NetScience Interview Mail 1999/01/28 Vol.038 |
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【春山純一(はるやま・じゅんいち)@宇宙開発事業団 つくば宇宙センター
先端ミッション研究センター】
研究:SELENE月探査計画、彗星研究
○今回からNASDAの春山純一氏にお伺いします。
春山氏は日本の月探査計画、<セレーネ>計画に携わっておられます。惑星探査計画に直接携わっておられる方の声をお聞き下さい。
8回連続予定。(編集部)
■私はNASDA(宇宙開発事業団)に入って、まだ3年も経ってないんですよ。その前は宇宙科学研究所にいたんです。それまではNASDAとは全然縁がなかった、っていうのが正直なところなんですよね。だからNASDAの人の感覚とはずれているかもしれません。
○ほう。
■特に私は工学、つまりエンジニアじゃなくってサイエンス側なんで、どちらかというと自分たちで「こういう科学をやりたい」という立場でものを作るとか、データを取る、っていうのが主目標なんですね。
いままで宇宙開発事業団はどちらかというと、まとめ役が中心だったんですけど、それをやるとですね、NASDAの中での自分たちの希望がなかなか出ない。そうすると、色んな外部の意見の取りまとめ、マネージメントだけになってしまうんです。
○なるほど、そうかもしれませんね。
■そういうことがあって、いやそうじゃないだろう、やっぱりミッションも自分たちの中から精力的に作ろうという動きがあったみたいで、それが宇宙科学研究所と一緒に<セレーネ>っていうのを一緒にやろうとか、コンバインしてやるっていう動きになったようなんですね。
その中から私が科学の側から、どういうデータが欲しいのかを言う人間として、NASDAで探査に携われる機会を得たと思っています。
[01: セレーネ計画の概要] |
○ではまず、月周回衛星計画、セレーネ計画とはどんなものなのか伺いたいと思います。
■はい。セレーネ計画は、日本独自の月探査計画です。月を周回する探査衛星が、2003年頃にH-IIAロケットで打上げられる予定です。何回も言いますけども、宇宙開発事業団(NASDA)と文部省宇宙科学研究所(ISAS)の共同ミッションでして、いろんな先生方が参加されているプロジェクトです。予算的にはもう見通しがついていて、2003年目指して開発を進めている、という状況です。
この計画の主目的はざっというと、月の起源や進化を解明するためのデータの取得と、月面軟着陸など月探査に必要な技術開発をおこなうことの二つからなります。ちなみに<セレーネ>という名前は、ギリシア神話に登場する月の女神セレーネ(SELENE)から取ったものです。このSELENEという名称は、SELENE:SELenological and ENgineering Explorer(月に関する学問ならびにエンジニアリングのための探査機)の略にもなっています。
○探査衛星のハード構成は?
■高度100kmの極軌道を周回する2.1トンくらいの主衛星と、もっと遠くを周回する39kgくらいの小さいリレー衛星で構成されています。
「セレーネ」は打上げから約5日後に月近傍に到達して、月楕円軌道に投入されます。その後、段階的に遠月点高度を下げていって、最終的には、高度100キロの軌道に投入されます。リレー衛星はその途中、遠月点高度が2400キロの楕円軌道に投入され、月の裏側の重力場を計測や、地上局と周回衛星との間のデータを中継することになっています。
主衛星は、ミッションモジュールと推進モジュールから構成されています。ミッションモジュールに搭載される観測機器は、リレー衛星に搭載される観測機器と連携して、月の観測をおこなうことになっています。観測期間は約1年で、その間に月の全球マッピング、月面全域の元素・鉱物分布や重力分布などの観測をおこなう予定です。
1年間の観測が終了したあとは、推進モジュールはミッションモジュールから分離して、月面に軟着陸します。
○ふむふむ。どんな観測機器が搭載されているのか教えていただけますか?
■ミッション機器は全部で14あります。非常にたくさんあるんです。これには宇宙研の文化が入ってましてね。宇宙研はコンパクトな中に、いろんな機器を埋め込むという形で開発していくんですね。まあやはり、一つの対象に対して、いろんな角度から見るというのを重視しているところがあるんで、それを踏襲したってところがあるんです。
具体的には、蛍光X線分光計、ガンマ線分光計、マルチバンドイメージャ、スペクトルプロファイラ、地形カメラ、月レーダサウンダー、レーザ高度計、衛星電波源・月面電波源、リレー衛星搭載中継器、月磁場観測装置、プラズマイメージャ、粒子線計測器、プラズマ観測器、磁場観測などが積まれています。
蛍光X線分光計、ガンマ線分光計、マルチバンドイメージャ、スペクトルプロファイラは月の表層元素組成や鉱物組成を調べます。 地形カメラ、レーダサウンダー、レーザ高度計は地形や表層付近の地下構造を観測します。その他、粒子線計測器、プラズマ観測器などでプラズマ、高エネルギー粒子、磁場など月周辺の環境観測をおこないます。また、プラズマイメージャは、月は地球をとりまく電離層、プラズマ圏、磁気圏や北極・南極に広がるオーロラの活動などの全体的な観測や、木星や土星など惑星電波の観測に使われます。
○なるほど。着陸する推進モジュールは?
■着陸実験です。障害物を自動的に避けながら、着陸点は月の表側の「海」の領域を予定しています。着陸後は、−170℃から+120℃まで変化する月面での、熱制御技術及びエネルギー蓄積技術の実証を行いつつ、VLBI観測につかわれます。
[02: LISM(リスム)] |
○春山さんは<セレーネ>の中ではどこをやっていらっしゃるんですか?
■先ほども申し上げましたが、ミッション機器は14あるんですね。14あるうちの中に、いくつかカメラがあるんです。マルチバンドイメージャ、スペクトルプロファイラ、地形カメラというカメラが3つあるんです。この3つを合わせてLISM(リスム)というんです。Lunar Imager/SpectroMeter(月面撮像/分光機器)というもんなんですけど。
○それはどういうものですか?
■ま、地形カメラは地形を撮るものですね。高空間分解能で地形を撮る、二つの望遠鏡で立体視をできるように画像を撮るわけです。空間分解能は10mです。マルチバンドイメージャーっていうのは色んなフィルターで色んな色を撮る。可視から近赤外領域の画像を撮るわけです。スペクトルプロファイラーというのは、鉱物の同定をするために、連続分光をするものです。この3つをですね、同じ様な共通回路で束ねています。でき るものは出来る限りまとめて、一つのカメラということにしています。これを私が中心になって開発しています。
○なるほど。
■ただ、開発だけじゃなくって、我々の仕事はあくまで、取ったデータを解釈するということが目標です。つまり私のほうは、まずはどんなサイエンスを光学カメラでやりたいか。それから、どういうふうに小型軽量化、低コストかするか、で、実際にメーカーさんと共同開発する。そして実際に運用して、データを取る。で、データを処理する。データを解釈する。論文を出す(笑)、というところまでを一括してやろうということになっています。それが我々の目標であり、我々のやることですね。
○次号へ続く…。
[◆Information Board:イベント、URL、etc.] |
■イベント:
◇オオワシ・オジロワシ国際シンポジウム 2/11日@東京府中 2/14日@北海道斜里町
http://www.nec.co.jp/japanese/profile/social/earth/earth2.htm
◇小・中学校向けのすばるファーストライト・イベント「すばる天文教室」について
http://www.nao.ac.jp/SUBARU_ED.html
◇少子化問題シンポジウム'99(2/13)
http://www.mhw.go.jp/topics/ssinpo_18/index.html
■URL:
◇北方林業50周年記念作文コンクール これからの森林へ 子供たちからのメッセージ募集
http://www.affrc.go.jp:8001/hopporin/hoppou/sakubun.html
◇大地震のあと、余震はどうなるか
http://www.jishin.go.jp/main/yoshin3/eqyoshinfrm.htm
◇Natureに掲載された日本の研究機関の論文数
http://www.naturejpn.com/newnature/top10/top10.html
◇インフルエンザ様疾患の流行状況について(厚生省)
http://www.mhw.go.jp/topics/influ-j/tp0114-1_11.html
◇HIV診療支援ネットワークシステム(A-net)について(厚生省)
http://www.mhw.go.jp/topics/a-net/tp0114-1_11.html
◇抗菌製品ガイドラインまとまる(繊維ニュース)
http://www.sen-i-news.co.jp/1.0/page.asp?id=766
◇惑星の座を失うか、冥王星(国立天文台・天文ニュース)
http://www.nao.ac.jp/nao_news/mails/000234
◇地球環境とライフスタイルに関する世論調査
http://www.sorifu.go.jp/survey/earth.html
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基本的には一行告知ですが、情報が少ないときにはこういう形で掲示していきます。
なおこの欄は無料です。
発行人:田崎利雄【住商エレクトロニクス・ネットサイエンス事業部】 編集人:森山和道【フリーライター】 |
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