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匂いに反応して首振りするロボット動画 昆虫のフェロモン受容体を利用
8月 27th
先日、東大生産技術研究センター、先端科学技術研究センター、そして技術研究組
合BEANS研究所から発表された匂いに反応するロボットです。
というよりは、匂いセンサーの出力をロボットで分かりやすく表現したというべきでしょうね。
以下、プレスリリースから。
東京大学生産技術研究所、同先端科学技術研究センターおよび技術研究組
合BEANS研究所は、匂い物質を検知する膜タンパク質を細胞に特異的に発現させ、これを匂いセンサとしてロボットに取り付けることによって、特殊な匂いに選択的に応答するロボットの開発に成功した。23日付けの米国アカデミー紀要(PNAS)に発表される。これまでの匂いセンサは酸化物半導体をベースに作られたものが多く、用途や感度が限られていた。また、普段人間が嗅いでいる体臭などの匂い物質を高感度に検出するのは難しかった。そこで研究グループは、生物の匂い検出の原理に注目した。細胞に匂い受容体である膜タンパク質を発現させ、チップデバイスを用いて、それらの細胞が匂い刺激に対して発生する電気的変化を計測することによって、匂い物質を選択的に高感度で検出することに成功した。
匂い物質の検出には、昆虫(蛾)の触角にあるフェロモン受容体を利用した。センサを組み込んだロボットにフェロモン刺激を与えると、ロボットが首振り動作をした。通常ロボットには様々な電気配線があり、細胞が刺激に応答する際に発生する微弱な電気的変化は検出しづらい環境であるが、デバイス内に細胞を隔離することにより安定して計測できるようになった。このシステムでは、匂い物質の検出に生物の持つ様々な受容体を応用できるため、将来、ロボットに搭載するセンサのみならず、これまで難しかった大気や水道水などに存在する微量物質を高感度で検出できる環境センサとしての利用も期待できる。
本研究は、経済産業省NEDO「異分野融合型次世代デバイス製造技術開発プロジェクト」(BEANSプロジェクト)の一環で行なわれたものである。
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BMI用に半年以上の長期安定使用が可能な「慢性留置型ECoG電極」を開発 理研
4月 7th
剣山状電極(左)と今回開発した慢性留置型ECoG電極(右)
引用元: 長期安定性を誇るブレインマシンインターフェイス(BMI)技術を確立|2010年 研究成果|独立行政法人 理化学研究所.
理研脳科学総合研究センター 適応知性研究チームの藤井直敬チームリーダーとジーナス・チャオ(Zenas Chao)研究員らは、従来手法より低侵襲で、半年以上の長期安定使用が可能な「慢性留置型ECoG電極」を開発したと発表した。
サルを使った実験で数カ月間に渡って安定したデコーディング性能(脳内部の複数の部位から同時に記録される神経活動を基に、運動情報や、行動の意志などの情報を予測するデコーダーの予測性能)を維持することができたという。オンライン科学雑誌『Frontiers in Neuroengineering』に3月31日に掲載された。
ECoG(electrocorticogram、脳表脳波、皮質脳波)電極は、大脳皮質表面に留置されるシートタイプの低侵襲型電極。元々はてんかん発作の病巣部位を特定するための診断補助手段として使われているもので、脳内の多点から神経活動を同時に記録することができる。てんかん用のECoG電極は長期留置を目的として設計されていないが、約6カ月〜12カ月にわたる長期間脳内に留置するために、新しく設計し直した。
BMI(Brain Machine Interface)技術とは、外部の機器と脳を接続する技術で、脳の信号を読み取り(デコーディング)、考えただけでさまざまなデバイスの操作を可能にするコミュニケーション技術である。
従来BMI研究に使われていた脳活動記録用の電極は、剣山状の高密度電極(剣山状電極)がほとんどだった。従来型BMIは、この剣山状電極を脳内部(実質)に刺入し、神経細胞活動の情報を記録することで、脳の表現する行動の意志を抽出する。しかし、電極そのものが異物であり、異物を排除しようとする脳内の免疫反応が発生するため、時間が経過するに従って電極の性能が低下し、脳内留置の数カ月後にはほとんどの電極が使用不可能になっていた。
今回の研究チームは、従来型BMI技術が抱える長期安定性の欠如と高い侵襲性という2つの問題を解決するために、ECoG電極と呼ばれる電極を改良し、その性能を評価した。ECoG電極は、脳の表面に留置するだけなので、脳実質に直接的なダメージを与えることが少なく、剣山状電極と比較して比較的侵襲性が低いという利点がある一方、デコーディング性能は剣山状電極と比べると低く、あまり実用的ではないと考えられていたという。
研究チームは、独自に開発した長期留置目的のECoG電極を、2頭の日本サルの硬膜下にインプラントし(埋め込み)、半年からほぼ1年に渡って、そのデコーディング性能と長期安定性を検討した。
新たな慢性留置型ECoG電極では、これまで皮膚表面に置いていたリファレンス電極とグランド電極を頭蓋内に留置する。これによって神経活動の記録時に発生するノイズが大幅に低減でき、日時を問わず安定した神経活動記録ができるようになった。
ヒト用のECoG電極は、外部装置に接続するコネクタが短期使用を目的に作られていたため脆弱で不安定だったため、コネクタ部分を長期間使用可能な防水式に置き換え、頭部に固定した。これらの改良により、ほとんどメインテナンスを必要としない、プラグ&プレイの記録システムが実現したという。
実験中は、慢性留置型ECoG電極を用いた脳神経活動記録と同時に、サルの行動をモーションキャプチャによって詳細に記録した。その後、脳神経活動を基にサルの行動を予測する計算モデル(デコーダー)を作製し、そのデコーダーが神経活動から予測する「手」の3次元位置と、実際にモーションキャプチャが記録した「手」の位置を比較し、デコーダーの予測性能を検討した。
慢性留置型ECoG電極を用いた脳神経活動記録とサルのモーションキャプチャ記録。 A) 2頭のサルの大脳皮質表面に慢性留置型ECoG電極をインプラントした。 B) 神経活動記録中のサルは、腕を動かして目の前に提示される報酬を手に入れる運動課題を行っている。サルの行動はモーションキャプチャを用いて記録し、動かしている腕の手首位置を、デコーダーの予測位置と比較した。
デコーダーが神経活動から予測するサルの手の動きの軌跡と、実際の手の動きを比較すると、剣山状電極を用いた従来型のデコーダーの性能とほぼ遜色ないことが分かった。ECoG電極を用いて、このような高いデコーディング性能を示した報告は、これまで無く、剣山状電極に比べて低侵襲である慢性留置型ECoG電極が、BMI技術の1つとして有用であることが明らかになったとしている。
次に、そのデコーディング性能が時間経過に伴ってどのように変化するかを検証した。通常、剣山状電極を用いた従来型デコーダーは、同じ一日のうちでも、時間が経過するに従ってデコーディング性能が低下する。そのため、デコーダーを毎日更新して最新のモデルを用いなければまったく使用できなかった。しかし、新たに研究チームが開発した慢性留置型ECoG電極を用いたデコーダーは、時間が経過しても性能が低下せず、デコーダーの作製から数カ月経過した後でも、十分な予測性能を発揮できた。
デコーディング性能の長期安定性。手首の3次元位置(X、Y、Z)情報をデコードするデコーダーの予測性能が、デコーダー制作からどれくらいの期間安定した性能を保つかを調べた。横軸は日にち、縦軸が予測性能(r)とその安定度(log(pv))を表す。左の2つ(青と緑)がMonkey Aから、右の1つがMonkey Kから記録した性能変化。いずれの場合も、予測性能は低下していない。
これはデコーダーのメンテナンス・コストが大きく低下することを意味するので、BMIの日常的な使用を考えた場合に大きな利点といえるという。BMI研究の最大の壁であった長期安定性の問題を解決し、今後のBMI開発を加速する重要な知見だとしている。
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産総研、脳波で意思伝達する「ニューロコミュニケーター」を開発 2〜3年後に10万円以下で実用化目標
3月 30th

産総研:脳波計測による意思伝達装置「ニューロコミュニケーター」を開発.
独立行政法人 産業技術総合研究所(産総研)脳神経情報研究部門ニューロテクノロジー研究グループの長谷川良平 研究グループ長は、頭皮上の脳波を測定して脳内意思を解読し、意思伝達を行う装置「ニューロコミュニケーター」を開発したと発表した。
超小型モバイル脳波計と、高速・高精度の脳内意思解読アルゴリズム、さらに効率的な意思伝達アプリケーションを統合した、実用的な「ブレイン-マシン インターフェース(BMI)」システムだとしている。最大500種類以上のメッセージが生成可能で、アバターが人工音声でメッセージを読み上げるという。
筋萎縮性側索硬化症など、発話や書字が困難な重度の運動障害者でも脳活動により意思を伝達できる可能性があり、2〜3年後をめどに10万円以下で実用化を目指す。
「ブレイン-マシン インターフェース(BMI)」とは脳と外部機器との直接入出力を行う技術。BMI技術は、脳機能や身体機能に障害のある患者の治療や、ハンディキャップをもつ人の生活の質を向上させる技術として期待されている。
今回、産総研が開発した「ニューロコミュニケーター」は、頭皮上の脳波を測定し、脳内意思を解読して意思伝達を行うシステムで、認知機能に直接アクセスする「認知型BMI技術」を使って開発された。
このシステムには、以下の3つの「コア技術」があるという。
1つ目は「モバイル脳波計の開発」。携帯電話の半分以下の大きさで、8チャンネルの頭皮上脳波を計測できる超小型無線脳波計だ。BMI実用化を目指す装置としては世界最小レベルであり、かつ将来の量産化を見込んで設計しているという。無線方式でヘッドキャップに直接取り付けることができ、ユーザーの動きを制約せず、ノイズも乗りにくいという。また既存の脳波計は大型で家庭用電源が必要だが、この装置はコイン電池で長時間稼働するため、外出先でも使用可能だという。
モバイル脳波計
2つ目は、「高速・高精度の脳内意思解読アルゴリズム」。従来の同様の脳波で入力するシステムでは、PC画面上に並べて提示される選択肢の属性(明るさや形など)を一瞬だけ変化させることを、擬似ランダムに何度か繰り返し、視覚刺激の変化による「P300 誘発脳波(視覚刺激や聴覚刺激の提示後、300ミリ秒後に出現する陽性の電位変化)」の反応の強さの違いによってユーザーの選択を予測・推測するという手法が多かった。提示回数を増やすと予測精度が高くなるが、時間がかかる。逆に提示回数を少なくすると予測に要する時間が短くなるが、精度が悪くなるという課題があった。
今回のシステムでは、脳内意思決定の時間的変化を定量化するために独自に開発していた「仮想意思決定関数(認知課題1試行ごとの意思決定にかかわる脳内処理過程を推定する関数。脳活動と意思決定の結果との関連を多変量解析の手法を組み合わせて分析し、意思決定がまだなされていない状態から何らかの意思決定がなされるまでの連続的な時間経過を視覚化することが可能だという)」を活用し、高速かつ高精度で予測を行うことに成功した。これまでのところ、1回の選択に2〜3秒という早さで90 %以上の予測精度を実現している。
コア技術の3つ目は、「効率的な意思伝達支援メニュー」。脳活動に着目した従来の意思伝達装置はメッセージの種類が少ないことや、メッセージを作るまでの時間がかかった。産総研ではこの問題を解決するために、少ない操作回数で多様なメッセージを作成することができる「階層的メッセージ生成システム」を開発した。
このシステムではユーザーは、タッチパネル画面に提示された8種類のピクトグラム(非常口や車イスなどさまざまな事象を単純な絵にした絵文字)の中から伝えたいメッセージと関連のあるものを1つ選ぶ作業を3回連続で行う。3つのピクトグラムの組み合わせ(8の3乗)で最大512種類のメッセージを作成することができる。このシステムに、選択肢のピクトグラムを擬似ランダムにフラッシュして「P300脳波」を誘発する機能を付け加えることで、タッチパネル操作だけでなく脳波によっても入力できるようにした。
階層的メッセージ生成システムの例
この3つのコア技術を統合することで実用的なBMIシステムである「ニューロコミュニケーター」を実現したとしている。
平成21年度障害者保健福祉推進事業「障害者自立支援機器等研究開発プロジェクト」の支援を受けて開発したもので、プロジェクトでは、学校法人 日本大学医学部(研究分担者:深谷 親 准教授)と共同で、在宅の障害者や入院患者への臨床応用も検討しているという。また、判別しやすい脳波を誘発する視覚刺激の提示方法に関しても、国立大学法人 豊橋技術科学大学エレクトロニクス先端融合研究センター(研究分担者:南 哲人 特任准教授)と共同で研究を行っているという。
今後は、パーツの選択や製造工程などを見直して最終的には10万円以下(他に要パソコン)の製品として、2〜3年後をめどに実用化を目指す。また開発予定の脳波計および解析システムは、脳波に着目した家庭での健康管理や、教育やスポーツ分野におけるニューロフィードバックシステムの導入、ニューロマーケティング分野におけるフィールド調査の促進など、さまざまな経済効果や新規市場開拓効果が見込まれるとしている。
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夢の視覚化も可能? 武田シンポジウム2010「脳と社会」でATRの川人氏がBMIについて講演
2月 7th
2月6日、武田シンポジウム2010「脳と社会」が行われた。主催は一般財団法人 武田先端知財団。まず最初に、ATR脳情報研究所の川人光男氏が「医療BMIから脳コミュニケーションまで」と題して講演した。以下は、私こと森山和道の個人的メモを記事体裁にしたものである。
・川人光男氏 「医療BMIから脳コミュニケーションまで」
ATR 脳情報研究所の川人光男氏は「ナショナルジオグラフィック」に取材された折のビデオをまず自己紹介がわりに流した。人間の運動技能を模倣学習できるロボット「DB」を取材したビデオである。川人氏は「脳を創る」ことを通して「人を知る」というポリシーで研究を進めている神経科学者だ。ロボットやコンピュータは、未だ人に劣る。脳科学も、どういう神経細胞がどこにあるのかといったことはものすごく細かいレベルで分かってきたが、それらの神経細胞が処理を行う仕組みはよく分かってない。だから作ってみようというわけだ。そのときには脳が操るボディも必要になる。それがロボットというわけだ。
川人氏らが作った最新型のロボットは「CB-i」だ。関節数は51、油圧駆動で、人間並みのパワーと柔軟さを持ったロボットで、豊富なセンサ群を持っている。最近は未知の傾斜面でバランスをとったり、未知の障害物の片足バランスなどをも実現している。ビジョンや反力センサーなしで、関節の粘弾性などを使い姿勢情報のみでバランスをとることができているという。
川人氏は「計算論的神経科学」を掲げて研究を進めている。川人氏は壇上で現在の二足歩行ロボットの歩き方を真似して自ら歩き回り、人間と現在の二足歩行ロボットの違いを示した。ロボットは、ZMP規範のようなロボットなりのやり方で歩行を実現しているが、人間のやり方を真似て、その方法で実現しようというのが計算論的神経科学の考え方だ。

川人氏はTBSでオンエアされたドラマ「
TRICK 」のなかに登場した架空の登場人物の著書『上田次郎のどんと来い超常現象』(学習研究社)を示し、計算論的神経科学を使えば、種も仕掛けもあるが、超能力のようなことが実現できるようになっていると紹介した(川人氏は「TRICK」のファンなのだそうだ。講演でのネタなのか、本当なのかは確認しなかったので不明)。
超能力とはテレキネシス、テレポーテーション、テレパシー、念写などのことだ。頭のなかで考えるだけでコンピュータやロボットを動かすことができているし、一万キロ離れた身体に憑依したり、二人の視覚的な見えをそろえるという研究も進んでいる。川人氏らはデューク大学のサルから日本のロボットを制御させる研究を進めている。
「BMI」は、脳と機械を繋ぐ技術だ。医療的には「脳の感覚・中枢・運動機能を電気的人工回路で補綴・再建・増進する試み」ということになる。人工内耳などは既に実用化されているし、また視角に関してもカメラの入力に基づいて網膜を刺激することが可能になっている。中枢機能についてもパーキンソン病患者の大脳基底核に対して刺激装置を埋め込むことで、それを治療することが可能だ。運動機能についてもここ10年くらいで盛んに研究が進んでいる。
川人氏はまず、アメリカのCyberkinetics社の実験ビデオを示した。大脳皮質に電極を埋めるタイプのBMIで、義手やコンピュータをコントロールできる。2004年から臨床試験が始まっており、既に20人の被験者がいるという。
日本は、アメリカやヨーロッパに対してBMIで遅れをとっている。すべて機械が海外からの輸入に頼っている。人工内耳のような比較的簡単な機器も全て輸入だという。仮に150万人×1000万円の市場があるとすると15兆円の産業を逃してしまう計算だ。
いっぽう日本は、MEMS技術、近赤外光計測、ロボット義手などにおいては高い技術を持っている。川人氏らは日本独自のBMIを活用しようとしている。皮質脳波(ECoG)によるBMIだ。大阪大学、東工大、ATRなどが共同で進めている。慶応義塾では脳卒中患者のニューロリハビリテーションにおいて成果を出し始めている。ECoGのBMIと、ニューロリハビリについては逆転できたと見ているという。ただし、安心していると、アメリカ、ドイツだけではなく、猛烈に追い上げてきているアジア諸国に追い上げられてしまうと述べた。
来年度は、東大で開発された高密度の電極や島津の計測機器を使ったBMIの開発を行う。さらに電極と処理装置をすべて頭蓋内に埋め込み、それを有線で引っ張った、やはり完全埋め込み式の非接触給電装置とつなぎ、夜間寝ている間に充電できるような装置を2010年度中に作り、サルに埋め込む予定だという。
またリハビリテーション用外骨格ロボットのCGも示された。アシストスーツ型のロボットだ。現在、とあるベンチャー会社と共同で開発を進めているとのことだった。
BMIの可能性はこれだけではない。超高速のコミュニケーション技術やマーケティングにも使われようとしている。ただし中には「エセ科学」のようなものも少なくないので注意が必要だ。
ともあれ、非言語、意識下のコミュニケーションがどんどん進められようとしている。BMI技術を成功させるためには、神経科学の知識、機械学習技術だけではなく、ユーザー訓練によるシナプス可塑性を活用する必要もある。脳自体が変化して、道具が使えるようになるのである。これが大きな問題だ。ハシを扱ったり車を運転できるようなものなので別に目くじらたてる必要はないという考え方もあるが、BMIは直接、脳から取り出した信号を扱う技術なので、これまでとは違うレベルの変化をもたらす可能性は否定出来ない。
川人氏らの技術の裏には独自の「スパース推定アルゴリズム」がある。その手法を使うことで、今は人が見ている画像を読み取ることもできるようになっている。10年前に非侵襲で人が見ているものを再構築できると考えていた人はまるでいなかったが、いまやここまできたのである。現在は、夢を見ている間に見ているものを画像として取り出せるのではないかと研究しているという。川人氏は、BMI研究のスピード感を感じてもらいたいと述べた。
今は近赤外光計測と脳波を同時に計測することで、人の手首の8方向の運動をミリ秒単位で推定して、手の動きを再構成することができるようになっている。川人氏はホンダとATRによる研究成果の一部をビデオで見せた。
川人氏は最後にBMIでできそうなこと、できていることを述べた。現在、多義図形に対する視覚認知を揃える研究等も進められているという。いっぽう、社会的課題は山のようにあると述べて、軍事利用、企業による利益追求、似非脳科学、医療倫理などを挙げた。特に医療福祉用途から一般へとユーザーへ変わると、利益と危険のバランスの変化も起きるので議論が必要になる。脳情報通信や人の統一された意思にまで踏み込もうとしているのだから尚更だ。今後は、学会と社会のよりよい関係が必要になる。非侵襲的脳活動に対する倫理指針を神経科学学会が出しているように、えせ科学的な方向には注意する必要がある。
将来的には、(川人氏の出身である)物理学が、基礎と応用の両輪を持って完成した学問分野になっているように、神経科学も将来的には基礎と応用の両輪を持つ本当に成熟した学問になってもらいたいと語り、そのためには「似非」や「まやかし」ではないものを理解してもらわないとならない、今回のシンポジウムの「脳と社会」というタイトルは時宜を得ていると述べて講演を終えた。
*サイボーグ技術に興味がある方は、筆者・森山和道による
サイボーグ技術の展開 – 現実、フィクション、そして未来-
http://www.moriyama.com/diary/2009/diary.09.09cyborg.htm
も合わせてご覧頂きたい。










