NetScience Interview Mail
2003/03/06 Vol.222
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【下条 誠(しもじょう・まこと)@電気通信大学 電気通信学部 知能機械工学科 教授】

 研究:触覚センサ、触覚ディスプレイ、メカトロニクス,歯車計測
 著書:人工現実感の展開 (3.2節), コロナ社, pp.87-98 (1994)
    Intelligent Sensors Handbook of Sensors and Actuators 3, Elsevier Press, p.165-176 (1996)など
    *参考になる書籍として
        『先端技術が拓く医工学の未来』アドスリー

 ホームページ:http://www.rm.mce.uec.ac.jp/index.html

○触覚ならびに神経インターフェースの研究をしていらっしゃる下条先生のお話をお送りします。触覚は身近な感覚ですが知らないことも多い感覚ではないでしょうか。また、神経接続インタフェースの話は、多くの読者が関心を持っているところだと思います。(編集部)



…前号から続く (第4回)

[10: 神経インタフェースの問題点]

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■満渕先生は、義手を神経インターフェースで動かそうという仕事をやってます。一応、感覚はつなぐことはできた。今度は大脳から筋肉に指令を送る神経系から運動指令というのをとらまえて義手を動かそうということです。そうすると、本当に神経インターフェースで義手ができる。

○ほほう。人間を動かそうと思ったら動くという感じの義手で、なおかつ触覚が分かるものですか。それができたらすごいですね。

■そうです。『スター・ウォーズ』のあれですよね。見ました?

○『帝国の逆襲』のラストシーンでルークがやってた奴ですよね。指を動かすと中でカタカタッと動いていた奴。

■ええ、あんな感じの義手をつくりたいなということです。

○筋電とかそういうのじゃなくて。

■うん、じゃなくて。

○そりゃ面白い。筋電の義手は僕もやらせてもらったことがあります。それでも結構おもしろいなと思いました。でも、やっぱりあれも慣れは必要だろうなと。できるんですかね?
 先程、先生もおっしゃったマウスとアームを接続して云々というやつとかは、海外の番組VTRにも出てきますけど、マウスがこうやって餌を採ってますと言われても、ふうんと思ってしまうところがどうしてもあって(笑)。

■いや、私も難しいんじゃないかと(笑)。だから、できるとしても20年、30年先なのかもしれない。今の技術だとやっぱり難しいかなと。

○どこら辺が難しいんですか。

■やっぱり神経と接続する部分ですね。接続することがうまくできれば、そんなに難しくないと思います。

○接続する部分が難しいというのは?
 そもそも端子をどこに埋め込むのか−−というか、どの神経がどれを伝えているのかというのが判読するのが難しいということでしょうか。

■ええ。それと電極とコネクションして、そのコネクションが安定的に保てる、そういう技術ができれば可能でしょうけど。
 どちらの技術にしても、マイクロサージェリー、微細手術みたいな技術が必要な世界なんでしょうね。

○一本一本突いて確かめる感じなんですかね。

■ええ。それを人間でやろうと思ったらなかなかね。

○でも逆に言えば、人間以外ではできそうもないですよね。サルの神経を一個一個試していっても、サルはわからないだろうから(笑)。

■かもしれない。
 ある程度、大まかにつないでおいて、先程の人間の脳の可塑性というのがありますので、学習ですか。あれで人間の方で再配置というのもできるかもしれませんね。

○なるほど。でも、脳での学習というか、再配置を期待してやるというのも結構危険だなと思いますが……。

■そうですよね。

[11: バンドエイドをしていると……]

○先生方の神経接続インターフェースというのは、どう役に立つのかとか、そこらへんが、いわゆる普通の人でも実にわかりやすい研究だと思うんですけれども、そもそも先生がお始めになったころというのは、どんな感じだったんでしょうか。どういういきさつで、こういう研究の方にお入りになったんですか。

■はい、私はもともと生命研というところにおりまして、人間にはもともと興味があったんです。そこで触覚をやっていて、触覚の工学的実現ということで触覚センサをやっていたんです。
 今回の神経インターフェース実験でのコントリビューションの大きな部分は、この触覚センサを作ったことと、あと全体システムの構築は行ったですね。各コンポーネントは満渕先生のところであり、ロボットアームは石川先生の方でやったものです。

○ええ。

■それで、私の中では、触覚センサを作ることが一つ。もう一つは触覚ディスプレイを作るという2つの流れがあるんです。今回のものは、その触覚センサを作るというところでこの研究に入っていったわけなんですね。もともと触覚にはすごく興味があるので、お話があったときにやりましょうというような話になったんです。

○触覚センサというのは、以前からずっと「必要だ」と言われているわりには、正直に言うと、あまり使われてない感じがするんですが。

■あまり使われないですよね。

○どうしてなんですか?

■あれは、私が思うには現状では必要ないからなんでしょうね。
 どうして必要ないかというと、今のロボットが行う作業は、力操作が主で、細かな操作--スキルが必要な操作--、というのはやらないんですよね。

○ん?

■例えばトンカチを使うとか、ニッパーを持ってきて線を切るとかは、触覚はいらないんですよね。

○ああ、なるほど。

■ただ、繊細な操作、細かな組み立てとか、スキルが必要な動作ですか。そういうのを本当にロボットがやり出したら触覚センサがないとできないと思うんですね。
 これは人間もそうで、たとえば人間も、バンドエイドをしていると触感覚がかなり殺されちゃうんですね。あれで細かな操作をやろうとするとなかなかできない。字を書こうとしてもなかなか、変な違和感があって書けない。ということで、細かな操作をロボットがやる時代になってくれば、触覚センサというのは非常に使われると私は思います。

○確かにバンドエイドをつけると細かい作業は途端に難しくなりますね。なるほど。
 ロボットの場合は角度の制御か力の制御だと思うんですけれども、触覚を使うとその辺の制御って、どう変わるんですかね? その辺が僕、いまいちピンときてないんですけど。

■うーんどうでしょうね。あまり変わらないんじゃないかな。

○伺い方が悪かったですかね。ロボットの場合、触覚センサを使うにしても、最終的には、かたちとしては角度や力の方に変換するわけですよね。人間はどう変換しているんですかね。あるいはロボットに今後応用するのに、こういうかたちで変換されるという部分を教えていただければと思うんですが。

■例えば、柏木さん---この方は作業療法士の方ですが、障害者の方たちが喫茶店などでテーブルから立ち上がる場合など、いろいろなものがあるところでの動くのをひどく怖がると述べています。それでは、どうするかと言うと視覚を使った動作では、だめで、触・運動感覚的な動作でなければ無理だそうです。  つまり、テーブルから立ち上がる時に、接触を気にしながら、テーブルの形状に沿った体の動きを必要とするようですね。まさに、体の動きと、全身の接触との関係で動作を制御していくことでしょうか。  また人間が歩く場合、足裏の触覚が重要であるとの話もあります。人間の足指の空間分解能はかなり高いのです。これはZMP法といってホンダの二足ロボットが歩くときの制御方式なのですが、足裏と床の間に発生する力を正確に計測する必要があります。ロボットの二足歩行用の足裏への利用というのも有るかもしれませんね。

○何となくイメージはわかるんですけどね。確かにバンドエイドとか手袋とかをすると、なんかいつもと勝手が違いますから。ロボットの歩行に関しては、梶田秀司さんへのインタビュー・メールを読んで頂くということで。

[12: 触覚センサのキラーアプリは?]

○どういうアプリケーションが触覚センサのキラーアプリになるのかなと思ったんですが。

■先ほどのスキルが必要な操作というものが一つ。
 もう一つは、やっぱり皮膚を通じたロボットとのコミュニケーションかなと考えてます。

○と仰るのは?

■今、安全が問題ですよね。
 人間と共存したときに、ロボットが動いた場合に、いろいろなところに接触していく。そのとき接触して、モノを壊さないように配慮する。あと、人間がそばにいると、動いたときに人間との接触を確かめる。
 あとはロボットの皮膚を通じて、何かロボットにコマンドを与えるというか。

○ポンポンとか方を肩をたたいてやるとか。そういうことですか?

■ええ。皮膚を通じたコミュニケーション、ロボットと人間のスキンシップ、そういう部分は使えるんじゃないかなと。

○確かにそうかもしれませんね。肩をたたいたら振り向くというのは、それは確かにおいしい動作ですね、人間と協調するロボットだったら。

■ええ。だから意外と全身の皮膚に付けるというのが重要かなと。

○最近必ず、人間協調ロボットということになると、こういう話が出てきますけど、やっぱりそういうところに触覚センサのニーズはあるんですかね。

■そういうところはかなり使えるんじゃないかな。と思うんですね。
 あと、家電で掃除をするロボットってありますよね。

○はい、最近出てきた。

■ああいうロボットの表面全部に、触覚センサを付けるとどうかな、とか。

○ガツンと当たったらですか。

■ええ。たぶん視覚となると、高価だろうから、触覚をいっぱい貼っておいた方がいいんじゃないか。

○触覚センサってやっぱり安くできるんですか。

■作り方によりますが触覚は安いですね、たぶん。実際、我々の方法だと確か安くできる。
 あと、視覚だと死角があるでしょ(笑)。デッドアングルというんですか、視覚の死角が無いように付けるのは大変でしょうね。

○なるほど。それと、触覚は常にオンになっている感覚器官ですよね。

■そうですね。人間でも大体、視覚情報が10の7乗ビット/セコンドなんですね。それで、触覚が10の6乗ビット/セコンドぐらいらしいんですね。ですから、視覚情報の10分の1ぐらいの触覚の情報量というのを人間は取って動いているという知見があって。だから、たぶん本当のロボットをつくるんだったら、触覚がないと人間と同じようなことはできないのかもしれない。

○人間の場合、触覚情報ってかなりの部分は無意識で処理しているというか、意識に上らないところで処理しちゃっていますよね。そういうところは今後の課題になるんですかね、もし本当にロボットに実働しましょうとかいうことなると。

■そうなんでしょうね。無意識で触覚情報を使って、動作の制御をするとか、そういことをやっているんでしょうね。

○ここの部分のだけの情報を徹底的に使うとか、今、いすに座っていても、いすに座っていますという情報とかほとんどネグっているというような感じがするんですよね。その辺とかどうしでいるんでしょう、人間とか。そういうのとかわかってはいるんですか。

■人間は順応というのがあるんですね。

○ああ、だんだんこう……。

■ええ、わからなくなる。眼鏡を掛けているとわからなくなる。ただ、変化だけをとらえる。
 人間では、変化のある情報が重要で、また感覚器も変化に対しては敏感ですね。生存に必要なのでしょうね。
 全身に触覚を取付けた場合。そういう使い方もあるかもしれないですね。

○ああ、変化を取る。

■ええ。だから前と違った感じだけを取るわけです。

[13: 触覚提示]

○じゃあもう一つのほう、触覚のディスプレイ、触覚提示の研究というのはどういうかたちになっているんですか。

次号へ続く…。

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◇毎日 月探査:中国が年内に計画スタート 時期は不明
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◇毎日 ヒトクローン:研究目的を含めた全面禁止法案を可決 米下院
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◇毎日 ジャワ原人:独自に進化 現代人「アフリカ起源説」有力に
http://www.mainichi.co.jp/news/selection/archive/200302/28/20030228k0000e040007000c.html

◇毎日 PS2採用の車シミュレーター、富士重とSCEが共同開発
http://www.mainichi.co.jp/digital/computing/archive/200302/27/3.html

◇毎日 検証「光新世代ビジョン」 NTTが描く光通信の近未来像とは
http://www.mainichi.co.jp/digital/network/archive/200302/27/1.html

◇毎日 日本でもウケるか?プリペイド携帯 J−フォンの新市場開拓戦略
http://www.mainichi.co.jp/digital/coverstory/archive/200302/26/1.html

◇毎日 世界最小のバイオコンピューター・デバイスを開発
http://www.mainichi.co.jp/digital/computing/archive/200302/26/5.html

◇毎日 大学の研究をベンチャー事業化 松下など大手12社が支援
http://www.mainichi.co.jp/digital/solution/archive/200302/25/1.html

◇BizTech 「我が社のウエアラブル・コンピュータがパーキンソン病患者を援助」と、米Xybernaut
http://biztech.nikkeibp.co.jp/wcs/j/comp/233594

◇BizTech TrimbleとRosum、ビル内でも位置検出できるGPS技術開発で提携
http://biztech.nikkeibp.co.jp/wcs/j/comp/233542

◇BizTech 東北大、ヤコブ病の潜伏期間延長させる新分子を発見
http://biztech.nikkeibp.co.jp/wcs/j/medi/233553

◇BizTech 「IT社会ではすべての個人情報に注意を払え」---経産省が警告
http://biztech.nikkeibp.co.jp/wcs/j/comp/233369i

◇BizTech 双葉電子、カーボン・ナノチューブ使ったFEDパネル
http://biztech.nikkeibp.co.jp/wcs/j/elec/233392

◇BizTech カルピスやキリン、花粉症等に対する乳酸菌効果を相次ぎ発表
http://biztech.nikkeibp.co.jp/wcs/j/medi/233860

◇ASCII24 “nano tech 2003 国際ナノテクノロジー総合展”開幕――NECと日立が燃料電池搭載モバイルをデモ展示!!
http://ascii24.com/news/i/topi/article/2003/02/26/642113-000.html

◇HotWIRED イスラエル研究者、「世界最小のバイオコンピューター・デバイス」開発
http://www.hotwired.co.jp/news/news/20030227303.html

◇HotWIRED 高齢者にとって利用しやすいテクノロジーとは
http://www.hotwired.co.jp/news/news/20030227305.html

◇HotWIRED 新治療法の研究でないがしろにされる臨床試験被験者の立場
http://www.hotwired.co.jp/news/news/20030227306.html

◇ZDNet NTTコム、個人ユーザーに対する新サービスコンセプト「CoDen(個電)」
http://www.zdnet.co.jp/broadband/0302/26/lp13.html

◇ZDNet ミツバチロボットがMIT学生賞受賞
http://www.zdnet.co.jp/news/0302/28/nebt_04.html

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http://www.zdnet.co.jp/news/0302/24/nj00_mobilepc.html

◇ZDNet 体温を電力源にワイヤレス通信 SIIらが開発
http://www.zdnet.co.jp/broadband/0302/24/lp25.html

◇ZDNet 携帯電話で録画予約、松下がブロードバンドレシーバを発表
http://www.zdnet.co.jp/broadband/0302/24/lp26.html

◇PC Watch 産総研、「働く人間型ロボット」の最終成果を発表  〜突き飛ばされても起きあがれる? 転倒制御デモも初公開
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2003/0227/hrp.htm

◇Internet Watch 欧州の電子化計画「eEurope」は全体として成功している〜EU発表
http://internet.watch.impress.co.jp/www/article/2003/0217/ee.htm

◇MYCOM PC WEB 【ISSCC 2003レポート】スマート布、切手サイズのタービンなど、組み込み技術セッション
http://pcweb.mycom.co.jp/news/2003/02/19/11.html

◇羊土社 イレッサ報道による薬剤を取り巻く諸問題について
http://www.yodosha.co.jp/bioventure/bionews/n31.html

◇KEK 日本が生んだ新しい加速器 〜FFAG加速器〜
http://www.kek.jp/newskek/2003/janfeb/ffag.html

◇文部科学省 「国立大学法人法案(仮称)」関係6法案の概要
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/15/02/f_030222.htm

◇CNN 壊滅的被害もたらす小惑星が接近…あなたは知りたい?
http://www.cnn.co.jp/science/K2003030100062.html

◇ヤマハ パソコン上でリアルな歌声を合成 歌詞と音符を入力するだけで、 人の歌声による楽曲を作成 歌声合成ソフトウェア『ヴォーカロイドVOCALOID』を開発
http://www.yamaha.co.jp/news/2003/03022602.html

◇Internet Watch スカイリーら、ワイヤレスP2P技術を使ったデータ配信実験を実施 〜書店の本棚に近づけばPDAに書評データが転送されてくる
http://internet.watch.impress.co.jp/www/article/2003/0225/skyley.htm

◇アストロアーツ パイオニア10号から最後の信号が届いた
http://www.astroarts.co.jp/news/2003/02/26pioneer10/index-j.shtml

◇BizTech電子自治体 政府/自治体の現場に聞いた電子化の実態
http://premium.nikkeibp.co.jp/biz/e-gov/sp030224a.shtml

◇科学技術者のための総合リソースガイド・NetScience
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NetScience Interview Mail Vol.222 2002/03/06発行 (配信数:24,951 部)
発行人:株式会社サイネックス ネットサイエンス事業部【科学技術ソフトウェアデータベース・ネットサイエンス】
編集人:森山和道【フリーライター】
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