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ナノグラムレベルのRNAから遺伝子発現をキャッチする新解析手法を確立|2010年 研究成果|独立行政法人 理化学研究所.

理研オミックス基盤研究領域のピエロ・カルニンチ チームリーダーと SISSA神経生物学部門のステファノ・グスティンチッチ(Stefano Gustincich)博士らは、共同で「nanoCAGE法」と「CAGEscan法」の2つの高感度な新遺伝子発現解析方法を開発したと発表した。『Nature Method』オンライン版に掲載された。

「nanoCAGE法」はmRNAを特異的に増幅するため、これまで解析できなかった微量なmRNAを容易に解析できるようになる。いっぽう「CAGEscan法」は、mRNAの両側の配列情報を明らかにするため、mRNA間の相互作用が明らかになり、例えば、ヒトのがん細胞など無秩序な増殖のメカニズム解明に貢献すると期待される。

「nanoCAGE法」は、DNAの断片であるプライマー配列の工夫とcDNAの特異的な増幅法の導入によって、従来の「CAGE 法(Cap Analysis of Gene Expression。理研オミックス基盤研究領域が開発した方法で耐熱性逆転写酵素やcap-trapper法を組み合わせて5´末端から20塩基のタグ配列を切り出し塩基配列を決定する。この塩基配列を読み取ってゲノム配列と照らし合わせ、どの部分がコピーされているか調べられる)」の感度を1,000倍以上向上させ、ナノグラムレベル(ng:1ngは10-9グラム)のmRNAを解析して遺伝子の転写開始点を決定することができる。

単一細胞に存在している微量なmRNAの5´末端を検出し、関連するプロモーター(mRNA合成の開始に関与するDNA上の特定領域の短い塩基配列のこと。 プロモーター領域にRNAを合成する酵素であるRNAポリメラーゼが結合し、転写が開始される)をゲノム上で同定することができる。

個々の細胞内の遺伝子発現がどのように制御されているかを網羅的に知ることで、例えば、神経細胞やがんを発症している細胞などで発現する微量なRNAを解析することを可能にするという。

nanoCAGE法

いっぽう「CAGEscan法」は、nanoCAGE法と同様に微量なmRNAを解析できる上に、次世代シーケンサーの能力を活用し、mRNA鎖の5´ 末端と3´ 側(DNA、RNAは塩基の糖の部分の5´側から3´側に向かって合成が進み、mRNAの5´末端の塩基にはCAP構造が、3´末端の塩基には例外を除いてほとんどの場合polyAテール配列が付加されている。ここでいう3´側とは、このpolyAテールを除いた塩基配列の部分を指す)の両方の配列を同時に解析することができる手法。そのため、5´末端が、自分自身やほかのmRNAの3´側の塩基配列に結合する様子を明らかにして、mRNA間の相互作用を理解することができるようになる。

さらに、CAGE法では、すべてのRNAを逆転写した後にmRNAだけを分離する必要があるため解析終了までに約5日必要だったが、「nanoCAGE法」と「CAGEscan法」は、mRNA だけを逆転写することができるため、解析に要する時間を2〜3日と短縮することができる。

CAGEscan法

この二つの手法を導入することで、研究グループが「RNA新大陸」と名付けた全遺伝子の半分以上を占めるncRNA(非タンパク質コードRNA(non-coding RNA)。このRNAからはタンパク質は翻訳されない)に関する知見を増やし、これまで、ほとんど不明確なまま取り残されてきたRNAの理解が飛躍的に向上すると期待できるとしている。

なお「RNA新大陸」とは、多様な細胞内RNA集団の莫大な可能性を示す比喩。細胞が生産するRNAを大規模なスケールで調べたところ、従来100個ぐらいしか知られていなかったncRNAが、実は23,000個以上、つまり、全遺伝子の半分以上(53%)を占めているという新しい事実を示したもの。タンパク質がゲノムにコードされている最終生理活性物質であるというこれまでの常識を覆し、予想を凌ぐトランスクリプトーム(DNAからの転写産物の全体)の複雑さを認識させるもので、哺乳動物ゲノムの情報内容に対するこれまでの理解(「遺伝子」という領域が散在しているゲノムのイメージ)を根幹から変えてしまうものだったという。

研究グループは、ヒト白血病K562細胞にnanoCAGE法を適用した。約100〜500ngという微量ではあるものの、核内にある核小体、核細胞質、染色体やrRNAの構成要素であり、mRNAの末端を意味する「polyAテール(mRNAの3´末端に50〜200塩基ほどのアデニン(A)ヌクレオチドが付加されており、これをpolyAテールと呼ぶ。 mRNAに安定性を与え、翻訳を促進する働きがあると考えられている)」を持たない「ポリソームRNA(リボソームは転写されている mRNA に速やかに集まり翻訳を開始する。一本の mRNA に複数のリボソームが連結した状態をポリソーム(polysome)と呼ぶ)」などの転写開始点を調べることに成功した。このように、これまで未知であった部分のRNAという転写産物全体の解析が可能となるだけでなく、生命の維持活動に欠かせない神経細胞などが産出する微量なmRNAの機能も解析できるようになったという。

また、CAGEscan法を使って、ヒト肝細胞がんHep G2細胞の細胞核と細胞質にあるmRNAを解析したところ、細胞核内にあるmRNAは細胞質にあるmRNAに比べ、タンパク質に翻訳されないゲノム領域と多く結合していることも分かった。このことは、細胞核内ではタンパク質翻訳以外の機能を持つゲノム領域も重要な役割を果たしていることを意味している。




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