自由空間・ファイバ統合型量子鍵配送を実現する「ハイブリッド量子もつれ光源」の開発に成功
ハイブリッド量子もつれ光源と自由空間・ファイバ統合型量子鍵配送構成図。自由空間側(Alice側)は偏光素子(PBS)と光子検出器(BS)のみで構成可能
ハイブリッド量子もつれ光源の開発に成功~自由空間・ファイバ統合型量子鍵配送実現に道~|NICT 独立行政法人 情報通信研究機構.
独立行政法人情報通信研究機構(NICT)の量子ICTグループ、宇宙通信ネットワークグループと、日本電気株式会社(NEC)は、完全秘匿通信を可能とする「量子鍵配送」に用いる「量子もつれ」光源において、ファイバ内の伝搬に適したフォーマットから自由空間に適したフォーマットへの変換を行い、自由空間側とファイバ側での量子もつれ状態の共有に成功したと発表した。
これまでファイバ伝送と自由空間を統合した量子鍵配送は世界に例がなく、今回開発したハイブリッド量子もつれ光源が自由空間とファイバを統合するフレキシブルな量子鍵配送システムのキーデバイスになることが期待されるという。米国物理協会速報紙『Applied Physics Letters』(1月20日出版)に掲載された。
「量子鍵配送」とは光子一つ一つの量子状態を利用して送受信者間で暗号用の鍵を共有する通信方式。盗聴者が観測(盗聴)を行うと量子状態が歪むため盗聴を見破ることが可能となる。情報漏洩に対する安全性を保証できる量子鍵配送では、安全性に優れた「量子もつれ」光源を用いたシステムが主流になると考えられている。
光ファイバでは減衰や雑音の影響により、鍵配送距離は300kmが限界とされている。一方、自由空間伝送であれば、ファイバより長距離に伝送することができ、地球を周回する人工衛星を用いることで地球全体への量子鍵配送が可能となる。しかしファイバと大気とでは光の伝搬特性に違いがあり、自由空間通信とファイバでは別々の量子鍵配送の運用が必要だった。
「ハイブリッド量子もつれ光源」は、NICTが新規に考案した「フォーマット変換器」とNECが開発を進めてきた波長の異なる「光子対発生器」とで構成されている。「光子対発生器」から出力されたそれぞれの光子を、非対称マッハツェンダー干渉計に入射させ、ファイバ伝送時でも“もつれ状態”が保たれ易い「time-binもつれ(2連パルスの光子波束状態で表現されるもつれ。光ファイバ網の量子通信に適する)フォーマット」とした後、一方の光子にフォーマット変換器により偏光情報を重畳させる。
量子もつれの保存を証明するテストを行った結果、量子もつれがない状況でできる光子干渉の明瞭度の限界(古典限界値)が71%であるのに対し、それを大きく上回る88%以上の明瞭度を実現できていた。
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