骨折が早く治る注射ができる リコンビナントヒトFGF-2の局所注射が骨折治癒促進剤に
骨折治癒を大幅に早める治療薬を開発 リコンビナントヒト線維芽細胞増殖因子-2 (rhFGF-2)製剤の臨床試験| 東京大学医学部附属病院.
東京大学医学部附属病院 整形外科の川口浩 准教授らの研究グループは、骨折した患部への細胞増殖を促すタンパク質の一種「リコンビナントヒトFGF-2(rhFGF-2)」の局所注射が骨折をはやく治すことを臨床試験で確認したと発表した。
国内48施設において、脛骨骨幹部 の新鮮骨折患者を対象とした臨床試験を行い、rhFGF-2の局所注射が骨折部の癒合までの時間を約4週間短縮することがわかったという。「rhFGF-2」製剤が、世界初の新鮮骨折治癒促進剤となりうることが示唆されたとしている。現在は、実用化に向け研究開発を進めている。「Journal of Bone and Mineral Research」電子版に掲載された。
怪我や事故による骨折、特に下肢の脛骨骨折では、ギプスなどの固定や手術をしても骨癒合が見られない場合、骨癒合が遅れ、変形が残ってしまう場合がある。その結果、患者は歩行が難しくなり、車椅子や松葉杖の生活を強いられることになり、再手術が必要になる場合もある。
この問題を克服するため、国内外において発生後数日以内の骨折である「新鮮骨折」(一般的な骨折のこと。厳密には血腫が出来て骨が作られ始める前の初期の段階を指す)に対する多くの骨折治癒促進剤の探索が行われてきたが、現在までに臨床応用されているものはない。
研究グループは以前からこの骨折治癒促進剤の開発を目指して、特に、線維芽細胞増殖因子(FGF)に注目してきた。FGFは全身のほとんどの組織で作られ、様々な生理作用を示すタンパク質(成長因子)。様々な細胞の増殖を助け、多彩な生物情報を精巧に制御している。たとえば、小人症の中でも最も頻度の高い軟骨無形成症をはじめ、骨・軟骨の形成が障害されている先天性疾患の多くは
FGFからの刺激を受け取るしくみに異常があることが知られている。
現在までにFGFファミリーとして23のサブタイプ、FGFの受容体(FGFからの刺激を受けて作用する物質)には4つのサブタイプが知られているが、中でもFGF-2は骨組織に最も多く存在していて、骨折の治癒過程において骨を作る細胞(骨芽細胞前駆細胞)の増殖を強力に促進している。
研究グループはFGF-2が骨折治癒促進剤として臨床応用できると考え、科研製薬株式会社とリコンビナントヒトFGF-2 (rhFGF-2)含有ゼラチン製剤による臨床試験を実施した。これまでの基礎検討で、rhFGF-2製剤は、ラット、ウサギ、イヌ、そしてサルの骨折および骨欠損モデルで骨癒合を強力に促進することを報告していた。
今回は、これらの非臨床試験に基づいて、このrhFGF-2製剤の脛骨骨折に対する効果をランダム化プラセボ対照二重盲検比較試験(患者のプラセボ効果や観察者バイアスの影響を防ぐことを目的としている試験方法)によって検討した。
国内48施設の整形外科を2年間に受診した脛骨骨幹部の新鮮骨折患者194例のうち、厳密な基準を満たし同意の得られた71例を、プラセボ群(rhFGF-2を含まないゼラチンゲル製剤)、低用量群(0.8 mg rhFGF-2含有ゼラチンゲル製剤)、高用量群(2.4 mg rhFGF-2含有ゼラチンゲル製剤)の3群に無作為割付し、固定手術直後の骨折部に各製剤を注射投与した。
投与後24週間にわたって2週間毎にレントゲンで骨癒合を評価したところ、骨癒合までの時間は、rhFGF-2含有の2群でプラセボ群よりも有意に短く(低用量群とプラセボ群の比較;有意確率 p=0.031、および高用量群とプラセボ群の比較;p=0.009)、骨癒合までの日数はプラセボ群に対して低用量群では28日、高用量群では27日短縮された(図1)。低用量群と高用量群の間に有意差はなかった(p=0.776)。
図1. レントゲン上で骨癒合した患者比率の経時変化。 rhFGF-2含有の2群では骨癒合した患者の割合はプラセボ群よりも有意に高く、骨癒合に要する日数をプラセボ郡に対して約4週間短縮した。24週後でも癒合していない患者数は、プラセボ群、低用量群、高用量群でそれぞれ4、1、0例であった。
24週後でも癒合していない症例は、プラセボ群、低用量群、高用量群でそれぞれ4、1、0例だった(図2)。3群間で有害事象の発生頻度には有意差はなかった。
図2. 代表症例のレントゲン像。rhFGF-2含有の2群では16週で仮骨形成が見られ24週で骨癒合が完成しているが、プラセボ群では24週でも骨が癒合していない。
以上より、 rhFGF-2製剤局所投与の脛骨骨折に対する有効性および安全性が示されたとしている。
今回の成果によりrhFGF-2製剤が世界初の新鮮骨折治癒促進剤となる可能性が示されたため、今後は、今回の臨床試験の成果に基づき国内のみならず世界的な市場も視野に入れ、実用化に向けた研究開発を進めていくとしている。
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