ワイアード3月号(3.03号「情報サブウェイ」)
掲載書評『ディジタル・ウォーズ』


消費者は, 世界をどのように見ているのか ?


 次に何が売れるのか ? デジタル市場の激烈な競争, 合併, 買収, 投資, これらは, すべてこの疑問への先行投資の結果である。誰が敵なのか味方なのか, それすらも見えない大騒動が続いている。しかし実際には「人びとが何を望み, そのために喜んで払う金額がいくらなのか, 誰も知らない。テクノロジーがわれわれをどこへ連れていくかということさえ, はっきりしていない。いったんどこかへ到着しても, そこで自分がどんなことをしたいかはもちろん, 分からない」。
 夢を見るものも多いが, 先を見誤って落ちていくものも多い。何もしなかったアメリカが最も得をしたHDTV, エンタテインメントではなくテクノロジーを売ることに終始してしまったゲームマシン, 誰も見ない双方向TV, ものを売っているのではなく「注文をとっているだけ」のeショップ……。成功するものは一体なんなのか ? どんなサービスを消費者は求めているのか ? 答えを知っていると言う者は多いが, それが正解かどうかは分からない。はっきりしているのは「デジタル以外の魅力」がない商品は売れない, ということだ。テクノロジーのみを先行した商品は, 決してマスのマーケットを獲得することはできない。
 今後, デジタル市場はどうなるのか ? 政府はそこで何をすべきだろうか ? 何もしないのが望ましい ? それとも「地ならし」をすべきか ? 政府の過剰介入は官僚化と非効率をもたらす。しかし(判断が難しいが)適度な支援は望ましい。インターネットは成功した実例である, と著者らは言う。
 今読んでこそ意味がある本だ。原書が刊行されたのは95年だが, まだ間に合う。何が問題なのか, 今後(可能性ではなく, 実際に)何が起ころうとしているのか, その議論の発端に十分成りうる本だ。
 何より重大なのは, 未来を決めるのは投資家達の動向ではなく, 我々消費者に他ならない, ということである。
 我々は, 世界をどう見ているのか ? 本当は, 何を欲しているのか ?
 なお巻末資料には, インタビューと座談会がまとめられている。

words 森山和道

原書『Road Warriors : Dreams And Nightmares Along The Information Highway』
URL:http://www.roadwarriors.com/

ディジタル・ウォーズ
三田出版会
著:ダニエル・バースタイン & デヴィット・クライン
訳:鈴木主税
2,800円(税込)
ISBN4-89583-174-4


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