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Popular Science Node
1999/11/30 Vol.023
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◆CONTENTS:

[Digest]
◇科学関連やじうま

[Book Review]
書評再録『裏切り者の細胞がんの正体』

[New Books]
『宇宙スペクトル博物館<X線編> 見えない星空への招待』
『活動する宇宙 ―天体活動現象の物理―』
月刊『生物の科学 遺伝』12月号

[Event]
「Emergence, Reductionism and Seamless Web ---- When and Why is Science Right ?」
「衛星による地球観測と気候変動研究」
「複雑さと生命の誕生」− 物質系のデジタル化と複雑化 −

[Website]

[from editor's diary] 編集人のウェブ日記から

[from editor]


[Digest]
◇科学関連ニュースいろいろ

▼ユネスコ世界科学会議について 二十一世紀のための科学:新たなコミットメント 文部省 学術国際局 国際学術課
http://www.monbu.go.jp/news/00000380/

▼WHO、今年のエイズによる死者が260万人に達したと発表。これまでの死者は総計1600万人に

▼科学・技術開発基盤の強化について〜次期科学技術基本計画の策定に望む〜 経団連
http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/pol251/index.html

▼平成11年科学技術研究調査結果速報(要点)総務庁
http://www.stat.go.jp/0531.htm

▼「HIIロケット8号機」の第1段ロケットエンジン部分発見について 海洋科学技術センター
http://www.jamstec.go.jp/jamstec-j/PR/9911/1127/

▼平成10年度 喫煙と健康問題に関する実態調査結果の概要
http://www.mhw.go.jp/houdou/1111/h1111-2_11.html

▼今冬のインフルエンザ総合対策について 厚生省
http://www.mhw.go.jp/topics/influ99_11/index.html

▼「ようこう」が観測した今世紀最後の皆既日食
http://www.solar.isas.ac.jp/eclipse_99.html

[Book Review]

◇書評再録 裏切り者の細胞 がんの正体

裏切り者の細胞 がんの正体
(ロバート・ワインバーグ(Robert Weinberg)著 草思社(サイエンス・マスターズ13) 1700円 原題:One Renegade Cell, 1998) 

がんは裏切り者の細胞であるとワインバーグは言う。

 がん細胞は、いわば裏切り者である。正常な仲間と違って、がん細胞は共同体を
 構成している周囲の細胞の要求を無視する。がん細胞の関心は、自分が増殖にお
 いて有利な立場に立つことだけに集中する。がん細胞は利己的で、ひどく反社会
 的だ。そして何より重要なのは、それらが正常な細胞と違って、共同体を構成す
 る周囲の細胞からの助言などなしに、成長するすべを知っていることである。
  (P.137) 

正常な細胞は増殖するための増殖因子の合成、放出は極めて厳しく制限されている。
ところが、がんはそんなことお構いなしに増殖するのだ。これはなぜか? 増殖回路
をオンにしっぱなしにするタンパクを細胞内で合成するからだ。しかも外部からの増
殖抑制シグナルを受容するタンパクを欠損させるという裏技まで使って。本書は、が
んが発生するまでのメカニズム、そしてこれからの治療の可能性を歌う一冊である。
 
がんに関する遺伝子は、正常細胞の中では害を及ぼさないばかりか、なくてはならな
いものである。ところが変異を起こすと、がんを引き起こしてしまう。つまりがんの
ルーツは正常細胞自身の中にある。今では誰もが知っているこの事実を解き明かすま
での話が本書前半部。現在はがんに関わる遺伝子がどんどん発見される一方、変異を
起こすメカニズムそのものも様々であることが分かっており、そのメカニズム解明が
急がれている。
 
だが、実際にがんが、がんになるためには、アクセルとブレーキのたとえ話でもお分
かり頂けるように、細胞が仕掛けた数々の安全装置を突破しなければならない。回路
の一部分が壊れたくらいでは、細胞はがんにならない。がん細胞の多くに数種類の変
異があるということは『ガン遺伝子を追いつめる』(文藝春秋)をお読み頂ければお
分かりのとり。たびかさなる変異が正常細胞をがんにするのだ。これは年齢による発
症率の違いを示す疫学的データとも一致するのだ。

通常、増殖回路に異常が発生した細胞は速やかにアポトーシスで排除される。ここで
働くのが通称<ゲノムの守護神>p53である。DNAの損傷が感知されると細胞は大量に
p53を作り始める。蓄積されたp53は細胞の増殖をストップさせる。その間にDNAが修復
される。しかし修復しきれない場合、p53はアポトーシスのスイッチを入れる。もうお
分かりだろうが、がん細胞はp53が不活性化されているのである。さらにテロメアを伸
ばしなおすテロメラーゼを復活させたものは不死となり、本物のがんへの道を歩んで
いく。

p53の機能がどの程度残っているかで放射線療法や化学療法による治療効果も変わって
くる。なぜか。これまで、放射線や化学物質によるがんへの攻撃が効果を発揮するの
は、がん細胞のゲノムをこてんぱんにするからだと考えられてきた。ところが実際は
そうではなかった。効果が高い場合というのは、p53によるアポトーシスが引き起こさ
れる場合なのだということが分かってきたのだ。そもそもガンが発生するかどうかの
みならず、抗ガン剤が効くかどうかのカギをもp53が握っているのである。将来はこの
辺を見極めてから治療が行われるようになるだろうとワインバーグは語る。もしp53を
欠いているのならばアポトーシスを起こす回路の引き金を引けばよい。これからの研
究は間違いなくそちらへ向かうだろう。

ワインバーグは極めて楽観的だ。というより力強く、がんを克服する日は近いと語
る。今後10〜15年の間に様々な因子やメカニズムは明らかにされるだろうとい
う。そこから臨床へ10年かかったとしても、今後数十年のうちには克服できるだろ
うと考えているようだ。そしてこの時代に「土台」が築かれたのだと高らかに歌い上
げる。彼自身の自信が満ちあふれた文章で、本書はくくられている。 ざくっとした話
だが文章は読みやすい。興味のある方はどうぞ。 

最後に。アルコールとタバコがガンに直結するという話はよく聞く。このメカニズム
は簡単だ。アルコール自体には変異を起こす力はないが、細胞を殺す力はある。酒を
飲むと口や喉の細胞が死ぬ。生き残った細胞は補充のために分裂を開始する。増殖中
の細胞の中のDNAは、そうでないときに比べて変異源──すなわちこの場合はタバコ─
─の影響を受けやすい。その結果、タバコとアルコールの組み合わせは「致命的」な
結果を生み出す。本書によると、そのリスクは30倍にもなるという。 

面白いのが、変異源を処理する酵素の多寡によってリスクが変わることが既に分かっ
ていることだ。たとえば、NATという酵素をあまり作れない喫煙者は膀胱ガンになる確
率が2倍半も高く、GSTM1という酵素があまり作れないと今度は肺ガンになる危険性が
3倍高まるのだという。つまり「タバコの生涯消費量と解毒酵素合成能」とから、ガ
ンにかかるリスクが計算できるということになる。保険会社は将来、各種酵素合成能
をチェックすることになるのだろうか。なりそうだなあ。 
http://www.moriyama.com/1999/sciencebook.99.11.htm#sci.99.11.18 より。


◇New Books

出版社・著者らからの新刊案内をそのまま流します。
本誌が内容を保証するものでも書評でもありません。単なる書籍広告欄です。
あくまでご参考にどうぞ。
新刊案内を流したい編集者・著者は編集人まで。




◇『宇宙スペクトル博物館<X線編> 見えない星空への招待』
 粟野諭美・北本俊二・衣笠健三・田島由起子・福江 純
 CD-ROM+B5判ガイドブック/本体価格4300円+税,裳華房
 http://www02.so-net.ne.jp/~shokabo/book_news.html#11.9
 ISBN4-7853-2815-0

 さまざまな光を使って眺めた宇宙の姿を,多数の写真やCG,動画を使って
 紹介する,マルチメディアCD-ROM博物館の第1巻.この巻では,光と
 スペクトルの初歩から,X線という高エネルギーの光を使って,人間の目には
 見えない星空の世界―X線の宇宙―へとご案内いたします.可視光で見たとき
 とは違った,"熱い宇宙"の姿をお楽しみのください.
 全体は10の展示室からなり,どこからでも自由に学べます.各展示室の初めの
 方は,初心者になじみやすいように,カラー画像を中心にした簡単な解説とし,
 より高度な内容については,プラスαのページとして,奥の階層へと進む形式に
 なっているため,学習のレベルに応じて活用できます.
 ブラウザを利用した簡単なマウス操作で,どなたでもお楽しみいただけます.
 〈電波編〉〈可視光編〉も続刊予定.

 動作環境:CD-ROMドライブを装備し,ブラウザがインストールされたパソコン
#Macintosh機の場合,aviファイルなど一部の動画は見ることができません.

【インターネットでCD-ROMの一部を体験できます】
 http://quasar.cc.osaka-kyoiku.ac.jp/~fukue/Spectrum_x/top.htm

<内容構成>
 1,スペクトルとは?
 2,身のまわりの世界
 3.スペクトル実験室
 4.観測衛星と検出器
 5.太陽と太陽系天体
 6.恒星と連星の世界
 7.われわれの銀河系
 8.遠くの銀河と宇宙
 9.スペクトル用語集
 10.スペクトル画像集


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◇『活動する宇宙 ―天体活動現象の物理―』
 柴田一成・福江 純・松元亮治・嶺重 慎 共編
 A5判/292頁/本体価格4300円+税,裳華房
 http://www02.so-net.ne.jp/~shokabo/book_news.html#11.8
 ISBN4-7853-2812-6

 近年における観測手段の発達は,宇宙がけっして静的なものではなく,想像を
 絶するような活動をしていることを明らかにしてきた.太陽や星の振動やフレ
 ア等の爆発現象,活発な星形成,銀河の渦構造とダイナモ,銀河中心活動,コ
 ンパクト星と降着円盤による莫大なエネルギーの放出,そして宇宙ジェット….
 これらダイナミックに活動する天体の姿を,観測と理論,またシミュレーション
 の手法からわかりやすく解説した現代宇宙物理学の格好の入門書.

1章 天体活動現象の物理
2章 日震学 ―振動を使って太陽の内部を探る―
3章 太陽・星の磁気流体現象
4章 星形成
5章 銀河中心領域の活動性
6章 銀河磁場と渦状腕
7章 降着円盤の世界
8章 降着円盤の磁気的不安定性
9章 宇宙ジェットの観測と理論
10章 宇宙ジェットの磁気流体モデル


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◇月刊『生物の科学 遺伝』12月号
 B5判/80頁/本体価格1100円+税,裳華房
 http://www02.so-net.ne.jp/~shokabo/iden.html

【特集・生物の左右性−分子から群集まで】
 人も含め,ほとんどの動物は外見的には左右対称に見えるが,カタツムリや
 ヒラメのように明らかに左右非対称な動物もいる.一方,分子の世界に目を
 転じると,左右のバランスは完全に崩れている.最近左右性の決定に関わる
 遺伝子が見つかりつつあり,がぜんエキサイティングな様相を呈し始めた
 「生物世界の左右性」研究の現状を,さまざまなレベルにわたって紹介.

<目 次>
 特集にあたって
 左右性,その多様な現象−昆虫類にみられる左右性
 左右性とその意味
 生命分子の左右性と機能
 発生における左右非対称性の決定メカニズム
 系統発生の中に左右性をみる
 らせんと体軸の鏡像進化 ―巻貝個体群の左右性
 右利きと左利きのダイナミズム−群集の中の左右性


なお編集人による新刊科学書評は http://www.moriyama.com/ にアップされています。


◇Event

科学に関するイベント情報などを収集して告知します。
告知したいイベント主催者は編集人までメールを。


◇「Emergence, Reductionism and Seamless Web ---- When and Why is
Science Right ?」
  http://www.phys.s.u-tokyo.ac.jp/JIMU/danwakai/H11/NOV30.htm
 P. W. Anderson講演
 11月30日(火)午後4時30分〜6時 東京大学・理学部4号館・1220号室 (2階)


◇中央大講演会 (後楽園キャンパス)理工学部創立50周年記念企画
 先端科学の現場から
 演  題 「衛星による地球観測と気候変動研究」
 講  師 小池 俊雄 氏 東京大学大学院工学系研究科教授
 開催日時 12月 3日(金)16時10分より
 開催場所  中央大学理工学部校舎 5号館5534号教室
  http://www2.tamacc.chuo-u.ac.jp/gakuseibu/event/kouenkai/riko-kouennkai.htm


◇「生命の起原−その物理的側面−」研究会 第4回研究会 
 「複雑さと生命の誕生」− 物質系のデジタル化と複雑化 −
  http://origin.kek.jp/meeting/fourthmeeting/cfp.html

◇Website

この欄では、ポピュラーサイエンス関連の優れたウェブサイトを勝手に紹介する。 日本語で書かれたポピュラーサイエンス・サイトは確かに少ない。 だが、少ないなりにはあるのだ。


▼今回はお休みします。

◇from editor's diary http://www.moriyama.com/diary/1999/diary.htm

99.11.24 雨

▼東海大学地震予知研究センターが、熱川バナナワニ園のワニを使って地震予知の研究を始めたそうである。なんでもここのワニには群発地震の時に騒いだという実績があるのだそうな。本気なんでしょうか。ここ(http://yochi.iord.u-tokai.ac.jp/eprc/)の人たちの研究なのかな? ともあれ面白いことが分かるといいなあ。ワニの生態でも地震でも何でもいいから。

▼沖縄は例の普天間飛行場・県内移設問題で揺れているが、移設候補地のキャンプ・シュワブ周辺は、県が昨年、最優先の自然保護区域としたところであるということで、そちらからも揺れている模様。

▼情報革命の衝撃: 台頭する21世紀型ベンチャーとNPO。12月3日、シンポジウム。でも具体的な内容がわからん。
http://www.dsneo.co.jp/scc/kyoto123/

▼<90分でわかる科学者シリーズ>の青山出版社。
http://member.nifty.ne.jp/aoyamapb/
あのシリーズって面白いのかな?

http://www.moriyama.com/diary/1999/diary.99.11.htm#diary.99.11.24 より

◇from editor

前回、<編集人のウェブ日記から>で先々週のものと全く同じ物を掲載してしまいました。もうしわけありません。

で、今週はというと、単純にネタを用意するのを忘れておりました。いやー、いけませんね。というわけで書評の再録でご勘弁を…。

言い訳ではありますが、今月先月はどうもガンの本の当たり月のようです。身近な病気であり、なおかつ研究が活発に行われているガン。それぞれ本ごとに主眼が違いますので、いろいろ読み比べると面白いと思います。

弊誌では相変わらず科学に関する寄稿をお待ちしております。 ではでは、今後ともよろしくどうぞお願い申し上げます。



Popular Science Node Vol.023 1999/11/30発行 (配信数:6,050部)
発行・編集人:森山和道(moriyama@moriyama.com, フリーライター)
【独断と偏見のSF&科学書評】ホームページ:
http://www.moriyama.com/
本誌ホームページ:http://www.moriyama.com/popular_science_node/
*本誌に関するご意見・お問い合わせはmoriyama@moriyama.comまでお寄せ下さい。
新刊書籍情報・イベント告知情報ほか各種情報の掲載について

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なお編集人の独断で認めない場合もありますので予めご了承下さい。


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