東大 先端研と富士通、スパコンでがんの再発・転移治療薬の開発へ
東京大学 先端科学技術研究センター(先端研)と富士通株式会社は共同で、がんの再発・転移治療薬の開発に活用するスーパーコンピュータシステムを構築し、2010年8月1日より稼働を開始させたと発表した。
世界で初めて、がん細胞の一部である抗原(タンパク質)と抗体(タンパク質)との相互作用を分子動力学によりシミュレーションし、人工抗体の設計を行う。この手法ではIT創薬で一般的なコンピュータを活用した低分子とタンパク質との相互作用のシミュレーションと比較すると、約10倍の量の計算が必要となるため、短期間でシミュレーションを行えるスーパーコンピュータを導入した。
システムは富士通のブレードサーバ「PRIMERGY BX922 S2」によるPCクラスタ型のスーパーコンピュータ。300ノードで構成し、理論ピーク性能は38.3テラフロップス(1テラフロップスは毎秒1兆回の浮動小数点演算速度)。先端研における、がんの再発・転移を治療する「ゲノム抗体医薬品」設計のためのコンピュータシミュレーションに活用される。
最先端研究開発支援プログラム「がんの再発・転移を治療する多機能な分子設計抗体の実用化」のための研究開発は、先端研の児玉龍彦教授が中心となって推進しているプロジェクトで、ゲノム解読成果を基にしたがんの「ゲノム抗体医薬品」を、コンピュータシミュレーションを駆使することで設計し、臨床試験・治療を開始することを目指している。
抗体医薬品の研究開発には、
・1990年代からの動物実験により作った抗体医薬品をヒト型化し人間に適用できる抗体をつくる第一世代、
・2000年代からのがんに直接作用して放射線などによって治療できる抗体をつくる第二世代
があるが、今回の研究開発は、
・スーパーコンピュータによるシミュレーションを活用して抗体医薬品の基本構造の設計を行い、将来、日本で発生率の高いがん(肺、大腸、胃、肝臓、膵臓、前立腺、乳腺)や、再発・転移した進行性がんに対しても副作用の少ない画期的な第三世代
の抗体医薬品による治療ができることを目的としている。
このシステムの活用により、従来の実験による研究開発プロセスでは3〜4年間かかっても実現が難しいとされていた人工抗体の設計を、わずか数ヶ月で行えることを目的としているという。また将来は、この成果を元に、次世代スーパーコンピュータ(京速コンピュータ「京」)を活用して、さらに多くの抗体医薬品の開発を行うことを目指す。
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