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「お金がやる気を失わせる」脳のしくみ 玉川大学脳科学研究所

Old coin
Creative Commons License photo credit: Markusram

11月15日,玉川大学脳科学研究所の松元健二 准教授とミュンヘン大学の村山航研究員らは、金銭的報酬がやる気を失わせる効果を反映した脳活動記録に成功したと発表した。自発的な学習意欲を促す教育法の開発や、個々人のやる気に満ちた活発な社会の実現にもつながるものだとしている。

研究成果は、米国の科学雑誌”Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America”(オンライン版)に2010 年11 月15 日(米国東部時間)に掲載された。

論文名:
Neural basis of the undermining effect of monetary reward on intrinsic motivation(金銭報酬による内発的動機アンダーマイニング効果の神経基盤)

課題の成績に応じた金銭報酬は、一般にやる気を高めると信じられているが,課題への自発的取り組み(内発的動機)を低下させる効果があることも知られており,これは「アンダーマイニング効果」と呼ばれている。ただしこれまでは行動実験でしか認められておらず,脳活動では確認されていなかった。

アンダーマイニング効果

アンダーマイニング効果

研究グループは、自発的に楽しむことのできる課題を使って、課題の成績に応じて金銭報酬が貰えることを約束して課題を行ったグループ(報酬群)と、そのような約束なしに課題を行ったグループ(対照群)とに分け、課題を行っている最中の脳活動を計測した。その結果、成績に応じた金銭報酬が内発的動機を低下させる際の脳活動の様子を捉えることに、世界で初めて成功した。

被験者に「自発的には楽しめる課題」として行わせたのは「ストップウォッチを自分の手でできるだけ正確に5秒で止める」という課題。そして、4.95〜5.05 秒の間で止めることができれば成功として、ポイントを加算した。そして、金銭報酬が貰えることを約束される「報酬群」は、1ポイントごとに200 円の金銭報酬が貰えることが約束されていた。いっぽう、対照群ではそのような約束は一切無かった。

比較のため、自発的には楽しむことができない「ストップウォッチが自動的に止まった後に、機械的にボタンを押す」という課題も与えられた。こちらにはポイント加算もない。

自分の手でストップウォッチを止める課題(上)と、機械的に押すだけの課題(下)

自分の手でストップウォッチを止める課題(上)と、機械的に押すだけの課題(下)

実験では,大学生男女28 名の実験参加者を、課題の成績に応じて金銭報酬が貰えることを約束して課題を行ったグループ(報酬群)と、そのような約束なしに課題を行ったグループ(対照群)とに分け、「ストップウォッチを自分の手でできるだけ正確に5秒で止める課題」と「ストップウォッチが自動的に止まった後に、機械的にボタンを押す課題」とを行わせた。そして、課題に取り組んでいる最中に、金銭報酬を貰う前と貰った後とで脳活動がどのように異なるかを、磁気共鳴画像撮影装置(MRI)を用いた脳機能イメージング法で調べた。

まず第1セッションでは、報酬群は課題の成績に応じて金銭報酬が貰えることを約束して課題を行った。いっぽう対照群はそのような約束なしに課題を行った。両群とも、自発的に楽しめる課題が教示された際に前頭葉が、続いて成功の結果が表示されたときに大脳基底核が活動を高めた。そして第1セッション終了直後に、報酬群には約束通り、成績に応じた金銭報酬を与え、対照群には、成績とは無関係に、報酬群と同額の金銭報酬を与えた。

各実験参加者は、第1セッション終了直後に金銭報酬を貰い、その後、3分間の自由時間が設けられた。この間、実験参加者は、実験に用いた2種類の課題が自由に行えるパソコンと何冊かの雑誌が置かれたテーブルと椅子、そして荷物を保管したロッカーが置かれている部屋に一人で残された。この自由時間には、実験に用いた2種類の課題を含めて、何をしてもよかった。

すると金銭報酬を貰った直後の3分間の自由時間に、金銭的報酬の約束のない対照群は、実験に用いた課題を自発的に頻繁に行ったのに対し、報酬がもらえることを約束されている報酬群は、課題を自発的に行うことはほとんどなかった。この行動の違いは、成績に応じた金銭報酬を獲得するために課題をこなした報酬群では、課題の遂行自体を楽しむ内発的動機が低下した(アンダーマイニング効果)ことを示している。

自由時間に自発的に課題を行った回数

続いて第2セッションとして、金銭報酬がもう得られないことを明示した条件下で課題を遂行しているときには、第1セッションで見られた前頭葉と大脳基底核の連動した脳活動が報酬群では著しく低下した。だが、対照群では脳活動の低下は見られず保たれたままだった。

アンダーマイニング効果を反映した脳活動

アンダーマイニング効果を反映した脳活動

この研究成果は、脳内の認知処理の中枢である前頭葉と価値計算の中枢である大脳基底核とが協同することによって、内発的動機が支えられていることを示唆しており、同時に、行動実験でしか認められていなかった内発的動機のアンダーマイニング効果の実在性を脳科学的に強く示唆するものだとしている。




玉川大学「2010年触れてみよう!「脳とロボット」開催 8/1日

引用元: 2010年触れてみよう!「脳とロボット」.

日時: 平成22年8月1日(日) 10:00~15:30

場所: 玉川大学8号館(工学部)・玉川学園サイテックセンター
[小田急線玉川学園前下車 徒歩10分]

対象: 一般(小学生以上)

無料・申込み不要(入退場自由)


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複数人の脳を同時計測できる『ウェアラブル光トポグラフィ』を販売開始 日立

ニュースリリース:2010年4月7日:日立.

株式会社日立製作所と株式会社日立国際電気エンジニアリング(HKDE)は、脳活動に伴う脳内血液量の変化を計測することで日常生活の脳活動の把握や研究に活用できる「ウェアラブル光トポグラフィ」を開発したと発表した。研究機関向けに販売する。

頭部に装着するヘッドセット、計測するための設定や計測結果を保存する携帯制御ボックス、計測結果を表示する計測コントローラの3点で構成される。

小型で、複数の人の脳を同時に計測できる点が特徴。

携帯制御ボックスと計測コントローラは無線LANによる双方向通信を用いて、計測結果をリアルタイムに計測コントローラに表示することができる。また、無線LANを使わなくても、ヘッドセットと携帯制御ボックスで計測することができる。

ヘッドセットは頭部への密着性を向上するために、光源と受光部をブロック化した。また、2波長のレーザーダイオードを1つのパッケージに実装し、小型化を実現した。ヘッドセット重量を約700g、携帯制御ボックスも約650g。より日常生活に近い状態で脳活動を計測できるようにした。

独自開発の705nmのレーザーダイオードを採用することで、高い信号精度を維持しているという。さらにヘッドセットと携帯制御ボックスを増設することで、1台の計測コントローラで、最大4人の同時計測が可能で、それぞれの計測結果をリアルタイムに表示・保存することができるという。会話時のような複数脳の同時計測が必要な研究分野への新たなアプローチが可能になる。

HKDEが製品化、日立が販売を担当する。大学などの研究機関向けに非薬事品(医療用、診断用に利用することはできない)として7月から販売する。

微弱な近赤外光を頭皮上から照射して、脳活動に伴う脳内血液量の変化を無侵襲で計測し画像化する「光トポグラフィ法」は、1995年に、世界に先駆けて日立が開発した技術。2001年に株式会社日立メディコが医療用装置として販売開始した。光トポグラフィ法は研究分野でも使われている。

日立は2007年5月に携帯型光トポグラフィ技術の試作を発表、 2009年11月には2チャンネルの頭部近赤外分光計測装置の販売を開始するなど、より日常に近い状況の中で計測するための技術開発を推進してきた。


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さすると神経が突起を伸ばす TRPV2タンパク質の働きを解明

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「さする」と反応、神経の突起を伸ばす新たな分子メカニズムを解明―神経の細胞伸展の感知センサーを発見―/自然科学研究機構 生理学研究所.

TRPV2 enhances axon outgrowth through its activation by membrane stretch in developing sensory and motor neurons
Koji Shibasaki, Namie Murayama, Katsuhiko Ono, Yasuki Ishizaki and Makoto Tominaga
米国神経科学学会 誌(ジャーナルオブニューロサイエンス)3月31日号
群馬大学大学院医学系研究科の柴崎貢志講師は、生理学研究所の富永真琴教授らとの共同研究で、神経が伸びていく際に重要なセンサー、「TRPV2(トリップブイ2)」タンパク質の働きを解明したと発表した。

ニワトリの神経の実験を通して、TRPV2は、「さする」などの物理的な力がかかったときに働き、神経が突起を伸ばすことを 助けていることを確認した。3月 31日づけの米国神経科学会誌に掲載された。

ニワトリの脊髄の神経細胞から突起が伸びていく様子。TRPV2センサーがない場合と比べるとTRPV2センサーがある場合には、長く突起が伸びることがわかる(右図、三角)。もともと、TRPV2センサーは成体の感覚神経において、熱を感じる熱センサーとして知られていた。胎児期(生まれる前)には、伸展感知センサー・神経突起伸長センサーとして機能し、出生後に熱センサーとして機能するようになることがわかった。ある働きを持つセンサーが別の働きを持つようになることを、「モーダルシフト」と呼ぶ。

ニワトリの脊髄の神経細胞から突起が伸びていく様子。TRPV2センサーがない場合と比べるとTRPV2センサーがある場合には、長く突起が伸びることがわかる(右図、三角)。もともと、TRPV2センサーは成体の感覚神経において、熱を感じる熱センサーとして知られていた。胎児期(生まれる前)には、伸展感知センサー・神経突起伸長センサーとして機能し、出生後に熱センサーとして機能するようになることがわかった。ある働きを持つセンサーが別の働きを持つようになることを、「モーダルシフト」と呼ぶ。

TRPV2タンパク質は、熱を感じる分子センサーとして知られるタンパク質。だが突起を伸ばそうとする神経では「さする」などの伸展を促す物理的な刺激を感じる「細胞伸展センサー」として働くという。人では脊髄の坐骨神経は1m近くあるが、これもTRPV2センサーが働くことで、突起を伸ばし、体の中で最も長い神経突起を出すことができることを明らかにた。傷ついた神経が再び突起を伸ばしていくためにも重要な役割を果たすと考えられる。

TRPV2センサーは細胞が伸びると反応する伸展感知センサー。神経細胞をシリコン膜の上で培養したところ、TRPV2センサーを持つ細胞(一番左側の" 赤色"蛍光タンパク質を一緒に発現させた細胞)は、シリコンをひっぱって細胞を伸ばしたときに反応することが分かった。図はカルシウム・イメージングによって、反応を確かめたもの。伸展感知センサーの機能を使って、神経突起を伸長させていることがわかった。

TRPV2センサーは細胞が伸びると反応する伸展感知センサー。神経細胞をシリコン膜の上で培養したところ、TRPV2センサーを持つ細胞(一番左側の" 赤色"蛍光タンパク質を一緒に発現させた細胞)は、シリコンをひっぱって細胞を伸ばしたときに反応することが分かった。図はカルシウム・イメージングによって、反応を確かめたもの。伸展感知センサーの機能を使って、神経突起を伸長させていることがわかった。

この研究によって、TRPV2センサーが「ひっぱったり」「さすったり」などの物理的な刺激を感じて反応することで、神経の突起が伸びていくことを 促す効果があることが明らかとなった。交通事故などで激しい神経損傷を負った場合に、リハビリをして動かすと何故、運動機能が回復していくのかが分子レベ ルで解明できる可能性があるという。また、打撲などで傷ついた皮膚の神経の損傷部位を自然とさすってしまう行為は、神経の突起の伸びを促し、神経回路の再 生も促す効果があると考えられるとしている。

さらに、TRPV2センサーを薬物などで効果的に刺激できれば、神経の突起の伸びを効果的に促すことができると考えらる。今後、ES細胞やiPS細 胞を用いた最先端の再生医療技術とTRPV2センサー研究を組み合わせて行くことで、神経の再生治療の進展に役立つとしている。

「さすられる」と活性化するTRPV2センサーの働き(まとめ)。神経が伸びていく際には、「ひっぱられたり」、「さすられたり」といった物理的な刺激を感じるのにTRPV2センサーが重要な役割を果たしていることがわかった。成体(おとな)でも、傷ついた神経が突起を伸ばしていく際などの損傷からの回復過程で重要な役割を果たすものと考えられ、神経再生への応用が期待される。

「さすられる」と活性化するTRPV2センサーの働き(まとめ)。神経が伸びていく際には、「ひっぱられたり」、「さすられたり」といった物理的な刺激を感じるのにTRPV2センサーが重要な役割を果たしていることがわかった。成体(おとな)でも、傷ついた神経が突起を伸ばしていく際などの損傷からの回復過程で重要な役割を果たすものと考えられ、神経再生への応用が期待される。

柴崎講師は、

「打撲などをうけて皮膚の神経が傷ついたとき損傷部位を自然となでたりさすったりする行為には、TRPV2センサーを活性化させ、損傷部位の 神経突起の再生を促そうという無意識の意味合いが込められていると考えれば理屈にあっています。リハビリなどで運動神経などの神経回路を回復させ、運動機 能を回復させるためには、このTRPV2センサーの活性化を介した神経突起の再生が重要な役割を果たすものと考えられます。また、ES細胞やiPS細胞を 用いた最先端の再生医療技術と組み合わせて行くことで、神経回路の再生に役立つと期待されます」

と語っているという。



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産総研、脳波で意思伝達する「ニューロコミュニケーター」を開発 2〜3年後に10万円以下で実用化目標

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産総研:脳波計測による意思伝達装置「ニューロコミュニケーター」を開発.

独立行政法人 産業技術総合研究所(産総研)脳神経情報研究部門ニューロテクノロジー研究グループの長谷川良平 研究グループ長は、頭皮上の脳波を測定して脳内意思を解読し、意思伝達を行う装置「ニューロコミュニケーター」を開発したと発表した。

超小型モバイル脳波計と、高速・高精度の脳内意思解読アルゴリズム、さらに効率的な意思伝達アプリケーションを統合した、実用的な「ブレイン-マシン インターフェース(BMI)」システムだとしている。最大500種類以上のメッセージが生成可能で、アバターが人工音声でメッセージを読み上げるという。

筋萎縮性側索硬化症など、発話や書字が困難な重度の運動障害者でも脳活動により意思を伝達できる可能性があり、2〜3年後をめどに10万円以下で実用化を目指す。

「ブレイン-マシン インターフェース(BMI)」とは脳と外部機器との直接入出力を行う技術。BMI技術は、脳機能や身体機能に障害のある患者の治療や、ハンディキャップをもつ人の生活の質を向上させる技術として期待されている。

今回、産総研が開発した「ニューロコミュニケーター」は、頭皮上の脳波を測定し、脳内意思を解読して意思伝達を行うシステムで、認知機能に直接アクセスする「認知型BMI技術」を使って開発された。

このシステムには、以下の3つの「コア技術」があるという。

1つ目は「モバイル脳波計の開発」。携帯電話の半分以下の大きさで、8チャンネルの頭皮上脳波を計測できる超小型無線脳波計だ。BMI実用化を目指す装置としては世界最小レベルであり、かつ将来の量産化を見込んで設計しているという。無線方式でヘッドキャップに直接取り付けることができ、ユーザーの動きを制約せず、ノイズも乗りにくいという。また既存の脳波計は大型で家庭用電源が必要だが、この装置はコイン電池で長時間稼働するため、外出先でも使用可能だという。

モバイル脳波計

モバイル脳波計

2つ目は、「高速・高精度の脳内意思解読アルゴリズム」。従来の同様の脳波で入力するシステムでは、PC画面上に並べて提示される選択肢の属性(明るさや形など)を一瞬だけ変化させることを、擬似ランダムに何度か繰り返し、視覚刺激の変化による「P300 誘発脳波(視覚刺激や聴覚刺激の提示後、300ミリ秒後に出現する陽性の電位変化)」の反応の強さの違いによってユーザーの選択を予測・推測するという手法が多かった。提示回数を増やすと予測精度が高くなるが、時間がかかる。逆に提示回数を少なくすると予測に要する時間が短くなるが、精度が悪くなるという課題があった。

今回のシステムでは、脳内意思決定の時間的変化を定量化するために独自に開発していた「仮想意思決定関数(認知課題1試行ごとの意思決定にかかわる脳内処理過程を推定する関数。脳活動と意思決定の結果との関連を多変量解析の手法を組み合わせて分析し、意思決定がまだなされていない状態から何らかの意思決定がなされるまでの連続的な時間経過を視覚化することが可能だという)」を活用し、高速かつ高精度で予測を行うことに成功した。これまでのところ、1回の選択に2〜3秒という早さで90 %以上の予測精度を実現している。

コア技術の3つ目は、「効率的な意思伝達支援メニュー」。脳活動に着目した従来の意思伝達装置はメッセージの種類が少ないことや、メッセージを作るまでの時間がかかった。産総研ではこの問題を解決するために、少ない操作回数で多様なメッセージを作成することができる「階層的メッセージ生成システム」を開発した。

このシステムではユーザーは、タッチパネル画面に提示された8種類のピクトグラム(非常口や車イスなどさまざまな事象を単純な絵にした絵文字)の中から伝えたいメッセージと関連のあるものを1つ選ぶ作業を3回連続で行う。3つのピクトグラムの組み合わせ(8の3乗)で最大512種類のメッセージを作成することができる。このシステムに、選択肢のピクトグラムを擬似ランダムにフラッシュして「P300脳波」を誘発する機能を付け加えることで、タッチパネル操作だけでなく脳波によっても入力できるようにした。

階層的メッセージ生成システムの例

階層的メッセージ生成システムの例

この3つのコア技術を統合することで実用的なBMIシステムである「ニューロコミュニケーター」を実現したとしている。

平成21年度障害者保健福祉推進事業「障害者自立支援機器等研究開発プロジェクト」の支援を受けて開発したもので、プロジェクトでは、学校法人 日本大学医学部(研究分担者:深谷 親 准教授)と共同で、在宅の障害者や入院患者への臨床応用も検討しているという。また、判別しやすい脳波を誘発する視覚刺激の提示方法に関しても、国立大学法人 豊橋技術科学大学エレクトロニクス先端融合研究センター(研究分担者:南 哲人 特任准教授)と共同で研究を行っているという。

今後は、パーツの選択や製造工程などを見直して最終的には10万円以下(他に要パソコン)の製品として、2〜3年後をめどに実用化を目指す。また開発予定の脳波計および解析システムは、脳波に着目した家庭での健康管理や、教育やスポーツ分野におけるニューロフィードバックシステムの導入、ニューロマーケティング分野におけるフィールド調査の促進など、さまざまな経済効果や新規市場開拓効果が見込まれるとしている。


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夢の視覚化も可能? 武田シンポジウム2010「脳と社会」でATRの川人氏がBMIについて講演

2月6日、武田シンポジウム2010「脳と社会」が行われた。主催は一般財団法人 武田先端知財団。まず最初に、ATR脳情報研究所の川人光男氏が「医療BMIから脳コミュニケーションまで」と題して講演した。以下は、私こと森山和道の個人的メモを記事体裁にしたものである。

・川人光男氏 「医療BMIから脳コミュニケーションまで」

ATR 脳情報研究所の川人光男氏は「ナショナルジオグラフィック」に取材された折のビデオをまず自己紹介がわりに流した。人間の運動技能を模倣学習できるロボット「DB」を取材したビデオである。川人氏は「脳を創る」ことを通して「人を知る」というポリシーで研究を進めている神経科学者だ。ロボットやコンピュータは、未だ人に劣る。脳科学も、どういう神経細胞がどこにあるのかといったことはものすごく細かいレベルで分かってきたが、それらの神経細胞が処理を行う仕組みはよく分かってない。だから作ってみようというわけだ。そのときには脳が操るボディも必要になる。それがロボットというわけだ。

川人氏らが作った最新型のロボットは「CB-i」だ。関節数は51、油圧駆動で、人間並みのパワーと柔軟さを持ったロボットで、豊富なセンサ群を持っている。最近は未知の傾斜面でバランスをとったり、未知の障害物の片足バランスなどをも実現している。ビジョンや反力センサーなしで、関節の粘弾性などを使い姿勢情報のみでバランスをとることができているという。

川人氏は「計算論的神経科学」を掲げて研究を進めている。川人氏は壇上で現在の二足歩行ロボットの歩き方を真似して自ら歩き回り、人間と現在の二足歩行ロボットの違いを示した。ロボットは、ZMP規範のようなロボットなりのやり方で歩行を実現しているが、人間のやり方を真似て、その方法で実現しようというのが計算論的神経科学の考え方だ。


川人氏はTBSでオンエアされたドラマ「
TRICK 」のなかに登場した架空の登場人物の著書『上田次郎のどんと来い超常現象』(学習研究社)を示し、計算論的神経科学を使えば、種も仕掛けもあるが、超能力のようなことが実現できるようになっていると紹介した(川人氏は「TRICK」のファンなのだそうだ。講演でのネタなのか、本当なのかは確認しなかったので不明)。

超能力とはテレキネシス、テレポーテーション、テレパシー、念写などのことだ。頭のなかで考えるだけでコンピュータやロボットを動かすことができているし、一万キロ離れた身体に憑依したり、二人の視覚的な見えをそろえるという研究も進んでいる。川人氏らはデューク大学のサルから日本のロボットを制御させる研究を進めている。

「BMI」は、脳と機械を繋ぐ技術だ。医療的には「脳の感覚・中枢・運動機能を電気的人工回路で補綴・再建・増進する試み」ということになる。人工内耳などは既に実用化されているし、また視角に関してもカメラの入力に基づいて網膜を刺激することが可能になっている。中枢機能についてもパーキンソン病患者の大脳基底核に対して刺激装置を埋め込むことで、それを治療することが可能だ。運動機能についてもここ10年くらいで盛んに研究が進んでいる。

川人氏はまず、アメリカのCyberkinetics社の実験ビデオを示した。大脳皮質に電極を埋めるタイプのBMIで、義手やコンピュータをコントロールできる。2004年から臨床試験が始まっており、既に20人の被験者がいるという。

日本は、アメリカやヨーロッパに対してBMIで遅れをとっている。すべて機械が海外からの輸入に頼っている。人工内耳のような比較的簡単な機器も全て輸入だという。仮に150万人×1000万円の市場があるとすると15兆円の産業を逃してしまう計算だ。

いっぽう日本は、MEMS技術、近赤外光計測、ロボット義手などにおいては高い技術を持っている。川人氏らは日本独自のBMIを活用しようとしている。皮質脳波(ECoG)によるBMIだ。大阪大学、東工大、ATRなどが共同で進めている。慶応義塾では脳卒中患者のニューロリハビリテーションにおいて成果を出し始めている。ECoGのBMIと、ニューロリハビリについては逆転できたと見ているという。ただし、安心していると、アメリカ、ドイツだけではなく、猛烈に追い上げてきているアジア諸国に追い上げられてしまうと述べた。

来年度は、東大で開発された高密度の電極や島津の計測機器を使ったBMIの開発を行う。さらに電極と処理装置をすべて頭蓋内に埋め込み、それを有線で引っ張った、やはり完全埋め込み式の非接触給電装置とつなぎ、夜間寝ている間に充電できるような装置を2010年度中に作り、サルに埋め込む予定だという。

またリハビリテーション用外骨格ロボットのCGも示された。アシストスーツ型のロボットだ。現在、とあるベンチャー会社と共同で開発を進めているとのことだった。

BMIの可能性はこれだけではない。超高速のコミュニケーション技術やマーケティングにも使われようとしている。ただし中には「エセ科学」のようなものも少なくないので注意が必要だ。

ともあれ、非言語、意識下のコミュニケーションがどんどん進められようとしている。BMI技術を成功させるためには、神経科学の知識、機械学習技術だけではなく、ユーザー訓練によるシナプス可塑性を活用する必要もある。脳自体が変化して、道具が使えるようになるのである。これが大きな問題だ。ハシを扱ったり車を運転できるようなものなので別に目くじらたてる必要はないという考え方もあるが、BMIは直接、脳から取り出した信号を扱う技術なので、これまでとは違うレベルの変化をもたらす可能性は否定出来ない。

川人氏らの技術の裏には独自の「スパース推定アルゴリズム」がある。その手法を使うことで、今は人が見ている画像を読み取ることもできるようになっている。10年前に非侵襲で人が見ているものを再構築できると考えていた人はまるでいなかったが、いまやここまできたのである。現在は、夢を見ている間に見ているものを画像として取り出せるのではないかと研究しているという。川人氏は、BMI研究のスピード感を感じてもらいたいと述べた。

今は近赤外光計測と脳波を同時に計測することで、人の手首の8方向の運動をミリ秒単位で推定して、手の動きを再構成することができるようになっている。川人氏はホンダとATRによる研究成果の一部をビデオで見せた。

川人氏は最後にBMIでできそうなこと、できていることを述べた。現在、多義図形に対する視覚認知を揃える研究等も進められているという。いっぽう、社会的課題は山のようにあると述べて、軍事利用、企業による利益追求、似非脳科学、医療倫理などを挙げた。特に医療福祉用途から一般へとユーザーへ変わると、利益と危険のバランスの変化も起きるので議論が必要になる。脳情報通信や人の統一された意思にまで踏み込もうとしているのだから尚更だ。今後は、学会と社会のよりよい関係が必要になる。非侵襲的脳活動に対する倫理指針を神経科学学会が出しているように、えせ科学的な方向には注意する必要がある。

将来的には、(川人氏の出身である)物理学が、基礎と応用の両輪を持って完成した学問分野になっているように、神経科学も将来的には基礎と応用の両輪を持つ本当に成熟した学問になってもらいたいと語り、そのためには「似非」や「まやかし」ではないものを理解してもらわないとならない、今回のシンポジウムの「脳と社会」というタイトルは時宜を得ていると述べて講演を終えた。

*サイボーグ技術に興味がある方は、筆者・森山和道による

サイボーグ技術の展開 – 現実、フィクション、そして未来-
http://www.moriyama.com/diary/2009/diary.09.09cyborg.htm

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「臨界期」が終了した後でも変化する神経細胞群を発見 理研

二光子励起カルシウムイメージングの方法(左上)と結果の一部  左下:臨界期を過ぎた生後50日から57日まで右目を遮蔽したマウスの大脳皮質視覚野のイメージング。皮質表面から深さ165μmの面。白は興奮性細胞、緑は抑制性細胞、赤はグリア細胞を示す。  右上:枠内の拡大図。  右下:各細胞の遮蔽眼および非遮蔽眼に与えた光刺激に対する反応。ピンクの縦帯(光刺激を与えた時間を示す)に一致した上への振れが反応。番号は上のイメージング拡大図の細胞番号に該当する。右下のスケールは横が5秒、縦が10%の蛍光強度変化を示す。

二光子励起カルシウムイメージングの方法(左上)と結果の一部 左下:臨界期を過ぎた生後50日から57日まで右目を遮蔽したマウスの大脳皮質視覚野のイメージング。皮質表面から深さ165μmの面。白は興奮性細胞、緑は抑制性細胞、赤はグリア細胞を示す。 右上:枠内の拡大図。 右下:各細胞の遮蔽眼および非遮蔽眼に与えた光刺激に対する反応。ピンクの縦帯(光刺激を与えた時間を示す)に一致した上への振れが反応。番号は上のイメージング拡大図の細胞番号に該当する。右下のスケールは横が5秒、縦が10%の蛍光強度変化を示す。

脳発達の「臨界期」が終了した後でも変化する神経細胞群を発見|2010年 プレスリリース|理化学研究所.

独立行政法人理化学研究所 脳科学総合研究センター 大脳皮質回路可塑性研究チームは、大脳視覚野の抑制性神経細胞が、生後の脳発達の「臨界期」終了後も可塑性を保持していることを発見した。マウス大脳皮質視覚野の抑制性神経細胞が生後の脳発達期にある「臨界期」を通り越してしまい光反応性変化が起きないと思われていた成熟期に到達しても、片目遮蔽実験で変化を起こした。また、抑制性細胞は両目に与えた光刺激に対しともに良く反応する「両眼反応性」を強く示すが、興奮性神経細胞は片目反応性の方が顕著で従来報告どおり「臨界期」終了後は可塑性をほとんど示さないことが分かった。科学雑誌『Journal of Neuroscience』(1月27日号)に掲載される。

ヒトを含む多くのほ乳類の大脳皮質視覚野神経細胞は、幼若期に片目を一時的に遮蔽すると、その目に対する反応性を失い、開いていた目だけに反応するよう変化する。このような変化は「臨界期」と呼ぶ生後発達の一時期にしか起きないと報告され、脳機能発達の「臨界期」を示す例として注目されてきた。

研究チームは、生きたままの動物の大脳皮質視覚野で、多数の神経細胞の活動を同時に観察することのできる「二光子励起カルシウムイメージング法(脳の比較的深い部分から空間解像度の高い画像が得られる二光子励起走査顕微鏡を使い、多数の細胞の活動をカルシウム蛍光強度の変化によって観察する方法)」を活用し、抑制性細胞が緑色蛍光を発する遺伝子改変マウスで、興奮性細胞と抑制性細胞を区別して片目遮蔽効果を観察した。

「臨界期」を過ぎた生後50日目と55日目のマウスの右目を7日間遮蔽した後、視覚野の興奮性細胞と抑制性細胞がどちらの目に強く反応するかを記録した結果、「臨界期」終了後に片目遮蔽をした場合も、抑制性細胞は、遮蔽眼に対する反応が悪くなり、可塑性を保持していることを発見した。

この抑制性細胞が、「臨界期」終了後も可塑性を保持していることは、従来の「臨界期」の概念に修正を迫る成果で、乳幼児の早期教育の意義を考える場合に、重要な示唆を与えると考えられるという。

また、なぜ興奮性細胞が可塑性を喪失しているのに、抑制性細胞が可塑性を保持しているのか、この両細胞の違いを追及することによって可塑性保持のメカニズム解明が進むと考えられる。ほかの脳領域の「臨界期」後の可塑性を解明し、成人における学習を促進する手がかりを得ることも可能になるという。

セロトニン不足では反省がうまくできない 大阪大学ほか

A) 理論モデルを用いて被験者のパラメータを推定した結果。罰金を支払う際にどれぐらい過去の行動まで振り返って関連付けするかを決めるパラメータ (l-) が、セロトニン不足状態で有意に小さい。これは、近い過去しか振り返って関連付けできないことを示している。  B) 推定したパラメータを用いて被験者の結果を再現した結果。セロトニン不足状態では、中盤の割合が他のセロトニン状態よりも有意に低いことをよく再現できている。

A) 理論モデルを用いて被験者のパラメータを推定した結果。罰金を支払う際にどれぐらい過去の行動まで振り返って関連付けするかを決めるパラメータ (l-) が、セロトニン不足状態で有意に小さい。これは、近い過去しか振り返って関連付けできないことを示している。 B) 推定したパラメータを用いて被験者の結果を再現した結果。セロトニン不足状態では、中盤の割合が他のセロトニン状態よりも有意に低いことを再現できている。

引用元: 報道資料. 衝動性が生みだす社会問題を脳科学から解明へ 〜痛い目にあっても学習できないのはなぜ?〜

Saori C.Tanaka、Kazuhiro Shishida Nicolas、Schweighofer、Yasumasa Okamoto、Shigeto Yamawaki、Kenji Doya
Serotonin affects association of aversive outcomes to past actions.

結果と過去の行動を正しく関連付けできるかは、将来の出来事を予測して正しい行動をとる能力と深く関連している。大阪大学・社会経済研究所の田中沙織特任准教授らのグループは、セロトニンの機能が低下した状態では、損失とその原因となる行動との間に、時間が経つと学習が遅れることを明らかにした。

この結果は、毎年夏休みの最後の日に苦労してたまった宿題を片付けるといった行動や、返済で苦しんでも懲りずに借金をしてしまうといった行動のような、「何度痛い目にあってもなかなか学習できないといった問題行動に関する脳機構の解明につながる可能性がある」とし、「さらには、脳科学の視点から、多重債務などの社会問題の予防法や解決策を見出すことが期待される」という。

研究グループはまず先行研究として、セロトニンの機能が低下すると、遠い将来の利益まで視野に入れて予測できなくなることを明らかにした。また、機能的磁気共鳴画像法 (fMRI) を用いた実験によって、セロトニンレベルによって大脳基底核の入力部にあたる線条体の、異なる場所が活動することによって、衝動的な行動が起こることを示唆する結果を得ていた。

そこでこの研究では、セロトニンがどれぐらい過去の行動までさかのぼって関連付けするかにどう関わっているかを調べるために、被験者の脳内セロトニンレベルを調節して、過去の行動と関連付けをしないと解けない問題を解いているときの学習の違いを調べた。そのために研究グループではセロトニンの前駆物質であるトリプトファンの経口摂取量を変化させることで、被験者の脳内のセロトニン活性を、不足、通常、過剰の3状態に調節し、コンピューターゲームを解いているときの行動を調べた。

このゲームでは、画面上に2つの図形が提示され、そのどちらかをボタンを押して選ぶと、図形によって異なる金額の賞金か罰金 (10円、40円、-10円、-40円) が、異なる時間遅れで与えられる。図形は8種類。ゲーム開始時点では被験者は、どの図形が何を意味するかは知らない。試行錯誤のうちにより多くの報酬を得て、より少ない罰金を払う行動を学習する。

21人の被験者(男性、右利き)は、1週間の間隔をあけて合計3日間実験に参加した。660回の選択の経過を解析した結果、少ない罰金を支払う図形と大きな罰金を支払う図形の選択問題において、セロトニン不足状態では、罰金を約10秒後(他の3つの図形のペアの選択の後)に差し引かれた場合に、より少ない罰金を選ぶ学習が、他のセロトニン状態に比べて遅いことが明らかになった。一方、罰金の代わりに賞金がもらえる図形の選択問題では、セロトニンの状態は学習に影響しなかった。

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A) 各試行の流れ。画面に2つのフラクタル図形が表示される。ビープ音でどちらかの図形をボタンで選択すると、選択した図形に赤枠が表示され、金額が表示される。 B) 8種類の図形の金額と、金額が表示される時間遅れの関係。被験者によって、また実験日によって異なる図形のセットを用いた。 C) 金額が表示される時間遅れを説明。すぐに表示される図形を選ぶと (t+1回目、t+2回目)、金額はその試行内に表示される。3回後に表示される図形を選ぶと (t回目)、3回後の試行 (t+3回目) で表示される。その際にすぐに表示される図形を選ぶと、その合計が表示される (t+3回目)。

賞金同士の選択でより多い賞金を選ぶ割合と、罰金同士の選択でより少ない賞金を選ぶ割合。学習が進むほど、割合は1に近づく。3回後に表示される罰金同士の選択で、セロトニン不足状態では、中盤の割合が他のセロトニン状態よりも有意に低い。これは、学習が遅れていることを示している。

賞金同士の選択でより多い賞金を選ぶ割合と、罰金同士の選択でより少ない賞金を選ぶ割合。学習が進むほど、割合は1に近づく。3回後に表示される罰金同士の選択で、セロトニン不足状態では、中盤の割合が他のセロトニン状態よりも有意に低い。これは、学習が遅れていることを示している。

強化学習

著者/訳者:Richard S.Sutton Andrew G.Barto 三上 貞芳 皆川 雅章

出版社:森北出版( 2000-12-01 )

定価:

Amazon価格:¥ 5,184

単行本(ソフトカバー) ( 368 ページ )

ISBN-10 : 4627826613

ISBN-13 : 9784627826618


線条体―神経科学の基礎と臨床〈2〉 (神経科学の基礎と臨床 (2))

著者/訳者:板倉 徹 前田 敏博

出版社:ブレーン出版( 2003-09 )

定価:

単行本 ( 126 ページ )

ISBN-10 : 4892421340

ISBN-13 : 9784892421341


ニューロン数が制御される仕組みの一端が明らかに

東京大学分子細胞生物学研究所の平林祐介氏らは、神経幹細胞がニューロン産生を止める時期の決定に、「ポリコーム分子群」が役割を果たしていることをマウスを使った実験で明らかにした。米科学誌Neuronに発表した。

神経細胞のネットワークを正確に構築するためには、素子であるニューロンの数の制御が重要になる。ニューロンは発生期の一時期に「神経幹細胞」から作られる。その期間が長過ぎるとニューロンが過剰になり、短ければニューロンが不足する。そのタイミングが「ポリコーム分子群」によって制御されていることが明らかになった。

神経幹細胞は発生が進むとニューロンを生み出す能力を失い、グリア細胞のみを産出するようになる。ところがポリコーム分子群を構成する分子を無くした神経幹細胞は、発生が進んでも過剰にニューロンを生み出し続けた。

今回の成果は、幹細胞が様々な細胞を産み出す仕組みの解決に繋がり、また将来、ニューロンが失われる疾患に対する幹細胞を使った治療の実現にも貢献する可能性があるという。

引用元:ポリコームタンパク質群は大脳皮質神経系前駆細胞のニューロン分化能を抑制し、ニューロン産生期からアストロサイト産生期への転換を促進する

Neuron 63, 5, 600 – 613 (2009).

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