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11月29日、TEPIAにて第3回「ZMPフォーラム」がおこなわれた。ZMP社は以前はロボット開発と販売を主な事業としていたが、最近は「ロボットカー」ビジネスに軸足を移している。もともとロボットと次世代自動車とは技術的親和性は高い。またビジネスを考えるとロボットカーというのは妥当なところだと思う。

・RoboCarとロボット技術の応用製品

谷口社長は同社の基幹製品である「RoboCar」を挨拶で紹介。2009年に発売した10分の1の車である「RoboCar 1/10」はいまは海外からも引き合いがあり、ユーザー数はおよそ200。2011年に発売した実際に人間が乗れる原付4輪「RoboCar MEV」はユーザー数は10程度。車庫証明も必要とせずランニングコストがあまりかからない点が受け入れられているという。いまはトヨタのプリウスをベースにした「RoboCar HEV」を部品メーカーなどが自社製品を開発・評価できる研究用プラットフォームとして開発中で、2012年から販売予定だ。選んだ理由はインパネがかっこいいと思ったからだという。谷口社長は「ZMPはプラットフォームを持っているので車の全体像を把握している。先行するチャンスだと考えている」と述べた。

富士通研究所顧問の内山隆氏は「ロボットの自立化技術とその応用」と題して、これまでの富士通のロボット開発の歴史などについて述べ、現在開発中のオフィス内で作業するサービスロボットや、ロボット技術を通して生まれた技術を紹介した。

宇宙ロボット開発でつちかった技術をベースに製品化した高速干渉チェックや柔軟物モデルなどのリアルタイムシミュレーションによる仮想試作ができるだけでなく、設計・開発・製造の全工程でデータを連携できるVPS(Virtual Product Simulator)は携帯電話やパソコンなどの設計に実際に用いられており、年間数億円の売り上げがある。それ以外に、並列演算回路(シストリックアレイ)を用い消費電力の低いステレオビジョンモジュール、モーションスイッチ、携帯電話ヒンジや画像技術などが応用されているという。

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・「e-nuvo Wheelを導入した学部学生向け実験事例」

金沢大学電子情報学系の金子修准教授は「e-nuvo Wheelを導入した学部学生向け実験事例」について講演した。電気電子の学生は意外と「制御」に対する意識があまりなく、学生向けの教材として、結果が目で見て物理的にわかって、楽しさや醍醐味を体感でき、頑丈でコンパクトだがシンプルすぎない教材として、e-nuvoWheelは良いと述べた。

対象は3年生で、古典制御や現代制御の実験教材として用いられている。3-4名につき1台のe-nuvo Wheelを用いて、対象特性を理解できるか、伝達関数・状態空間は導き出せるか、安定化制御器を設計できるかどうか、Simlink/Matlabなどでシミュレーションし、実装できるかどうか、そして考察などを学習させている。学生グループ実験なので、グループ内でのやりとりも学習の一環だ。まずは古典制御で制御をさせたあとに現代制御で制御させることで、制御のおもしろさやパワーを実感させる。

今後は競技形式でやってみるとか、学習制御など違った視点から考えさせたり、ライントレースなども導入していきたいと考えているという。また大学院生向けの教材としての活用も検討中だ。

・「マイクロソフトの技術でロボティクス」

マイクロソフトの太田寛は「未来を先取りした最新テクノロジー。マイクロソフトの技術でロボティクス」と題して、最近はセンサーあるいは入力機器として人気のKinect、ファームウェアの.Net Micro Framework、コンソールとしてのWindows phone、Robotics Developer Studio 4.0などの概要と、組み合わせによる活用について解説した。

Kinectは赤外線と深度を計るCMOS、そして色を見るCMOSカメラのほか、マイクロフォンアレイが搭載されている。開発に必要な環境はWindows7とVisual Studio、Kinect for Windows SDKなど。言語はC++とC#。ライセンスは非商用となっている。また原則、XBOXにしか繋げないことになっている。来年初旬には商用版がリリースされるほか、新型Kinectも発売される予定だ。Kinectは最大二人まで認識でき、複数デバイスを繋げることもできる。80cmから4mまでの距離で認識可能で、スケルトン情報や深度情報を得られる。

.NET Micro Frameworkは超小型組込み機器向けファームウェアで、256KB Flash ROM、64K RAM、MMU無しで、様々なCPU上で動作する。歴史を振り返ると、MSが発売していた「SPOT」という時計があったが、そのなかで動いていた。2009年からオープンソース化しており、自由に使える。いまは動作した状態でアップデートできたりセキュリティを強化したVer.4.2がリリース直前の状態。ロボットのノードなどで活用できるという。開発はVisual Studio 2010でおこなえる。日本ではフェリカかーどのリーダーや、T-Kernelなどでポーティングして使われている。

デバイスとしてはFezシリーズのほか、スイッチサイエンスからNetduinoが購入できる。ライブラリはソースコードが公開されている。また「.NET Gadgeteer」という小型機器向けのラピッド開発環境があり、プロトタイピングに使えると太田氏は紹介した。

Windows phoneは最新版は7.1。センサー系も組み込まれているし、インターフェースとしては優れているので、ロボットのモニタリングにも良いのではないかという。MSのクラウドプラットフォームサービスであるWindowsアジュールとの連携基盤としても使えるのではないかという。エミュレーターでのUDPを使ったグループ内通信デモを紹介した。ロボットは分散ノードが動いている環境であり、Robotics Studioはそれを動かす実行環境であり、オーサリング環境、シミュレーターである。4.0からはKinectに対応した。実Kinectがなくてもシミュレーターが対応する。ロボットが見ている実画像と深度情報、コンソールのシミュレーションが可能だ。

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・車載データ統合アーキテクチャ「Cloudia」

名古屋大学大学院 情報科学研究科付属組込みシステム研究センター(NCES)の武井千春氏と、名古屋大学工学部高田研究室の熊谷康太氏は「RoboCar 1/10を用いた車載データ統合アーキテクチャの評価」として講演。車載ソフトウェアの検証をRoboCarを使って行った例を紹介した。

名古屋大学組込みシステム研究センターは組込み専門の高度な人材育成と研究を目標とした機関で、組み込み産業界の大学病院のような位置づけを目指しており、企業からの外部資金によるテーマごとの複数プロジェクトで組織されている。これまでにCANの高速化や宇宙機用のSpaceWire関連の開発をおこなっている。

車はソフトウェアで走っており、機能ごとにECUと呼ばれる電子制御ユニットが搭載されており、その数は100個に及ぼうとしている。しかもそれらは相互にネットワークで繋がっている。品質面でもそろそろ限界が近づいている。また車載データは多種多様になっている。機能一つずつに別々のECUが個別に開発されてきたため、データ管理も別々におこなわれている。そのため車載データを論理的なデータ空間のなかで統合する必要性がある。縦割りから統合管理による高性能化、低価格化、信頼性向上、設計容易性の向上、高付加価値だ。各センサーが収集した各データを階層化して抽象化・統合化することで、利用しやすくする。センサー群とアプリケーションを分離しないと、増改築を繰り返した家のような状態になってしまう。

やりかたとしてはSQLによる通常のデータベースを使うやりかたと、継続型クエリによるデータストリーム型のやり方がある。武井氏らはアダプティブコントロールによるシミュレーションなどで両者を比較した結果、現在は、時々刻々と状況が変化する自動車には連続してデータがやってきてアプリケーションが判断をおこなう「データストリーム型」がむいていると考えている。実際にはMITが開発したBorealisを使ってLinuxで実装。「Cloudia」と呼ぶミニクラウドのような自動コンフィグレーション・ソフトウェア・プラットフォームを作って評価検証を行っている。

またITSアーキテクチャの流れを見ると、国際的には地図データをLDM(Local Dynamic Map)というかたちで管理しようという動きが標準になりつつあるという。データを4層に分けて管理する考え方で、1層と2層はスタティックな地図で、上位のレイヤーになるほど変化するデータを扱うようになっている。武井氏らはその第4層に自分たちの研究開発のアウトプットを対応させることを取りあえずの着地点として、路車間、車車間通信利用の安全運転支援技術として開発を進めている。来年4月からコンソーシアム型の共同研究を自動車会社各社とも進める予定だ。研究費を負担する企業のメリットも考えながら、一定期間経過の後には成果をオープンにする予定だ。

Cloudiaの詳細とRoboCarでの評価については熊谷康太氏が紹介した。RoboCarはレーザーレンジファインダーやカメラなど豊富なセンサー群を搭載している。それらをそれぞれ別個に使うことで、異なるセンサーを搭載した車を想定した衝突回避実験を行った。RoboCarにCloudiaを移植して実行したところストリームに問題はなかったという。

・「小さい自動車は走る実験室」

東京農工大教授の永井正夫氏は「超小型電気自動車の運動制御と自動運転の事例紹介」として、車両の衝突の予防安全技術の現状と可能性を紹介。シートベルトやエアバッグ、衝撃吸収車体のような衝突安全システム、直前にブレーキをかけるプリクラッシュセーフティを経て、研究室では危険が顕在化する前から安全性を高めるアクティブセーフティが研究されている。

車には現状でも前後運動、横運動など様々な制御系がある。車両の運動はタイヤ摩擦力で決まる。それらを前提にインホイールモーターの超小型電気自動車の自動化の研究を永井氏はおこなっている。高いセンサーを使うと実際の車両では使えないので、なるべく少ないセンサーを使い、オブザーバーで状態を推定して、フィードバック制御をかけて安定化するのが基本だ。ハンドルや車輪のトルクに制御をかけると車両が横滑りしにくくなったりする。高級車にはそれらの制御技術が実際に応用されている。

小さい自動車は「走る実験室」だという永井氏。今後は高齢者向け自動車の開発を進めていくという。なお永井氏の著書の『カー・ロボティクス』はアマゾンでも購入できる。

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・ZMP社の商品展開

最後にZMPの西村明浩氏とダニエル・ワットマン氏が、発表されたばかりのオプティカルフロー(光学的流動、周囲の風景がどちらへ動いているのかから自分自身の状態を知る)を検出する5cm角のカメラ、FPGA、メモリ一体型のセンサーモジュール「OpticalFlow-Z」などの紹介をデモを交えておこなった。たとえばRoboCar 1/10の横などにつけることで、併走する、あるいは後方から接近する車両の相対速度などを検出することで、安全か危険かの判定などに用いることができる。最大解像度は1920×1080、フレームレートを優先した場合は最大で240fps。

一人乗りロボットEV「RoboCar MEV」は自動運転の研究開発プラットフォームのほか、センサデバイスの実証評価に使われており、「RoboCar 1/10」は上記の研究室のほか、早稲田大学や首都大学東京、三重大学などでも隊列走行や自動車庫入れのアルゴリズム検証やヒューマンインターフェースの研究に使われている。九州産業大学ではネットワークローミングの研究にも使われている。また教育でも用いられており、そちらでは学生ならではのユニークな使われ方で活用されているようだ。

9軸ワイヤレスモーションセンサ「IMU-Z」は諸般の事情でカメラを設置できない現場でのモーションセンサとして使われているほか、マスタースレーブの入力そのほかにも用いられている。同社としてはライブラリが公開されていることと、複数のセンサを用いることができる点を売りとしている。また気圧センサなどもあり、それを使うと建物内での上がり下がり、フロア特定にも用いることができる。

このほか基礎的なエンジニア研修に用いるモータ制御学習キット「e-nuvo BASIC」や「e-nuvo Wheel」などをZMPでは展開している。また小型自動車の大型リチウム電池なども販売している。

モータ制御で学ぶ電子回路と組込みプログラミング
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