こんなストーリーを、小学校の図書館の片隅で読んだことがある人は多いはずだ。本書はジュヴナイルで(その手の人には)お馴染みの本。これが初の完訳版だそうである。
ストーリーの出来とかは、いまさら言ったって仕方ない。なつかしながら読むのが正しい読書作法でしょう。なにせ本書は1932,33年の著作なのだ。「SFとは、つまるところ、極言すれば『1冊ごとに1回』世界がほろびる物語、といってもいい」といったのは中島梓だが(『道化師と神』より)、本書を嚆矢とするテーマほど露骨に世界が滅びる物語もないだろう。
なんでもスピルバーグがクラーク『神の鉄槌』と一緒にストーリーを混ぜて映画化するとか。映画のストーリーはほとんどオリジナルに近いもののようだから、本書を邦訳して出したのは出版社のこじつけみたいなもんだろう。だが、こうして本書が読めるのもそのおかげなんだから、感謝したい。