というわけで、自由に書かせてもらう。
まず、この本をプレゼント企画でもらえなかったら、買うかどうか。買わないだろう、というのが私の結論。ざっとめくっただけでも、多分そういう判断を下すと思う。なぜか。はっきり言って、面白くないのだ。
面倒くさいことばかりつらつら並べている、そんな印象がある。エヴァを衒学的に色々と解説してみせる本は多いが、この本の良くないところは、それが独りよがりに陥っているように感じてしまうところ。ほほう、と思わせるものがあまりないし。まあ、そういうのは、特にエヴァ本にはよくある内容だけど(僕は基本的に、作品は作品で楽しければそれでいいじゃないか、という人なのである)。
それにエヴァの設定解釈にも間違っているところもあるように思う。解釈、というより基本的なデータの問題だが。例えばジオフロントの構造とか。リリスは確か、ジオフロントの中心にいたんじゃなかったっけ?それにゼーレのシンボルについてもごちゃごちゃと書かれているけど、あれってヤハウェの顔でしょ?私はエヴァの事はあまり詳しくないが(深夜再放送にて初見)、それでもそんな事思ってしまうのだから、詳しい人から見たらこの本は穴だらけなんじゃないかな。
エヴァ本は山ほど出ているが、そろそろ、こういう衒学的解読系の本は流れから外れてきているように思う。「END OF 〜」が公開されてしまった今となってはなおさらだ。そういう意味で、ちょっと時期はずれ。まあ、最後の方のシンジの心象風景解読あたりはそうでもないかもしれないが…。
僕なら、一人の著者によるこういう本ではなく、パソ通やネット上のエヴァ発言、あるいはエヴァの映画公開日の日記とか「だけ」を集めて一冊つくるけど。その方が、なんだか眺めてて面白そうだ。阪神大震災の時にはその手の、手記集みたいなのがいっぱい出たじゃないか。そういう本ね。
この本は、サイバーパンクの「フリ」をするにはどうすれば良いか、綴った本である。この本を読めば君もサイバー君だ!
しかし、何よりびっくりなのは、こういう本が刊行されちゃうことだよ。まあ、僕みたいな奴が買ったりするからなんだろうけど。
なお、日本版特別付録として、結構な紙幅を割いた「サイバーパンク・ブックガイド、ミュージックガイド、ムービーガイド」がついているが、こちらは至ってマジメ。マジメすぎるくらいでイマイチかな。
昔、パンクな人に、「パンクってなんです?」って聞いたら、「これがパンクだ」と言えばそれがパンクにるんだ、と言われた。サイバーパンク(死語)も、名乗ればそれでオッケーよ。
要するにサイバーっぽい話を散りばめただけの本だった。こういう内容の場合、何を言いたいのか、どこを盛り上げたいのか、その辺りをきちっと考えて、演出しながら書かないと、ただのダラダラ本になってしまう。その悪い例のようだ。
解説は巽孝之氏なのだが、正直言って、良く分からない。この本の内容に賛成なのか反対なのか、その辺も分からない。その辺りをもっとはっきりして欲しいかな、と思う。
この本の著者こそ、「脱出速度」を越えた方がいいんじゃないか、そんな風に思ってしまった一冊。
中身だが、「いつもの」といった感じ。寓話的な世界で本質を語る、大原ワールドが綴られている6編の小説。
うーん。いろいろと書きたいことがあったのだが、忘れてしまった。書きたいことがあるような、ないような。私にとって、この著者の小説の読後感は、砕け散ったガラスに映ったバラバラの現実の断片のようで、それを一つ一つ書いていくのは、なんだか面倒なような、意味がないような。そんな気がするのである。もっとも、葉っぱの一枚一枚を書かなければ木のことは書けないわけではないように、そういうモノではないようにも思うのだが。
なんだか、不思議な感覚なのだ。突き破れそうで突き破れない膜のような。それでいて、ぱん、と弾けてしまうあぶくのような世界。
まあ、いいか。
昔僕はイラストを描いていたことがあるのだが、大原まり子の小説を読むと、絵を描きたくなる。そんなことないですか?最後に一節を引用。
なぜ、彼らがそんなに苦しんだか、わかる?
それはね、とってもかんたんなことなの。
人は所有することができないものがこの世にあることを、学ばねばならない。「宇宙で最高の美をめぐって」より
宿敵モーガンを巡る後半部分とクライマックスは、マキャモンばりの展開。それと、前作「ゴースト・トラップ」の書評でも書いたが、ますます「ナイトハンター」シリーズ的な、ダークファンタジーの要素が増えてきている。真世界と現実世界の関わりの設定が、作者の中でもだんだん明確化してきた、ということなのだろうか。面白くなってきたぞ、って感じですね。エンターテイメントに加速が入ってます。