化学
多機能ナノ粒子を複合化したナノ構造ファイバー使用の消防服素材 帝人テクノプロダクツ、ホソカワミクロン
1月 26th
ナノ素材消防服
引用元: NEDO:消防職員の命を守る!ナノ構造ファイバーを使用した消防服素材を開発.
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「ナノテク・先端部材実用化研究開発事業」の一環として、帝人テクノプロダクツ株式会社とホソカワミクロン株式会社は、ナノ構造ファイバーを適用した遮熱性・快適性に優れた消防服素材を開発したと発表した。熱伝導に寄与するナノサイズの炭素系超微粒子をアラミド繊維に複合化したナノ構造ファイバーから成る繊維素材で、この素材を使用することで、消防服の軽量化や火傷の進行抑制が可能となるという。
近年、消防活動のスタイルは、財産や人命の救助、延焼防止のため建物内に進入し、火源に極限まで接近して効率的に消火する傾向にあるという。そのため、消防職員の安全な活動に寄与する消防服には、
- 消火活動時に火災から発生する炎・熱から身を守る遮熱
- 消火活動中の疲労や熱中症防止などの身体的負担を軽減させるための快適性
という主に二つの機能が求められている。
ところが、これまでの消防服は、遮熱性または快適性のどちらかに重点が置かれ、これらを高いレベルで両立することは困難だった。
帝人テクノプロダクツとホソカワミクロンはNEDOのナノテク・先端部材実用化 研究開発事業(ナノテクチャレンジ)のテーマの一つとして「ナノ構造ファイバーを適用した遮熱、耐熱、快適性に優れる先進消防服の開発」に共同で取り組み、ナノ構造ファイバーの解析や評価方法、粒子分散方法などについては、東京工業大学の谷岡明彦教授、東京農工大学の神谷秀博教授の指導を受けてきた。両社は先進消防服の開発のために多機能ナノ粒子を複合化したナノ構造ファイバーの開発を行った。
ホソカワミクロンは、多機能ナノ粒子の開発と粒子表面処理技術の開発を担当し、アラミド繊維中へ均一分散を可能とする遮熱性に優れたナノ粒子の開発と製造条件を確立した。帝人テクノプロダクツは、ホソカワミクロンが開発した多機能ナノ粒子を、アラミド繊維中に複合化したナノ構造ファイバーを開発した。また、このナノ構造ファイバーを生地化し裏地として使用した消防服向けの積層構造体を開発した。
開発した素材は、「最外層」「中間層」「遮熱(最内)層」と呼ばれる3層構造から成る消防服のうち、肌への熱を遮蔽する機能が求められる遮熱層に相当する裏地に使用される繊維素材。帝人テクノプロダクツ株式会社のアラミド繊維「テクノーラ」の繊維内に、ホソカワミクロンの粒子表面処理技術と帝人テクノプロダクツの混練・製糸技術を用いて、ナノサイズの炭素系超微粒子を均一分散したもので、熱伝導率を通常のアラミド繊維よりも大幅に高め、熱拡散機能を付与することで遮熱性能の向上を図ったという。
熱拡散機能により、火炎や熱に曝された際に消防服内に侵入した熱を分散・放熱し、ナノ構造ファイバーを適用しない場合との比較で、約40%の火傷抑制の改善が見られた。また、従来の消防服用裏地と比較して、同じ遮熱レベルであれば生地を15%軽量化することが可能だという。
性能試験の結果、これまで両立することが困難とされていた、世界で最も厳しいとされる北米の消防服性能と、世界最高レベルといわれる日本の消防服の快適性能の相反する機能を、高いレベルで両立することに成功したという。
今後は、この繊維素材の量産技術の確立を推進し、消防服への実用化を目指す。アラミド繊維ベースのナノ構造ファイバーは、たとえばチタニア・シリカ系の無機複合ナノ粒子の添加により難燃性の向上とともに熱収縮抑制を実現するなど、繊維内部に分散させる機能性ナノ粒子の種類を変えることでアラミド繊維の物性を損なうことなく導電性や電磁波遮蔽性など様々な機能を付与することが可能なため、これまで有機材料が使用できなかった様々な用途への水平展開が期待できるとしている。
95%以上が水の新素材アクアマテリアル 高強度、自己修復性も
1月 21st

高強度で自己修復性のあるアクアマテリアルの開発に成功—水からできた究極の環境無負荷材料として期待—.
東京大学 大学院工学系研究科の相田卓三教授らは、高強度で透明な「アクアマテリアル(ハイドロゲル)」の開発に成功したと発表した。既存のどの含水材料よりもはるかに高い強度を持ち、形状保持性とともに自己修復性も持つ。究極の環境無負荷材料への道を切り開くものだという。科学雑誌「Nature」のオンライン速報版で公開される。
今回開発された「アクアマテリアル」は95%以上の水分を含んでいて、2〜5%の層状粘土鉱物と、0.4%に満たない有機高分子化合物と水を混ぜるだけで簡単に創ることができる。形状保持性、自己修復性などの性質は、このアクアマテリアルの分子が非共有結合性の相互作用のみによって形成されているためだという。剛性は天然物由来のアクアマテリアルとして知られ、今回開発されたものとほぼ同等の水分を持つ、こんにゃくの強度の約500倍に相当する。
研究グループは、これまでの研究成果を用いて、新たに親水性の高分子の両末端を、カチオン性のデンドロン基で修飾した高分子化合物を設計。デンドロン基とクレイの層の表面との相互作用を利用して、クレイ層を親水性高分子で非共有結合的に架橋して形成される網目構造に水を保持させるという基本構想を立てた。そして約95%の高含水率と0.5MPa(メガパスカル)の高剛性を併せ持ち、形状保持性と自己修復性を持つ透明なアクアマテリアルの開発に成功した。
ハイドロゲルの作り方には、共有結合による架橋構造を利用する方法と、非共有結合による超分子的方法が知られているが、研究グループは、混ぜるだけで簡単に作れ、自己修復性が期待できる非共有結合による方法を選んだ。材料は、(1)水、(2)クレイナノシート(粘土鉱物が層状に積み重なったもの)、(3)両末端デンドロン化高分子、(4)ポリアクリル酸ソーダ(ASAP)の4つの成分。
ポリアクリル酸ソーダの水溶液にクレイを入れ、この分散液を撹拌しながら親水性のポリエチレングリコール鎖の両末端を、末端にグアニジニウムカチオンをもつデンドロン基で修飾したGn-binderを加えた。するとグアニジニウムカチオンが多数のオキシアニオンの存在するクレイナノシートの表面と相互作用して、長いポリエチレングリコール鎖を介してクレイナノシートを結合し、3次元の網目構造を形成して透明なハイドロゲルが生成した。このハイドロゲルの生成は、Gn-binderを加えてから3分以内。
強度の高いハイドロゲルを得るためには、クレイをあらかじめポリアクリル酸ソーダで処理するプロセスが極めて重要だという。この操作によりクレイナノシートがきれいに分散して3次元網目構造を形成するために十分な表面積が確保される。
また、このハイドロゲルのブロックをスライスして得た断片を、スライスした直後に貼り合わせると、新たなブロックが形成される。さらに、このハイドロゲルが、生理活性のあるたんぱく質を変性させることなくゲル内に取り込むことも研究グループは明らかにしている。
今後に関しては、水を主成分とするアクアマテリアルは、環境に優しく、容易に作製することができること、非共有結合でできているため自己修復性であるという特徴、十分な強度を持つこと、どんな形にも成形できること、生理活性物質を取り込むこともできることなどから、異なる酵素活性を持たせた反応シーケンスの場をデザインでき、バイオリアクター用材料、および骨、軟骨などの再生材料や代替材料、アクチュエーター材料など、さまざまな応用分野を切り開く可能性があるという。
ハイドロゲルの作り方
著者/訳者:吉田 亮
出版社:共立出版( 2004-06 )
定価:¥ 1,575
Amazon価格:¥ 1,575
単行本 ( 131 ページ )
ISBN-10 : 4320043642
ISBN-13 : 9784320043640
立体的にも電子的にも原子同士が反発する「阿修羅結合」の化合物合成に成功 ケイ素を使った「究極の結合」へのチャレンジ
1月 19th
ジアニオン性5配位ケイ素−ケイ素化合物(ジシリカート)を合成する化学反応式。4配位ケイ素化合物と単体リチウムを反応させることで、ジシリカートが得られる。反応後に水処理をすると、水を含んだ状態で単離できる。形式的に二つの5配位ケイ素に負電荷が存在することとなる。
引用元: 原子同士が反発しそうなのに切れない新しい化学結合の構築 – プレスリリース – 東京大学 大学院理学系研究科・理学部.
東京大学大学院理学系研究科化学専攻の狩野直和准教授、川島隆幸教授、自然科学研究機構分子科学研究所理論分子科学第一研究部門の永瀬茂教授らは、反発し合う二つの負電荷をもち、5配位状態をとるケイ素原子同士の結合を持つ化合物を世界で初めて合成することに成功した。
原子が密集することによる立体反発と負電荷同士の電子反発によって切れそうであるにもかかわらず、極めて安定だったという。未知の結合を実際に創り、その結合状態がどの程度安定に存在し得るのかを追求することで、自然界での原理である反発をどこまで抑え込めるのかを明らかにすることが目的。一般的な4配位ケイ素同士の結合とは異なる性質を持つことから、局所的に高密度な新しいケイ素材料の基本骨格としての利用が期待されるとしている。ネイチャー出版グループ(NPG)発行のNature Chemistry誌のオンライン版および冊子版で公開される。
二つのシリカートの5配位ケイ素原子同士が直接結合した化合物は、二つのケイ素原子団の間に働く電子反発と立体反発の要素によって、不安定になる。もしもそのような化合物を創ることが出来たとしても容易に結合が切れてしまうと思われるため、そのような結合はこれまでに議論されていなかったという。また、これまでにいくつかの安定な5配位ケイ素化合物が合成されてきたが、ケイ素—ケイ素結合を持つものはほとんどなかった。
研究グループでは、通常よりも多くの原子と結合した原子が関与する新結合を創り出す研究をしており、これまでに結晶状態で5配位ケイ素同士の結合を持つ中性化合物を合成した。しかし、溶液中では置換基がケイ素原子から脱離して4配位状態となってしまい、 5配位状態を維持した結合の構築には成功していなかった。
今回、研究グループは置換基上に電荷を分散して電子反発を軽減することで、5配位シリカートのケイ素原子同士の結合を創り出した。炭素では5配位状態を実現するのが非常に困難であるため、周期表で炭素のすぐ下に位置するケイ素を利用して、新結合を作った。この化合物は塩基性、酸化特性、長波長領域吸光性の三つの特徴的な性質を持ち、中心部分となるケイ素同士の結合から八つの原子が手足のように伸びた異形な化学結合であることから、「阿修羅結合」と命名した。
今後はこのケイ素−ケイ素結合を骨格部分の構成要素とする新しいケイ素材料の開発が期待される。具体的には5配位ケイ素間の結合を延伸したシリコンナノワイヤーを構築することや、異なる構成元素からなる類似の結合を創ることを目指す。
新しい有機ケイ素ポリマー (高分子新素材One Point) 著者/訳者:石川 満夫 出版社:共立出版( 1991-11 ) 定価:¥ 1,050 Amazon価格:¥ 1,050 単行本 ( 80 ページ ) ISBN-10 : 4320042670 ISBN-13 : 9784320042674
著者/訳者:Marye Anne Fox James K. Whitesell 出版社:丸善( 1999-10 ) 定価:¥ 5,040 Amazon価格:¥ 5,040 単行本 ( 328 ページ ) ISBN-10 : 4621046632 ISBN-13 : 9784621046630
東大、日産、アドバンスト・ソフトマテリアルズ、トポロジカル超分子の実用化に成功
11月 29th
東大、日産、アドバンスト・ソフトマテリアルズの3者は、11月10日、「トポロジカル超分子」の実用化に成功したと発表した。東大新領域創成科学研究科 伊藤耕三研究室で発見された高分子の架橋に関する原理とそれを利用した「スライドリング マテリアル」を塗料に組み込んだところ、伸縮性や耐傷特性などが向上し、塗装がはがれにくく、表面の美しさがより長持ちするようになったという。
この技術はNECの携帯電話に採用され、NTTドコモから発売される予定。
リリース:東京大学 トポロジカル超分子の実用化に成功




