新たな青色蛍光センサータンパク質「Cygnus」を開発 3つの生体分子の同時イメージングを実現 慶応

世界最短波長の蛍光センサータンパク質を開発~新しい青色蛍光のバイオセンサーで3つの生体分子の同時イメージングを実現~:[慶應義塾].
慶應義塾大学理工学部 生命情報学科 生物物理・神経情報学研究室(岡浩太郎教授)、同大学院理工学研究科博士課程学生・新野祐介(にいのゆうすけ)氏らは、蛍光タンパク質を利用した生体分子のセンサー(蛍光センサータンパク質)として、最も波長の短い光を発する青色蛍光のバイオセンサーを新たに開発したと発表した。生体内でより多くの分子の挙動を同時に計測することができるようになる。アメリカのオンライン学術雑誌「PLoS One」に掲載される。
蛍光分子を用いたバイオイメージング法は医学・生物学研究の分野で重要な研究手法の一つとなっている。蛍光分子を用いたバイオイメージング法とは、蛍光分子に、ある特定の波長の光(励起光:分子内の電子を、高いエネルギーを持った励起状態へ移すために使う光。蛍光分子は、電子が励起状態から基底状態に戻るときに、光としてそのエネルギーを手放す)を当てると、その分子特有の波長の光(蛍光)を放出する性質を利用した技術だ。蛍光分子で、調べたい生体分子をラベルし、周囲を暗くした状態で、励起光を当てると、蛍光分子でラベルした生体分子だけが光る。それが細胞内のどこにあって、どのような動きをするのか、顕微鏡で観察することができるようになる。
二色の蛍光タンパク質を使用したバイオセンサーが、生命研究分野では広く用いられている。蛍光タンパク質間で起きる蛍光のエネルギー移動(FRET:Fluorescence resonance energy transfer: 蛍光のエネルギー移動。励起エネルギーをわたす側(ドナー)の 蛍光は減少し、受けとった側(アクセプター)の蛍光が現れる)を利用しており、観察対象の生体分子が、細胞内でいつどこでどのように濃度を変化させているのか、計測することができる。
もし一色の蛍光で一つの生体分子の計測を行うバイオセンサーを開発できれば、さらに複数のセンサーを組み合わせて、複数の生体分子間の、重要な相互作用を調べる際に有用な技術となる。しかし、これまでの単色蛍光の蛍光センサータンパク質は、蛍光の色がシアン(青緑色)、緑、黄色に限られていたため、より複数の組み合わせでの使用は実現することができなかった。
この研究では、一般的に用いられているCFP(シアン色)とYFP(黄色)のFRETセンサー(図1上図)と異なり、BFP(青色)と光らないYFP「Dark YFP」を組み合わせれば、青色一色の蛍光を発するバイオセンサーがつくれるのではないかというコンセプトの下(図1下図)、重要な生体分子の一つである環状グアノシン一リン酸(cGMP)を計測する青色一色のバイオセンサー「Cygnus(シグナス)」を開発した。
これによって、たとえば生物の発生時の神経回路形成を協調して制御するcGMPと環状アデノシン一リン酸(cAMP)とカルシウムイオン(Ca2+)の、三つの生体分子の濃度変化を、一つの細胞内から初めて同時計測することができた(図2)。

今回開発した青色蛍光のバイオセンサーは、より多くの現象を同時に観察するマルチイメージングを可能にするため、細胞の中で起きている複雑な現象の理解に役立ち、医学・生物学研究への応用が期待されるという。
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