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白血病幹細胞の抗がん剤抵抗性の原因は細胞周期の静止 理研ほか

白血病幹細胞の抗がん剤抵抗性のメカニズムとニッチの役割
白血病再発を引き起こす白血病幹細胞の抗がん剤抵抗性の原因を解明|2010年 プレスリリース|理化学研究所.

独立行政法人理化学研究所 免疫・アレルギー科学総合研究センター(谷口克センター長)ヒト疾患モデル研究ユニットの石川文彦ユニットリーダー・齊藤頼子研究員、国家公務員共済組合連合会虎の門病院血液科の谷口修一部長、ジャクソン研究所のL.シュルツ(L. Shultz)博士らは、成人の血液がんである「急性骨髄性白血病」の再発の主原因として知られる白血病幹細胞が、骨髄に潜んで細胞周期を静止しているために、抗がん剤に抵抗性を持つことを突き止めた。止まっていた細胞周期を動かすと、抗がん剤治療の効果が高まることを、ヒトの白血病状態を再現した白血病ヒト化マウスで明らかにした。白血病を幹細胞レベルで治療し、白血病の再発克服・根治を目指す新たな治療の可能性を示すもの。『Nature Biotechnology』(2月14日号)にオンライン掲載された。

急性骨髄性白血病の臨床経過

急性骨髄性白血病の臨床経過

白血病再発の主要な原因となっている白血病幹細胞が、骨髄と骨の境界(ニッチ)に存在することは分かっていた。だが、なぜ、その場所に集中しているのかは謎だった。

研究グループは「白血病ヒト化モデルマウス」で、骨髄内の細胞周期を「共焦点イメージング(目的とする分子が組織・細胞の局在や、異なる分子の発現の相関について、同時に複数の蛍光色素を用いて明らかにするイメージング手法)」を使って解析した。その結果、ニッチに存在する白血病幹細胞では特異的に細胞周期が静止していることが分かった。

抗がん剤は増殖活性の高い(細胞周期が早い)がん細胞を標的として開発されてきた。そのため、白血病幹細胞が抗がん剤治療に抵抗性を示すのは、白血病幹細胞の細胞周期が止まることに起因すると考えられる。

この発見に基づいて、白血病ヒト化モデルマウスに細胞周期を誘導する生理活性物質のサイトカインを投与することで止まっていた白血病幹細胞の細胞周期を動かし、抗がん剤の効果を確認した。

その結果、ヒト化モデルマウスの白血病幹細胞では、骨髄内で細胞周期が動き出し、抵抗性を示していた抗がん剤治療に感受性となり、多くの白血病幹細胞が死滅することが分かった。これは、サイトカイン投与を併用する抗がん剤治療で、白血病ヒト化マウスの幹細胞レベルでの白血病治療が実現したことを示す。

サイトカイン投与による白血病幹細胞の細胞周期の変化

これによって、実際の医療で使われているサイトカイン投与と抗がん剤治療の組み合わせで、白血病幹細胞まで標的とする、新たな白血病治療が実現する可能性が高まったという。

転写されない遺伝子の役割は修復タンパク質が結合する足場だった 遺伝研

国立遺伝学研究所<プレスリリース>.

論文名:「Abundance of ribosomal RNA gene copies maintains genome integrity」(リボソームRNA遺伝子のコピー数はゲノムの安定性維持に重要である) 著者名:Ide, S., Miyazaki, T., Maki, H., and Kobayashi, T.

国立遺伝学研究所細胞遺伝研究部門、井手聖研究員、小林武彦教授らのグループは真核細胞のモデル生物である出芽酵母を用いて、「リボソームRNA遺伝子」の半数以上が転写されていないにも関わらず存在する謎を解明した。それらはDNAの傷を修復するタンパク質が結合する足場となっており、ゲノム全体の安定性維持に寄与しているという。Science (2月5日号) に掲載された。

ほとんどの遺伝子は1細胞あたり1コピーのみ存在する。だが中にはコピーを増やし転写産物量を増大させている遺伝子もある。それらは「増幅遺伝子」と呼ばれ、同一遺伝子が染色体上あるいは染色体外に多数並んで存在する。

増幅遺伝子の代表格に「リボソームRNA遺伝子」というリボソーム中に存在するRNAをコードする遺伝子がある。真核細胞では数百〜数千コピーが巨大な反復遺伝子群を染色体上に形成している。リボソームは細胞の全タンパク質の約80%を占めており、その骨格を作るリボソームRNAの遺伝子も1つでは足らず多数必要となる。しかし、半数以上は転写されていない。なぜこのような「働かない」余分なコピーが存在するのか長年の謎とされていた。

増幅遺伝子はコピー間での相同組換えにより、コピー数が徐々に脱落し減少していく運命にある。しかしリボソームRNA遺伝子は減少分を常に補い、ほぼ一定のコピー数を維持している。これまでこの遺伝子増幅機構について研究してきた研究グループは、「Fob1」というDNA結合タンパク質が、リボソームRNA遺伝子内で増幅に必要な組換えを誘導していることを解明した。そして、この「Fob1」による増幅機構を操作し、酵母のリボソームRNA遺伝子のコピー数を自由に改変することに成功した。

出芽酵母リボソームRNA遺伝子を、野生株(約150コピー)の1/7(20コピー)まで減少させても菌は正常に生育した。この株では、もはや転写されていない余分なコピーはなく、すべてのコピーが転写されていた。そこでこのリボソームRNA遺伝子コピー数減少株(低コピー株)の性質を解析したところ、紫外線や発ガン物質などのDNAに傷を付ける薬剤に対して弱くなることが判明した。またこの低コピー株の感受性の変化はリボソームRNA遺伝子の転写を止めると消失した。

次にそのメカニズムについて解析したところ、低コピー株では「コンデンシン」と呼ばれるタンパク質がリボソームRNA遺伝子の領域に結合できなくなっていることが判明した。そのためDNAの傷の修復に必要な姉妹染色分体間の接着が起こらず、リボソームRNA遺伝子が壊れていく。さらにこのリボソームRNA遺伝子の崩壊はゲノム全体の安定性にも影響を与え、細胞の生育を阻害していることが判明した。

以上のことからリボソームRNA遺伝子の転写されていないコピーは、コンデンシンの結合の足場となり、リボソームRNA遺伝子に生じた傷を修復し、ゲノム全体の安定性維持に重要な役割を担っていることが判明した。

リボソームRNA遺伝子は最も数が多く、ゲノムの大きな領域を占める遺伝子である。そのためリボソームRNA遺伝子が不安定化し、そこにDNA修復酵素が集中するとゲノムの他の部分の修復能力が低下すると考えられる。ゲノムの安定性の低下は、高等真核細胞では癌化に繋がる。そのため余分なコピーも含めてリボソームRNA遺伝子のコピー数を高く維持する機構は、癌抑制の観点からも重要な機能であると考えられる。

異常な速度で増殖する癌細胞は多量のリボソームを必要とし、通常転写されていない余分なコピーも働いていると考えられる。こうした癌細胞は、出芽酵母の低コピー株と同じような状態なっていると考えられる。実際に、癌細胞はDNAに損傷を与えて細胞を殺すような抗がん剤に対して弱いことから、リボソームRNA遺伝子が不安定になり、ゲノム全体が崩壊している可能性が考えられる。今回、研究グループが解析した低コピー株を用いることで、リボソームRNA遺伝子を特異的に攻撃する薬剤をスクリーニングすることが可能となり、より副作用が少ない新規の抗がん剤の開発に繋がると期待されるとしている。

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