「ナノテクノロジーが確立すれば、肉体を好きなようにつくりあげることができることが可能になって、死そのものに意味がなくなる。これはきわめて哲学的な問題だ。少なくとも、モノをつくるという概念に意味がなくなる」。これで、彼がSFファンであるらしいことが判明(^_^;)。たぶん、マークルとかとも付き合ってるんだろうな。アルコーとかにも登録しているのだろうか?うーん、彼と雑談がしたい(^_^;)。年も同じくらいだし。会いたいなー。
なぜこんなことを思い出したか、本書を読んだ人には言うまでもないと思う。本書が、ナノテクSFだからである。「ブラッド・ミュージック」を書いたベアのナノテクSF、しかも新しいシリーズものの第一作である、と聞けば期待せずにはいられない。
と、思って読んでみたんだけど、ナノテクSFではなかったね。また帯に騙された。ナノテクはたしかに登場するけど、味付けというか、当たり前のガジェットとしか使われておらず、主題は別のところ──こころ、自意識の問題──にあった(んじゃないかなー?違う?)。
ベアは、おかしな作風を持った作家だ。
本書も、読後(読中)の感想は「よく、こんな話が書けるなあ」というものだった。
うーん。
いやあ。
そういう物語なのだ。とにかく読んでくれ。この人のイマジネーション能力というか、語りの能力というのはどうなっているのだろうか。
ビジュアル的にはアメコミの人だと思うんだけどね。本書も、もちろん例外ではなく、ビジュアルはまるっきりアメコミ。それでいて、こういう世界(知りたい人は読むように)を描いてしまうんだから、不思議な気がする。
ベアは、自意識、自分とは何ぞや、といったことを問いかけ、答えを探すためにSFを書いているんだろう、多分。形而上の問題を形而下に引きずり下ろして問い直すことができる、これがツールとしてのSFの有用性の一つであるならば、ベアは、やはり類稀なSF作家だ。
そんなことを、改めて再確認してしまいました。
読後すぐなので、頭がふらふらしてあまり書けない。ヒマがあったら書き直します。
取りあえず買って読んでくれ。「永劫」や「ブラッドミュージック」に比べれば軽い。
これだけじゃ本当にしょうがないので、おまけとして<訳者あとがき>にはない情報をいくつか。
参考文献には上がっていないが、人間の精神構造についてのお話はミンスキーの「心の社会」、あるいはミンスキーの弟子達の本の内容を思わせる。興味のある人は読んでみると良いだろう。私はヴードゥーよりもなによりも、こっちの方が気になった。
また、参考文献に上がっているドレクスラーの"Engins of Creation"は、もちろん日本語訳がある。邦題は「創造する機械」。これも読んでくれ。英語でも良いというあなたにはオンライン版がある。
これは、吸血鬼ものの一つである。解説では従来の吸血鬼ものから大きくはみだした作、とあるが、そうでもない。どちらかというと、最近の吸血鬼ものとしては、この辺りのノリのほうが、オーソドックスになりつつあるのではないだろうか。
主人公は女性。どうして吸血鬼になったのか、どんな吸血鬼なのか、といったことをここで書いてしまうと、作者の折角の構成がだいなしになってしまうので、書かない。読んでくれ(今月こればっかり。ごめんなさい)。
こういう本は雰囲気が重要(というか、全て)なので、読む気になって、一気に読んだ方が良いと思う。読めるし、読みやすいし分かりやすい。結構面白いし。
この人の描写は独特。「味覚」に訴えるような文章。「口には、電解液でうがいしたような味がしていた」といった端的なものもあるが、それだけではなく、全体的に、なんとなく独特の味がするような文章の持ち主だとみた。金属的な酸っぱさ、それでいてどこか甘く、唾液を呼ぶような、飲み始めたらクセになるような文章。つまり、吸血鬼ものを書くにはぴったりの文章なのだ。これは訳者の力量による部分も大きいのだろう。
なお、続編もあるそうだ。また、どっかRPG的だなーと思っていたら、やっぱりRPGとも絡ませた展開も本国ではしているとのこと。日本ではどうなるか知らないが。
本書そのものは面白いし、十分楽しめた。
作者デビュー長編にして、英国幻想文学賞、ブラム・ストーカー賞、両賞の受賞作。
エジプトの王、ラムセス2世。彼のミイラが発見されたところから物語は始まる。実はラムセスは不死の人間だった!というわけで、かつてのエジプトの大王が蘇る。生まれながらの大王である彼は髪はふさふさ、筋骨たくましく、お目々きらきら、という風貌で女性を一目で虜にしてしまう、要するにハーレクイン・ロマンスなどの表紙そのまんまの男。実際、ストーリーもほとんどソープオペラかメロドラマ。ラムセスと、ヒロインの考古学者の娘は恋に落ちる。そしてエジプトに出かけたラムセスが、博物館の身元不明のミイラの中にかつての恋人クレオパトラの姿を発見して…。
もちろん、もっと普通の登場人物もいっぱい出てきて色々とやるわけだが、おおざっぱに言えばこういう話である。身も蓋もないが、本当にこういう話なのだ。アン・ライスが本当に書きたいのは要するに、素晴らしく超自然的にパワフルな良い男と、これまた超自然的な絶世の美女、この世のものならぬ美しい存在が、死すべき定めの人の世界を歩き回る絵なのだろう。もちろん、こういう存在を通して、この世の人間模様、内面などを描く、というのもあるのだろうが、それよりも何より実際に描き出したいのは、そういうことなのだろうと思う。だから、そういう絵に引かれる人は思わず病みつきになってしまうのだ。
とくにこの「マミー」は「生きることとは?」みたいな重いテーマは特に感じられない。むろんところどころには覗いてはいるが、どちからかというと、やはり「ハーレクイン・ロマンス」といった感じだ。
なお、本作はジェームズ・キャメロンによって映画化されることが決定しているという。本書は、実はもともと映画の脚本として書かれたそうな。で、それが一度流れてしまったのだが、また日の目を見ることになったのは「インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア」の成功が大きかったらしい。ラムセスとクレオパトラ、いかにも絵になりそうだしなー。ちなみに、著者本人はアントニオ・バンデラスが大のお気に入りらしい。しかも、その映画を期に、本書の続編も書かれるかもしれない、という。
<ヴァンパイア・クロニクルズ>のレスタト(映画ではトム・クルーズがやってた奴ね)同様の外見の主人公、ラムセス。アン・ライスはこういう人がお好みなんだろうなー、きっと。身体は不死、しかし中身は苦悩もすれば欲もある、ただの人間…。まいどお馴染みとはいえ、やはり魅力的で、使い勝手のあるキャラクター設定ではある。
三人の巨匠に限らず、昔の名作といわれるSFに共通なのは、読みやすい、ということ。なんでこんなに読みやすいのか、不思議なくらいだが、確かに読みやすい。さくさく読める。アシモフが前文に書いているとおり、秘訣は「簡潔に書く」ということなんだろうけど…。長さを感じさせないテンポ。というより、内容が要求する適度な長さ。おさまるべきところにおさまるべき文章が収まっているような気がする。