希土類元素超格子で見かけ上「もっとも重い電子」状態を人工的に制御 新しいタ発現機能を持つ超伝導体や磁性体を人工的につくり出すことが可能に
CeIn3/LaIn3超格子:(左)概念図、(右)透過型電子顕微鏡による断面写真。白いスポットがセリウム(Ce)原子を示す。重い電子はCeを含む2次元平面に閉じこめられている。
京都大学 理学研究科の松田祐司教授(物理学・宇宙物理学専攻)、芝内孝禎 同准教授、寺嶋孝仁 低温物質科学研究センター教授の研究グループは、真空中の電子の1000倍にも達する大きな見かけ上の質量を持つ「重い電子」の金属状態を、人工的に2次元空間につくり出すことに世界で初めて成功したと発表した。科学雑誌「Science」誌に2010年2月19日に掲載された。
希土類元素の化合物を交互に積み重ねた「人工超格子」を作製し、電子を狭い空間に閉じこめ、自然界には存在しない電子状態を実現した。この研究によって、重い電子状態を人工的に制御できるようになり、新しいタイプの超伝導体や磁石をつくりだすことができるようになると考えられるという。
電子は互いに接近しすぎると反発力が働いて動きづらくなり、真空中の電子よりも重い質量を持った電子のように振る舞う。またある種の希土類化合物では、動き回って電気伝導を担う「伝導電子」と、動き回らずに磁性を担う「局在電子」に分けられ、この2種類の電子の間に強い相互作用が働いて混じり合う効果(近藤効果)により、見かけ上、通常の電子の数十~1000倍にも重くなった有効質量を持つ「重い電子」が現れる。
重い電子はしばしば超伝導を示し、その超伝導発現機構は従来の超伝導体とは大きく異なる。また様々な面白い磁気状態を持つため、重い電子状態はこれまで盛んに研究がされてきた。だがこれまで「重い電子」状態を持つ化合物はいくつか発見されていたが、半導体のように人工的に電子状態を制御する試みは前例がなかったという。
今回、研究グループは「分子線エピタキシー(~10-8パスカル(10兆分の1気圧)の超高真空にした真空槽の中で、金属元素を加熱して蒸気にし、基板結晶の上に降り積もらせることで、結晶を薄膜状に成長させる方法。成長速度を遅くすることができ、結晶の厚さを原子層単位で制御することが可能)技術」を用いて希土類元素の一つであるセリウム(Ce)を含む重い電子系化合物の人工超格子を作製することに世界で初めて成功した。
特に重い電子を空間的に2次元に閉じこめることにより、これまでで「最も重い電子」を持つ金属状態を人工的に実現した。実現した系では、有効質量が真空中の電子の1000倍近い(水素原子の原子核(陽子)に匹敵する重さ)電子が2次元空間を動き回り、電気を流す。
今後、この方法を用いて新しいタイプの超伝導体や磁性体を人工的につくり出すことが可能になり、新しい発現機能を持つ超伝導や磁性の研究への発展が期待される。また希土類化合物の人工超格子は、スピンを用いた新しいエレクトロニクスのデバイスにも役立つことが期待できるという。
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