ワイアード7月号(4.02号「eNEWS」)


URLはもういらない 電子オブジェクト総背番号制で流通も変わる


 URLは便利だが、一つ重大な欠点がある。リソースの場所は示してくれるが「中身」までは示してくれない、という点である。私自身にも困った経験がある。子供向けのリンク集を作っていたときのこと。カブトムシの飼育法のページが、知らない内に下着販売のページに変わっていたのである。現在でも同様のケースはときどき発生するし、あちこちでリンクはdecayし続けている。そのため、紙の論文などに電子テキストを引用する場合には、URLと共に日付を入れておくのがこれまでの通例だった。その状況を一気に変えてくれるかもしれないものが提案、検討されている。
 DOI(The DIgital Object Identiier)と呼ばれるこのシステムは、本のISBN、定期刊行物のISSNなどのように、電子オブジェクト(テキスト、画像、音声、動画など全て)に背番号をつけて管理しようというもの。DOIはPrefixとSuffixと呼称される2つの要素からなる。Prefixでオブジェクトの種類をコードし、Suffixでオブジェクトそのものをコードする。雑誌などの場合は、ページや項目に至るまで細分化することが可能。長大な映画のビデオから写真一枚に至るまで、固有の番号を付けることが出来る。この番号は一つ一つのオブジェクトに固有で、変わることはない。ユーザーがDOIを要求することによってDBにアクセス、URLを送り返すシステムとなっている。
 このシステムを使えばユーザーは、閲覧希望するオブジェクトそのものに間違いなく到達できる。同時にDOIは、ネットワーク上で配布される電子オブジェクトの由来に信憑性を与える。それだけではない。著作権者とユーザーを、ダイレクトに結ぶことができるのである。つまりDOIは目録システムに留まらず、ある種のパッケージとしても働くことができるのだ。このためDOIは、電子マーケットの為の自動取引用システムとしても注目されている。もし標準化されれば画期的と言っても良いシステムである。
 現在DOIはAAP(Association of American Publishers)で運営されており、既に運用テストが行われている。プロトタイプを全ての出版社が使用可能なものに拡張中という。12月にはInternational DOI Foundationによる初の国際会議がNYで開かれる。アメリカの提案は後に国際標準化機構(ISO) の規格になることが多いという。標準化されたらネットの世界に大きな影響を与えることは間違いない。

DOIホームページ:http://www.doi.org/

words 森山和道


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