生物

マラリア原虫が赤血球に入る瞬間の動画 

後半、赤血球が変形する様子も。

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NASA,リンの代わりにヒ素を使える微生物を発見

発見された細菌「GFAJ-1」。  Credit: Jodi Switzer Blum

発見された細菌「GFAJ-1」。  Credit: Jodi Switzer Blum

NASA – NASA-Funded Research Discovers Life Built With Toxic Chemical.

既に広く報道されているとおりですが、NASAが「リン」の代わりに、有毒物質である「ヒ素」を使うことができる可能性が高い微生物をカリフォルニア州のモノ湖(Mono Lake)で発見したと発表しました。これは生物学の教科書を書き換えるような発見であり、これまで考えられていた生物の生存可能性の範囲を大きく広げると考えられます。

今回の発見により、生物の徴候を地球外で探すときには、より広い範囲を、常識に捉われずに探索しなければならなくなりました。

地球の生物は炭素、水素、窒素、酸素、リン、硫黄を基本元素として使います。リンはDNAやタンパク質を構成する元素の一つであり、エネルギーを蓄える「ATP」の一部でもあります。そしてリンとヒ素は化学的には非常に似ており,そのためにヒ素は代謝系を混乱させることがあり、多くの生物に対して強い毒性を持っています。これまで、ヒ素を取り込むことができる生物は知られていましたが、自分自身を構成する分子として利用出来るものは知られていませんでした。

今回、非常に高塩濃度で高アルカリ性、そして高レベルの砒素環境であるモノ湖の泥から発見された細菌「GFAJ-1」は、ガンマプロテオバクテリア綱に属する細菌で、リンに乏しい環境から採取されたものです。研究室でリンを徐々にヒ素に置き換えて培養したところ、ヒ素を材料に使うようになったとのこと。

カリフォルニア州 モノ湖

カリフォルニア州 モノ湖

発見したフェリッサ・ウルフ・サイモン(Felisa Wolfe-Simon)氏。

発見したフェリッサ・ウルフ・サイモン(Felisa Wolfe-Simon)氏。 Credit: Henry Bortman

これまでSFでは想定されていたような存在が実在することを確認できたとリリースでも述べられています。なお、この細菌はヒ素だけではなく、リンも使うことができます。

リンを使った「GFAJ-1」

リンを使った「GFAJ-1」 Credit: Jodi Switzer Blum

自分のメルマガ「サイエンス・メール」でも事前に紹介させて頂きましたが,今回のこの発見を、クマムシの研究者である堀川大樹さんが事前にブログ「むしプロ」で予想していました。

さすがです。「生命」の可能性を大きく押し広げた今回の発見の意義についても簡潔に紹介されているので、ご一読を。



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「お金がやる気を失わせる」脳のしくみ 玉川大学脳科学研究所

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Creative Commons License photo credit: Markusram

11月15日,玉川大学脳科学研究所の松元健二 准教授とミュンヘン大学の村山航研究員らは、金銭的報酬がやる気を失わせる効果を反映した脳活動記録に成功したと発表した。自発的な学習意欲を促す教育法の開発や、個々人のやる気に満ちた活発な社会の実現にもつながるものだとしている。

研究成果は、米国の科学雑誌”Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America”(オンライン版)に2010 年11 月15 日(米国東部時間)に掲載された。

論文名:
Neural basis of the undermining effect of monetary reward on intrinsic motivation(金銭報酬による内発的動機アンダーマイニング効果の神経基盤)

課題の成績に応じた金銭報酬は、一般にやる気を高めると信じられているが,課題への自発的取り組み(内発的動機)を低下させる効果があることも知られており,これは「アンダーマイニング効果」と呼ばれている。ただしこれまでは行動実験でしか認められておらず,脳活動では確認されていなかった。

アンダーマイニング効果

アンダーマイニング効果

研究グループは、自発的に楽しむことのできる課題を使って、課題の成績に応じて金銭報酬が貰えることを約束して課題を行ったグループ(報酬群)と、そのような約束なしに課題を行ったグループ(対照群)とに分け、課題を行っている最中の脳活動を計測した。その結果、成績に応じた金銭報酬が内発的動機を低下させる際の脳活動の様子を捉えることに、世界で初めて成功した。

被験者に「自発的には楽しめる課題」として行わせたのは「ストップウォッチを自分の手でできるだけ正確に5秒で止める」という課題。そして、4.95〜5.05 秒の間で止めることができれば成功として、ポイントを加算した。そして、金銭報酬が貰えることを約束される「報酬群」は、1ポイントごとに200 円の金銭報酬が貰えることが約束されていた。いっぽう、対照群ではそのような約束は一切無かった。

比較のため、自発的には楽しむことができない「ストップウォッチが自動的に止まった後に、機械的にボタンを押す」という課題も与えられた。こちらにはポイント加算もない。

自分の手でストップウォッチを止める課題(上)と、機械的に押すだけの課題(下)

自分の手でストップウォッチを止める課題(上)と、機械的に押すだけの課題(下)

実験では,大学生男女28 名の実験参加者を、課題の成績に応じて金銭報酬が貰えることを約束して課題を行ったグループ(報酬群)と、そのような約束なしに課題を行ったグループ(対照群)とに分け、「ストップウォッチを自分の手でできるだけ正確に5秒で止める課題」と「ストップウォッチが自動的に止まった後に、機械的にボタンを押す課題」とを行わせた。そして、課題に取り組んでいる最中に、金銭報酬を貰う前と貰った後とで脳活動がどのように異なるかを、磁気共鳴画像撮影装置(MRI)を用いた脳機能イメージング法で調べた。

まず第1セッションでは、報酬群は課題の成績に応じて金銭報酬が貰えることを約束して課題を行った。いっぽう対照群はそのような約束なしに課題を行った。両群とも、自発的に楽しめる課題が教示された際に前頭葉が、続いて成功の結果が表示されたときに大脳基底核が活動を高めた。そして第1セッション終了直後に、報酬群には約束通り、成績に応じた金銭報酬を与え、対照群には、成績とは無関係に、報酬群と同額の金銭報酬を与えた。

各実験参加者は、第1セッション終了直後に金銭報酬を貰い、その後、3分間の自由時間が設けられた。この間、実験参加者は、実験に用いた2種類の課題が自由に行えるパソコンと何冊かの雑誌が置かれたテーブルと椅子、そして荷物を保管したロッカーが置かれている部屋に一人で残された。この自由時間には、実験に用いた2種類の課題を含めて、何をしてもよかった。

すると金銭報酬を貰った直後の3分間の自由時間に、金銭的報酬の約束のない対照群は、実験に用いた課題を自発的に頻繁に行ったのに対し、報酬がもらえることを約束されている報酬群は、課題を自発的に行うことはほとんどなかった。この行動の違いは、成績に応じた金銭報酬を獲得するために課題をこなした報酬群では、課題の遂行自体を楽しむ内発的動機が低下した(アンダーマイニング効果)ことを示している。

自由時間に自発的に課題を行った回数

続いて第2セッションとして、金銭報酬がもう得られないことを明示した条件下で課題を遂行しているときには、第1セッションで見られた前頭葉と大脳基底核の連動した脳活動が報酬群では著しく低下した。だが、対照群では脳活動の低下は見られず保たれたままだった。

アンダーマイニング効果を反映した脳活動

アンダーマイニング効果を反映した脳活動

この研究成果は、脳内の認知処理の中枢である前頭葉と価値計算の中枢である大脳基底核とが協同することによって、内発的動機が支えられていることを示唆しており、同時に、行動実験でしか認められていなかった内発的動機のアンダーマイニング効果の実在性を脳科学的に強く示唆するものだとしている。




京大永田研究室、「構成的生物学(合成生物学)についての座談会」の参加者を募集 11/13日

下記の告知依頼を頂戴致しましたので掲示してお知らせ致します。

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「構成的生物学(合成生物学)についての座談会」参加者募集

京都大学 人間・環境学研究科社会心理学研究室(永田素彦 准教授)では、このたび、「構成的生物学についてのグループインタビュー(座談会)」にご協力いただける方を募集しています。

このインタビュー調査は、「細胞を創る」研究会(http://jscsr.org/)大会3.0内で実施されます。
インタビュー終了後は、研究会の一般公開シンポジウム(今、生命の「再定義」は必要か?)に参加していただくことも可能です。

応募条件:20~60歳、首都圏在住
ライフサイエンスを専門とする研究職(もしくは学生)ではない方
実施日時:11月13日(土) 10:00-12:00
場 所:東京大学 生産技術研究所 駒場リサーチキャンパス内

ご参加いただいた方には、謝礼金をお支払いいたします。

詳細、お申し込みは 、下記の「構成的生物学(合成生物学)についての座談会」参加者募集ホームページをご覧いただき、応募フォームからご連絡ください。

http://jscsr.org/sympo2010/group_interview.pdf

どうぞよろしくお願い致します。
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川崎重工のロボット細胞自動培養装置でiPS細胞の自動培養に成功

R-CPX

産総研:世界で初めてヒトiPS細胞の自動培養に成功.

独立行政法人 国立成育医療研究センター、独立行政法人 産業技術総合研究所は、川崎重工が開発したロボット細胞自動培養装置「R-CPX」を使って、熟練者でなければ培養が難しいヒトiPS細胞の自動培養に、世界で初めて成功したと発表した。

産総研 幹細胞工学研究センターの浅島研究センター長がプロジェクトリーダーとなり、iPS細胞の実用化に向けたコンセプトを定めた。その一環として大量培養を実現するため、成育医療の生殖・細胞医療研究部が確立したiPS細胞の培養プロトコルを、川崎重工がロボット技術と画像処理技術を活用した細胞自動培養装置で再現した。

これまで熟練した研究者が行っていたiPS細胞の分化・未分化の判断を自動化し、未分化の細胞のみを回収してさらに増やすことも可能。川崎重工は同装置で3ヶ月間培養を継続し、安定的に自動培養できることを実証するとともに、成育医療と産総研は各種検査を行い、培養された細胞が未分化のiPS細胞であることを検証している。

2010年6月30日から7月2日まで東京ビッグサイトで開催される国際バイオEXPOにおいて、細胞自動培養装置を出展するとともに、成果報告を行う予定。



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ナノグラムのRNAから遺伝子発現を捉える新解析手法「nanoCAGE法」と「CAGEscan法」 理研

ナノグラムレベルのRNAから遺伝子発現をキャッチする新解析手法を確立|2010年 研究成果|独立行政法人 理化学研究所.

理研オミックス基盤研究領域のピエロ・カルニンチ チームリーダーと SISSA神経生物学部門のステファノ・グスティンチッチ(Stefano Gustincich)博士らは、共同で「nanoCAGE法」と「CAGEscan法」の2つの高感度な新遺伝子発現解析方法を開発したと発表した。『Nature Method』オンライン版に掲載された。

「nanoCAGE法」はmRNAを特異的に増幅するため、これまで解析できなかった微量なmRNAを容易に解析できるようになる。いっぽう「CAGEscan法」は、mRNAの両側の配列情報を明らかにするため、mRNA間の相互作用が明らかになり、例えば、ヒトのがん細胞など無秩序な増殖のメカニズム解明に貢献すると期待される。

「nanoCAGE法」は、DNAの断片であるプライマー配列の工夫とcDNAの特異的な増幅法の導入によって、従来の「CAGE 法(Cap Analysis of Gene Expression。理研オミックス基盤研究領域が開発した方法で耐熱性逆転写酵素やcap-trapper法を組み合わせて5´末端から20塩基のタグ配列を切り出し塩基配列を決定する。この塩基配列を読み取ってゲノム配列と照らし合わせ、どの部分がコピーされているか調べられる)」の感度を1,000倍以上向上させ、ナノグラムレベル(ng:1ngは10-9グラム)のmRNAを解析して遺伝子の転写開始点を決定することができる。

単一細胞に存在している微量なmRNAの5´末端を検出し、関連するプロモーター(mRNA合成の開始に関与するDNA上の特定領域の短い塩基配列のこと。 プロモーター領域にRNAを合成する酵素であるRNAポリメラーゼが結合し、転写が開始される)をゲノム上で同定することができる。

個々の細胞内の遺伝子発現がどのように制御されているかを網羅的に知ることで、例えば、神経細胞やがんを発症している細胞などで発現する微量なRNAを解析することを可能にするという。

nanoCAGE法

いっぽう「CAGEscan法」は、nanoCAGE法と同様に微量なmRNAを解析できる上に、次世代シーケンサーの能力を活用し、mRNA鎖の5´ 末端と3´ 側(DNA、RNAは塩基の糖の部分の5´側から3´側に向かって合成が進み、mRNAの5´末端の塩基にはCAP構造が、3´末端の塩基には例外を除いてほとんどの場合polyAテール配列が付加されている。ここでいう3´側とは、このpolyAテールを除いた塩基配列の部分を指す)の両方の配列を同時に解析することができる手法。そのため、5´末端が、自分自身やほかのmRNAの3´側の塩基配列に結合する様子を明らかにして、mRNA間の相互作用を理解することができるようになる。

さらに、CAGE法では、すべてのRNAを逆転写した後にmRNAだけを分離する必要があるため解析終了までに約5日必要だったが、「nanoCAGE法」と「CAGEscan法」は、mRNA だけを逆転写することができるため、解析に要する時間を2〜3日と短縮することができる。

CAGEscan法

この二つの手法を導入することで、研究グループが「RNA新大陸」と名付けた全遺伝子の半分以上を占めるncRNA(非タンパク質コードRNA(non-coding RNA)。このRNAからはタンパク質は翻訳されない)に関する知見を増やし、これまで、ほとんど不明確なまま取り残されてきたRNAの理解が飛躍的に向上すると期待できるとしている。

なお「RNA新大陸」とは、多様な細胞内RNA集団の莫大な可能性を示す比喩。細胞が生産するRNAを大規模なスケールで調べたところ、従来100個ぐらいしか知られていなかったncRNAが、実は23,000個以上、つまり、全遺伝子の半分以上(53%)を占めているという新しい事実を示したもの。タンパク質がゲノムにコードされている最終生理活性物質であるというこれまでの常識を覆し、予想を凌ぐトランスクリプトーム(DNAからの転写産物の全体)の複雑さを認識させるもので、哺乳動物ゲノムの情報内容に対するこれまでの理解(「遺伝子」という領域が散在しているゲノムのイメージ)を根幹から変えてしまうものだったという。

研究グループは、ヒト白血病K562細胞にnanoCAGE法を適用した。約100〜500ngという微量ではあるものの、核内にある核小体、核細胞質、染色体やrRNAの構成要素であり、mRNAの末端を意味する「polyAテール(mRNAの3´末端に50〜200塩基ほどのアデニン(A)ヌクレオチドが付加されており、これをpolyAテールと呼ぶ。 mRNAに安定性を与え、翻訳を促進する働きがあると考えられている)」を持たない「ポリソームRNA(リボソームは転写されている mRNA に速やかに集まり翻訳を開始する。一本の mRNA に複数のリボソームが連結した状態をポリソーム(polysome)と呼ぶ)」などの転写開始点を調べることに成功した。このように、これまで未知であった部分のRNAという転写産物全体の解析が可能となるだけでなく、生命の維持活動に欠かせない神経細胞などが産出する微量なmRNAの機能も解析できるようになったという。

また、CAGEscan法を使って、ヒト肝細胞がんHep G2細胞の細胞核と細胞質にあるmRNAを解析したところ、細胞核内にあるmRNAは細胞質にあるmRNAに比べ、タンパク質に翻訳されないゲノム領域と多く結合していることも分かった。このことは、細胞核内ではタンパク質翻訳以外の機能を持つゲノム領域も重要な役割を果たしていることを意味している。




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骨折が早く治る注射ができる リコンビナントヒトFGF-2の局所注射が骨折治癒促進剤に

骨折治癒を大幅に早める治療薬を開発 リコンビナントヒト線維芽細胞増殖因子-2 (rhFGF-2)製剤の臨床試験| 東京大学医学部附属病院.

東京大学医学部附属病院 整形外科の川口浩 准教授らの研究グループは、骨折した患部への細胞増殖を促すタンパク質の一種「リコンビナントヒトFGF-2(rhFGF-2)」の局所注射が骨折をはやく治すことを臨床試験で確認したと発表した。

国内48施設において、脛骨骨幹部 の新鮮骨折患者を対象とした臨床試験を行い、rhFGF-2の局所注射が骨折部の癒合までの時間を約4週間短縮することがわかったという。「rhFGF-2」製剤が、世界初の新鮮骨折治癒促進剤となりうることが示唆されたとしている。現在は、実用化に向け研究開発を進めている。「Journal of Bone and Mineral Research」電子版に掲載された。

怪我や事故による骨折、特に下肢の脛骨骨折では、ギプスなどの固定や手術をしても骨癒合が見られない場合、骨癒合が遅れ、変形が残ってしまう場合がある。その結果、患者は歩行が難しくなり、車椅子や松葉杖の生活を強いられることになり、再手術が必要になる場合もある。

この問題を克服するため、国内外において発生後数日以内の骨折である「新鮮骨折」(一般的な骨折のこと。厳密には血腫が出来て骨が作られ始める前の初期の段階を指す)に対する多くの骨折治癒促進剤の探索が行われてきたが、現在までに臨床応用されているものはない。

研究グループは以前からこの骨折治癒促進剤の開発を目指して、特に、線維芽細胞増殖因子(FGF)に注目してきた。FGFは全身のほとんどの組織で作られ、様々な生理作用を示すタンパク質(成長因子)。様々な細胞の増殖を助け、多彩な生物情報を精巧に制御している。たとえば、小人症の中でも最も頻度の高い軟骨無形成症をはじめ、骨・軟骨の形成が障害されている先天性疾患の多くは
FGFからの刺激を受け取るしくみに異常があることが知られている。

現在までにFGFファミリーとして23のサブタイプ、FGFの受容体(FGFからの刺激を受けて作用する物質)には4つのサブタイプが知られているが、中でもFGF-2は骨組織に最も多く存在していて、骨折の治癒過程において骨を作る細胞(骨芽細胞前駆細胞)の増殖を強力に促進している。

研究グループはFGF-2が骨折治癒促進剤として臨床応用できると考え、科研製薬株式会社とリコンビナントヒトFGF-2 (rhFGF-2)含有ゼラチン製剤による臨床試験を実施した。これまでの基礎検討で、rhFGF-2製剤は、ラット、ウサギ、イヌ、そしてサルの骨折および骨欠損モデルで骨癒合を強力に促進することを報告していた。

今回は、これらの非臨床試験に基づいて、このrhFGF-2製剤の脛骨骨折に対する効果をランダム化プラセボ対照二重盲検比較試験(患者のプラセボ効果や観察者バイアスの影響を防ぐことを目的としている試験方法)によって検討した。

国内48施設の整形外科を2年間に受診した脛骨骨幹部の新鮮骨折患者194例のうち、厳密な基準を満たし同意の得られた71例を、プラセボ群(rhFGF-2を含まないゼラチンゲル製剤)、低用量群(0.8 mg rhFGF-2含有ゼラチンゲル製剤)、高用量群(2.4 mg rhFGF-2含有ゼラチンゲル製剤)の3群に無作為割付し、固定手術直後の骨折部に各製剤を注射投与した。

投与後24週間にわたって2週間毎にレントゲンで骨癒合を評価したところ、骨癒合までの時間は、rhFGF-2含有の2群でプラセボ群よりも有意に短く(低用量群とプラセボ群の比較;有意確率 p=0.031、および高用量群とプラセボ群の比較;p=0.009)、骨癒合までの日数はプラセボ群に対して低用量群では28日、高用量群では27日短縮された(図1)。低用量群と高用量群の間に有意差はなかった(p=0.776)。

図1. レントゲン上で骨癒合した患者比率の経時変化。 rhFGF-2含有の2群では骨癒合した患者の割合はプラセボ群よりも有意に高く、骨癒合に要する日数をプラセボ郡に対して約4週間短縮した。24週後でも癒合していない患者数は、プラセボ群、低用量群、高用量群でそれぞれ4、1、0例であった。

図1. レントゲン上で骨癒合した患者比率の経時変化。 rhFGF-2含有の2群では骨癒合した患者の割合はプラセボ群よりも有意に高く、骨癒合に要する日数をプラセボ郡に対して約4週間短縮した。24週後でも癒合していない患者数は、プラセボ群、低用量群、高用量群でそれぞれ4、1、0例であった。

24週後でも癒合していない症例は、プラセボ群、低用量群、高用量群でそれぞれ4、1、0例だった(図2)。3群間で有害事象の発生頻度には有意差はなかった。

図2. 代表症例のレントゲン像。rhFGF-2含有の2群では16週で仮骨形成が見られ24週で骨癒合が完成しているが、プラセボ群では24週でも骨が癒合していない。

図2. 代表症例のレントゲン像。rhFGF-2含有の2群では16週で仮骨形成が見られ24週で骨癒合が完成しているが、プラセボ群では24週でも骨が癒合していない。

以上より、 rhFGF-2製剤局所投与の脛骨骨折に対する有効性および安全性が示されたとしている。

今回の成果によりrhFGF-2製剤が世界初の新鮮骨折治癒促進剤となる可能性が示されたため、今後は、今回の臨床試験の成果に基づき国内のみならず世界的な市場も視野に入れ、実用化に向けた研究開発を進めていくとしている。




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SQUIDを使って世界初の脊髄磁場計測装置を開発 「脊髄機能イメージング」が可能に 金沢工業大学ほか

東京医科歯科大学整形外科に設置された脊髄磁場計測装置の試作機

東京医科歯科大学整形外科に設置された脊髄磁場計測装置の試作機

金沢工業大学 世界初の脊髄機能イメージング 金沢工業大学が新しい脊髄障害の診断装置を開発 −日本整形外科学会にて試作機を発表・展示−.

金沢工業大学は、東京医科歯科大学、横河電機などと共同で脊髄障害を非侵襲で検査することのできる脊髄磁場計測装置を世界で初めて開発したと発表した。

超伝導を応用した高感度磁気センサを使って脊髄神経の発する微弱な磁場を検出し、神経のはたらきを可視化することができる。従来診断が困難だった脊髄障害の場所を正確に調べることのできるという。

開発した試作機は5月27日〜5月30日に東京国際フォーラム/よみうりホール(東京・有楽町)で開催される第83回日本整形外科学会学術総会にて横河電機によって展示発表される。

脊髄の磁場は脳磁場に比べてさらに10分の1ほどの大きさしかなく、地磁気の 100億分の1程度の強度しかない。そのため検出には「SQUID(超伝導量子干渉素子)」を用いた超高感度磁気センサを使用する。検出した磁場データに、空間フィルタ法と呼ばれる磁場源解析処理を行うことで、脊髄の神経活動を画像情報として可視化することができるという。

金沢工業大学先端電子技術応用研究所が平成16年度〜平成20年度に参画した文部科学省知的クラスター創成事業「石川ハイテクセンシングクラスター構想」の一環で開発された脊髄誘発磁場計測装置を石川県の「新豊かさ創造実用化プロジェクト推進事業」などの補助を受けてさらに改良し、実際の患者に適用できる実用的な試作機の開発へとつなげた。金沢工業大学が装置全体の設計や高感度磁気センサなどのハードウェアの開発など、装置の運用と臨床応用を担当した東京医科歯科大学整形外科とともに中心的な役割を担った。そして首都大学東京が解析アルゴリズムの研究を、横河電機はソフトウェアの開発と実用化に向けたマーケティングを担当した。

試作機は東京医科歯科大学整形外科に設置され、すでに40人以上の脊髄障害の患者から診断に有用と見られる信号の検出に成功しているという。首都大学東京との共同で開発した画像化技術を用いることによって、脊髄神経の活動状態を視覚的にとらえる「脊髄機能イメージング」が可能となったという。

これにより、従来診断が難しかった手足のしびれや麻痺などの神経症状をもつ脊髄障害の患者に、より効果的な診断・治療が適用できることが期待できるという。脊椎変性疾患で脊髄が靭帯などに圧迫され、神経信号の伝搬が阻害されると手足の麻痺やしびれなどの症状となって現れる。このような症状について、従来の神経学的所見やMRIなどの形態的な画像情報だけでは、障害箇所を正確に特定することが困難な場合が多い。だが脊髄機能イメージングによって神経が正しく機能しているかどうかを直接観ることができれば、より正確な原因部位の特定が可能となる。

 脊髄磁場計測による頚部脊髄機能イメージングの例。脊髄傷害部位で神経信号が遅くなり、弱くなるのがわかる。

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効率よく光を捕集し伝達する「多孔性共役高分子」の合成に成功

光励起エネルギーがクマリン分子に集まってくる様子。ポリフェニレン骨格をもつ多孔性共役高分子を紫色、励起エネルギーを受け取るクマリン分子が緑色。クマリン分子は多孔性高分子のポア(孔)に入っている。

光励起エネルギーがクマリン分子に集まってくる様子。ポリフェニレン骨格をもつ多孔性共役高分子を紫色、励起エネルギーを受け取るクマリン分子が緑色。クマリン分子は多孔性高分子のポア(孔)に入っている。

効率よく光を捕集し伝達する高分子の合成に成功  詳細|トピックス|分子科学研究所.

自然科学研究機構分子科学研究所の江グループ(江 東林准教授)と大阪大学・関グループは、効率よく光を捕集し伝達する高分子の合成に成功したと発表した。

太陽光を化学エネルギーや電気エネルギーに変換できる分子システムの構築が注目されている。光エネルギーの利用は、光を吸収することから始まる。

光子密度の希薄な太陽光を効率的に利用するには、光吸収ユニットを高密度に集積化する必要がある。これまでに、様々な分子システムが提案されているが、ほとんどの系では光吸収ユニットを持っていても、ユニット間の協同作用が無く、捕集した光エネルギーを欲しい場所まで運搬できなかった。

分子科学研究所の江グループでは、一昨年、π(パイ)電子系 共有結合性骨格をもった高分子化合物を世界で初めて合成し、続いて昨年、光エネルギーを伝達することができる特性を持った共有結合性骨格の合成に成功した。この高分子は、二次元のポリピレンシートが積層されてできる立方体構造をもつものだった。

今回、江グループは、「多孔性共役高分子(共役鎖が三次元的につながった多孔性高分子)」の合成に成功し、さらに効率よく光を捕集し、伝達できる新しい光捕集システムを構築した。

「多孔性共役高分子」は電子が分子全体に広がった共役構造を持ちながら、巨大な表面積を有するユニークな高分子。このような特徴により光捕集アンテナとして優れた特性を持ち、光を吸収するユニットを高密度に集積することができる。

共役構造は三次元的に広がっているため、吸収した光エネルギーは特定のユニットにとどまることなく、高分子骨格を高速移動できることが特徴だという。

江グループでは、三次元構造を有する多孔性共役高分子に着目し、独自の手法により多孔性高分子の内部に光励起エネルギーを受け取るクマリン分子を組み込むことで、三次元骨格で捕集した光エネルギーをその場所に伝達することを可能にした(図)。

具体的には、ポリフェニレン骨格をもつ多孔性共役高分子は、1,2,4,5̶テトラブロモベンゼンと1,4ーフェニルジホウ素酸をモノマーとした重縮合反応によって合成され、ポアサイズが1.56ナノメートル(ナノは10億分の1)、表面積が1グラム当たり1083平方メートルの多孔性共役高分子が得られた。

この高分子のポアに、共役高分子骨格の励起エネルギーを受け取る分子としてクマリン6という色素を物理的に内包することによって、エネルギー伝達システムを構築した。

今回合成に成功した高分子では、分子にあたった光は、分子全体に広がるπ共役を介して目的の場所まで伝達されるため大変効率よくエネルギーを運ぶことができるのでエネルギー移動効率は90%に達し、トップクラスの効率を示しているという。

方向性を持って光励起エネルギーをほしい場所に伝達できることは変換システムに欠かせない。今回の研究成果は、この光変換システムの構築に必須の技術を提供するものであり、太陽エネルギーの電気エネルギーへの変換に貢献することが期待されるという。


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次世代人工皮膚を用いた難治性皮膚潰瘍治療の治験を開始 京大、グンゼ

次世代人工真皮

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次世代人工皮膚を用いた難治性皮膚潰瘍治療~難治性皮膚潰瘍患者に朗報~ — 京都大学.

京都大学医学部附属病院は、難治性の皮膚潰瘍に対し、潰瘍の治癒を目的とする次世代人工皮膚を用いた医師主導の治験を開始すると発表した。糖尿病、動脈不全、静脈不全、褥瘡、外傷などを原因とする難治性皮膚潰瘍の治療を目指す。

近年、日本では糖尿病患者が増加しているが、糖尿病の合併症の一つに皮膚潰瘍がある。糖尿病性皮膚潰瘍は、様々な治療を行っても治癒が進まず下腿切断、大腿切断などを余儀なくされる場合も多い。

その他の難治性皮膚潰瘍においても保存的治療では効果がなく、皮弁移植手術や四肢切断術など侵襲の大きな手術が必要となることが多い。

現在は、京都大学医学部附属病院 形成外科では、主任研究者である鈴木茂彦 教授らによって開発された二層性人工皮膚(皮膚は表皮と真皮から構成されており、それと同じようにコラーゲンスポンジ(真皮)をシリコーンフィルム(表皮)で覆った二層構造をもつ人工の皮膚(ペルナック®))を用いた擬似真皮再生法を行っている。

人工皮膚は真皮再生の際に足場として作用する。創面から人工真皮のコラーゲンスポンジの空隙内へ線維芽細胞や毛細血管が侵入増殖し、患者自身の擬似真皮が新生されるのにつれて元のコラーゲンスポンジは分解吸収される。そして、真皮が再生されることで、表皮が再生される。

しかし、この人工皮膚治療には、感染に弱いこと、血行が不良な創面では細胞や血管の侵入が十分でなく、擬似真皮が形成されにくいという問題があった。また難治性皮膚潰瘍ではなんらかの原因で血流が障害されている場合が多く、従来の人工皮膚では効果がない場合が多かったという。

研究グループは人工皮膚を改良し、増殖因子などを保持する機能を付与させた次世代人工皮膚をグンゼ株式会社と共同開発した。そして今回、難治性潰瘍患者を対象に次世代人工皮膚と潰瘍治療薬として広く用いられている塩基性線維芽細胞増殖因子と併用する医師主導治験を行うこととした。

塩基性線維芽細胞増殖因子を次世代人工皮膚に散布すると1週間から2週間にわたって人工皮膚が分解吸収される際に、同時に増殖因子も創面に放出され、血流が悪い創でも擬似真皮が再生される。また次世代人工皮膚は、既に医療分野で使用されている材料から作られているので、安全性に問題はないと考えているという。治験期間は2年間。


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