NetScience Interview Mail
2003/04/03 Vol.226
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【下条 誠(しもじょう・まこと)@電気通信大学 電気通信学部 知能機械工学科 教授】

 研究:触覚センサ、触覚ディスプレイ、メカトロニクス,歯車計測
 著書:人工現実感の展開 (3.2節), コロナ社, pp.87-98 (1994)
    Intelligent Sensors Handbook of Sensors and Actuators 3, Elsevier Press, p.165-176 (1996)など
    *参考になる書籍として
        『先端技術が拓く医工学の未来』アドスリー

 ホームページ:http://www.rm.mce.uec.ac.jp/index.html

○触覚ならびに神経インターフェースの研究をしていらっしゃる下条先生のお話をお送りします。触覚は身近な感覚ですが知らないことも多い感覚ではないでしょうか。また、神経接続インタフェースの話は、多くの読者が関心を持っているところだと思います。(編集部)



…前号から続く (第8回)

[24: 人間の触覚センサと感圧ゴム]

科学技術ソフトウェア
データベース

○触覚センサですが、先生のやつだと、やっぱり今はどのくらい触覚の精度を上げていくかという問題なんですか。一番の課題は?

■僕はやっぱり自由曲面に……。

○どうやって貼るか、ですかね。

■ええ。それから配線数をどのくらい減らせるか。

○なるほど。自動車でも最近、いわゆるハーネスの問題がものすごく出てきているみたいですけど。その辺の問題というのはやっぱり今後生じてくるんでしょうね。

■ええ、そうでしょうね。低消費電力ということも大切ですね。
 あと触覚を使って一番問題になるのは、壊れないことじゃないですか。

○そうですね。だから感圧ゴムを使ってらっしゃる?

■そうなんです。
 あと、ちょっと狙ってるのが、横方向の力というのは取れるセンサーが少ないんですね。だから横方向も取れるようなもにしようと思ってます。

○人間はどうしているんですか。

■人間は機能分担していて、圧力を測るもの、振動を測るもの、皮膚の皮膚の伸び縮み方法を測るもの、と分かれていますね。

○伸び縮み?

■ええ。

○横に指を動かしてる感触って、伸び縮みなんですか、感覚的には。

■そうなんです。皮膚の引っ張りですね。

○そうなんですか。びっくりです。

■それは、指を動かすと対象物表面の凹凸で振動しますね。振動感覚でざらざらというのがわかって、引っ張り感覚でこちら方向に動いているというのがわかる。だから複合なんですね。

○ちなみに、指紋があるないが触覚に関係あるとかよく言いますけれども、あれって本当に関係あるんですか。

■指紋というのがあると、指紋のところの下に出ている乳頭と言われる溝のところに感覚器があって、実はここら辺に応力集中が起こるんですね。

○ん、溝があるところですか? 

■ええ、そうなんです。そうすると感度が。

○ああ、そうやって構造で応力集中させて、感度を上げているんですか。

■ええ。

○はー。頭いいですねー、人間の体って。

■そうなんですね。

○そういう構造で最初から作っているということですか。

■作っているのか、たまたまなのか。

○ま、そうですね。たまたまできたんでしょうけど。でもそうなっているんですか……。

■そうなっちゃっているみたいですね。

○じゃあ、将来はロボットとかでも、そうやって「ずる」をすることでセンサの数を減らしたりとかできる?

■ええ、そういうのはできるはずですね。

○なるほど。

[25: 触覚をロボットにどう応用するか]

○将来、ロボットに実装する予定というのはあるんですか。全身に張るとか。

■僕はやりたいですね。
 だから、本当にそういうのが必要になったときに、すぐ供給できる技術というのも、一応そろえておこうと。

○でも、どうなんでしょう、要するに外装にくっつけて、それをたぶんどこかでバーッと集中させて処理させないといけないわけですよね。

■情報処理ですか。

○ええ。

■情報処理は、石川先生の局所的な情報処理で行う概念で、実は触覚チップの中に埋め込むんです。

○うん、局所的にやるところは1チップでやるにしても、当然、行動に反映させるには統合してやらないといけないですよね。そういうのってどうなんでしょうね。
 それに、発熱の問題も大きいですよね。

■ええ、でも触覚は、今のものを使うとそんなに電力は使わないんです。当たっているところしか電気は流れませんから、構造からすると。だから、そんなに発熱の問題は触覚ではないんです。
 あと情報処理の部分ですね。情報処理の部分がどのくらい発熱をするか。だから、全身にセンサを付けて、例えば腕のところに触覚チップをいくつ必要か。それが多くなってくると発熱問題というのは大きくなってくる問題ですね。確かにそれはある。

○はい。

視覚あとそれから情報処理をどれくらいまでやる必要があるのかということですが、人間の場合を考えても、触っているかどうかだけですよね、たぶんね。
 全身の中でどこら辺をどう触っていてるか。そういう情報を上位に上げていくと、それなりの行動をする。また人間とのインターフェースもそれなりに取れるんじゃないかなと考えていますけど。

○どう活用するのかがなかなか難しそうですね。
 たぶん今のロボットって、自分の姿勢って角度情報とかから取っているんですよね。

■そうですね。あと足の裏かな。

○ああ。あとは加速度センサとか……。

■そうですね。足の裏に密に張るというのは歩行制御に使えるかなと思いますね。

○そうですね。非常に細かく、力センサとかよりも安く作れるんだといいですね。
 そういうふうに触覚を要するに工学的に作っちゃえというのがロボットへの応用で、人間の方のやつはまた別というかたちになるんですか。

■そうですね。

[26: チップの設計にはセンスが必要]

■(ディスプレイを見ながら)これが最近出した触覚チップの写真です。今、こんなものを作ってるわけです。これができないと、卒研生が困る。1月にできてこないと困るんだけど(笑)。

○え、卒業研究で作ったんですか。

■そう。

○卒業研究でこういうことをやっちゃうんですか。じゃあ、院生の人は何をやるんですか?

■一応院生と作業分担してやっているんですけれども。
 でも、これってセンスがあるんですね。

○センス、ですか。

■ええ。だから工学部の人は全部できるかとか、そういうわけではない。彼は卒研生なんですけど、センスが良いため、やらしています。

○なるほどね。確かにそういう話はよそでも聞いたことありますが。

■今、シミュレータというのはすごくいいのができてますね。だから、設計も楽になりました。

○なんか100万だか200万だかのソフトが出たとか。

■我々は、そんなん大金にはまるっきり縁がないですね。
 VDECという共同利用センターを使っているので、大学はほぼタダみたいにソフトが使えるんです。

○ふーん。
 センスがあるという話ですが、そういう意味でのセンスって何なんですか。
 工学向きセンスでもLSIの設計向きセンスの話でも、いいんですけど。

■学科にロボメカ工房というのがあるんです。彼はそこのメンバーで、昔からモノ作りの経験が豊富なんですね。それと物を作るのが好き。
 あと発想法が−−やっぱり引き出しがいっぱいあるんですかね。頭の中の知識と経験の引き出しが。いろいろなことをやっているから引き出しがいっぱい増えていて、その知識・経験と現在の問題とのアナロジーから、問題解決の発想が生まれるんではないかと思います。
 つまり、こういうことが昔あったから、こういうところを使おうとかそういうことじゃないかなと。

○こういう応用ができますよとか、そういうのですか。

■ええ。

[27: 煮詰まったら「やってみなさい」]

○たぶんこのインタビュー・メールというのは、学生さんもいっぱい読んでいると思うので、最近の学生さんに対して言いたいこととかあったら、お願いします。

■言いたいことですか。

○ええ、もしあったら。

■言いたいことは、いっぱいありそうな、なさそうな(笑)。

○素面でそんなこと言えと言われても困るよという感じかもしれませんけれども。

○ええ(笑)。
 うちの学生君は、なかなかいい学生君が多いですね。物を作るのが好きな学生が来るので、言われたことは――言われたことというのはおかしいですけど、自ら進んでいろいろなアイデアとか出してくれるので助かりますね。そいう意味で言うと、やる気のある学生が多いということで、私は助かっているんだけど、逆に言うと、やる気のない学生というのが一番困る。

○やる気のない学生?

■というのはやっぱり、好きじゃないんですね、こういう研究が。

○工学部は比較的そういう人は少なそうに思えますが……。そういう人でも工学部に来るんですか。

■ええ、偏差値とかでね、入ってくる人がいる。
 あとは何でしょうね、やっぱり必要なのは自分の頭で考えることかな。
 僕が学生に言ってるのは、授業で教わるということが1だとすると、やっぱり自分で学ぶことは10ぐらい。自分で文献などを調べたりとかしなくちゃいけないよと話をしますけどね。授業なんていうのは、1週間のうちに数回でしょう。それですべてをわかかるはずはない(笑)。

○特に工学部なんかそうでしょうね。自分でやらないとわからないというところが多いでしょうし……。

■ええ。
 あとは、「考え込んじゃう学生」っているんですね。考え込んじゃうというのは要するに、頭の中で、いろいろ考えてきて、そこで止まっちゃうんです。これがこうだからできないとか、これがこうなってどうしましょうとか、そこで止まっちゃって悩んじゃっているんでね。

○ああ、なるほどね。考えすぎる人。

■ええ。そういう学生がたまにいるので、そういうときは、じゃあ、ここまでこうやったんだから、ここでちょっと実験をやってみなと、実験をやらせちゃうんです。そこでブレイクスルーを見つけさせる。そうすると意外と何かつかんでくる学生というのはいますね。
 だから、頭の中じゃなくて「実際に手を動かしてやってみて、その中から問題点なり、ブレイクスルーとか、解決を見つけてごらん」というふうに言うと、よくなる学生がいます。わからないことは「自然に聞け」といっていますが。
 やってもやっぱりわからないというのもありますけど(笑)。

○それは何となくわかります。勝手に煮詰まっている人とかいますよね。勝手に煮詰まるというのもなんか冷たい言い方だけど。

■やっぱり煮詰まったときの脱出の仕方というのがわからないのね。

○自分で、やってみればいいんだというのがわかっていればいいんでしょうけどね。

■そう。「そのときは、まずやってみなさい」と言うんですけどね。

次号へ続く…。

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http://www.shokabo.co.jp/keyword/2003_openlecture.html

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http://www.shokabo.co.jp/keyword/2003_openday.html

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◇朝日 死亡牛の全頭検査、17道県はできず BSE感染源対策
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◇朝日 SARS感染者、福岡行き飛行機に搭乗 邦人106人も
http://www.asahi.com/national/update/0330/001.html

◇朝日 田中さん効果? 子供に望む職業に「エンジニア」上昇
http://www.asahi.com/national/update/0329/018.html

◇朝日 田中さん、エンジニア復帰宣言 「入社当時の意気込み」
http://www.asahi.com/national/update/0328/034.html

◇朝日 食糧増産に光明?成長操る新たんぱく質発見 名大教授ら
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◇朝日 岡山県議選の電子投票空振り? 無投票ならキャンセル料
http://www.asahi.com/politics/update/0331/004.html

◇朝日 脳神経伝達援助のたんぱく質発見
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◇毎日 地理情報システム(GIS)の3次元化を進める パスコマーケティング戦略の伊東秀夫部長
http://www.mainichi.co.jp/digital/coverstory/archive/200303/27/1.html

◇毎日 携帯のブリューを使う緊急医療サービス KDDIとインターカルテ
http://www.mainichi.co.jp/digital/mobile/archive/200303/27/1.html

◇毎日 携帯でロッカー開閉、「クロスキューブ」を東京駅に設置
http://www.mainichi.co.jp/digital/mobile/archive/200303/26/2.html

◇毎日 ユビキタス環境を実現する通信機器 IRIと松下電工が共同開発
http://www.mainichi.co.jp/digital/network/archive/200303/26/1.html

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http://www.mainichi.co.jp/digital/computing/archive/200303/25/3.html

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◇japan.internet.com IC タグを使って蔵書を管理できる JIP の図書館システム
http://japan.internet.com/public/news/20030325/10.html

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◇MYCOM PC WEB【情報処理学会レポート】IPv6セッション - IPv6ビジネス最前線 その技術・応用と課題とは
http://pcweb.mycom.co.jp/news/2003/03/28/15.html

◇MYCOM PC WEB【情報処理学会レポート】 他サービスとの融合を目指すIP電話 - その課題
http://pcweb.mycom.co.jp/news/2003/03/28/28.html

◇ZDNet アクセサリ携帯が日本で難しい理由
http://www.zdnet.co.jp/mobile/0303/26/n_xelibri.html

◇ZDNet IBM研究者が語る、ナノテクの現在
http://www.zdnet.co.jp/news/0303/28/ne00_avouris.html

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http://www.nanonet.go.jp/japanese/nano/index.html

◇ナノネットインタビュー:大阪大学大学院生命機能研究科 教授 難波啓一 氏 細菌べん毛の謎に迫る 〜揺らぎが実現する高効率モーター〜
http://www.nanonet.go.jp/japanese/mailmag/2003/011a.html

◇Internet Watch IPA、電子政府実現にむけた本人認証技術に関する調査を実施
http://internet.watch.impress.co.jp/www/article/2003/0325/ipa.htm

◇PC Watch 富士通、人型ロボット「HOAP-2」を発表 〜ニューラルネットを利用した動作学習が可能に
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2003/0327/fujitsu.htm

◇GAME Watch 手軽な価格で楽しめる本格的なラジコン飛行機 太陽工業「夜間戦闘機 月光」
http://www.watch.impress.co.jp/game/docs/20030320/toy104.htm

◇ケータイウォッチ ドコモ、腕時計型PHS「WRISTOMO」を開発
http://k-tai.impress.co.jp/cda/article/news_toppage/13342.html

◇産総研 カーボンナノチューブを用いて超短時間パルスレーザーの発振に成功
http://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2003/pr20030326/pr20030326.html

◇理研 宇宙の果てのブラックホールの産声を捕らえる
http://www.riken.go.jp/r-world/info/release/press/2003/030320/index.html

◇武田先端知財団。「2002年武田賞 フォーラム」講演録アップ
http://www.takeda-foundation.jp/award/takeda/index.html

◇富士通研究所 世界初!非接触型手のひら静脈認証技術を開発
http://pr.fujitsu.com/jp/news/2003/03/31.html

◇ガートナー ジャパン ICカードの利用意識調査結果を発表 多くなったカードの取り扱いに対し、67.3%の人が不便さ感じる 期待されるマルチアプリケーション対応ICカード
http://www.gartner.co.jp/press/pr20030319-01.html

◇日本科学未来館 科学技術スペシャリスト募集
http://www.miraikan.jst.go.jp/topix/030330.html

◇Yahoo! Internet Guide 2003年5月号 NEWS BROWSE 4月7日は鉄腕アトムの誕生日 ヒト型ロボットはどこまで進化したか?
http://www.zdnet.co.jp/internet/guide/0305/newsbr/04.html

◇BizTech・電子自治体コラム ICカードインフラコスト
http://premium.nikkeibp.co.jp/biz/e-gov/column6_5a.shtml

◇BizTech・電子自治体コラム  IC CARD WORLD 2003 フォトレポート
http://premium.nikkeibp.co.jp/biz/e-gov/column6_5a.shtml

◇科学技術者のための総合リソースガイド・NetScience
  http://www.netscience.ne.jp/

 *ここは、科学に関連するイベントの一行告知、URL紹介など、
  皆様からお寄せいただいた情報を掲示する欄です。情報をお待ちしております。
  基本的には一行告知ですが、情報が少ないときにはこういう形で掲示していきます。
  なおこの欄は無料です。


NetScience Interview Mail Vol.226 2002/04/03発行 (配信数:25,032 部)
発行人:株式会社サイネックス ネットサイエンス事業部【科学技術ソフトウェアデータベース・ネットサイエンス】
編集人:森山和道【フリーライター】
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