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Popular Science Node
1999/08/31 Vol.010
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◆CONTENTS:

[Digest]
◇科学関連ニュースいろいろ

[Guest Column]
超弦理論(II)(by 田口善弘)

[New Books]
『生物の科学 遺伝』
『「知恵」はどう伝わるか──ニホンザルの親から子へ渡るもの』

[Event]
中・高校生の科学実験教室「人にやさしい技術と道具」
分子構造総合討論会 '99
1999年しし座流星群高校生国際観測会
北方林業50周年記念シンポジウム

[Website]
Toshiba Science Talk

[from editor's diary] 編集人のウェブ日記から

[from editor]


[Digest]
◇科学関連ニュースいろいろ

やはり「node」というコンセプトからすると、もっともっとURLを紹介すべきではなかろうか、と考え、編集人のウェブ日記などから適当にURLを紹介し、ダイジェストのニュースとします。実際にはニュースでもなんでもないのですが、便宜上「ニュース」としておきます。


▼すばる望遠鏡、原始星 L1551-IRS5 からの2本のジェットを観測
http://www.naoj.org/outreach/press_releases/990824/j_index.html

▼北海道三笠市立博物館、白亜紀後期の翼竜「オルニトケイルス」の歯の化石を発見したと発表。

▼Shuttle Rader Topography Mission
http://www.jpl.nasa.gov/srtm/
 地形の3次元地図を作ろうという計画。

▼Chandra Eyes Young Supernova Remnant in "First Light" Observation
http://science.nasa.gov/newhome/headlines/ast26aug99_1.htm
 チャンドラX線望遠鏡は順調に成果を挙げそうです。

[Guest Column]

◇【超弦理論(II)】(by 田口善弘)

田口善弘さんのサイエンスコラムです。本誌連載第7回目。


【超弦理論(II)】

さて、超弦理論の続き。前回の記事には(少なくとも僕には)苦情メイルは来なかった。ひょっとしたら森山さんにはごうごうの苦情メイルが来ているのに黙って下さっているだけかもしれないし、あるいは、「プロ」が読者の中にいないのかもしれないし、あるいは、いてもコメントするに足らない程、レベルが低い、と思われているのもしれない。まあ、気にしないで続きをやろう。

エネルギーが高いというところで話は終ったが、大体、超弦理論の説明で何が良く解らないと言って

 この世は本当は十何次元だが、一部の次元以外は「縮まって」いるので、4次元しかみえない。

という説明だろう。大体、普通の感覚では「4次元」というだけでわけが解らない。それが本当は十何次元だ、とか言われても、もともと解らない4次元が、更にもっとわけの解らない十何次元とかの一部だ、という説明では、解らないものをより解らないもので説明されただけで、実にとんちんかんである。
せめて、「本当は十何次元だが4次元しか見えない」ということの意味をちょっとだけでも解るようにしよう。

こんな例を考えよう。あなたは、とてつもなく重力が大きな星の平面に住んでいる知的生命体である。重力が大きいので、この星の表面上の生物は、ぺっちゃんこである。具体的には、厚みが殆ど無い紙の様な生物である。なぜなら、重力があまりにも大きいのでちょっとでも厚み(=高さ)があると、すぐに潰れてしまうからだ。

さて、こんな知的生命体にとって世界はどんな風に見えるだろうか? 彼は生まれてから死ぬまで、一度も「立ち上がった」ことが無いのだから、「高さ」という概念を持たないだろう。つまり、本当は3次元の空間に暮らしていながら、平面の空間しか知らない。彼にとって「高さ」という概念を考え付くのは至難の技だろう。

それでは、なぜ、彼は「立ち上がれない」のだろうか? 重力が強すぎるからだ。だが、もし、彼に重力に打ち勝つだけの力があれば、重力に打ち勝って立ち上がることができ、「高さ」を体験できるだろう。しかし、不幸にも彼にはそれだけの力が無い。

本当は十何次元なのに我々には4次元だ、というのも、本質的に同じことなのである。我々には十分な力がないので、本当は十何次元なのに4次元に「へばりついて」生きるしか無い。そして、十何次元に「立ち上がる」ための力は宇宙が始まったばかりのごくごく最初のとてつもなくエネルギーが高いときにだけ存在した。いまは、そんなエネルギーは無いから、我々には十何次元のうち、4次元しか見えないのである。

そして、このことは超弦理論で解りにくいもう一つのこと

 我々が見ている粒子は本当はひもなんだけど、縮んでいて、点にみえる

という言い回しにも関係している。本当はひもなんだけど縮んでいて点に見えるひも、というのは、いわばとっても硬いゴムで出来た輪ゴムを思い浮かべるとちょっと理解できる。

こんな輪ゴムを思い浮かべよう。まず、我々が普通使っている輪ゴムじゃなくて、もっと小さい、直径が1cmとか5mmしか無いような輪ゴムを思い浮かべよう。つぎにこの輪ゴムの直径はそのままにして、ゴムの太さをどんどん太くして行く。するとそのうち、輪ゴムの穴はどんどん小さくなって行き、最後は針でついた点の様になってしまうだろう。

さて、こんな輪ゴムを最初に手渡されたら、どんな風にみえるだろうか。直径が1cmだか5mmだかのゴムの塊にしか見えないだろう。これが「本当はひもなんだけど点にしかみえない素粒子」の正体である。しかし、いくらゴムの塊に見えても、やっぱりそれは輪ゴムのなのであり、うんと力を加えれば伸びて穴が大きくなり、輪ゴムにみえるようになるだろう。

この「うんと大きな力」がまさに「大きな重力の惑星の上に住んでいる平面生物が立ち上がるの必要とする大きな力」に相当する。我々がまず得ることが出来ない程、大きなエネルギーの時だけ、「輪ゴム」は広がって見える。そして、その広がる空間とは我々が見ることができない、ちょうど平面生物にとっての「高さ」に相当する空間なのである。これが「本当は十何次元だが4次元しか見えない」ということの僕なりの説明である(御批判頂ければ幸いです)。

ふう、力尽きた。これくらい勘弁して頂こう。最後に一言だけ。僕はここの説明で「我々がまず得ることが出来ない程」大きな力、と何度も強調した様な気がする。じゃあ、なんでそんな絶対見えないものについて議論するのか?意味無いじゃないか?

ここで話は元にもどる。結局はいろいろな力が同じものだ、と物理学者はどうしても思いたいのだ(前回参照)。
その方が「美しい」から。そしてそのためにはどうしても高エネルギーを考えないといけない。それが超弦理論の存在理由である。

▼関連リンク
物質の究極にせまる素粒子理論とは?
http://ccwww.kek.jp/public/kek/particle/particle.html
超弦理論
http://www.th.phys.titech.ac.jp/particle/lab/study/study.html#string


田口善弘(たぐち よしひろ) 中央大学理工学部物理学科/理工学研究所
http://www.granular.com/tag/index-j.html

◇New Books

出版社・著者らからの新刊案内をそのまま流します。
本誌が内容を保証するものでも書評でもありません。単なる書籍広告欄です。
あくまでご参考にどうぞ。
新刊案内を流したい編集者・著者は編集人まで。



◇雑誌『生物の科学 遺伝』8月号 特集:色覚のしくみと色覚異常
 本体1100円+税 裳華房 http://www02.so-net.ne.jp/~shokabo/iden.html
 神経生理学,遺伝子研究等の進展により解明されてきた色覚のしくみと
 その進化を解説.色覚異常に対する正しい社会のありかたも提言する.

  <目次>
 特集にあたって−多様な色覚の世界をのぞく
 網膜と色覚
 色覚異常と遺伝子
 色覚は脳で作られる
 色覚<色感覚・色知覚>とその異常
 色覚異常と社会環境
 色覚の進化


京都大学学術出版会 本年4月より刊行を始めております「生態学ライブラリー」シリーズの5冊目が、 8月25日刊行のはこびとなりましたのでご案内申し上げます。 なお、同シリーズ既刊の簡単な紹介が下記URLにございますので、ご参照いただ けますと幸いです。 http://ha1.seikyou.ne.jp/home/Kyoto-UP/bun.html#08 ◇生態学ライブラリー6 田中伊知郎著  『「知恵」はどう伝わるか──ニホンザルの親から子へ渡るもの』  4−6判、上製 304頁 ISBN4-87698-036-2 定価:本体2100円(税別)  サルの群れに溶け込み、ビデオを駆使した緻密な観察によって、生きていくため の栄養や知恵を子が親から受け取っていくさまを生き生きと描き出します。  前半は、授乳中のアカンボウの口の動きから、本当に母乳が流れているのかどう かが分かることを明らかにし、従来非常に困難であった授乳量の定量や真の授乳期 間(単に乳首をくわえているのではなく、本当に乳を飲んでいる期間)の推定に道 を開くとともに、子の発育段階と授乳パターンの関係、出産間隔と授乳期間の関係 などを分析することによって、親子関係の研究に新局面をもたらしました。  後半は、サルが毛づくろいのとき取っているものが、実は主としてシラミの卵で あること、体毛にくっついている卵を外すやり方にいくつか流儀があって、それが 主に親から子へ伝わっていくことなどを明らかにします。また、一個体はおおむね 一つのやり方を貫きますが、まれに新しいやり方を開発する個体がいて、それが同 一家系を中心にひろまっていく場合があることなども報告されます。  いずれも、辛抱強い人付けの努力によって、授乳中の親子や毛づくろい中の家族 に間近に寄ることができて初めて可能となる貴重な成果です。 ***<目次>*** はじめに 第一章 観察の始まり  1 観察とは、どんなことか  2 観察の方法  3 最初の報告  4 乳首の好み 第二章 授乳行動  1 授乳行動研究の背景  2 医学研究からの手がかり  3 野外研究への応用  4 周期性への回り道  5 ミルク分泌速度の推定  6 授乳期間  7 授乳と胎児との関係  8 ミルク分泌の量的変化  9 人類への進化との関係  10 ミルク分泌の生理的側面 第三章 ニホンザルと物理法則  1 ニホンザルにおける石当て  2 実験の解釈 第四章 行動の社会伝達──ニホンザルにおけるシラミ取りを中心にして  1 毛づくろい行動  2 ビデオを利用した研究  3 毛づくろい時に取り上げるものの判明  4 毛づくろいからシラミ卵処理へ  5 シラミ卵処理技術  6 行動の社会的伝達へ  7 行動の社会的伝達の検証研究  8 社会的伝達としての解釈  9 社会的伝達で伝わる情報  10 交渉相手の関与・社会であるために 第五章 終わりに

なお編集人による新刊科学書評は http://www.moriyama.com/ にアップされています。


◇Event

科学に関するイベント情報などを収集して告知します。
告知したいイベント主催者は編集人までメールを。

◇中・高校生の科学実験教室「人にやさしい技術と道具」 中央大学 10/31, 11/3
http://www.ise.chuo-u.ac.jp/TISE/symp/1999/hitoni/top.htm

◇分子構造総合討論会 '99 日本化学会・日本化学会近畿支部 大阪大学 9/27-30
http://www.chem.sci.osaka-u.ac.jp/~bk99/

◇1999年しし座流星群高校生国際観測会 11月17日(水)夕〜18日(木)朝
http://www.leonids.net/

◇北方林業50周年記念シンポジウム および森林見学会のご案内
http://www.affrc.go.jp:8001/hopporin/hoppou/50kinen.html

◇Website

▼Toshiba Science Talk
http://www.toshiba.co.jp/magazine/sci_talk/index_j.htm
東芝の広報誌『ゑれきてる』に掲載されている科学者対談のウェブ版。一回の対談は3つに分けられ、一ヶ月に一章分づつアップされていく。
現在、氏家達夫(福島大学生涯学習教育研究センター教授)×徃住彰文(東京工業大学社会理工学研究科助教授) の二人による対談、<「ゆらぎ」がもたらす新しい「心観」>が新しくアップされ始めたところ。
ウェブの作りそのものは重たくて使い勝手もよくないが、科学者の対談が読める貴重なウェブサイトの一つである。

◇from editor's diary http://www.moriyama.com/diary/

編集人のウェブ日記から、ある一日を適当に抜粋します。


99.08.20 一時雷雨

▼『女性セブン』に「マインドウイルス」がどうたらこうたらと書いてあったので何だろうかと思ってみてみたら、ミームな話でした。
▼Siggraphにて、フォース・フィードバック・デバイス系のかなり面白いものが発表された模様。「FreeForm」というそうだが、要するにVR粘土細工らしい。つまり粘土をこねる要領で3Dモデリングができるもの。ようやく登場したかという気もするが、やっぱ楽しそうだ。試してみたい。今後はこういう手法とこれまでのやり方のいいとこをくっつけた形で3Dモデルは造られていくのだろう。
▼zdnetから。「PCを絶滅させる4つの新技術」。
http://www.zdnet.co.jp/news/9908/17/berst.html
ウェアラブル、電子ペーパー、テレマティック、ユビキタスの4つ。
▼今日のhotwiredはいつもにも増して面白い。ロボット格闘技大会は大人気(上)。
http://www.hotwired.co.jp/news/news/2945.html
プラズマ・パワーで宇宙旅行。
http://www.hotwired.co.jp/news/news/2950.html
▼「国立天文台は多大の迷惑をこうむっています」。
http://www.nao.ac.jp/nao_news/mails/000282
それはね、オカルトに負けちゃう程度の普及活動しかしてこなかった報いかもしれないよ。だから頑張ってくださいな。というか頑張りましょう。

http://www.moriyama.com/diary/1999/diary.99.08.htm#diary.99.08.20 より

◇from editor

田口さんは僕のほうに苦情が来ているんじゃないかとご心配ですが、来てませんのでご安心(?)を。

なんだかだるいのでここまで。

弊誌では相変わらず科学に関する寄稿をお待ちしております。 ではでは、今後ともよろしくどうぞお願い申し上げます。



Popular Science Node Vol.009 1999/08/31発行 (配信数:4,057部)
発行・編集人:森山和道(moriyama@moriyama.com, フリーライター)
【独断と偏見のSF&科学書評】ホームページ:
http://www.moriyama.com/
本誌ホームページ:http://www.moriyama.com/popular_science_node/
*本誌に関するご意見・お問い合わせはmoriyama@moriyama.comまでお寄せ下さい。
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なお編集人の独断で認めない場合もありますので予めご了承下さい。


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