99年10月SF & Horror Book Review



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  • ワン・オヴ・アス
    (マイケル・マーシャル・スミス 嶋田洋一 訳 ソニー・マガジンズ 1800円)
  • サイバーパンクかと思ったらファンタジーで、ファンタジーかと思ったらドラッグ系小説だった、って感じの話。敢えて一言で片づけると、ブラックジョーク(というかSF的小技というべきか)満載のサイバーパンク系ダーク・ファンタジーということになると思うのだが、そう言っちゃうと、はずれではないが微妙に本作の魅力というかノリが抜けてしまう。でも一言でいうとやっぱそういう話だと思う。読んでいても自分がどこに連れていかれるのかさっぱり分からない小説だった。そのくらい展開がわけわかんないのだ。良い意味で、ということにしておくが。

    主人公ハップは短期記憶人。違法に他人の夢や記憶を一時的に預かる人間だ。事件は一人の女の記憶を預かったところから始まった。記憶内容は殺人。このままじゃ犯人にされてしまう! 記憶を相手に戻そうとするハップだが、ハップに恨みを持つ警官やら、そっくり同じ外見をしたなぞのダークスーツ軍団、別れた女房などが次々と出現、トラブルと死体と銃弾が転がり続ける。

    こう書くとなんだか普通の話みたいだな。だがそもそもサイバーっぽく始まった話があっという間にファンタジーになるとは僕は予想もしていなかったし、また謎の男の正体が、まさか○○○だと言われるとは予想もできなかったし、さらに…となるとは全く見当もつかなかった。

    作中、あちこちで興を添えるのが、しゃべり、自分たちで勝手に歩き回る家電製品達。ハップの目覚まし時計なんて、僕の頭の中では完全に鳥山明の描くあの時計のイメージだったんだけど、著者はいったいどういうイメージだったんだろ。

    作者は『スペアーズ』の人。この人、基本的にリミックス屋さんみたいだな。素材を開発することはできないんだけど、それをリミックスして料理することはできる、そんな感じの人みたいだ。


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