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丹沢では新たな大陸地殻が形成されている 大陸地殻成長過程での「島弧−島弧衝突帯」の役割が明らかに JAMSTEC
3月 5th
丹沢複合深成岩体の位置と本研究で得られたジルコン・ウラン−鉛加重平均年代 (Kawate and Arima 1998の地質図に基づく) 岩体内の広範囲で試料採取し年代測定を行った結果、丹沢複合深成岩体の大部分は今から約500〜400万年前に形成されたことがわかった。これは丹沢地塊の衝突開始時期(約700万年前)よりも後であり、岩体を形成したマグマが衝突に伴って発生したことを示す。
プレスリリース<JAMSTECについて<独立行政法人海洋研究開発機構.
独立行政法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)地球内部ダイナミクス領域の谷健一郎技術研究副主任らは、大学共同利用機関法人情報・システム研究機構国立極地研究所などと共同で、若い島孤地殻の形成年代を高精度に測定する手法を開発し、その代表例である「伊豆衝突帯」の「丹沢複合深成岩体」の年代測定に成功した。測定の結果、衝突の過程で新たにマグマ活動が起こって大陸地殻組成が進化していく過程を現世の衝突帯で初めて解明したという。
今回の成果で、島弧同士の衝突が大陸地殻の成長に重要な役割を果たしていることが明らかになった。島弧−島弧衝突帯における大陸地殻の成長過程を明らかにしたこの成果は、同様の島弧−島弧衝突が頻繁に起こっていたとされる地球創成期の大陸成長過程を解明する上で重要な鍵となるとしている。アメリカ地質学会発行の「Geology」誌に掲載される。
現在の地球表層は、主に花崗岩からなる大陸地殻と玄武岩からなる海洋地殻によって覆われている。だが誕生初期の地球表層は大部分が海洋地殻で覆われていた。そして海洋地殻が地球深部へと沈み込む「沈み込み帯」である「島弧(とうこ)」で、徐々に大陸地殻が形成されて、現在のような姿に成長してきたと考えられている。
島弧で形成された地殻が巨大な大陸までに発達するためには、島弧同士が衝突して合体する過程を繰り返す必要がある。地球創成期にはこのような衝突が頻繁に起こっていたと考えられている。だがこれまでその実態はわかっていなかった。
これまでのJAMSTECの研究で、「伊豆・小笠原弧」のような、海洋地殻が別の海洋地殻の下に沈み込むことで形成された「海洋性島弧」では、現在も地下深部で大陸地殻が誕生していることが明らかになりつつある。また「伊豆・小笠原弧」の北端は、フィリピン海プレートの北上と共に本州弧と衝突しており(伊豆衝突帯)、世界で唯一、現在進行形で「島弧−島弧衝突」が起こっている場所だと考えられている。
つまり「伊豆・小笠原弧」および「伊豆衝突帯」は、地球創成期に起こった大陸地殻の形成過程と、島弧同士の衝突によって大陸が成長していく過程を同時に研究できる貴重な研究フィールドだと考えられている。中でも、地表に露出している「丹沢複合深成岩体(伊豆衝突帯内の神奈川県丹沢山地南部に露出している花崗岩質岩体)」は大陸地殻成長過程を解明する上で重要な鍵を握っている。
主に花崗岩からなる丹沢複合深成岩体は、これまで様々な研究が行われてきた結果、伊豆・小笠原弧の深部花崗岩質地質が衝突に伴って隆起・露出したものだとされてきた。だが若い地殻岩石の形成年代を測定するのは従来の分析手法では困難でり、いつ、どのように形成されていったかなど形成過程が解っていなかった。
研究グループは国立極地研究所の高感度高分解能イオンマイクロプローブ(SHRIMP-II)を使って、丹沢複合深成岩体の花崗岩・ハンレイ岩に含まれるジルコンを使ったウラン−鉛年代測定を行った。
ジルコンは放射性核種であるウランに富んだ鉱物で、ウランが時間の経過と共に放射壊変して生じる鉛の同位体比を精密に分析することで、そのジルコンを含んだ岩石の形成年代を測定する手法。高感度高分解能イオンマイクロプローブ(SHRIMP‐II)を用いることでジルコン結晶上の半径数十ミクロンの領域での年代を測定することができる。
ジルコン・ウラン−鉛年代測定法は他の年代測定法と比べて、花崗岩のような地殻岩石の形成年代をより正確・精密に年代決定できる。今回の研究では分析手法や試料調整法を改良することで、より若い、数百万年前に形成された岩石の年代測定が可能となった。また丹沢複合深成岩体のマグマ生成環境を明らかにするために、レーザーアブレーション誘導結合プラズマ質量分析計(LA-ICP-MS)を使って、丹沢複合深成岩体のジルコン結晶の微量元素組成分析を行った。
その年代測定結果から、丹沢複合深成岩体の大部分は伊豆・小笠原弧が本州弧に衝突した後の500万年前から400万年前のマグマ活動によって形成されたことが明らかになった。これは丹沢が従来考えられていたような「伊豆・小笠原弧」の深部地殻断面が衝突によって隆起・露出したものではなく、島弧同士の衝突によってマグマが発生して新たに花崗岩質地殻が形成され、大陸が成長していることを示している。
さらに今回の結果から丹沢複合深成岩体の冷却速度を計算すると、マグマ形成後に最高で100万年の間に約660℃ の温度低下という急速な冷却が起こっていたがわかった。これは深成岩としては世界的にみても非常に早い冷却速度であり、衝突に伴って花崗岩質マグマが形成された後、マグマが急速に上昇・固結したことを物語っている。
丹沢複合深成岩体周辺の堆積岩は約700万年前に本州弧に衝突を開始した伊豆・小笠原弧のブロック(丹沢地塊)だとされているので、衝突開始後わずか200〜300万年の間に花崗岩質マグマが発生して上昇・固結したことになる。この結果から、島弧−島弧衝突帯における地殻の成長速度が非常に早いことが分かった。
またジルコンの微量元素組成分析から、丹沢複合深成岩体を形成したマグマの原料には伊豆・小笠原弧の地殻物質に加えて、大陸地殻からなる本州弧由来の堆積物の影響もあることが判明した。このことは島弧−島弧衝突帯における新たなマグマ活動によって伊豆・小笠原弧で形成された島孤地殻が改変され、大陸地殻的な特徴をもった花崗岩質マグマが発生し、大陸地殻組成が進化していることを示す。
伊豆衝突帯の南北断面図(モデル)
今回の結果は、丹沢山地は地球創成期と似た島弧−島弧衝突によって現在大陸が成長している現場であることを示しているもので、地球上の他の衝突帯における大陸成長過程を解明する上で今後重要な比較対象になると考えられるという。
またJAMSTECでは、地球深部探査船「ちきゅう」による「伊豆・小笠原島弧」地殻の超深度掘削を提案している。実現すれば既存の大陸地殻の影響がない、現在成長しつつある花崗岩質地殻を直接採取できる。このような出来たばかりの島弧地殻と丹沢複合深成岩体のような島弧−島弧衝突帯で成長した地殻を比較して研究することで、地球創世期における大陸地殻成長過程の全容を明らかにできると期待されるという。
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