多孔性金属錯体のナノ粒子を簡便に合成、ガス分子を取り込む仕組みを明らかに
分子の取り込みにより構造を変える多孔性金属錯体のイメージ図。ゲスト分子の吸着に伴い細孔は押し広げられる。
1つずつ分子を取り込む固体材料のナノ粒子化に成功 -ナノサイズの固体物質、ガス分離材料に新たな知見- — 京都大学.
京都大学 物質-細胞統合システム拠点(iCeMS=アイセムス)の北川進 副拠点長と、ドイツアーヘン工科大学ドイツ・ウール研究所(DWI)の田中大輔 博士と ユルゲン・グロル博士らの研究グループは、環境負荷の少ない分離プロセス技術の開発などに大きく貢献できる可能性がある技術の開発に成功した。固体中に存在するナノサイズの細孔の形が変形して効率よく小分子を取り込む物質の特性を調べ、その粒子サイズを極限まで小さくすることで、分子を取り込む強さをコントロールする事に成功したという。均一なナノ粒子ではバルクと比べガス分子の吸着挙動が大きく変化したことも明らかにした。イギリスの科学誌「Nature Chemistry(ネイチャー・ケミストリー)」オンライン速報版で公開される。
今回、研究グループは、分子の取り込みにあわせて細孔の形を変える「ナノ孔物質」の合成および微粒子化を行い、粒子サイズと分子を取り込む仕組みの相関を解析した。
約1nmサイズの規則的な細孔を持つ「多孔性金属錯体」の中には、ガス分子を取り込む際に細孔の形をガス分子にあわせて包み込むように変化させるものが存在する。このように、ターゲットとなる分子にあわせて分子レベルで孔の構造が変わる物質は、排気ガスに含まれる二酸化炭素などの温室効果ガスや窒素酸化物(NOx)のような有害な小分子を効率的に取り込む分離剤として注目されている。
しかし一方で、孔の形が変形する際に重要となるファクターは未だ明らかにされていない。また分離に向けた精密な材料設計の指針を立てることは困難だった。
今回の研究では、新たに開発したナノ~メゾ領域(5~100 nm)の粒子サイズの合成手法を用いることで、多孔性金属錯体のナノ粒子を簡便に合成することに成功し、ガス分子を取り込む仕組みを明らかにした。
アーヘン工科大学DWIの研究グループは今回、界面活性剤を用いてナノサイズのエマルジョンを作成し、その内部を反応場として多孔性金属錯体ナノ粒子を合成した。特に、この反応溶液に超音波を照射することで、通常は1日程度かかる反応時間を10分以下に短縮することに成功した。
従来の合成方法(左)と本研究で開発した合成手法(右)。界面活性剤と超音波照射を併用して、反応溶液をエマルジョン化し、内部を反応場とすることで均一なナノ粒子の合成することができる。
京都大学のグループは、今回合成したナノ粒子と従来の手法で合成した 0.1mm程度の大きな粒子サイズを持つ物質のガス吸着挙動を評価、比較した。その結果、ナノ粒子は従来知られていた相とは異なる中間状態を経由して、格段に早く構造を変化させ分子を取り込むことを発見した。
吸着速度の変化の様子。均一なナノ粒子化した多孔性金属錯体はバルク錯体と比較し、ガス分子は迅速に細孔内へ吸着され、応答速度は非常に速くなる。
今回の研究では固体材料の粒子サイズをナノレベルまで微小化するだけで、分子を包み込む強さと速さが大きく変わることを示した。粒子サイズが不揃いであると細孔への吸着速度も遅い部分が生じてしまう。均一ナノ粒子化したことにより、ガス分子は迅速に細孔内へ吸着され、非常に速い応答速度を得ることに成功したのだという。
また分子を取り込む強さも粒子サイズによって変化することが示された。粒子のサイズを変えるだけで吸着挙動が大きく変わる性質は、他の吸着剤では報告されていない。これはこの研究で明らかとなった多孔性金属錯体特有の非常にユニークな特性であり、これまで分離が困難であった小分子ガスを簡便に除去する技術開発への応用が期待できるという。
また従来の多孔性金属錯体の合成法では、高温、高圧を要求する過酷な反応条件や、数日を要する長い合成時間を必要としていたため、この材料のナノ粒子化を実現するのが難しく、その基礎的な分子吸着特性に関する研究も充分に行えなかった。今回開発した界面活性剤と超音波照射を併用する方法は、従来の手法で制約となっていたナノ粒子調製の制約を大きく緩和させる。この手法を用いることで、今後より多くの多孔性金属錯体ナノ粒子の特性が研究されていくことが期待できるとしている。
日刊工業新聞社
売り上げランキング: 594707
シーエムシー出版
Comments are closed.






