NetScience Interview Mail 1999/09/09 Vol.068 |
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◆Person of This Week: |
【淺間一(あさま・はじめ)@理化学研究所 工学基盤研究部 技術開発促進室】
極限環境メカトロニクスチーム チームリーダー
生化学システム研究室 副主任研究員
研究:ロボット工学
著書:長田正編著『自律分散をめざすロボットシステム』オーム社,東京,1995.ほか
研究室ホームページ:http://celultra.riken.go.jp/~asama/
○自律ロボットの研究者、淺間一さんにお話を伺います。
淺間氏はロボカップと呼ばれるロボットのサッカーに出場したり、様々な分散ロボットなどをお作りになっています。
近い将来、大きな役割を役割を果たすかもしれないロボット。
その研究現場からのお話、お楽しみ下さい。
7回連続予定。(編集部)
[01: ロボカップ] |
○先生方のチーム「UTTORI United(宇都宮大学横田研究室、東洋大学松元研究室、理化学研究室の合同チーム)」はロボットによるサッカー競技・ロボカップ(http://www.robocup.org/)にも出場していることで有名ですが、ロボカップというのがどういうものなのか、まずさらっとご説明頂けますか。
■はい。まずロボカップというのは、人工知能やロボット工学を研究している研究者が中心となってはじめた、ロボットによるサッカー競技大会です。いろいろなリーグがありますが、我々が出場しているのは、実機部門の中型リーグです。これは、約5[m]×8[m]位のフィールドで、直径45[cm]もしくは50[cm]角以下の寸法のロボットを最大5台までフィールド内に入れてよいことになっています。ロボットは、人間に操作されずに、すべて自律的に判断して、動かなければなりません。
○はい。
■我々のチームは、宇都宮大学(UT)横田研究室、東洋大学松元研究室(TO)、理化学研究所(RI)生化学システム研究室の合同チームで、それぞれの頭文字をとって、UTTORIUnitedチームと呼んでいます。我々のサッカーロボットは、自律型全方向移動ロボットと呼んでいます。フリーローラーを組み合わせた特殊な車輪4つから成り立っていて、3つのモーターで4つの車輪を動かしていることが最大の特徴なんですが、この辺はあとでお話しします。
で、全方向に動けるので「ZEN」という名前を付けました。電源も計算機も自分で持ち歩いて、自分で判断して動きますので自立/自律です。また無線LANを使って相互に通信しながら協調して動くこともできます。ネットワークに入ることができればどこからでも制御することが可能です。
○ほう。もともとはどんな研究のためのロボットだったんですか?
■もちろんもともとはサッカーをやろうと思っていたわけではなくて、原子力プラントの中などで人間の手助けをするロボットを作りたいということから研究をはじめました。プラントの中っていうのはそれほど広いところばかりではなくて狭いところもある一方で、大きなものなども運んだりしなくてはいけません。となると、複数の自律型ロボットが協調して働くのがいいだろう、ということになるわけです。
○なるほど、生き物のようにですね。
■その通りです。で、ロボカップRoboCupというのはご存じのとおりロボットによるサッカーなんですが、自律性とロボット同士の協調ということを試す上で、格好な課題になるわけです。
○ご説明頂けますか。
■ロボット同士の協調といっても、様々な協調があります。ロボカップでの動作では、通信を使って、ボールを誰かが持ったときにはそれを通信で他のロボットに伝え、それを聞いたロボットはボールを取りに来ない、というような協調ができます。
人間にとってはできて当たり前のことですが、ロボットにとってはこれだけでも実は大変なのです。
また、パスを出すというのも協調になります。双方向の通信のやりとりでパスを出すロボットと受け取るロボットの間で意志疎通を行っています。ゴールキーパーも協調に加わって、攻め込まれたときには「こっちへ来て守ってくれ」とブロードキャストして、チームメートを呼び戻したりします。
○なるほど。
■で、パリで行われたRoboCup98のときは、実際のロボットは使わないシミュレーション・リーグとか、小型のロボットを使うリーグとか、最近は脚式のリーグなんてのもあるんですけども、我々が出場した中型リーグには、16チームが集まって競技をやりました。
ボールは赤く塗られてまして、ロボットはその色を見てボールを認識することができます。それぞれのゴールはまた違う色で塗られていて、ロボットが色の認識を行えば、オウンゴールにならないようにできます。
この時には予選は3勝0敗という好成績で、決勝トーナメントに進んだのですが、準決勝でドイツのチュービンゲンのチームにPK戦の上負けて、3位決定戦でも大阪大学のチームにも負けて、結局4位になりまた。
○ボールを持っている奴だけが動き回っているわけじゃないんですね、協調ということになると当然でしょうけど。
■ええ、すべてのロボットが通信しあいながら状況を把握して、その場に適した動きをしなければなりません。ボールを持っていないプレーヤーの動きも重要であることは、人間のサッカーもロボットのサッカーも同じです。サッカーの場合、助け合いだけでなく、お互い邪魔しないという協調も重要になってきます。ロボット同士の衝突回避などは今後の課題でもありますね。
○見ていると失礼ながら、それほどうまく動いていませんね。ボールを見失うことも多いようですが、あれはなぜですか。
■ええ、それがまたこういう競技に出るという意義にもなるわけです。なかなか期待した動きをしてくれないんですね、確かに。
■一般的にいま研究段階の知能ロボットというのは、限られた条件でしか動けないということが最大の欠点なんですね。つまり動作の信頼性が低いわけですよ。
たとえばボールを見失うというのも、研究室の実験室ではうまく動いていても、競技場へロボットを持ち込めば、照明条件が全然違うんですよね。照明の色や明るさ、種類なんかも影響して、CCDカメラの画像上の映り方が変わってきます。ある会場では、一応照明をある程度調整したにもかかわらず、片方のゴール付近で3000ルクスあるのにもう一方では1000ルクスくらいだったりしました。周囲に立っている人の服からの反射なんかでも変わっちゃいますね。さらに体育館みたいな水銀灯だと、ボールの中に反射して光っちゃう部分ができて、赤いはずのボールが画像上で赤くは見えなくなったりします。
人間はそれでも経験でボールだとわかりますが、単純に画像上の色だけで判別しているロボットにはその判断が極めて難しいんです。
また、実験室では問題にならなかったノイズが、競技場では様々な電波が飛び交っていて、ロボット間の通信がうまくいかなくなることもよくありました。
でも、こういう試合でもきっちり動く、実験室以外の場所、環境条件の違うところでもきっちり動く、ノイズがあろうが照明条件が違おうが動くということを実現するために、競技というやり直しの効かないものに出ることで技術的に克服し、動作の信頼性を上げていく、ということこそ大変重要だと考えているわけです。
○なるほど。いろいろと大変なんですね。
ビデオを拝見すると、応援している方はまたずいぶん白熱してますね。
■ええ、一旦ゲームが始まると燃えるんですよね、特に近くで見ていると(笑)。「いけいけ!」って感じになっちゃいます。なお、2,030年にはFIFAの公式ルールで人間のワールドカップ・チャンピオンに勝つということを目標にしています。
○あれ、昔は「2,050年」ていう話じゃなかったでしたっけ?
■ええ、そう言ってたんですがあまりに先の話すぎますからね(笑)。言い出した人はみんな死んじゃってるというのでは無責任に過ぎるだろうということで、2030年を目指す、ということになりました。
○で、それはどの程度本気なんでしょう?
[02: 自律分散型知能ロボット] |
○では、先生がやっていらっしゃる現在の仕事についてお伺いしたいと思います。
○次号へ続く…。
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http://www.mhw.go.jp/houdou/1109/h0902-1_11.html
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http://www.toray.co.jp/kagaku/info_7.html
■URL:
◇すばる望遠鏡、原始星 L1551-IRS5 からの2本のジェットを観測
http://www.naoj.org/outreach/press_releases/990824/j_index.html
◇Shuttle Rader Topography Mission 地形の3次元地図を作ろうという計画
http://www.jpl.nasa.gov/srtm/
◇大学等技術移転促進法に基づく実施計画の承認について 文部省、通産省
http://www.miti.go.jp/press-j/industry/r90826c1.html
◇食品衛生調査会バイオテクノロジー特別部会の開催について
http://www.mhw.go.jp/houdou/1108/h0827-1_13.html
◇21世紀におけるハイテクベンチャー企業支援策のあり方に関する調査 科学技術庁
http://www.sta.go.jp/policy/seisaku/90826.html
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〜 手書きと活字が同頻度の帳票でOCRの処理速度が2倍に 〜 富士通研究所
http://www.fujitsu.co.jp/hypertext/flab/News/1999/Aug/26.html
◇NECのパーソナルロボットR100
http://www.incx.nec.co.jp/robot/
◇JEMの開発状況 「きぼう」のエアロック機能試験
http://jem.tksc.nasda.go.jp/iss_jem/jem/develop_status_07.html
◇NASDAプロジェクト最新情報 先端技術実証ロケットプロジェクト
http://yyy.tksc.nasda.go.jp/Home/Projects/J-I_UP/index_j.html
◇遺伝子操作で「賢いマウス」。プリンストン大によるプレスリリース
http://www.princeton.edu/pr/news/99/q3/0902-smart.htm
◇太陽の活動が活発化
http://science.nasa.gov/newhome/headlines/ast31aug99_1.htm
◇Cassini Imaging Central Laboratory for Operations (CICLOPS)
http://ciclops.lpl.arizona.edu/
土星探査機カッシーニ画像データを公開するサイト
◇ハッブル宇宙望遠鏡、「銀河のメヌエット」を捉える
http://oposite.stsci.edu/pubinfo/pr/1999/31/index.html
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