であるとかのことが、何か……。何か根本的に欠けているからじゃないのかなという感じがするんです。 ■そうそう、そうだと思いますよ。まあ、時間だけじゃないかもしれないけど、そういった実際の脳がやっていることが、あるいは使っている巧妙なしかけが、まだ欠けている部分があるんですよね、我々が知らない部分が。で、それはやっぱり脳からしか学べないし、だからもう一歩、工学的なモデル自身が踏み出すためにはね、脳に学ばなきゃいけない時期だという気がしているんですよね。実験の技術も日進月歩だから、そこから得られる情報をフルに活かすためにも、そういう仕事が有利になってきている。 ○はい。 ■今までの工学研究ってやっぱり基本的には、何か役に立てばいいわけなんで、同じものじゃなくてもそれができればいいという思想で行くわけで、それはそれでいいと思うんですよ。想像と創造の世界というか。ただ、やっぱり人間のイマジネーションって、そんなにすごく、広大な領域をカバーできるわけではないから、自然の実際の観察とか、そういったことからまた新しい刺激が入ってきて、別のイマジネーションが出てきたりということになるわけでしょう。そこをちゃんとやらなきゃ、やっぱりいけないんじゃないかなという気がします。 ○ええ。
■脳ほど巨大なシステムになると観察だけからは本質は分からない。だから創ってみる。これはこれで発展を生む研究システムかもしれないんだけど、巨大さ故に、そのまま創るわけにいかない、だからどうしても単純化しないといけない。でもどう単純化するかは、その人が脳についてどれだけ深い知識を持っているかで、ずいぶん違ったものになるはずです。
■最近は、回路もある程度分かってきた。いっぽう、実験で細胞の内部で色んな物質が動いて何が起こっているかも分かってきた。脳の機能というのは、セルレベルの性質とか回路のインタラクションとかが整合性よくまとまって生み出されているはずなんだから、そういうふうなことに踏み込んだモデルをつくっていきたいと思います。 ○そのわりには普通に、ゼロイチで、取りあえず神経は発火するかしないかで、それだけ見ていればいいんだといった議論が多いのはなぜですか。 ■うん、やっぱり扱いやすいからなんですよね。それに例えば情報は発火率にのっかるとか、逆に同期している活動のみが意味があるとか、前提条件を適当につけてしまえば、それで十分近似できるのは事実。でも扱えないことも一方で存在する。 ○たしかに近似はできるのかもしれないですが……。
■そうそう。たしかに近似はできると思うんです。
■大脳皮質局所回路の話をあまりしなかったな(笑)。 ○ん? ■僕がこれまで力を入れてきたことでね。大脳皮質のニューロンはいろいろなタイプがあるんだけど、それをある程度モデル化してまして。大脳皮質は6層構造になっているんだけど、あれがどういうふうな機能を担っているのかをなんとか知りたいと思っていたんです。 ○次号へ続く…。
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