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理研、分子1つ1つを再現する細胞シミュレーション法を開発 次世代スパコンで細胞丸ごとシミュレーションを目指す

分子1つ1つの運動まで再現する細胞シミュレーション法を開発|2010年 研究成果|独立行政法人 理化学研究所.

独立行政法人理化学研究所(理研)基幹研究所 生化学シミュレーション研究チームの高橋恒一チームリーダーとオランダの原子分子物理研究所のピーターレイン・テンウォルデ教授らは、細胞内に存在する分子1つ1つの運動まで精密に再現する細胞シミュレーションの要素技術の開発に成功したと発表した。アメリカ科学アカデミー紀要『Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America: PNAS』2月9日号に掲載されるに先立ち、1月25日の週にオンライン掲載された。

新たな計算手法は「enhanced Greens Function Reaction Dynamics(eGFRD)法」と呼ばれるもので、これは、これまでは年単位で必要だった計算時間を数日以内に短縮できる計算手法だという。この新技術を国産の細胞シミュレーター「E-Cell」の次世代版に搭載し、神戸に建設中の「次世代スーパーコンピュータ」で活用することで、細胞丸ごとシミュレーションを目指すという。細胞のがん化や幹細胞の分化の予測と制御などに貢献できる成果だとしている。

従来の細胞シミュレーションでは、細胞内の分子1つ1つの運動を考慮せず、分子間の相互作用を回路図のように表現し、分子の数の増減だけを扱う「ネットワークモデル」や、細胞内の場所による平均的な濃度の違いを表現する「濃度平均場モデル」といった手法が主流だった。一方、観察技術の急速な発展で、1分子単位のゆらぎや運動が生命機能に重要な役割を果たしていることが明らかになっていた。シミュレーションにおいても生体分子1つ 1つの運動まで考慮に入れた「1分子粒度」の手法が求められていた。

しかし、従来の1分子粒度の手法である「ブラウン動力学」を用いて、細胞丸ごとの規模で精度よくシミュレーションを行うには、ごく簡単な場合でも年単位の膨大な計算量が必要だった。逆に現実的な時間で計算を終えようとすると、大きな計算誤差を許容することとなり、不正確なシミュレーションを行ってしまうのが問題とされていた。

研究グループは、細胞丸ごと規模での1分子粒度モデルを実現するために、粒子反応拡散計算手法「enhanced Greens Function Reaction Dynamics(eGFRD)法」を開発した。この手法は、ブラウン動力学法よりも飛躍的に性能が向上するだけでなく、原理的には系統誤差が生じないという優れた特性を持っているという。

従来の手法では、細胞内のすべての分子を少しずつ動かし、そのたびに分子と分子の衝突が発生するかどうかを判定し、化学反応をシミュレーションしていた(図1左)。この時、どの位置、どの時点で分子の衝突が起こるのかをいかに精密に計算できるかがシミュレーションの精度と直接関係するため、小さな時間間隔で非常に多くの計算を繰り返す必要があった。

だが「eGFRD法」では、分子を少しずつ動かすのではなく、ある分子がほかの分子に邪魔されることなく自由に動ける範囲「保護領域」を設定し、分子が保護領域に入って何秒後に抜け出るかを計算する(図1右)。そして、この計算を多数の分子に別々に(非同期に)適用する。2つの分子が近くにある時は、分子が2つ入った保護領域の中で、分子の運動と反応を一度に計算する。これにより、一度に進めることができる時間間隔を拡大させることができ、計算量が大幅に減り、飛躍的に計算時間を短縮できた。

また、分子が保護領域に入って出るまでにかかる時間(第一通過時間)や反応が起きるまでにかかる時間を、基礎物理方程式の厳密解を直接用いて計算するため、原理的には系統誤差の無いシミュレーションが可能になり、シミュレーションの精度も大幅に向上した。

図1 従来の計算手法とeGFRD法との比較。eGFRD法では、分子が自由に運動できる保護領域を設定するため、一度に大きな距離を進められる。

図1 従来の計算手法とeGFRD法との比較。eGFRD法では、分子が自由に運動できる保護領域を設定するため、一度に大きな距離を進められる。

また、研究グループは「eGFRD法」を「MAPキナーゼ(MAPK)」のシミュレーションに適用した。MAPKは、細胞表面で受容した情報を処理し、細胞核内の遺伝子発現機構に引き渡す役割を持つ細胞内情報処理分子。1つのMAPK分子は2つのリン酸化部位を持ち、その両方のリン酸化部位が「MAPキナーゼキナーゼ(MAPKK)」という酵素分子によってリン酸化(二重リン酸化)されると活性化して、下流に情報を伝える。

MAPKが情報を伝達する際には、主に「段階的応答」、「超敏感応答」、「二重安定応答」の3つの応答様式のいずれかで行うと考えられている。「段階的応答」では、細胞表面の受容体分子が受け取った信号を遺伝子発現系にそのまま受け渡す。「超敏感応答」では、受け取る信号から雑音を取り除き、オンかオフかのデジタルな信号に変換して遺伝子発現系に渡す。「二重安定応答」では、デジタル化に加え、過去の信号の種類によって現在の応答を変化させるため、MAPKは記憶素子として働くことができると考えられている。

研究グループは、MAPKの二重リン酸化を、従来の「ネットワークモデル」と、今回可能になった分子1つ1つの運動を考慮する「1分子粒度モデル」の2つの手法で計算し、結果を比較した(図2)。すると、従来のネットワークモデルが「二重安定応答」を予測するケースであっても、1分子粒度モデルではそれが消失する場合があることを発見した。

図2 MAPK系のシミュレーション(EはMAPKK、SはMAPK、Pはリン酸基)。MAPKの二重リン酸化を、空間中の分子の運動を考慮しないネットワークモデルと、空間を考慮した1分子粒度モデルで計算し、結果を比較した。

図2 MAPK系のシミュレーション(EはMAPKK、SはMAPK、Pはリン酸基)。MAPKの二重リン酸化を、空間中の分子の運動を考慮しないネットワークモデルと、空間を考慮した1分子粒度モデルで計算し、結果を比較した。

MAPKをリン酸化する酵素であるMAPKKが、1つ目のリン酸化部位をリン酸化してから、次のリン酸化部位をリン酸化することができるようになるまでには一定の時間(緩和時間)がかかる。例えば、MAPKKは、リン酸化を行うためのリン酸基をATP分子から受け取り、リン酸基を渡したATPはADPになる。MAPKKが次のリン酸化を行うためには、ADPを離し新しいATPの供給を受けなければならない。今回のシミュレーションにより、緩和時間が短い場合には、「二重安定応答」が消失することが分かった(図3)。同様に、「超敏感応答」が「段階的応答」に変化する場合があることや、刺激に対するMAPKの二重リン酸化の速度がこれまでの予測よりも速く、MAPKの拡散速度に反比例する場合があることも分かった。

従来のネットワークモデルは、生体分子1つ1つの運動を考慮せず、分子が衝突し、反応を起こす確率が均一であるとする「化学マスター方程式」理論に基づいている。今回の分子1つ1つの運動を考慮した「eGFRD法」を用いたシミュレーションにより、MAPKが情報伝達を行う「超敏感応答」や「二重安定応答」などの応答様式の発生条件が、これまでの理論とは大幅に異なる場合があることが分かった。これまで、MAPKの反応機構においては実験結果と理論とが必ずしも一致しないことが謎とされていた。今回の成果によりMAPKの反応機構の解明が一層進むことが期待できるという。

図3 MAPKシミュレーションの結果。酵素の緩和速度が速くなると、MAPKの二重安定応答が消失する場合がある(赤丸)。

図3 MAPKシミュレーションの結果。酵素の緩和速度が速くなると、MAPKの二重安定応答が消失する場合がある(赤丸)。

今回の成果により、「eGFRD法」を用いれば特定の分子にターゲットを絞れば在来の計算機でも細胞丸ごと規模でのシミュレーションが可能であることが分かった。「eGFRD法」を細胞シミュレーター「E-Cell」の次世代版に搭載し、次世代スーパーコンピュータで活用することで、細胞内に存在する多くの種類の分子の同時シミュレーションや、多数の細胞からなる組織のシミュレーションへ道を開くことになるという。

具体的には、複数の情報伝達経路同士の相互作用(クロストーク)の影響や、細胞内の分子の混み合い方(分子混雑)が及ぼす影響、また細胞同士が信号分子を交換してコミュニケーションを行う様子など、さらに高度なシミュレーションが実現する可能性がある。最終的には、細胞のがん化の機序の解明を通じて創薬へ貢献できたり、幹細胞(万能細胞)の分化の予測と制御を通じて再生医療の実現へとつなげられると期待される。

さらに、研究グループでは、この技術を有用微生物の設計に適用すれば、環境問題やエネルギー問題の解決の糸口を見いだす可能性もあるとしている。

テクノロード、ホビーロボットの物理シミュレーター「Go Simulation!」Beta2を公開 教育用にも展開

テクノロード

物理演算ロボット シミュレータ「Go Simulation!」.

株式会社テクノロードは、ホビーロボットを主な用途とした物理シミュレーター「Go Simulation!」Beta2を公開した。同社のウェブからダウンロードし試用できる。製品版の発売を2月に予定しており、試用期間は2010年3月15日まで。ユーザー登録が必要。

「Go Simulation!」は、物理演算でロボットの動きや接触判定等を再現できるシミュレーター。物理演算APIにはリアルタイム性を重視したODE(Open Dynamics Engine)を採用している。物理シミュレーターながら「ゲームモード」があり、ゲーム感覚でロボットを動かし、楽しむことができる。


ゲームモード ダッシュ競技の動画

Windows XP SP2以上, VISTA, 7に対応しており、Net Framework 3.5が必要。CPUはPentium(R) 4/Celeron(R) D 2GHz相当以上、OpenGL1.5以上対応GPU又はチップセットを推奨環境としている。Core2DUO+GPUの環境ならばロボット2体のバトルでもリアルタイム性を期待できるが、Atom搭載のネットブックではロボット一体でも動作には負荷がかかるという。

ロボットの動作は、モーションエディタで自由に作成することができる。市販の二足歩行ロボットキットのように、歩行モーションや起き上がりモーション等も作成できる。たとえば歩行モーションを改造して高速移動が出来るようにしたり、オリジナルの攻撃技や、ダンスモーションを作成することも出来る。


モーションエディタの使い方の動画

ロボットの寸法・質量・関節は設計エディタで設定する。設計ディタを使って、多くの二足歩行ロボットのモデルデータを作成することができる。またポリゴンデータとして、STLファイルとXファイルをロードすることができるため、既存の三次元CADツール、三次元CGツールはXファイルで作成したポリゴンデータをロードすることができる。サーボモータのパラメータ(最大トルクや制御ゲイン、最大速度等)も調整可能。

ロボットの行動制御については、簡単な条件分岐(if文、goto文)や、整数演算、モーションの呼び出し、ジョイスティック入力などがオリジナルのスクリプト言語で記述できる。ZMP(Zero Moment Point)を表示したり、またカメラは通常の外部カメラの他に、ロボット搭載用カメラ視点も選択でき、ロボットに乗って操縦するような感覚も味わえるという。シミュレーションの動画は無圧縮AVIファイル等に保存可能。コーデックをインストールすることにより高性能圧縮のH.264やXdiv形式で保存することも出来る。

またオプションでC/C++でロボットの制御プログラムを作成することが可能で、教育や研究用途にも使えるという。

今回の「ベータ2」と製品版との違い・制限は、以下のとおり。

  • 1モーションあたりポーズを18個まで登録可能
  • モーションのグループ化機能無し
  • バトル対戦機能無し
  • レーザービーム発射機能無し
  • ジョイスティックのシフトボタン無し

今後、テクノロードでは操作法やロボットデータ、ステージデータ等を逐次アップしていく予定。二足歩行ロボット大会「ROBO-ONE」の中で年に一回開催されているシミュレーション大会「ROBO-ONE on PC 4th」でも使用される。

簡単!実践!ロボットシミュレーション – Open Dynamics Engineによるロボットプログラミング

著者/訳者:出村 公成

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ISBN-10 : 4627846916

ISBN-13 : 9784627846913


Microsoft Robotics Studio プログラミング

著者/訳者:布留川 英一

出版社:毎日コミュニケーションズ( 2007-06-09 )

定価:¥ 3,780

単行本(ソフトカバー) ( 376 ページ )

ISBN-10 : 4839923833

ISBN-13 : 9784839923839


NICT、妊婦と胎児の組織や臓器を忠実に再現した「妊娠女性全身数値データ」を公開

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妊娠女性全身数値データの民間への公開を開始 ~ 世界初、妊婦と胎児の組織や臓器を忠実に再現 ~|NICT 独立行政法人 情報通信研究機構.

12月21日、独立行政法人情報通信研究機構(NICT)は千葉大学と共同で開発した、胎児や胎盤などの妊娠女性固有組織の形状を忠実に模擬した日本人の「妊娠女性データベース」を、民間企業向けに有償で公開すると発表した。

数値人体データベースは、電波と人体との相互影響を研究するために開発されたもので、人体を細かなブロックに分割し、それぞれのブロックに筋肉や脂肪と いった人体組織に対応する番号を付与したボクセル形式となっている。モデルは2mm立方体のブロック約710万個で構成され、妊娠26週における日本人の平均的体型を持っている。胎児や胎盤などの妊娠女性固有の組織を含む56種類の組織と臓器から成る世界初の本格的な全身データベースだという。

この妊娠女性データベースは、組織や臓器における電気定数を設定することで電波が妊娠女性の体内に吸収される電力をこれまで以上に高精度に推定することができる。また、電気定数の代わりに他の人体特性値を設定することで、様々な分野で利用出来る。電波による妊娠女性や胎児への影響調査のほか、医療機器の開発や治療における評価、自動車衝突時の傷害評価、服飾等の人間工学評価等、幅広い分野での研究開発や商品開発に利用できるという。

電波は危なくないか―心配される人体への障害 (ブルーバックス)

著者/訳者:徳丸 仁

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生体と電磁波―携帯電話、高圧送電線、地磁気、静電気などと人間との関わり (CQ BOOKS)

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生体と電磁界

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