Willow Garage社、総額400万ドル超のロボットを11の研究機関に無償貸与
ウィローガレージ(カリフォルニア州メンロパーク市)社は、2010年5月4日(米国西海岸時間)、11台のロボットを世界の11の研究機関と大学に無償貸与すると発表した。
ウィローガレージは、ロボットの設計製作とオープンソースのロボットソフトウェアの開発に寄与することを目的に設立されたロボットベンチャー。
無償貸与されることになったロボットはウィローガレージによって開発された、オープンなハードウェアプラットフォーム「PR2(パーソナルロボット2)」。2007年にスタンフォード大学のKen Salisbury教授の研究室で製作されたプロトタイプPR1を発展させたロボットだ。最近では、UC バークレーでの研究で開発された、タオルを畳む動画で話題を呼んだロボットだ。あの研究は2ヶ月間で行われたという。
一次志願は126件、提案書を提出した研究機関は78件。選出された11の研究機関は以下のとおり。
米国(7)
- ボッシュ研究所(独ボッシュ社の子会社)
- ジョージア工科大学
- マサチューセッツ工科大学
- スタンフォード大学
- カリフォルニア大学バークレー校
- ペンシルベニア大学
- 南カリフォルニア大学
欧州(3)
- フライブルグ大学(独)
- ミュンヘン工科大学(独)
- ルーヴァン・カトリック大学(ベルギー)
アジア(1)
- 東京大学情報システム工学研究室
この「PR2ベータプログラム」プログラム参加者は研究成果をオープンソースロボットコミュニティに公開することが義務づけられる。
「PR2ベータプログラム」は「パーソナルロボットにおける科学的なブ レークスルーを生みだし、研究に拍車をかけるための長期に渡る新しい先進的構想のスタートという、非常に重要な意味を持つ」としている。
貸与期間は2年間。「PR2」は、オープンソースのロボットフレームワーク「ROS」がインストールされた形で各研究所に渡る。ROSは、ナビゲーション、マニピュレーション、知覚などの機能を備えており、PR2 を完全に制御することが可能だという。
PR2を研究者、開発者に使ってもらうことで、ウィローガレージ社が期待することは以下の通り。
- 世界中のパーソナルロボットにおける科学的なブレークスルーを可能にする。
- ロボットのオープンソースコミュニティを拡大する。
- 再利用可能なコンポーネントやツールを開発し生産性を向上させる。
- コミュニティや研究機関の貢献なしでは実現不可能であった新しいパーソナルロボットのアプリケーションを開発する。
- ロボット開発全体を加速させる。ROSはオープンソースのプラットフォームであり、ロボット開発者は他のプラットフォームで既に存在するかもしれないソフ トをゼロから書き直すことをしなくてよいため。
ウィローガレージでは、UCバークレーでの研究成果などを踏まえて、オープンソースコミュニティにおいて11の研究機関に11台のロボットがあり、ロボット1台につきより多くの学生が2年間研究を行えば、新しいアイディアやプロジェクトが広がっていくだろうとしている。
PR2が無償提供先される11の研究機関の詳細は下記のとおり。
- フライブルク大学 (プロジェクト: TidyUpRobot 片付けロボット)
フライブルク大学はPR2を使ってテーブルの上を整頓すること に取り組みます。一方で、基本的ではあるものの難しいロボットの能力、例えばひきだしや冷蔵庫はどのようにして開くと認識すべきか、異なる物体の認識方 法、といったことに取り組みます。
- ボッシュ社 (プロジェクト: パーソナルロボット市場の開発: 新しいセンサーと自律性の共有による新しいアプリケーションの実現)
ボッシュ社は彼らの製造技術、センサー技術、消費者向け製品における専門性を 生かします。ソフトウェアでの貢献に加え、ロボット用センサーを他のPR2ベータプログラムのメンバー用に製作します。数は限定されますがPR2が環境を 感知することのできる”皮膚”も含まれます。
- ジョージア工科大学 (プロジェクト: 家の中で高齢者をアシストするための移動マニピュレーション)
ジョージア工科大学のヘルスケア・ロボット研究室は PR2を”Aware Home”(大学内に設置された実験住宅)に置き、ロボットが家を手入れし、工夫にあふれる能力で高齢者を助けるにはどうすればいいかについて研究を行い ます。また、人間とロボットがやりとりするためのより簡単な方法を創出し、ロボットがひきだしや照明器具、電気のスイッチなどの日常生活で物をどう扱うか についての研究も行います。
- ルーヴァン・カトリック大学 (プロジェクト: 移動マニピュレーションにおけるタスク特定、制御、コーディネーションのためのフレームワークの統合)
ベルギーにあるルーヴァン・カトリック大学 はロボットのオープンソースコミュニティにおいて中心的役割を果たしています。Orocosプロジェクトを創立した研究所の一つとして、ロボットのプログ ラミングのためのツールやライブラリを向上させていきます。また、例えば混雑した環境で物を運ぶなどPR2と人間が何かを一緒に行うことにも取り組みま す。
- MITコンピュータ科学・人工知能研究所(MIT CSAIL) (プロジェクト: 人間中心の環境における移動マニピュレーション)
MIT CSAILグループはPR2を使って、人間中心の環境でロボットを動かす場合に必要とされる重要な能力である、安全なナビゲーション、自然言語を使った人 間とのやりとり、複雑な目標のためのプランニングなどの研究を行います。よいマップがなければロボットは道に迷ってしまいます。彼らの研究によって、ロ ボットがMITの大きな11階建てのStata Centerビルの中を動き回れるだけのマップを作成できるようになります。
- スタンフォード大学 (プロジェクト: PR2におけるSTAIR)
PR1はスタンフォード大学のKenneth Salisbury研究室で開発され、ROSはSTAIR (スタンフォード人工知能ロボット)プロジェクトから誕生しました。彼らは、建物の中を動き回る、物体を識別する、散らかったものを回収する、食事の後で テーブルを片付けるなどのアプリケーションに取り組みます。
- ミュンヘン工科大学 (プロジェクト: CRAM – 認識データを抽象化するマシンとしてのロボット)
ミュンヘン工科大学(TUM)はPR2に人工知能のスキルと三次元認識の能力を与え、キッチンで の色々な仕事を行う際に何を行っているのか意味づけさせるようにします。これらの向上が組み合わさせていくことで、PR2がテーブルをセッティングした り、食器洗い機の中のものを元に戻したり、キッチンに関わる複雑な作業を行うことが可能になっていきます。
- カリフォルニア大学バークレー校(UCバークレー) (プロジェクト: PR2ベータプログラム – パーソナルロボットのためのプラットフォーム)
PR2 は今や”タオルたたみロボット”として知られるようになりました。Pieter Abbeel研究室の多大なる努力に感謝します。2ヶ月という短期間で、彼らはPR2に50枚のタオルをきれいにたたませることに成功しました。バーク レーは、今後、汚れた服を洗濯してきれいにたたむまでというさらに困難な作業に挑戦します。また、デモ学習を応用した実際の組み立てや製造にも興味をもっ ています。
- ペンシルベニア大学 (プロジェクト: PR2GRASP – 知覚と意味づけから把持まで)
GRASP研究室の プロジェクトは人物追跡や動く障害物が存在する中でのプランニング、バネで止められたドアを開けるといったタスクのプランニングなど、様々な課題に取り組 むものです。また、人がモーションキャプチャーによってロボットを制御できるシステムと、瞬時にグリッパを付け替えるシステムの開発も行います。
- 南カリフォルニア大学(USC) (プロジェクト: 誘引による永続的動作を行うパーソナルロボット(P^3R) – ネットワーク化され、移動でき、人を助けるロボットの実現に向けて)
USCは、カップに液体を注ぐというような未知の状況に適応できる基本的な モータースキルをPR2に教えるというデモをすでに成功させています。彼らは模倣によってスキルを学び、ライブラリ構築し、改良していくという研究を発展 させていきます。一方で人間とロボットのインタラクションとセンサーをより正確に使うためのツールの研究にも取り組みます。
- 東京大学情報システム工学研究室(JSK) (プロジェクト: 複数のロボットの協働による人間環境における日常作業のための自律的運動計画)
彼らの目標は、物を片付けたり、身の回りを整頓したりというような日常生活で人間が行うような作業を安全かつ自律的に行えるロボットを作ることです。さら に、PR2と他のロボットとの協働にも取り組みます。情報システム工学研究室は世界最高峰のヒューマノイドロボット研究を行っている研究室の一つです。
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