NetScience Interview Mail
2000/10/12 Vol.118
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◆Person of This Week:

【平藤雅之(ひらふじ・まさゆき)@農林水産省 農業研究センター 研究情報部 モデル開発研究室 室長】

 研究:計算生物学、アグリインフォマティクス
 著書:バイオエキスパートシステムズ(コロナ社、ISBN4-339-02277-2)

ホームページ: http://model.narc.affrc.go.jp/

○計算生物学、アグリインフォマティクスの研究者、平藤雅之さんのお話をお届けします。
平藤さんの研究主題は「桃源郷」。
なんだそれ、と思った方は、本シリーズをお読み下さい。(編集部)



[23: 研究者の経済原則]

科学技術ソフトウェア
データベース

○ゲノムプロジェクトなどでも、じゃあ次の目標はプロテオーム(タンパク質のセット)だ、とか言い出すじゃないですか。そんなに次から次へと矢継ぎ早に目標出さなくてもいいのになあ、と思うこともあるんですけど。

■あれも目の前の山を登るための予算取りじゃないですか(笑)。

○クリントンとヴェンターが並んで記者会見したのは非常に象徴的でしたけどね。

■あれで一山超えちゃったでしょ。というか、頂上についちゃった。取りあえず今は周りに低い山がたくさんありますね。

○ほう。そんなふうに思われますか。

■遠くの方で霞んでいる山はとてつもなく高いですからねえ…。だからその山へ行く人って少ないでしょうね。リスクが高すぎて。

○やっぱり収穫逓減?

■そうですね。研究者の行動を観察すると研究者の経済原則で動いてるでしょ。論文数を稼がなくちゃいけないとか、特許取得数を増やさなきゃいけないとか、新製品を速く出して収益上げなくちゃいけないとか。

○それははっきりありますか。

■はい。でも研究者だって人間ですから、本音の部分もあると思いますよ。もともと研究が楽しいから研究者になったわけですよね。だから本来は楽しむべきなんだけど、そんな風にビジネス化しちゃうと楽しさは半減しちゃいますよね。
 ITや桃源郷の話に戻りますが、こういった研究の楽しい部分というのは、一つのビジネスチャンスなんですよ。つまり、これまでは国民一人一人が持つ「研究で楽しむ権利」をプロの研究者に預託して、国民の代わりにプロの研究者がやって来ました。

○はいはい。

■ところが、いまや世の中がオタク化して、フリーターやりながら、研究者を凌駕するようなことをやっちゃう人もいるわけですよね。

○それこそ、ITとかソフトはそうでしょうね。

■ええ。ゲノムも、データベースが充実してきたので家でもできます。

○デスクトップ・ゲノム・プロジェクトとか(笑)。

■なるでしょうね。実際、最近のバイオベンチャーにはオフィスにパソコンしかないというのが増えてますね。フラスコ振る単調で辛い作業は、別のところで研究者がやる(笑)。
 そうなったときに、研究の楽しい部分は商品になるはずです。バイオスフィア2のような方向はその一つの事例だと思うんです。「ゲームのバーチャルな刺激じゃ満足できない」、「リアルの世界でわくわくしたい。」となると、「それなら、みんなに研究させてあげます」って(笑)。

○それって、SETI@home(http://www.vacia.is.tohoku.ac.jp/~s-yamane/articles/setiathome/home_japanese.html 参照)が近いんじゃないですか。

■そうですね。

○こないだHotWIredかなんかに出てましたが、今度はそれを商売ベースでやろうという話もあるそうじゃないですか。解析してくれたらお金をあげますと。僕はその話を聞いて、ゲノムなんかもそれでやれば良いじゃないかと思ったんですけどね。

■遅くないですね(笑)。僕も一つ新しいビジネスモデルを考えていたんですが、やばいな、その話がここで出るというのは(笑)。

○そうなんですか(笑)?

■まあ、そういうトレンドはとどめようがないですね。

[24: 「こういう環境に住めるとしたら、あなたならいくら出しますか?」]

■たとえば、宇宙実験でサンプリング作業みたいな単純作業はWebで一般公募して、Web上でマニピュレーターをリモコン操作してやってもらったらいいと思うんです。毛利さんは忙しいんだから、そういうことやらせちゃいけない(笑)。
 自動化が難しい単純作業を一般開放すれば、やりたがるボランティアはいくらでもいると思いますよ。打ち上げ費用を稼ぐためには、有料でもいいかもしれない。
 宇宙開発関係のプロジェクトって、ボランティアでもやりたい人多いでしょ。Yahoo!オークションなんかで「毛利さんの代わりに作業する権利」を売り出したら、1000万円くらいの値段ついちゃうかも知れません。

○うん、それはほんと、そう思いますね。  もしね、宇宙開発の目的を最初から、本当に「宇宙旅行」ってことにしてたら、 とっくの昔にできてたんじゃないかと思う。

■NASAの仕事なんか、お金を払ってでもやりたいと思っている人がいくらでもいますしね。

○みんな、宇宙にはお金払うと思うんですね、そういう意味では。H2が爆発したとき文句を言うのも、あれは逆に期待感の表れでもあると思うんです。

■そうですね。積極的に許そうという動きも出てきたでしょ。「あんなことで非難しちゃいかん」と。東海村の臨界事故だと、そんな意見は絶対に出てこないですからね。宇宙の方は、まだ長い目で見ようと意見がありますね。

○そうですね。

■だから、僕もこれ(桃源郷研究)の関連で、Webでアンケート取ろうかと思ってるんです。

○というのは?

■「こういう環境の宇宙や地上に住めるとしたら、あなたならいくら出しますか?」と。

○ほう。じゃあそれは例えば環境評価法みたいな感じで? CVM(Contingent Valuation Method、仮想評価法)みたいな?

■そうですね。その結果、みんながいくら出せるか分かれば、たとえばこれが数十兆円から数百兆円の潜在的な市場がある産業だということが分かるでしょう。そうすれば、そういう話をしたって荒唐無稽じゃなくなるわけです。

○ふむ。それはまさにCVMそのものですね。CVMは一般的に環境の価値、特に代替価値とかじゃなくて、「この環境の『存在価値』はいくらですか」という数字をはじき出すときに使う方法ですけど。

[25: スペースコロニーの正のイメージはガンダムで作られた]

■環境って見せるサンプルによって影響受けるでしょ。この分野だと、ガンダムみたいな一つのイメージのスタンダードがありますよね(笑)。

○やっぱりメディアがつくるイメージの影響は大きいと思われますか。

■大きいですよ。スペースコロニーのイメージにもグローバルスタンダードがあるでしょう。

○オニール型コロニーですね。あれがガンダムみたいな田園風景で呈示されたから、いま我々はスペースコロニーに対して正のイメージを持っているということはありますね。あれがもし映画「ブレードランナー」みたいにずっと酸性雨が降っているようなイメージだったら、また違ったでしょうし(笑)。

■やはり、そういう感性に直接訴えるイメージがないとダメですね。

[26: 脳の情報処理と生命の進化の問題を量子論的アプローチで]

○やっぱり平藤さんは、かなり変わったタイプの方ですね、研究者の中でも(笑)。

■ええっ、そうですか?

次号へ続く…。

[◆Information Board:イベント、URL、etc.]

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  http://www.shokabo.co.jp/keyword/labo_autumn.html
  http://www.shokabo.co.jp/

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 詳細  http://www.moriyama.com/diary/2000/diary.00.10.htm#event

■ U R L :
◇若田宇宙飛行士からの回答(打上げ前)宇宙開発事業団
http://jem.tksc.nasda.go.jp/iss/3a/answer_bf.html

◇「宇宙開発ベンチャー・ハイテク開発制度」の研究テーマ
http://yyy.tksc.nasda.go.jp/Home/Press/Press-p/200010/venture_001004_h01_j.gif

◇地震調査研究推進本部 地震調査委員会 鳥取県西部の地震活動の評価
http://www.jishin.go.jp/main/chousa/00oct0/index.htm

◇ノーベル賞
http://www.nobelprizes.com/

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編集人:森山和道【フリーライター】
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