Cry-nullマウスの血圧動態 正常マウスでは血圧の昼夜差が認められるが、Cry-nullではこのリズムが消失し、食塩負荷によって高血圧を呈す。血中アルドステロンをブロックするとCry-nullの血圧は低下する。

Cry-nullマウスの血圧動態 正常マウスでは血圧の昼夜差が認められるが、Cry-nullではこのリズムが消失し、食塩負荷によって高血圧を呈す。血中アルドステロンをブロックするとCry-nullの血圧は低下する。

引用元: 生体リズム異常に伴う高血圧発症メカニズムを解明しました — 京都大学.

京都大学薬学研究科 岡村均教授、同 講師の土居雅夫氏らの研究グループは、生体リズム異常に伴う高血圧発症メカニズムを解明したと発表した。今回の発見によれば、健康な状態では時計遺伝子の一つ「Cry」が、副腎の3β水酸化ステロイド脱水素酵素(3β-HSD)の発現制御を通じて、血液中のナトリウムとカリウムのバランスを制御するためのステロイドホルモンの一種「アルドステロン」を調整している。だが時計機能が壊れると、この調整ができなくなるため、高血圧になるらしい。

高血圧と生体リズムの関係は、高血圧の罹患率が、昼夜交代勤務者において高いことから疫学的には知られていた。だが実際に生体時計(体内時計、生物時計、biological clockともいう)と高血圧を結びつける分子機序についてはこれまで全く不明だった。研究グループは遺伝子改変によって生体リズムを消失させたマウス(Cry-null マウス)を使って、病態検索を行った。その結果、Cry-nullマウスは食塩を摂取することによって高血圧になることが分かり、それが副腎球状層で生み出されるアルドステロンの過剰分泌に原因があることを明らかにした。

このマウスを対象に、DNAマイクロアレイ解析、レーザーマイクロダイセション法を使って副腎機能障害の原因分子を探ったところ、副腎の球状層に局在する新しいタイプの「3β水酸化ステロイド脱水素酵素(3β-HSD)」が Cry-nullマウスでは過剰に発現していることが分かった。

この「3β-HSD遺伝子」は、正常のマウスでは時計の制御を受けて概日性の発現変動を示す。だが時計機能を完全に失ったCry-nullマウスでは一日を通して常に高いレベルで発現が維持されており、その結果、3β-HSDの酵素活性の上昇が引き起こされ、副腎球状層でアルドステロンが異常に生み出されていた。

これらの結果から「時計遺伝子であるCryが副腎球状層特異的3β-HSDの発現制御を介して正常なアルドステロン産生の維持に寄与していることを示しており、このパスウェイの異常がリズム失調に伴う食塩感受性高血圧の発症機序において極めて重大なリスク要因となっている可能性を示している」と研究グループは述べている。

研究グループでは、ヒトの副腎でも球状層特異的3β-HSDサブタイプを見つけている。このリズム異常に伴う食塩感受性高血圧の発見と副腎球状層 特異的3β-HSDサブタイプの同定は、ヒトの高血圧病因の新局面を切り開いた極めて重要な所見であるとしている。

Cry-nullマウスにおける副腎球状層3β-HSDの異常発現 左図: Cry-nullと正常マウスの副腎を用いたマイクロアレイ解析。リズムを調べるため一日6点で検索。Cry-nullの球状層3β-HSDのみが終日異常に高い発現を示す。右図:球状層3β-HSD抗体を用いた免疫組織染色。この酵素は球状層に特異的な発現(赤色)を示す。

Cry-nullマウスにおける副腎球状層3β-HSDの異常発現 左図: Cry-nullと正常マウスの副腎を用いたマイクロアレイ解析。リズムを調べるため一日6点で検索。Cry-nullの球状層3β-HSDのみが終日異常に高い発現を示す。右図:球状層3β-HSD抗体を用いた免疫組織染色。この酵素は球状層に特異的な発現(赤色)を示す。

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